メゾン・ド・チャンイチの裏事情   作:浅打

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TRACER

 

 

 

『これより!お前たちは尸魂界に突入する!!』

 

 

黒崎一護の心象世界、いつものメゾンドチャンイチでは、いつものメンバーが横倒しのビルの上で整列していた。

 

『俺は希望してませーーん、帰って寝ていいか?』

 

「正直な話、危険と知って飛び込む場所ではないな。というかあの髭に遭いたくない」

 

「今更何を言っているんですか!?ルキア様のピンチなんですよ!?」

 

『フハハハハ!お前達に拒否権はない!というか帰るも何も黒崎一護が尸魂界に行けば自動的にお前達も尸魂界行きなんだよ阿呆ども!!』

 

やる気のない男、腰が引けているオッサン、叱り飛ばす美女、そっと地面に置かれた霊王の肺、いつもの愉快なメンツである。

 

「真咲のホワイトよ、そろそろ真意を明かすがいい。お前とはそろそろ短くはない付き合いになる、だが一護がこれから向かうは本物の戦場だ」

 

『そりゃあ、黒崎一護が強くなるのが俺の望みさ』

 

「話を濁すな、一護が強くなったその先の話をしろと言っているのだ」

 

流石に力の大半を失っていてもかつては滅却師の王だった男、その身から放たれる圧は尋常ではない。

 

『いや嘘でも誤魔化しでも無いというか…お手元の資料をご覧ください』

 

いつの間にか用意されていた数枚の資料、表紙には【黒崎一護最強計画】と記されている。

 

『というわけでこちらをご覧ください。背骨だけ残して腹を割られようが胸元に大穴が開こうが仲間に襲い掛かられようが元気にしていた黒崎一護が余りの詰み具合に絶望して「終わりだ」ってなってるシーンです』

 

 

『一護ォオオオオ!!?』

 

「酷い…顔だな」

 

「黒崎様って逆に何で死なないのですか?」

 

 

 

『もうお分かり?一護は確かに強くなる、だが物凄くだけじゃこの先やって行けないんだよ』

 

現時点において黒崎一護はとても強くなった、それは一重にホワイトが協力的という点に尽きる。

 

真咲のホワイトがテコ入れした事によって一護は己のホワイトと早期の対面を果たし、その精神性を大きく成長させた。

 

また、斬月の性能も向上した事によりこれまで以上の拡張性を期待できるだろう。

 

『ところでアホの弟、そろそろ卍解は完成したんだろうな』

 

『おうクソの姉貴、お前ちゃんと()()()()()()()を理解して言ってるんだろうな』

 

現時点で黒崎一護は死神であり、滅却師であり、虚であり、破面であり、完現術者である。

 

「真咲のホワイトよ、黒崎一護が安定しているのはそれぞれの要素がそれぞれと紐づき、それぞれを抑制しているからだ」

 

黒崎一護にとって死神の力と虚の力はほぼ同一である、そして滅却師の要素を持つ霊体にとって虚の要素は劇薬であり、虚にとって滅却師の抗体は同じく劇薬である。

 

黒崎一護の死神の力が強くなる事は虚の力が増大する事である。しかし死神の力は武力であり虚は本能の鑑、それはつまり死神の力を解放すればする程に虚の支配を受けやすくなるという事である。

 

そこでメゾンドチャンイチのメンツが考えた結果として斬月は生まれた。ホワイトと死神の力を現す斬魄刀を滅却師の力でコーティングする事、そしてその形を【斬魄刀の始解】としてパッケージングする事で【常時開放型】の斬魄刀として安定を図るというものである。

 

「つまり、黒崎様は()()()()()()()()。これ以上強くなるには霊格を上げて純粋に強くなるか、リミッターを解除して暴走状態になるかという事ですか」

 

『そしてこの腐れ姉貴は時速500kmかつ樹海の中で木々にぶつかることなく爆走できるバイクを作れと簡単に言いやがる、コレを見ろこれをよぉ!!』

 

一護のホワイトが腕を広げる動作をとるとビルの壁面に数多の斬魄刀が突き刺さる、様々な形をした斬魄刀からは様々な試行錯誤を行った形跡が見られた。

 

『制御なんて無理無理!オッサンの封印だけじゃたかが知れてる!そもそも制御出来ないんだから暴走するんだろうが!』

 

『暴れてるのはお前だろうが!何とかならんのか!』

 

『そりゃあ、一護が本能を超越する様な領域に入れば話は別だがよ』

 

『オッサン、今の黒崎一護なら何秒持つ?』

 

「1秒と持たないだろう、その上で霊力を持て余した黒崎一護の霊体が自爆するだろうな」

 

『あー…なるほどねぇ…』

 

 

 

 

『……黒崎一護の成長にご期待ください!!』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

お馴染みの浦原商店の地下には黒崎一護が待機していた。時間は平等に流れ、人々は平凡な一夜を過ごしている。

 

いつもと違うのは自分達だけ、同じ一秒の筈がこんなにも重い、現世に暮らす人々の明日の中に俺達はいない。

 

空座第一高等学校の終業式を終えた日の決戦前夜に遺書も書かずにここに立つ。何かを感じ取ったような妹達と父に見送られ、これから死闘を迎えようとする最後の日に落ち着きはなく、また何をするでもない。

 

何をするわけではないが、それでもやっぱり暇なのでラジオ体操でもして暇をつぶしていると見上げるばかりの梯子の上に設けられた出入口の扉が開かれた。

 

黒崎一護に次いでここに訪れたのは井上織姫だった、彼女は黒崎一護の姿を認めると梯子の縁を器用に掴んで一気に滑り降りるとわざとらしく口元に手を寄せて叫んだ。

 

 

 

 

「どっひゃー!!!なんじゃこりゃー!!!あの店の地下にこんなバカでかい空洞があったなんてーーーーーー!!」

「もうやったんだよその(くだり)は!!大体、井上はここに来た事あるだろうが!!」

 

 

 

えへへと嫌味なく愛想笑いをする井上の笑顔には陰がある。当たり前だ、これから向かうのは戦場なのだから。

 

そうしている間にチャドも降りてきて、結局暇なので手押し相撲を始めた。井上が混じりたそうに体を伸ばしながらこちらを見ている。

 

それはいけ好かない、胡散臭い男が白様と共に姿を現すまで続いていた。

 

「ようこそ皆様、浦原商店秘密の勉強部屋へ」

 

「おせーよ、浦原サン。あと部屋のクリーニング代貰うからな」

 

「ちゃーんと時間が経てば消えるようになってますよ♪……それにしても、皆様もこの短期間でよくぞここまで」

 

『あ?一護の仲間だぞ、これぐらい出来て当然だろ』

 

「ホワちゃんはどの感情で言ってるんですかね……?」

 

 

 

 

黒崎一護の親友、茶渡泰虎。

 

無慈悲な天変地異でも揺らがぬような大木を思わせる姿、それはより鍛えられて一種の静謐さすら湛えていた。

 

しかし彼が一歩動けば地面は拉げる、触れた壁は砕け、己に振るわれる数々の武器は自らを曲げ、空は彼の咆哮に全てが慄く。

 

 

黒崎一護の信奉者、井上織姫。

 

拒絶の象徴、本来であれば表に出ることは無かった朗らかな少女。

 

少女が望めば光は捻じれ、音は立ち消え、少女が願えば幾億の生も、幾億の死も、少女が唄えば一つとして違わずに裏返る。

 

 

 

 

「これで全員か?石田はどこ行った」

 

「ここにいるよ、黒崎」

 

 

 

 

黒崎一護の協力者、石田雨竜。

 

先の二人と違い、完現術者としての能力は持ち合わせていないが滅却師として正式に鍛えなおした。

 

感情に振り回されず、規律を重んじ、法則に従い、叡智に教えを請い、そして時にその全てに逆う生粋の反逆者。

 

 

 

 

「石田……もう怪我は大丈夫なのか」

 

「君と違って軽傷だったからね、今は全く問題ないよ」

 

かつては滅却師と死神として争った仲ではあった、しかし彼らには既に軋轢はない。

 

黒崎一護の仲間の中で一足早く真実の断片を掴んだ石田雨竜は覚悟を決めた、真実を知り、真実に挑み、真実を暴き、現実を変える。

 

石田雨竜の心は一つ、先祖が、祖父が、父が、そして己に至るまでが重ねて来た罪を贖罪する事。

 

 

 

 

 

 

 

 

「――――ハイ、これで全員ですね!それでは皆さんご注目!!」

 

そう言って浦原が柏手を一つ叩くと勉強部屋の空間を引き裂いて、おどろおどろしい気を靡かせながら柱が組み合い一つの陣を形成する。

 

「穿開門……正規のルートは尸魂界によって監視、運営されています。なのでコイツで現世と尸魂界の狭間に断界をこじ開けて尸魂界に侵入します」

 

「しかし、ルートを形成できる時間は()()()()のみ」

 

「もし間に合わなかったら、俺たちはどうなる?」

 

「十中八九死にます、魂魄も分解されて塵芥と化すでしょう」

 

死というモノは近いようで遠い、そして気まぐれであり突然に訪れる。

 

死に触れるという言葉がある、死線を超えるという言葉がある、死境という言葉がある、死神という者たちがいる。

 

点であれ、線であれ、領域であれ、ソレに踏み込めば容易く死に飲み込まれる。

 

『一護、生きるってどういう事かわかるか?』

 

「……一応聞いておくが、なんだよ」

 

『死を踏み越えていくことだよ、あらゆる物を乗り越えてお前は強くなった。お前は真咲の子だ!お前は強い!俺が保証してやるよ』

 

穿界門に霊子が流れ込み、霊子変換器が唸りを上げる。

 

 

 

 

 

 

『これより!尸魂界に突入する!!』

 

 

 

 

 

――――朽木ルキア処刑まで、のこり二週間。

 




縛道の八十一、『断空』

朝の八時から夜の九時までの帰宅を完全防御する防壁だ。


ブリーチ二次創作は尸魂界突入編から本番だと思う(小声)


誤字報告、とても感謝しております。
今後とも評価と感想お待ちしております。

今後の方針

  • コメディっぽい方が良い
  • 今まで通りでいい
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