メゾン・ド・チャンイチの裏事情   作:浅打

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クラッシュ

「いやぁ~!おんめぇづええな!!!」

 

時間にして数分、兕丹坊は跳ね起きると状況を理解してガハハと笑う。

 

人の拳に納まる嵐の様な怒涛、圧縮された霊子の風が己を吹き飛ばした。

 

一度は意識を飛ばしたが己は未だ五体満足、だが戦意は既に霧散していた。

 

なんてことは無い、真剣勝負に為す術もなく負けた、それだけの事だ。

 

「お()えば、強い。お()えが何故ここを(どお)りたいのか知らんが―――白道門の番、兕丹坊が通行を許可する」

 

 

 

三百年、ソレがどれ程の時間かと問われても難しい。

 

流魂街で過ごしていた時に誰かに拾われた、門を守れと武器と体を与えられた。

 

それからは旅禍と虚を打ち砕く日々、それすらなければ微睡むだけの日々。

 

自分を負かす相手が現れたのならば、この役から降りる事が出来るのかもしれない。

 

苦痛も不自由もない日々に、嫌気がほんの少しだけ差したのかもしれないのかもしれない。

 

三百年とはソレ位の時間だったかもしれない――――そんな思いは一瞬で断ち切られた。

 

 

「アカンやろ、それは」

 

 

死神の隊長羽織、護廷十三隊のその意義を、その意味を知らないものなど居ない。

 

 

―――ああ、知らない痛みだ。

 

 

「がああああああああああああああああああああ!!!!!」

 

 

 

 

 

 

痛みに叫ぶのは、危機に陥った事を周りに知らせる事、脅威の居場所を示す事。

 

出来事をただ眺めるだけだった黒崎達はそこで初めて状況を悟った。

 

「まあ、()()()やから斬ってもうたけど、門を守れない門番に意味があるんか?」

 

「おめ、お()えば、わがっでねぇ」

 

「……へぇ?」

 

「オラの仕事ば、尸魂界の敵を(どお)さん事。悪意の無い相手に問答無用とば、仁義を欠いどる」

 

「いやいや、僕らはそこまで博愛主義者じゃあらへんし。何より侵入者や裏切り者を斬らん方が義から反する事やろ」

 

「ず、随分と(がる)(がたな)だぁ、()()()()な゛ぁ」

 

「何、もしかしてボクって虚仮にされとるん?」

 

左腕を切断され、血を流し続け、下半身が徐々に沈み始めて遂に膝をついた。

 

否、その巨体で、屈強な下肢で黒崎達を隠していた。彼自身が旅禍を守る門となったのだ。

 

目の前の三番隊隊長、市丸ギンがここまでする理由は分からないがここで旅禍と揉めれば彼らが護廷十三隊の敵であると確定してしまう。

 

逃げて欲しい、その一心で時間を稼ぐ。

 

「わりぃな、兕丹坊。先手を取られちまった」

 

そんな思いは全てが無に帰した。

 

「アンタを斬る前に聞いておくが、()()()ってどっちの事だ?」

 

今度こそ抜刀を果たした、山吹色の髪の少年。死神代行、黒崎一護の手によって。

 

「アカンなぁ…」

 

感情の読めない、わざとらしい声色。しかし眼差しが語るのは明らかな敵意。

 

「君とはあんまり会話したくないわ」

 

刹那、結び合う斬魄刀の丁々発止。そのいずれにも黒崎一護は引けを取らなかった。

 

脇差の速さを鉄塊が弾く、当然本気ではなかったが手を抜いていなかった。

 

再び距離が開く、市丸ギンはゆらりとした自然体で佇むが気は満ちている。

 

黒崎一護は己の勘を確かめるかのように斬魄刀を空で振るう、気が緩んだその後ろで動きが生まれた。

 

「黒崎君!!」

 

「黒崎!!」

 

黒崎を心配した石田雨竜と井上織姫が門を超えようとするが、チャドに襟を掴まれ引き戻される。

 

「チャド君!?何で!!」

 

「俺達は足手まといだ」

 

「おう、その通りだ。チャド、後は頼むぜ」

 

霊力が込められた蹴りが、兕丹坊を蹴り飛ばす。一度兕丹坊の頭がつっかえたが何とか抜けて吹っ飛んでいく。

 

白道門が閉じ切ると、少年の姿は見えなくなった。

 

 

 

 

「えぇ…ええのん?君だけ取り残されてしもうたけど」

 

「会話したくないんじゃないのか?」

 

「しつこぉ……本当に癇に障るわ」

 

市丸ギンは片手で頭を覆うと、溜息を吐きながら黒崎からみて右を指さした。

 

「もうええ、君はあっちへ行き。今なら誰もおらんやろ」

 

「誰もいないのは嫌だね、朽木ルキアの居場所を吐けよ」

 

「君、揚げ足取りの達人なん?吐くわけないやろ」

 

「じゃあ力づくで吐かせるしかねぇな」

 

「……見逃してやる、言うてるんが分からへんのか?」

 

「知らねぇな」

 

「あほくさ、それじゃあボクが君を斬るしかないやん」

 

「つまり、兕丹坊を斬るのが狙いだった。そういう事か?」

 

「もうお黙り―――射殺せ『神槍』」

 

脇差が伸びる、その特性をどのように扱うべきだろうか。

 

黒崎一護の眼には刀身が伸びるよりも、本人が動いた方が速い様に思えた。

 

だから上に飛んだ、前後左右では詰みが見えたからだ。案の定右側面への薙ぎ払いが一護を襲う。

 

刺突を囮にした位置取りの変更。左に逃げれば薙ぎ払われる、右や前後に逃げれば距離を詰められる。

 

避けがたい右肩への斬撃をなんとか受け止めながら霊子を固めて空を蹴る。

 

市丸ギンは既に動いている、刀身を戻しきる前に踏み込む、その前に市丸は黒崎の足元を抜けて後ろに回る。

 

「ちょこまかと……動くんじゃねぇ!!」

 

月牙天衝が偏差で市丸の進む先に打ち込まれる、砕けた路面が土煙に変わって市丸ギンの姿を見失う。

 

着地と同時に殺気、迎撃、空振り―――再びの殺気。

 

振り向き様に見たのは隊長羽織の向こうに構えた市丸ギンの斬魄刀、即時防御。

 

「あ、これ僕の鞘や」

 

フェイク、仕込みは既に済んでいる。隊長羽織の向こう、己の体の影に隠した斬魄刀の刀身が黒崎一護の足元を襲い掛からんと地中を突き進む。

 

―――黒崎一護の防御は既に発動している、月牙天衝を纏った斬月が神槍よりも先に地面に到達する。

 

結果、地面が弾け飛ぶ。そして再びの土煙、黒崎一護の姿は何処にも見当たらない。

 

「……まさか、逃げるとは思わんかった」

 

嬉しい誤算だが、一杯食わされた。しかも神槍を引き戻さなければ折られる可能性もあったのだ。

 

 

「まあええわ、面倒事はボクの仕事やあらへんし」

 

 

 

 

―――尸魂界篇、改変開始。

 

 




愆つ(あやまつ)は、部下

殺すは、上司(おに)

誤字報告、とても感謝しております。
今後とも評価と感想お待ちしております。

今後の方針

  • コメディっぽい方が良い
  • 今まで通りでいい
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