メゾン・ド・チャンイチの裏事情 作:浅打
『結局さぁ、こっからどうすんのよ』
ここは黒崎一護の心象世界、青空を貫かんとばかりに伸びたビルの群れが無数に存在する場所。この横たわった世界で右手を(ry
そしてここでは現在、メゾンドチャンイチの住人が集会を開いており円座の形に並んで今後の黒崎一護の行く末を語り合っていた。
「やはり斬魄刀の始解が急務でしょう、唯一無二である己の半身であり己の象徴。ルキア様を助けに行くというなら黒崎一護を最高の状態に仕上げねば」
「気になったのだが、斬魄刀とは結局一体何なのだ」
「斬魄刀とは浅打と呼ばれる刀に己の魂魄を転写した物―――と言われています。刀に拘るというより、慣習的に刀が己の能力を発揮する媒介になっているという事ですね。そして浅打は真央霊術院に死神見習いとして入学した際に渡される物で、それ以外に入手する方法はありません。そういえば……黒崎一護はどこで浅打を手に入れたのですか?」
『浅打なんてないぞ。何故かは知らねぇが一護が初めて死神になった時に最初から刀を持ってたからな、それに慣れたみてぇだから死神の力を取り戻す時も俺の力を適当に刀の形にして押し付けておいた』
「黒崎一護は現世で死神となった、真央霊術院など関わりようがない」
「黒崎一護が持ってるのは斬魄刀じゃないんですか!!?」
『刀は刀だろ、でけぇ斬撃が出る刀に何か文句でもあるのか』
「そもそもなぜ死神は刀を持つことに拘っている。滅却師で言う弓のようなものか」
「貴方達はその程度のふわっとした認識で『抜いて見せろ』とか「早く斬魄刀を引き抜け!」とか言ってたんですか!?」
メゾンドチャンイチの住人となった新顔の袖白雪は驚愕していた、意味深なセリフで黒崎一護の運命を導かんとする者達のいい加減な具合に。
「確かに変だとは思っていたのです……死神の力を取り戻す際に私は一切力を貸していないのに黒崎一護が斬魄刀を持っていた事を……」
【問題を曖昧なままにするから、取り返しのつかない事になるのだ】
『霊王の肺がスゲェまともな事言ってる!』
「さすが霊王の欠片、発言に説得力があるな」
「貴方達が適当すぎるだけでしょう!!どうするんですか一体!」
『問題ねぇよ、ちゃんと考えてある』
そう言ってホワイトが乱立するビルの一棟を指し示すとビルが解けるように姿を変えていき巨大な斬魄刀となった。
『このバカでけぇ斬魄刀でもの凄い月牙天衝を放てば――――大抵の奴は塵になる』
「うむ、どんな防御手段を持っていても霊圧が上回れば問答無用で滅する事が出来るからな」
「馬鹿ですか貴方達は!?どうやってこの阿呆みたいな巨大な刀を振り抜くんですか!!」
『こう……立てた状態で蹴れば勝手に倒れる勢いで振れるぜ』
「うむ、何千里と逃げようと何万里と吹き飛ばせば問題ない」
「尸魂界ごと滅ぼすつもりですか!?そもそもルキア様の救出はどうするのです、まさか助ける前に尸魂界を吹き飛ばすつもりじゃないですよね!?」
『じゃあ一週間でどうやって尸魂界の死神と戦うんだよ、一護を瞬殺した奴が少なくとも十三人は居るんだろ?』
実際問題、朽木ルキアの救出には問題がいくつも付きまとう。かつては強大な勢力であった滅却師を何度も絶滅寸前まで追いやった集団だ、その恐ろしさはオッサンも身に染みて知っている。
よって朽木ルキア救出の後に死神達からの報復に出る事は必至であり、それは黒崎一護の日常の崩壊に繋がっている。メゾンドチャンイチの住人としてホワイトもオッサンも黒崎一護が血塗られた道を歩む事を忌避しているのだ。
『つまり、一護がこの先を生き残る為には斬魄刀の「始解」が必要になる』
「始解…あの面白眉毛の刀の形態が変わったやつか」
『その通り、始解に必要とされるのは「対話と同調」。少々乱暴だったが一護は己の精神世界で斬魄刀と対話した、あとは同調するだけなんだが…』
「そう簡単に言われてもな…俺の中のアイツが一切協力する気配がないんだよ」
『そりゃあ、お前が未だに本質から目を背けてるからだろ。斬魄刀とは己の写し鏡、しかしそれを受け入れるのは内なる虚を受け入れるのとはまた話が違う』
そう言って白様が抜き放った穿月は日本刀の形のまま、グランドフィッシャーと一護が戦っていた時の木刀の様な姿は一片も見当たらなかった。
『内なる虚が本能とするなら、斬魄刀は本質を示す。お前は己の抑圧されたもう一人の自分を知った、しかし全てを破壊する力をお前は望んでいるのか?』
「んなわけないだろ、そんな面倒な事はごめんだね」
『だろうな。一護、お前が俺の斬魄刀の名を呼んだ時は木刀の形をしていた。最低限の殺傷力に抑える形だ、争いを疎んずるお前の心境の表れ、だから霊圧の供給が揺らいだだけで斬魄刀の形すらまともに維持できない』
「……何が言いたい」
白様は己の斬魄刀を引き抜き斬魄刀の名前を呼ぶ。『穿月』、かつての匕首の形態をそのままにして切っ先が黒崎一護に向けられる。
『お前は所詮腰抜けだ、そんなんじゃ朽木ルキアを助けるなんて千年早いね』
白様のわかりやすい挑発に黒崎一護は躊躇わなかった、白様の身の丈を超える一護の斬魄刀が唐竹割りで振り下ろされる。
対して小枝のような斬魄刀で受けた白様の嘲るような表情は変わらない、むしろ穿月に込められた霊圧が溢れんばかりに燐光を発して徐々に一護の斬魄刀を押し返していった。
互いに接触状態から放たれた月牙天衝は二人を大きく弾き飛ばす。白様は二本の足で地を滑るようにして勢いを殺しながら姿勢を立て直し、黒崎一護は無意識に霊力で構成した足場を同様に滑るが手を突き体幹が乱れたままで隙を見せた。
『月牙天衝――戌神――!!』
まるで滅却師の矢のような鋭い霊圧の刃が黒崎一護目掛けて襲い掛かり、一護は何とか柄を両手で握り刃で受けるが再び体ごと吹き飛ばされてしまう。
『エゴとは陽!イドとは陰!陰陽混成の先に己の本質がある!お前の斬魄刀のデカさは見せかけだ!お前の斬魄刀には芯がない!!お前そのまんまなんだよソイツは!!』
「うるせえ!!本質がどうだとか訳が分からないこと言いやがって!!」
『一護、俺がお前の母親の斬魄刀だという事は教えたよな。「
その言葉に黒崎一護の手が止まる。
『だけど真咲は争いなんて望んでいなかった、怖かったのにお前の為に戦ったんだ!!そして死んだ!!!』
再びの白様の月牙天衝、呆けた一護が慌てて回避するが余波で右腕に傷を負う。
『恥ずかしくないか、己の母に!!恥ずかしくないか!お前の友に!!恥ずかしくないか!!お前自身に!!!』
三度の月牙天衝、それは黒崎一護の放った月牙天衝によってかき消された。霊圧の風が白様の髪を揺らす、一切の穢れもなく白様は一護から目を逸らさずに言葉で訴え続ける。
『お前が斬魄刀の名を聞けないのはお前が逃げているからだ!理性では覚悟を決めても打ち消せない防衛本能!最後の壁をぶち壊せ!!』
『何で一護に斬魄刀の名前を教えないかって?斬魄刀が完成してないからなんだよなぁ!!!ギャハハハ!!!!』
「笑ってる場合ですか!?早くしないと黒崎一護が危険です!!」
『ウルセエ!斬魄刀作るの結構面倒なんだぞ!!!』
「何を偉そうに!?」
黒崎一護は死神の血を引いて生まれた事から黒崎一護も死神の力を持っているとホワイトもオッサンも疑わなかった、しかしメゾンドチャンイチに入居して分かったのは死神の力を持つ者が黒崎一護の中に居ないという事だった。
虚のホワイト、滅却師のオッサン、そして霊王の欠片。それだけしかメゾンドチャンイチの中には存在しなかった。
死神の力は内から外へ、その象徴が斬魄刀だ。それを通して死神と化した一護の中に死神の能力とも言える袖白雪が初めて存在したのだ。
しかしそれでは本来の黒崎一護の死神の力は何処に、そしてその存在のルーツに疑問が残る。メゾンドチャンイチに席を置く彼らの中で袖白雪を除いて純粋な死神の力を司る者はいない、いないのだ。
まるで全てを知り見通すかのような白様が持つ「穿月」は白様が模造した斬魄刀である、黒崎一護の扱う死神の力も同じくホワイトの力を媒介にした本質が似通っているだけの紛い物であった。
だが、紛い物だったとしてもそれは正しく斬魄刀である。必要な構成要素は同じく、それに添えられるものが別であっても同等の価値を発揮する。
必要な構成要素、それは虚の力。白様曰く、人間であれば誰しもが持つ己の本能。
つまり死神達は虚の力で戦っているという事に等しい。もしもその仮説が正しいのであれば、それはそれは恐ろしいことだ。
―――まるで、僕たちは虚から産まれたみたいじゃないか。
クレジットカードの分割払いは あなたを追い詰める為にある
PCを買い替えたのでこのPCでは初投稿です。
誤字報告、とても感謝しております。
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今後の方針
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コメディっぽい方が良い
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今まで通りでいい