メゾン・ド・チャンイチの裏事情   作:浅打

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愛スティル

争いは過ぎ去り、そして次の破局へと備える様に事は進んでいた。

 

「へぇ、改めて見れば随分とやり合ったもんですね」

 

「……ああ」

 

黒崎一護の裁判の後、双殛の丘の上に阿散井恋次と朽木白哉は立っていた。

 

双殛自体は既に元の場所に戻され、しかし月牙天衝で抉れた地面や千本桜で削られた部分はそのままだった。

 

「認めたのですか、黒崎一護を」

 

「認めたも何もない。ただ、負けたのは私だっただけの事」

 

「次(・)は(・)負(・)け(・)な(・)い(・)、でしょう?」

 

「……そうだな」

 

殺す気があったかどうかはともかく、朽木ルキアの件が絡んでいなければどうなっていたか分からない戦いではあった。

 

この人は誤解されやすく、また誤解を解くと言う事をしない。しかし、その思いは何よりも純粋だ。

 

鑑なのだ、そうあるべしと請われ、かくあるべしと振舞う。

 

「……俺は、一体どうなるのでしょうか」

 

極刑が決まった朽木ルキアの脱走の補助、護廷十三隊に対して全面的に逆らった形であるため処分は免れないと考えていた。

 

「私は貴様を認めている」

 

「……え?」

 

「私に正面切って堂々と文句を言える死神が、そう容易く現れると思うなよ」

 

この人の言葉は純粋だ、そこに別の意図があるわけでもなく。俺が副隊長でいられる様に手をまわしてくれたのだろう。

 

「申し訳ございません、余計な手間をかけさせてしまいました」

 

「ああ、余計ではあったし面倒だった。その価値はあったとは思う」

 

「はい!今度は朽木隊長に頼られる―――その価値?」

 

言葉とは効率であり、流麗であるべく、そして言葉以上によく語るものだ。

 

ざっくり言うのであれば、「その価値はあったとは」の「とは」は何ぞや。

 

「えっと、その、朽木隊長は俺の処遇をとりなしていただけたのですよね?」

 

「ああ」

 

「俺、副隊長のままですよね!?」

 

「ああ」

 

「じゃあ一体、何を懸念しておられるのですか!!?」

 

「いや、もうじき解決する」

 

何を、とはもう言えない。そもそも黒崎一護と争いボロボロになった朽木隊長がわざわざこんな場所まで来たのかを考えていなかった。

 

 

 

「オイ、久しぶりじゃねぇか。恋次」

 

 

 

阿散井恋次の古巣、十一番隊の隊長、更木剣八が空から降ってきた。

 

「えええええええええええ!!!?更木隊長!?」

 

「構えろよ恋次!!さっさと殺し合おうぜ!!!」

 

「何でぇええええええええええ!!!?」

 

「お前もさっき言っていたではないか」

 

朽木白哉と阿散井恋次の脳内に駆け巡る思考!

 

・黒崎一護が意気消沈して更木隊長が暇

・久々の戦いで不完全燃焼

・このままだと隊長格が無駄に絡まれかねない

・隊長格全員、相手を誰かに押し付けたい

・阿散井恋次に処罰が必要

・阿散井恋次は強くなりたい、頼れる男になりたい

↓

ヨシ!

 

「まあ大体そういう事だ」

 

「実質処刑じゃないですか!!」

 

「更木剣八から一本とれるまで、帰ってくるな」

 

「無理だぁああああああああああ!!」

 

元々十一番隊に居ただけあって、更木剣八の恐ろしさは身に染みて分かってる。

 

無理難題なのか、五劫の摺り切れなのか、今の自分では更木剣八に勝てるイメージが湧いてこない。

 

「もしも一本とれたら、ルキアとの関係も考えてやる」

 

「え?―――あ!!!!」

 

―――好きだあああああああああああ!!!!お前が欲しいいいいいいいいいい!!!!

 

「隊長!?あれは、その!!!」

 

「よい、だが覚悟しておけ」

 

「へ?」

 

「私の屋敷で女性死神協会の面々が、お前とルキアの小説を書こうとしているのを見た」

 

「うわぁあああああああああ!!!!何でぇええええええええええええ!!!!??」

 

「お前が早く更木剣八と決着をつけないと、どんどん発行されると思え」

 

「何故!?」

 

「ちなみに、試しに読んだが満月の夜にだけ秘密の逢瀬を重ねていたらしいな」

 

「本人も知らねぇよ!誰だよ作者ァ!!!」

 

「私に正面切って堂々とツッコミを入れる事が出来る死神が、そう容易く現れると思うなよ」

 

朽木白哉は純粋であり鑑でもある、意外とノリがいい。

 

「あー……、もういいか?」

 

「えぇ……良くはないけど、もういいです……」

 

更木剣八は話が落ち着くまで待ってくれていた、意外と行儀がいい。

 

「先に言っておくが、本気出さねぇと―――」

 

「――――吠えろ『蛇尾丸』!!!」

 

阿散井恋次は更木剣八が話し終える前に切り掛かる、彼は荒れてはいるが礼(・)儀(・)正(・)し(・)い(・)。

 

「今から殺しますって言う、殺し合いがありますか?更木隊長」

 

「テメェ……いい男になったじゃねぇか」

 

 

 

 

「じゃあ死ね」

 

 

 

 

 

 

四番隊、綜合救護詰所の一室。

 

雛森桃を救出せんと勇んで踏み込んだ日番谷冬獅郎、結果からすれば怪我を負ったのは日番谷だけであった。

 

「ケガは大丈夫?シロちゃん」

 

「……大丈夫なわけあるかよ、情けねぇ」

 

五番隊副隊長であった雛森は本来、最も藍染に近かった人間として事情聴取を受けるべきではあった。

 

しかし傍から見て信望していた隊長に棄てられた少女は目を覚ました途端にパニックを起こした。

 

その為、一度綜合救護詰所へと搬送されたのだ。

 

傷を負わなかった少女は病床に横になり、傷を負った少年は壁に寄りかかっている。

 

冗談を投げかける雛森桃に余裕があるとは言い切れない、先程まで取り調べを行われていたがその対応はどこか上の空のままで。

 

こうして日番谷が怪我を押して雛森桃の病室を訪れたのも、気心しれた相手であれば雛森も余裕を取り戻すことを期待されているからである。

 

「ねぇ…シロちゃん」

 

「何だ」

 

いつもであれば「シロちゃん」などと呼べば言い返すものだが、雛森の言葉を待っているのは日番谷も同じ。

 

「聞いたんだ、藍染隊長の事」

 

藍染自らが語ったその所業、そしてそのあらましを知った。

 

「尸魂界に来たの、一護君って言うんだね……」

 

「ん?ああ、そうらしいな」

 

元々自分の上司であった死神、志波一心の息子。世界というものは狭いものだと感じたものだ。

 

「藍染隊長の子供だって……」

 

「……ん?」

 

「私じゃダメだったのかな……」

 

「うん??」

 

雲行きが怪しい、なんだか凄まじく嫌な予感がする―――!!!

 

 

 

「一護君かぁ――――」

 

 

 

 

「私が産んであげたかったなぁ」

 

 

 

 

今、雛森はなんと言った?

 

 

 

「藍染隊長と私の子供、かっこよくなるのかな、可愛くなるのかな。うーん、でも朽木さんの為にわざわざ乗り込んでくるくらい他人思いなんだよね。誰かに為に何かしてあげたいなんて藍染隊長そっくりだなぁ。朝起きた時に眼鏡をどこに置いたか分からなくなっちゃう抜けてる所もあるし、わたしがしっかりしなさい!って言ってあげないと!!うんうん、元気なのはいいけどやっぱり頼り甲斐のある方がいいよね!いつの間にか私の傍から居なくなっちゃう迷子さんなんだから、しっかり目を離さないようにしないと―――」

 

「雛森!!」

 

「―――ふぇ!?」

 

光が吸い込まれていくかのような漆黒を宿した瞳、落ち着きを取り戻したのか若干の生気が戻った。

 

「桃!現実を見ろ!お前は!お前は―――!」

 

何を言えばいいのだろう、何を伝えればいいのだろう。

 

 

 

 

「大丈夫だよ、シロちゃん」

 

 

 

 

 

「私、待ってる。ずっとずっと待ってる」

 

 

 

 

「だって藍染隊長が私の事、置いて行くはずがないもん」

 

 

 

 

 




いちご いちご いちご いちご いちご大家族

誤字報告、とても感謝しております。
今後とも評価と感想とここすきと推薦をお待ちしております

死神代行消失編いる?

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