メゾン・ド・チャンイチの裏事情 作:浅打
「これより、緊急の隊首会を開く」
尸魂界の、そして三界のバランサーを自称する彼等死神。
その中でも有数の、死神達を束ねる隊長格。
その隊首会の開催が、緊急の命として告げられたのが先程の事。
護廷十三隊、十三人の死神の隊長、しかし一室に集められた筈の死神には欠員がいた。
四番隊隊長、卯ノ花烈。十一番隊隊長、更木剣八。
内面を見れば血生臭い者たちだが、職務をある程度は遵守する者でもある二人の欠席。
その意味を各々の隊長達は図っていたが、全ては総隊長たる山本元柳斎重國の口から語られるであろう。
「事態は、火急である」
「十一番隊、更木剣八。及び十一番隊の席官、隊員の悉くが負傷により現場を離れる事となった」
「そして四番隊隊長、卯ノ花烈が旅禍の一人を拘束した」
「―――しかし、旅禍の一味が空から瀞霊廷に侵入しおった」
「諸君、全面戦争といこうじゃないかね」
一護が単独で尸魂界の中心である瀞霊廷へ踏み込んだ後、三人と夜一は別の経路で侵入を果たすも遮魂膜によって弾かれて各個に分断されていた。
広大なる瀞霊廷の地で互いに逸れた場合、目印になるものを夜一さんから教えて貰った。
懺罪宮、罪人を納める白亜の牢獄。
それは目標たる朽木ルキアが収監される場所であり、最も警護が分厚い場所と考えられる。
一先ずはそこを目指そうと動き出した石田雨竜だが進捗は進んでいなかった。
死神達の動きが速く、侵入者に対する連携的な捜索を既に開始していたからだ。
「野次馬の様な急行ではなく、既に隊士が命を受けて動いている」
組織とは報連相、印鑑一つ、承認一つを貰う事には時間を要するはず。
それが懺罪宮に向けて進むたびにより警戒の度合いが上がっている、黒崎の霊圧の方向とは違う筈なのに。
「いや、黒崎が突入したことで状況が変わったのか?」
それも違う筈だ、何故なら相手はこちらの目的が朽木ルキアだと理解するには情報の伝達が速すぎる。
「僕たちが来ることを、予測している敵がいる。警護が分厚い理由は重要なモノを守る為か、疚しい事がある時だ」
罪人を粛清する、それは確かに重要な事。大小なりとも世界の一部を変える死神の力を受け渡す事は確かに大罪とも言える。
「朽木さんは自ら降ったと聞く、現世の友人達を人質されている状態で抵抗はしない筈」
しかし、警護のレベルを跳ね上げる理由には足りえないだろう。
一々処刑の為に隊員の時間を割ける程、暇であるならば話は別だが。
「空座町にメノスが来ても現地に死神一人現れないような組織が、朽木さん一人の為に隊長格を送り付ける」
遠隔で全ての捜査を行える連中だったとして、二か月も朽木ルキアを捜索に費やしていた。
それ程の執着心を、尸魂界の死神達は有している。
「浦原さんも関わっている、状況が怪しすぎる。まるで、朽木ルキアを処刑する事を前提に場を整えたような状況だ」
浦原喜助は死神だった、つまりは朽木ルキアに死神の思惑がいくつも重なっている筈。
「犯人は死神、犯行は計画的、目的は朽木ルキアの処刑及び何か」
しかしホワイダニットに答えは出ない、検証に必要な情報が欠けている。
もう一つか二つ、状況を動かす波紋が欲しい。
「―――黒崎の霊圧が……消えた?」
「そして、貴方も消える」
人影のない路地裏に身を隠していたのが仇となった、退路を塞がれ前と後ろからの飛来物あり。
手裏剣の様な刃物が様々な方向から飛んでくるが、幾つかを矢で撃ち落とすも石田雨竜の体に幾つかの傷が走る。
霊子の操作と屈服を得意とする滅却師だからこそ、その目と肌で感じる気配に体が動いた。
竜弦との修行のおかげだ、あの男との修行は石田雨竜の実力を格段に引き上げた。
「直線、回転、それに隠ぺいの術も混ぜてある。随分な念の入れようだね」
「あなたが敵ならば、それも致し方なし」
屋根の上に立つ人影、死覇装纏う男が此方を見下ろしていた。
「敵には一切の情け無用、敵には一切の手加減は無用!!」
「わたしは七番隊第四席、一貫坂慈楼坊。またの名を””鎌鼬””慈楼坊!」
「そうか」
一度の鳴弦、屋根の上に立つ死神に向けて放たれた矢はすり抜けて向こうへ消えていく。
「まあ、飛び道具を前に態々敵の目の前に出て来るような奴はいないか」
「その通り」
速く直線、円弧の曲線、そして見えない刃。それらが組み合わさって風切り音と共に石田雨竜に襲い掛かる。
「傷薬をくれる程、優しくはないね」
「卑怯とは言うまいな、滅却師」
「そんな情けなくなるような事は言わないさ」
一貫坂慈楼坊 VS 石田雨竜
開戦
茶渡泰虎は道中何度か死神と交戦したが跳ね除け、愚直に懺罪宮を目指していた。
今の茶渡は戦車の様なもので、あらゆる攻撃を弾き、あらゆる壁を破壊する。
走って、殴って、走って、走って、殴って。塀に囲まれ、開けた場所まで駆け抜けた。
「待てい!そこまでだ、愚かなる旅禍よ!!」
「八番隊第三席副官補佐!!円乗寺辰房である!!!」
死覇装を開けた男が一人、周囲に他の隊士の霊圧も感じるが皆距離を取っている。
これまでの襲撃と比べて明らかな静寂、捕食者の領域に踏み込むのは哀れな餌だけ。
「茶渡泰虎だ、退いてくれ」
「笑止!この円乗寺辰房を退けたければ、打ち破る他になし!!」
「退いてもらうぞ、円乗寺辰房」
「ほぁあ!!」
それは、まるで嵐の舞。
「ほしゃしゃしゃしゃしゃしゃしゃ!!!」
拳の矛先をずらして前腕で受ける、慣性はそのままに、受けながら打つ。
近づけば近づく程に剣の舞は激しさを増す、互いの間合いが衝突する。
―――動くのはどっちだ、肘で打つか、流れを牽くか。
互いに許せる距離を割って両者は互いに動く、肘打ちと斬魄刀が互いに引かずに打ち付ける。
弾かれたのは円乗寺辰房、滑るように後退して再び間合いが開く。
「雨を凌ぐとは、良い傘だな」
「この程度の雨では風邪もひかないぞ」
「そうだな」
―――乱舞せよ「崩山」
両刃の斧、いや鉈の様な、御幣の様なその斬魄刀。
「それでは、嵐ではどうかな?」
佐渡泰虎 VS 円乗寺辰房
開戦
「早く…早くいかなきゃ」
走る、只管に走る。心臓が、焦燥で燃えている。
黒崎君が私を置いていく、私を一人にする、そんな事は私に耐えられない。
「居たぞ!旅禍の女!」
「捕えろ!!」
耐えられないから、迎えに行かなくちゃ。
「六天跳盾、私は【拒絶】する!!」
「何だぁ!?」
向かい風も、空気の粘性も、重力も、慣性も、私は拒絶する。
それは跳躍、鏃の様に展開された六花に包まれ、井上織姫を縛る制約を無視して空を跳ぶ。
消えた様に思われた黒崎一護の霊圧を感じ取る、それは一つの建物から漏れ出ている。
「四天杭盾――私は【拒絶する】!!」
盾舜六花が命を受け、鏃が杭の形へと切り替える。
「カラクライザー……キック!!」
井上織姫が現実の重圧を受けて地面に向けて加速すると、まるでバンカーバスターの様に屋根を突き抜け、辺り一帯を爆発力で吹き飛ばす。
「静かに入りなさい、取り込み中です」
黒髪で長髪の和装美人の周囲だけが形を留め、そして黒崎一護のはだけた胸元に手を置いている。
見る者が見れば、それは砥石で刃物を研ぐような手の当て方だと分かっただろう。
しかし、それは井上織姫にとっては理解の外にある。
「そ、そうでしたか!えへへ……」
頭を傾げて、頬を掻き、目尻を下げて笑うのは、井上織姫は好きではない。
これは彼女の威嚇の構え、油断を誘って茶を濁す為の処世術、弱者のフリをしていた名残。
「―――ねぇ、黒崎君」
頭を更に傾げて、肩に触れそうな。指を顎に当てて、不思議そうな。目を見開いて、驚いたような。
理解の範疇を超えている、そんな顔だ。
「私、まだそこまで許してないよ☆」
井上織姫 VS 黒崎一護
―――黒崎一護の戦いは、終わらない。
世界一忙しいと言ってくれ
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コメディっぽい方が良い
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今まで通りでいい