メゾン・ド・チャンイチの裏事情   作:浅打

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青のすみか

「ようこそお帰りなさぁい!黒崎サン――――!!」

 

「帰ってきたぜ……テメェを殺す為になぁ!!!」

 

「ヤル気満々ですね!?」

 

拘突に再び追われながらも断界を走り抜け、空座町の空へ飛び出した黒崎一護達を迎えたのは送りと同じく浦原喜助であった。

 

「俺の人生観が五回ぐらいは変わりそうな体験をありがとうなぁ!!!」

 

「あー、じゃあ人生が五回くらいあったら良かったっすねぇ」

 

「そしたらテメーを五回ともぶっ飛ばしてやるよ」

 

なんだかちょっと気恥ずかしいような感覚になった織姫を初め、仲間達を家路につかせてからいつもの浦原商店の勉強部屋へと進んでいく。

 

「さて……黒崎サン、よくぞお戻りになられました」

 

「お題目はいい。そろそろ話してくれ、アンタが知っていることを」

 

「……ちなみに、ホワちゃんからは何処まで聞いていますか?」

 

「ぜーんぜん、重要な事は全部言わねぇ。だから……悔しいけど、アンタにしか頼めねぇ」

 

黒崎一護は俯き、迷子のような面持ちで、小さく細くなっていく声で縋る様に問いかける。

 

「では、一番大事な事からお話しましょうか」

 

「……頼む」

 

「黒崎サン、貴方の両親は黒崎真咲さんと志波一心さんです。そして、その二人から生まれた貴方が過ごしてきた人生において過失などなかった」

 

「……ああ」

 

「貴方はこのまま何も聞かずに帰る事が出来る。例えば明日、隕石が落ちてきて世界が滅んでも何も知らないまま死ぬ事が出来る」

 

「知っていたのに何もしなかったなんて御免だね」

 

「そうでしょうねぇ…ああ、面倒だ」

 

なんと面倒なのだ、帽子を目深くかぶり、そっと溜息をもらす浦原喜助。

 

嘘と本当と勘違いが重なりあい、全てに於いて厄ネタでしかなく、全てに於いて確実に軋轢が生じる。

 

「まぁ、藍染サンが動いた以上は確かに無関係ではない。それなら改めて現状を整理しましょうか」

 

荒野にも似た勉強部屋に、話が長くなる事を見据えて座布団と茶を用意して数瞬のこと。

 

それは、浦原喜助と藍染惣右介の奇妙な友情。

 

それは、死神における人生において刹那の一時。

 

それは、袂を分かち、相容れず、しかしどこかで繋がっている。

 

「そう……それは、ある晴れた日の事―――」

 

 

 

 

 

「は?エッチなお姉さんがサイコーですよね、藍染サン?」

 

 

 

「分からないな、健気な年下こそ至高だろう?」

 

 

 

「うわー、趣味悪いっすね。どうせ自分の理想通りの子なんていないんだから、そろそろ現実みたほうがいいっすよ?()」

 

 

 

「君こそ、理想を押し付けるだけで相手を理解する事など永遠に出来ないよ。それに君、童貞臭いぞ?」

 

 

 

 

「……」

 

「……」

 

 

 

 

――――破道の九十九・五龍転滅

 

 

 

 

 

 

 

「こうして、私達の歩む道は二度と交わる事はなく、尸魂界の地脈をボロボロにした私達は決死の逃走劇を繰り広げ―――」

 

「ちょっと待てや!!!!」

 

「なんですか、真面目な話の最中に」

 

「どこが真面目なんだよ!何でおっさんの性癖暴露大会の話を聞かされなきゃならねぇんだ!!」

 

「いやいや、これお互いに素直にお話が出来ない男のかけあいってもんでして」

 

あくまで理想を求めた二人、しかし理想は与えられるものではなく、理想は人の手に余るものである。

 

『え、じゃあ俺の姿がロリっぽいのはまさか!?』

 

「偶然じゃないっすか?」

 

『よかったー』

 

「俺の話は!?おい!!」

 

 

 

 

 

 

 

「ところで浦原喜助、君は四楓院夜一と祝言は挙げないのかい?」

 

「えー、夜一サンとはそういう関係じゃないですよ」

 

「ふむ、では砕蜂くんはどうなんだい?」

 

「えー、どっちかっていうと姪とか従妹みたいなもんですし想像できないッス」

 

 

 

 

「「………」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こうして藍染サンの謀略によって私は羽子板でもびっくりな程に蜂紋華塗れとなりながら砕蜂サンと夜一サンから三日三晩逃げ続ける事に……」

 

「自業自得って言うんじゃねぇか?」

 

『スケコマシー』

 

「まぁ、そんなこんながあって―――」

 

 

 

 

 

「【崩玉】が完成したんです」

 

「何……だと………!?」

 

『すげぇ話の切り返し、閃花*1みてぇだな』

 

 

 

 

 

 

 

 

それは些細な好奇心だった、出来るか出来ないかは問題ではなかった。

 

後にこの記憶を再び振り返る事があったとして、一つの結論として添えるのであれば。

 

 

有は無を創らず、無は有を創らず。

 

無の中に有は生まれ、有の中に無は生まれる。

 

有無くして無は在らず、無なくして有は在らざる。

 

 

―――崩玉は、崩玉を作りたいという願いを受信して産まれた。

 

 

迂闊にも、対策を施したにも関わらず、崩玉の誕生は藍染サンに知られる事になる。

 

 

―――或いは、それを望んだのは一体誰だ。

 

 

それを切っ掛けにして、事態は急激に悪化していった。

 

 

隊長格を犠牲に、志波海燕サンを犠牲に、流魂街で多くを魂魄を犠牲に、もっともっと、多くの犠牲を。

 

 

――――優しかった藍染サンが、外道に堕ちた。

 

 

 

 

 

 

「崩玉は願いを叶える、それは本当なんですかね」

 

「私だって、本当にマズイと思ったし、崩玉の消滅を願わない日は無かった」

 

「だからこう考えました【崩玉は、人の思いを理解している】」

 

「生も死も同価値なら、自殺だって出来るでしょう?」

 

「だからこう考えました【崩玉は、死にたくない】のだと」

 

「だからこその封印でした、時間停止と縛道に優れたテッサイさんの協力があっての事」

 

「しかし、事態の悪化は止まらない。今思えば崩玉はすべき事を終えていた」

 

「それでも能力の行使には崩玉の()()が必要だった。私は流魂街にて逃走を続ける中で苦渋の決断をしました」

 

 

「流魂街で出会った()()()()()()()()()()()()という決断を」

 

 

「まあ、朽木サンは何故か私と会った記憶を失っていたようですが、少なくとも少し前まで見つかる事はなかった。しかし、崩玉の機能は失われていなかった」

 

「藍染サンの話を聞く限り、どうやら今の崩玉は【願いを素直に叶えていた】様子。まあ、朽木サンの境遇もあって不幸な事態となってしまったようですがね」

 

「では【過去と今の崩玉の違い】は何か」

 

「そもそも、【どうやって崩玉は願いを叶えるのか】」

 

「自分が封印される事に対して、【まるで予定調和の様に】受け入れたのか」

 

「全てに対する、答えがあるんですよ」

 

 

「その答え、崩玉とは―――――」

 

 

 

 

 

 

 

 

浦原喜助が最後の言葉を吐き出した時、黒崎一護にとってそれが何文字だったのか、あるいは何秒発言していたのかも分からなかった。

 

ハク様曰く、編集長による検閲。露骨な程にかけられたそれは浦原喜助の吐露を全て塗りつぶす。

 

 

「……そうですか、成程。()()()()()()()

 

 

自分の発言が検閲されるという事は、それが正解であったと告げるに等しい。

 

「黒崎サン、貴方は自分で思っている以上に重大な事態に巻き込まれています」

 

「……だからそれを教えてくれって」

 

「多分、次も同じく聞こえないか、私に口止めがかかるでしょう。故に、この先は貴方が自分で掴まなくちゃならない」

 

 

 

 

「探してください、世界の敵を」

 

 

 

 

*1
瞬歩に回転を加えた白哉の得意技




パラノマサイト、面白いです。

誤字報告、とても感謝しております。
今後とも評価と感想とここすきと推薦をお待ちしております

死神代行消失編いる?

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