メゾン・ド・チャンイチの裏事情   作:浅打

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Remote Viewing

『一護、俺の斬魄刀の能力は捕食(キャッチ)()解放(リリース)だという事は知っているね?』

 

「知らねーよ、初めて聞いたよ」

 

かつて藍染によって生み出された人工虚、ホワイトは寄生の能力を持つ虚だった。

 

それが変質したのは黒崎真咲がグランドフィッシャーに襲撃された事件の時。

 

ハク様が黒崎真咲を救出する為に黒崎一護と似て非なる存在、つまりは滅却師+虚+死神にする為に死神の力の象徴であった鎖と滅却師の象徴である矢を捕食した事に由来する。

 

ハク様が捕食をする事が出来る、つまり元々捕食する能力を持っていたと逆の証明を行われた事で斬魄刀化した際に現在の能力を付与された。

 

『一護、俺の能力でお前の霊圧を制御してやる。そうすればお前の魂魄が破裂せずに全力を出すことが出来る筈だ』

 

それは更木剣八の眼帯の様にハク様が黒崎一護の霊圧を喰らい、テスラバルブの様に適量の霊圧として還元するという事。

 

『これが更木剣八をも退けるお前の新しい力!ジャン月を超える新しい力!!その名も―――』

 

 

 

斬八(ざんぱち)だ!!!』

 

 

「台無しだよ!!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「卍解」

 

 

 

「『盈月(えいげつ)(ついたち)』」

 

 

 

急激な霊圧の圧縮と解放による爆発的な衝撃が土埃を撒き上げて、千本桜が朽木白哉を包んでその粉塵から守る。

 

衝撃が落ち着き土煙が晴れた時、その男はその場所から変わらずに佇んでいた。

 

先程までの荒々しい霊圧は微か程にも感じられず、その手には一振りの斬魄刀が握られている。

 

卍解、確かにこの男はそう叫んだ。初めに持っていた斬魄刀よりも小さく、先程まで持っていた斬魄刀よりも厚い。

 

傍目には黒色の斬魄刀に白色の斬魄刀を被せたような、江戸の鰻包丁を大きくしたような姿をしている。もはや刀と言うより大剣と言うべきだろうか。

 

「―――卍解だと、貴様は宣うたか」

 

「ああ」

 

「世界を変えると謳ったな」

 

「ああ」

 

「――――笑わせるな」

 

卍解を語る事、世界を変えると吐き捨てた男には()()したのだ。

 

「吭景・千本桜景厳」

 

朽木白哉の激情に触れて、千本桜が独自の意思を持つかの様に津波の如くに押し寄せる。

 

それは蚕の繭を思わせる玉となって黒崎一護の周囲を包み込み、朽木白哉の意思一つで億の刃は対象を粉微塵に切り刻むだろう。

 

「綺麗なもんだな、桜吹雪っていう奴は」

 

黒崎一護が新たに手にした斬魄刀を腰撓に低く構える、その姿に恐れも迷いも無し。

 

――――黒崎一護の卍解、盈月がその姿を変える。

 

盈月の刀身が大小幾つかのパーツに分かれ、パーツ同士の内側の空間に月牙天衝の光が充満する。

 

先程までは微かにも感じられなかった黒崎一護の霊圧の全ては、その刀身から溢れ出ているように思えた。

 

天鎖斬月を芯として盈月の刀身がそれを囲む様に配置され、まるで大砲や国崩しの様だ。

 

 

 

「月牙天衝」

 

 

 

たった一発の月牙天衝が空に向かって打ち上げられて、錦色の尾を引きながら空へ昇るも途端に消える。

 

不発か、未完成か、しかし朽木白哉の霊圧感知の瞳は空中で一次元の点の様に圧縮された月牙天衝を捉えていた。

 

恐るべき程に高度に圧縮された月牙天衝は突如として裏返り、朽木白哉の目前にて開く閃光と爆音。

 

尸魂界の蒼天の下に桜の吹雪と菊の花火が飾られて、共に散りゆく千変万化の刹那の華。

 

 

 

 

月牙(げつが)昇竜(のぼりりゅう)残月(ざんげつ)千輪菊錦先飛星天衝(せんりんぎくにしきさきひせいてんしょう)

 

 

 

 

 

 

千本桜景厳の花弁がその光と衝撃で、始解同士の戦いの再現の様に花弁の全てが弾き飛ばされた。

 

 

 

 

「―――笑えよ、朽木白哉」

 

 

 

一度(ひとたび)の音と光が世界を変えた、その光景に一瞬だけ朽木白哉が魅せられたのも確か。

 

天を衝く、傲慢にも思えるその言葉が何よりも相応しい。

 

 

 

 

「本当の勝負はここからだ、って言ってみろ」

 

 

 

 

黒崎一護が持つ盈月は初めのような大剣の姿に戻っていた、それは即ち黒崎一護の霊圧が感じられなくなったという事。

 

 

 

―――それが無様にも黒崎一護に背後を取られる結果を生んだ。

 

 

 

「―――貴様の卍解は、夜の月の様だ」

 

新月の夜の如くに暗く、満月の夜の如くに明るい。

 

盈月が朔の時、黒崎一護の放出される霊圧は全て盈月が吸収する。

 

それはつまり、死神が無意識のうちに頼りにしている霊圧感知をすり抜けるという事。

 

「黒崎一護、何故その卍解を振るわなかった」

 

「後ろから斬るなんて御免だね」

 

「分からぬ男だ……」

 

飛び散った千本桜の花弁が舞い戻り、再び黒崎一護と朽木白哉の戦場を包んでいく。

 

「―――遮魂膜を貫く花火と技術は、とある一族のみが代々保持し続けて来た。貴様は、志波家の(ゆかり)の者か」

 

「知らねぇな、俺の名前は黒崎一護だ」

 

「父の名は、母の名はなんだ」

 

「黒崎()()と黒崎真咲だ、文句あっか」

 

「……なるほど、そうか」

 

千本桜が凝縮されて、何もない空中から斬魄刀を抜き放つかの様に朽木白哉の手に収まる。

 

 

「殲景・千本桜景厳」

 

 

それは空に漂う千本桜の花弁も同じ、規則正しく並ぶ斬魄刀の列がコロシアムの様に二人を取り囲む。

 

「この形態は防御を棄て、この私自らが斬ると決めた相手だけに見せるもの」

 

「これは私が兄に示す本気の証、本当の勝負はここからだ」

 

「あー…うん、本当に言ってくれるんだ」

 

『優しい』

 

「これを見せるのは、貴様で二人目だ」

 

「そうかよ、光栄だな」

 

取り残された一枚の花弁が地面に落ちる、それが再開の合図となった。

 

盈月を持つ黒崎一護が走る、その黒染めの死覇装の出で立ちもあって影そのものが走るかのようだ。

 

幾度か斬り結びながら、朽木白哉は戦闘と思考を切り離しながらも観察を続ける。

 

「随分と気分がよさそうだな」

 

「アンタにはまだ全力を見せてはいないけどな」

 

特筆すべきはその速さと膂力、霊圧は感じられないが身体能力は先程よりも確実に向上している。

 

朽木白哉の意思が千本桜へと伝わり、幾本かの刀が黒崎一護へ向けて射出される。

 

黒崎一護は飛来する斬魄刀を難無く弾く、しかし続けざまに放たれた斬魄刀に意識を向けた時にそれは起こる。

 

「奥義、参ノ容。一刀千刃桜颪」

 

高速で飛来する斬魄刀が突如として千本桜に変わり、そのままの慣性を乗せた散弾となって黒崎一護に降り注ぐ。

 

「月牙旋遍万花衝!!!」

 

盈月が刀身を開き、振るわれた月牙天衝が花火となって散弾を吹き飛ばす。

 

瞬歩を修め、花火の鬼道を修め、卍解すらも修め、振るわれる斬魄刀の動きは鮮やか。

 

一人の人間が数か月でよくもここまで強くなった、それ故にもはや哀れ。

 

「余興は終わりだ」

 

朽木白哉の瞬歩で黒崎一護との距離を詰める、盈月が刀身を戻して二人の剣戟の応酬が繰り広げられる。

 

「何故その斬魄刀を戻した、何故先程の月牙天衝を打たない」

 

「お前を斬るにはこれで十分だろ」

 

「打たないのではない、打てないのだろう」

 

再びの一刀千刃桜颪、迎え撃つ月牙旋遍万花衝。そこに再び踏み込む朽木白哉。

 

霊力が溢れだす盈月と斬魄刀同士がぶつかり、しかし鍔迫り合いに留まった。

 

「やはり、己の強化と斬魄刀の強化は両立できないらしい」

 

黒崎一護の斬魄刀が鍔でかち上げられ、その隙に朽木白哉の千本桜が黒崎一護に襲い掛かる。

 

黒崎一護が得意としていた纏う月牙天衝は、盈月となった斬魄刀に吸われてしまう。

 

その代わりにその霊力を身体機能の向上に充てる事でステルス性を得ながら燃費を向上させつつ戦える。

 

盈月の刀身を解放すると月牙天衝を放つためにより強く霊力を吸収されて、黒崎一護の身体能力は卍解で向上した素のままの分まで落ちる。

 

それは弱点ではない、霊力を扱う者としてごく普通の論理。

 

黒崎一護か月牙天衝のどちらかを強化する力は、流れと極めの切り替えとしては普通である。

 

攻撃に霊圧を割けば防御が疎かになる、それは至極当然の事。

 

それはハッタリのような、いくらでも言い返す事も出来た言葉だった。

 

それでも、黒崎一護の焦燥感が強く煽られている、それは―――朽木白哉が強いからだ。

 

先程から幾度と斬り合い、幾度と花火をぶつけても朽木白哉と千本桜の優位は揺らいでいない。

 

瞬歩の精度は朽木白哉が上、斬術は朽木白哉が上、鬼道でも朽木白哉が上。

 

朽木白哉が攻め続ければ例え月牙天衝が驚異的であっても恐れるに足らず。

 

王手をかけ続ければ相手は護りに徹する以外にないという事。

 

盈月・朔よりも天鎖斬月ならばまだ勝負になったかもしれない。

 

しかしまともな戦いの中で急速なガス欠を起こして死期が近づくだけにすぎない。

 

二人の距離が開いた隙を縫う幾本もの一刀千刃桜颪、迎え撃つ月牙旋遍万花衝――――「攻撃と防御を両立できていないと言った」

 

死角を突いて襲い掛かる千本桜の斬魄刀が黒崎一護の両手両足を貫いた、激痛に意識が一瞬飛んで消える。

 

「―――縛道の六十一、六杖光牢」

 

六面の光の帯が黒崎一護を拘束する、既に致命的を超えた即死の隙。

 

 

―――ごめんな、遊子、夏梨、親父。

 

―――ごめんな、井上、茶渡、石田。

 

―――ごめんな、ルキア、恋次、剣八。

 

―――ごめんな、ハク様、もう一人の俺、オッサン。

 

 

 

終わりだ。

 

 

 

 

ごめんな、母さん。

 

 

 

 

「破道の四、白雷」

 

 

 

 

 

 

 

 

『何故、謝りたいの?』

 

『何故、諦めるの?』

 

『黒崎一護は、こんなにも強くなったのに』

 

俺は弱かった、俺は強くなかったんだ。

 

『貴方は強いわ。これまでも、これからも』

 

そうだとしても、ここで終わったらそれでお終いなんだ。

 

『強くなりたい?』

 

強くなりたい。

 

『強くなりたい?』

 

強くなりたい。

 

『強くなって、どうしたい?』

 

「皆を……護りたいよ……」

 

それが黒崎一護の源泉にして原動力、命ある限り体を突き動かす天来の衝動。

 

「だから、助けてよ、母さん……」

 

母である真咲は最早この世界のどこにもいない、そう思っている黒崎一護にとってあり得ない言葉。

 

もはや縋りつく事が出来るのは、亡き母との思い出と温かさ。

 

 

 

 

 

 

 

『助けてあげましょうか?』

 

……母さん。

 

『仏に逢うては仏を殺し、祖に逢うては祖を殺す』

 

……母さん?

 

『己を最強と自負するのなら、己を害する者全てを殺すべし』

 

……母さん、多分ソレ意味違うよ?

 

 

 

 

 

『さあ目覚めなさい、黒崎一護』

 

 

 

 

『全てを守る為に』

 

 

 

『全てを殺す為に』

 

 

 

 

 

 

 

朽木白哉の束ねた二本の指から光線の様に迸る雷を、遮る影があった。

 

驚愕、動揺、茫然、困惑、警戒、それらを行ったり来たりしながらも朽木白哉は動けない。

 

「何を驚くことがあるのですか、雷切など珍しいものでもないでしょう」

 

避けるも弾くも防ぐも分かる、しかし隊長格の放つ破道の雷を切って捨てる道理を分かる気も起きない。

 

六杖光牢は確かに機能していた、しかしこの男はただ剣を振るう為の体捌きだけで縛道を破った。

 

「兄は一体、―――何者だ」

 

「何者、ですか……」

 

 

 

 

私は     ですよ、 朽 木 隊 長 

 

 

 

 

黒曜石の様な瞳と恍惚の笑みに彩られたその相貌は、もはやこの世の者とも思えぬ魔性の類。

 

 

 

 

「闇夜の下、眉月の光で一体何を見通すと言うのでしょう」

 

 

 

「贄と成りなさい、朽木白哉」

 

 

 

「私の愛しい、息子の為に」

 

 

 

 




…後書きを書く時では最近、ポエムの改変の限界が近いって聞いてたけどホントみたいだね。


誤字報告、とても感謝しております。
今後とも評価と感想とここすきと推薦をお待ちしております

石田、茶渡、織姫の戦闘シーンっている?

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