メゾン・ド・チャンイチの裏事情 作:浅打
「私にそっくりな、ルキアという子と会ったことがあるのですか?」
「……ああ、ある」
夜の河川敷、そこには町の喧噪も届かず月の光だけが辺りを照らしている。
「―――ルキアは、ルキアとは一体どこで」
「最初に会ったのは、この町でだ。俺と俺の家族が危なくなった時に、
「――――!!」
その言葉を聞いて緋真さん――名前は後で聞いた――は急に俯いて泣き出してしまった。
どう見てもルキアと緋真さんはそっくりだ、しかし生きているのだからもしかしてルキアの一族の子孫なのか?
先祖でもあるルキアに助けられた事があって、それでルキアを知っていて、そしてルキアの危険に涙しているのか?
「あの、失礼ですが、緋真さんとルキアのご関係は……」
「……姉です、一応」
「……はぁあああああああああ!!?」
朽木ルキア、自称ピチピチの約百五十歳だ。その姉?死神でも魂魄だけの存在でもないのに?
しかし考えられる事もある、義骸だ。しかし死神ではない彼女が尸魂界との繋がりがあるのか?
あるとすれば―――浦原。悪い奴だぜ、浦原喜助……。
「またあの……ゲタ眼鏡か……」
「あの、もし……?」
黒崎一護は長男である、朽木ルキアは姉っぽくないので妹である、緋真さんは妹の姉だが黒崎一護の妹的な位置に入った。
『ん?なんかまた流れがおかしくね?』
おかしくない、正常である。
『嘘だよ!?絶対おかしいもん!!?』
朽木白哉はルキアの兄だが黒崎一護の弟的な位置に入った。
『無茶でしょそれ!?』
「そう言えば、家は何処にあるんだ?」
「いえ、家というものは……強いて言うなら
「……ここ?」
先述した通り、ここは河原である。橋の下にスペースはあるが少なくとも家ではない。
「はい、気が付いたらここに居たのでここを使っています」
「使う……」
「ハイ、以前私が住んでいた場所よりも快適なんです。水に困る事もないし、食べられる草も生えてますし」
「草……」
「水浴びは……少々躊躇いますが、深夜であれば大丈夫ですよね」
黒崎一護は激怒した、妙齢の女性がこのような生活を送っている事実に。
浦原が自分勝手に朽木ルキアを巻き込んだうえ、その姉であるこの人にこんな生活を送らせている事実に。
「あの……行くところが無いならちょっと着いてきて貰ってもいいですか?」
「構いませんが……一体どこに?」
「ええ、ちょっと、会ってほしい人が居てですね」
「喜助兄さま~♡あーん!」
「……あーん」
「夜一姉さま~♡あーーん!!」
「あーん……うむ、腕を上げたな砕蜂!!」
所変わって浦原商店では浦原喜助の胃がキリキリしていた。
自分の撒いた種ではある。知らぬ内に懐かれ、知ってなお突き放し、彼女が姉と慕う人を連れ去った。
それが復讐にでも来たのかと思えばこの態度、いっそ寒気すら覚えた。
「そ、砕蜂サーン……お仕事は大丈夫なんですかぁ?」
「問題ありません♡夜一様と私が育てた隠密機動は猟犬そのもの。監視領域に踏み込めば気付きますし、領域と領域の間には鳴子を張り、相手の一手を咎める準備はとうに整っている」
「切り替え速いっすね、空蝉かな?」
「言った傍から……来たな」
「おいゲタ眼鏡ェ!!?」
「黒崎サン!?」
自分の撒いた種の一つである黒崎一護のエントリー、事あるごとに丸め込んでいるし情報は隠しているからここまで怒られる覚えもない。はて。
「テメェ、またやったのか!?この人の扱いどうなってんだ!!?あぁ!!?」
「この人って――――え?」
黒崎サンの後ろに立っているのは朽木ルキア―――ではなく朽木白哉サンの奥方であった緋真サンだ。
「テメェ……用が無くなったらポイ捨てか?人の心とかねぇのか?」
「は?」
一体何を、そんな言葉を吐ききる事は出来なかった。筆の調べの様に滑らかに迷いの無い動きで夜一サンが私の首を絞め挙げたからだ。
「ほぉ~、人妻。そういうのもあるのか」
「もしや朽木ルキアにちょっかいをかけていたのは……緋真様に心残りが?」
「チギャウ……チギャウ……」
最早収拾はつかない、というか話を聞いてくれない。
そんな薄れゆく意識の中、視界の端でハク様が腹を抱えて笑っているのが見えた。
『ギャハハハハハ!!ヒッヒーwwwww!』
――――おのれ、藍染。
「え、一護。お前また女の人連れて来たのか?」
「ちょっと待てヒゲ親父、いつも俺が女口説いてるヤバい男みたいじゃねぇか!?」
「御免なさい、私には愛する夫が居るんです……」
「最低だよ兄貴、人妻じゃん!?」
「最低!お兄ちゃんは他人の事なんてどうでもいいんだ!!」
「ヤメロォ!」
「でも、妹だけは!ルキアだけは……!!」
「悪ノリもヤメロォ!!!」
地獄の様相を示した浦原商店に緋真さんを置いておく訳にもいかず、自宅に連れ帰った黒崎一護を待っていたのはまた地獄だった。
このままでは、俺の方が河川敷送りになる可能性の方が高い。
何か、何かないのか。
『俺に任せろ!』
何か、何かないのか。
『無かったことにすんな!!』
黒崎一護に残された最後の手段、たった一つの勇気の一歩。
「……兄貴」
「……お兄ちゃん」
「一護、お前……」
土下座である。
「俺の話も聞いてくれませんかねぇ!!!!?」
しかも土下座のまま黒崎一護はキレた。
二度目は無いからね!と念押しされて仮釈放を受けた黒崎一護は緋真を自身の部屋に招待した。
「仲の良い家族ですね」
「危うく一気に仲が悪くなりそうだったけどな」
部屋の隅に座ろうとする緋真さんに椅子を差し出して一護はベッドに腰掛ける。
「それで、アンタ」
「はい」
「この先、どうするつもりだった」
庇護もなく、戸籍も居場所もない女性がただあの場所で生きていくのは不可能だ。いずれ限界がくる。
「私、もう死んでいるんです」
「実体があるじゃねぇか」
「そうではなく、いえ、それも含めてなのですが」
既に死んでいる、それが意味する事をなんとなく察してしまう。
ルキアは死神だが生きている、そして緋真さんがルキアの姉なら恐らく生きていたのは尸魂界。
それが現世に現れるなんて珍しいことなんだろう。
「魂魄が死ねば輪廻すると伝わっています、しかしそれは霊子に分解された後で記憶も姿が残る事もないと」
「ですが、私は死んだはずなのにここにいる。記憶も姿もそのままに」
「もしかして、あんた」
「もしも帰れるのなら、もう一度お会いできたなら。そう思うと離れる事は出来ませんでした」
「あんな場所じゃなくても、良かったんじゃねぇのか」
「私はあの場所で目覚めました、そしてあの場所が尸魂界に繋がっている事も感じていた」
黒崎一護の記憶を撫でる言葉、思念珠、そして尸魂界と現世を繋ぐ叫谷。
「それって―――」
「お兄ちゃん!そろそろ夜も遅いんだから!緋真さんを寝かせてあげてよ!」
遊子の声に遮られて追及はいったんお開きになった。
「一護、起きて」
「何だよ……朝から、緋真さん……?」
「へぇ、一護は朝起きる時に違う女の名前を呼ぶんだ」
「――――はぁ!!?」
黒崎一護は急速に意識を浮上させた、飛び起きるとそこには制服を着こんだ茜雫が立っていた。
「ひっひっひ~、約束でしょ、会いに来たよ!」
「お前!なんでここに――――」
「お兄ちゃん!緋真さんが!緋真さんが居なく―――」
瞬間、無言、危険、察知。
「違う!今度も違う!!」
「茜雫ちゃんでーす!遊びに来ちゃいました!」
「お兄ちゃんが、また新しい女の人を連れ込んでる―――!!!!?」
『ギャハハハハハ!!ヒッヒーwwwww!』
――――おのれ、藍染。
俺、パパになった。(プラグマタ終了)
誤字報告、とても感謝しております。
今後とも評価と感想とここすきと推薦をお待ちしております
死神代行消失編いる?
-
いる
-
いらない
-
どっちでもいい