メゾン・ド・チャンイチの裏事情   作:浅打

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六月十八日

 

 

空座町に存在する一見普通な駄菓子屋である『浦原商店』、その店主である浦原喜助はいつもの甚平に帽子という姿で客人を待っていた。

 

「浦原!!」

 

「ようこそお待ちしておりましたよ一心サン。──ここで立ち話もアレなんで、早速行くとしましょうか」

 

駄菓子屋や雑貨を扱う売場で超えて居住区に入ると廊下の果て、そこには想像を超える程の広大な地下室が広がっていた。

 

空間というのは視界で得られる景色よりも柔軟であるとか何か理屈っぽい話をしているが今一ピンとこない、そんな事よりも真咲の事が心配だった。

 

「おい浦原、そろそろ聞かせて貰おうか。真咲に何があった、真咲は何処にいる」

 

「まあまあ、それは後でお話しますよ……それに、真咲サンならそこにいるじゃないですか」

 

そう言われて渡された眼鏡をかけると岩山の様な地下室の中、真咲は俺に背を向けて立っていた。

 

少し癖のついた栗色の髪、俺は結構好きだったんだぜ。出会ったばかりの少し短いのも良かったが、付き合う内に髪が伸びていくのが特別っぽくて嬉しかったんだ。

 

なんでお前は死覇装なんて纏ってるんだ?雨に濡れたからか、家に帰れば替えは幾らでもあるだろう、今度久しぶりにデートして新しく服を買ってもいいんだ。

 

 

「真咲……」

 

 

そう呼びかけられて振り返る真咲には虚の仮面、そんなゴツいのお前には似合わないぜ。夏祭りの思い出に買ったお面なら、大事にしまってあるだろ?

 

「真咲、帰ろうぜ」

 

「一心さん、危ないですよ。今の彼女は……虚です」

 

『イッシン……サン』

 

ああ、クソッたれ。分かってる、俺の力じゃ虚の力を抑えきれなかったんだな、俺が力不足だったから。

もしかしたら一護も襲われていたかもしれない、虚は何より身内を襲うから。それが嫌で記憶にあったここに必死で逃げて来たんだろ?

 

 

 

──楽にして、やらないとな。

 

 

 

 

 

 

 

「浦原、一時的に俺を死神に戻せるか」

 

「可能ですが……止めておいた方がいいですよ?」

 

「介錯してやれるのは俺以外に居ないだろ、頼む」

 

「いえ、あれを」

 

再び真咲を指差す浦原、俺も再び真咲を見るがどうやら様子がおかしかった。

 

「一心……さん!!」

 

『ちょっと待って真咲!台無し、台無しになるから!!』

 

「ホワちゃんはちょっと黙ってて!」

 

『イタタタタ!!剥がれる!剥がれる!!』

 

 

……なんか、様子がおかしかった。

 

 

 

 

「一心さーん!!」

『ギョァアアアアアアアアアアア!!?』

 

 

 

 

 

「……何だァ!?」

 

 

 

 

 

 

「で?これはどういう事だ?」

 

とりあえず飛びついて来た真咲を受け止めつつ浦原を蹴り飛ばすと、此度の件について問いただす事にした。

 

「イタタタ……何も蹴る事はないじゃないですか」

 

「流石に自業自得じゃ、いい加減に反省せい」

 

器用にも帽子を押さえたまま転がっていった浦原に呆れつつ夜一さんが下りて来る、この分だと最初から知っていたな?

 

「いやぁ、最初は駄目だと思ったんですよ?前例もありましたし。でもこれは流石にイレギュラーでして」

 

「イレギュラーだと?お前が何かしたんじゃないのか」

 

『俺から説明してやろうか?』

 

下から届いた声に視線を向ければいつの間にか子供が立っていた。白い装束に頭から一本の角が生えた女のガキ、その姿は真咲の面影を残していた。

 

「ホワちゃん!」

 

『ホワちゃんって呼ぶんじゃねぇ!!俺はホワイトだ!!!』

 

真咲に馴れ馴れしく撫でられ憤慨するガキ……ホワイトと言ったか、とりあえず事情を知っているであろうコイツに聞いた方が早そうだ。

 

「オイ、ガキ。一体何があった」

 

『ガキでもねぇ!!……とりあえず結論から言えば滅却師の力を失った真咲を俺が助けた』

 

「滅却師の力を失う?それに助けたってお前……」

 

『俺は虚だ、久しぶりだなぁ元死神?お前の死神の力をちょっと頂戴してやったぜ』

 

角の生えた……虚!?

 

「お前あの時の虚か!俺と真咲を襲った!!?」

 

『正解!いやぁ、結構前の事だし忘れられたかなと思ったが杞憂だったな!!ガハハハ!!!』

 

「何故真咲を助けた」

 

『―――何だよ、助けない方が良かったか』

 

「そうじゃねぇ、真咲が死んだ方が自由になれたし、そっちの方が都合が良かった筈だ」

 

そう言うと何と虚のガキの目が悲哀に潤んでいくのが分かった。

 

 

『都合ってさ…誰の都合だよ。かってに生み出されて、虚園(ウェコムンド)から放り出されて、挙句の果てには封印なんてされてさ。虚園には帰れない、現世で逃げても死神の都合で殺される。俺の自由なんて無い、俺の都合なんて考慮されない!俺にはもう帰る場所すらないんだ!!!

 

 

虚のガキ……ホワイトは大粒の涙を拭う事もせず泣きながら吼えた、そんなホワイトを憐れに思ったのか真咲がホワイトを抱きしめる。

 

『だけど……真咲の中だけが俺にとっての自由だったんだ、怯えないで居られる楽園だった。でもあの虚が真咲と一護を殺そうとするから、こうするしかなくて……』

 

「もういい、俺が悪かった」

 

俺は地面に跪いて深く頭を下げた、俺が本当にすべきだったのは問い詰める事では無く感謝の意を示す事だったのだ。

 

『……謝罪も、いらない。俺は許されない事をしたんだ』

 

「どういう事だ?」

 

「それは私からお伝えしましょう。一心サン、申し訳ございませんが真咲さんをお家に返す事は推奨しません」

 

「はぁ!?何でだよ!」

 

「真咲サンは今回の件で破面と呼ばれる存在になりました。しかし半端な魂魄では魂魄自殺を引き起こしてしまう、真咲サンの様に滅却師の力が残っていたとしてもそれ以外は平凡な魂魄が耐えられる筈がない。そして破面化した魂魄を安定させる方法は藍染サンを含めても相当の時間がかかったんです。しかしホワイトは他の助けを借りずに一発で成功させました」

 

死神と虚の境界を超越した存在である破面、しかしただ超越しただけではコントロールが出来ずに本能のまま暴れる存在になってしまう。

 

「アタシもね?ホワイトが協力的だから暴走しなかったのかと思ったんですよ。だから疑問をぶつけてみれば出るわ出るわ私も知らない知識の数々。これはね藍染には渡せません、そして誰にも気付かれるわけにもいかない。気付いてしまえば誰もがホワイトの知識を欲するでしょう」

 

 

 

 

「―――つまり、ホワイトを狙う敵はそのまま真咲サンを狙う敵となるんですよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

結局俺は真咲を家に連れて帰る事は出来なかった、そして一護や遊子と夏梨に滅茶苦茶泣かれた。

一護は滅茶苦茶に塞ぎ込んだ、本当は違うと分かっていても自分が母を殺したも同然と思い込み真咲が消えた河原で面影を彷徨うようにふら付く様になった。

学校が終わっても中々帰ってこない、だが転んだガキを起こす様な野暮な真似はしない。

一護に真咲を助ける力が無かったのは事実だ、俺の甘い見通しが真咲を殺めかけたのもまた事実だ。

 

 

 

―――『一護はこの先、様々な艱難辛苦に襲われるだろう』

 

 

 

地べたに体を預けても自分で立ち上がる力が男には必要だ、男の真ん中に軸があればそれを杖にして何度でも立ち上がる。

 

 

強くなろうぜ一護、俺がお前の行く道を見届けてやる。

 

 

 




この作品が評価され始めると少しずつ評価バーが紅く染まる。
評価バーが赤く染まって初めて、この作品の評価は最大になる。(龍紋鬼灯丸)


多分尸魂界編に入ったら文字数増えます…それまでお待ちください。

今後の方針

  • コメディっぽい方が良い
  • 今まで通りでいい
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