メゾン・ド・チャンイチの裏事情   作:浅打

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花いちもんめ

君は暖かくて 私の喉が渇く

 

君は輝いて 私の影を曝け出す

 

君の眦を撫でてみたい それだけは私に許してくれる?

 

そうしたらもう 何もいらないよ

 

 

 

 

 

 

 

「何でアンタ達が、ここに居るんだよ」

 

黒崎一護に負けず劣らずのおせっかいを見せる茜雫を追って辿り着いた神社の境内には、見知った顔がいくつも並んでいた。

 

浮竹十四郎、砕蜂、朽木ルキア、阿散井恋次、雛森桃。

 

そして彼らの後ろに並ぶは尸魂界の暗部、隠密機動の隊士達。

 

「一護、そこにいる死神の名は尸魂界の記録には残されては居なかった」

 

「そしてその死神が持つ斬魄刀はかつて、断界にて本来の持ち主が拘突に飲み込まれて失われたもの」

 

「本来存在しない死神と、本来存在しない斬魄刀、そして―――」

 

「いきなり来て、いきなり何よ!私は死神、そんな事言われる謂れは無いわ!」

 

「それじゃあ、お前は何処の部隊の所属だ?いつ死神になった」

 

「それは!それは……」

 

少女の内を巡る記憶が、なけなしの整合性を合わせようとしても消しきれない矛盾が痛みとなって苛む。

 

「待てよ、いきなり来てその態度はなんだ」

 

「黒崎さん!……今は、話を聞いてください」

 

雛森の声に押しとどめられて、一度握った拳を緩める。

 

「―――本来存在する筈の記憶もないとなれば、確実だ。黒崎一護、そいつが思念珠だ」

 

「思念珠、茜零が?」

 

「そうだ、そして尸魂界は思念珠の確保を決定した。故に―――思念珠・茜雫。お前を拘束する!!」

 

各々が構えを取り、鞘を握る指が鯉口を切る。

 

現世に赴く際にその能力を抑えられているとはいえ、一度戦闘に踏み切れば破壊の暴力となるだろう。

 

「おい、ルキア、恋次。―――これは一体どういう事だ?」

 

「何?」

 

「テメェ達は、不当で理不尽な目に遭って。今度はこれか?」

 

肉体とは魂魄を縛る枷、見えて聞こえて触れたとしても脅威ではない。

 

それなのに、黒崎一護から溢れるこの力は、踏込みを止める圧はなんだ。

 

「どいつもこいつも寄って集ってあーだこーだと偉そうだな、オイ」

 

「茜雫には指一本触れさせねぇ、誰か一人でも動けばこっちも抜くぜ」

 

「そうか、ならばお前も敵だ」

 

隠密機動が一斉に飛び掛かる、その-0.24秒前には既に動き始めていた。

 

黒崎一護が持つ、己の肉体から魂魄を引き離す為のアイテムは既に手元にある。

 

―――その名を、【義魂丸】。

 

「―――全く、お前ってホントにセンスねぇよな」

 

最低限の動きで肩を後ろに巻き込み、肩甲骨が真下に撃鉄を落とす。

 

圧縮された広背筋が脊柱を捻り、蹴り足を引き付ける腸腰筋から生まれる蹴りの一撃。

 

その一撃が隠密機動の体に当たっただけで戦闘能力を削り取る強烈な一撃。

 

「何で姉さんが相手側に居る時に俺を呼ぶかなぁ!!?」

 

義魂丸にインストールされていた改造魂魄、コンが黒崎一護の体を使って暴れていた。

 

「茜雫が何者であれ、生きてるんだ。お前、見て見ぬフリをする気か?」

 

「んな訳ねぇだろ」

 

倒れ伏した隠密機動の背を踏みつけて、死神達に向けて絞った眼で語りを入れる。

 

「命は蔑ろにされるもんじゃない。生きているなら、生きていたいなら、俺は手を貸すぜ」

 

「上等だ。つー訳で、茜雫は渡せねぇ」

 

「この人数を相手に、よく言えたものだ」

 

「自慢じゃねぇが、これでも一度は尸魂界に喧嘩売った身でね」

 

境内に徐々に満ちていく霊圧同士がぶつかり、絹を裂くような、金属同士が擦れる様な音が響きだす。

 

「一護、止めてよ……危ない事しないで!私が行けばいいんだから!」

 

「何もしなかったら、俺が後悔するんだよ」

 

「でも……だけど!」

 

「ハイハーイ、それじゃあ離れますよぉ」

 

「ちょっと!?」

 

コンが茜雫を抱え、遂に戦いの火蓋が切り落とされようとしている。

 

死神代行と尸魂界の死神が遂に刃を交えんとした時にそれは起こった。

 

 

 

 

「――――ハッハァ!!!」

 

 

 

 

神社の上空より飛来する幾つもの影、そして奇襲――――!!

 

「吠えろ――【蛇尾丸】!!」

 

「舞え―――【袖白雪】!!」

 

しかし死神達はその奇襲を当たり前の様に動いた、迫りくる幾つもの鋼鉄の触手が蛇尾丸によって薙ぎ払われる。

 

「お前と思念珠が出会った日、先日の墓地での一件、そしてそれ以降も監視を続けていた」

 

「お前から思念珠を奪おうとしていた連中は、いつもお前を見張っていた」

 

巨躯の男に一歩も引かずに強烈は白打を打ち込みながら砕蜂は語り掛ける。

 

「思念珠が尸魂界に連行ともなれば、姿の一つも見せるだろうと思ってみたが、なんの捻りもない奇襲とは思わなんだ!!」

 

「しかもあの装い、かつて尸魂界を追放された貴族の家紋。龍堂寺家のものだ」

 

見た目にそぐわぬその知識を披露しながら浮竹も迎撃に参加する。

 

「これで敵もハッキリした、二度とこのような事の無い様に見せしめとする!!」

 

尸魂界においても上澄みの実力者である死神によって五人の不審者が制圧された、しかしそこに音も温度もない風が吹き込んでくる。

 

「これは……欠魂(ブランク)か、思念珠に吸い寄せられてきたのか?」

 

「―――これは?」

 

群がる様に、埋め尽くすように境内に欠魂が集まっていく。

 

そして突然、誰も反応出来る筈もなく―――、それは一斉に弾けた。

 

境内に吹き荒れる爆発の衝撃と高熱、一瞬の変化を逃さず防げた者もいたが致命的な隙を産んだ。

 

 

 

 

「あああああああああああああ!!あああああああああああああああああ!!!!?」

 

 

 

 

「茜雫!?」

 

「痛いだろう、辛いだろう。私には分かる、好きなだけ叫ぶがいい」

 

銀髪と顔に疵のある男、茜雫と黒崎一護が初めてであった時にも姿を見せていた男。

 

「テメェ、何者だ!茜雫に何をしやがった!!」

 

「ふむ、何者と言われて応えられるような者でもない」

 

血が出るのではないかと思う程に頭を掻く茜雫は、己が男に捕まっている事すら理解できていないだろう。

 

「記憶が消えても体は無くならないが、体が無くなれば記憶というのは消えてゆくもの」

 

「百年や千年かけて変わっていく岩や山も、一瞬で変わるとすれば凄まじい力によるだろう」

 

「記憶の集合体であるこの少女の記憶が消し飛ぶというのは、体そのものが引きちぎられるようなものだ」

 

「テメェがやったのか!」

 

「そうだ、彼女の存在が必要だったのでね」

 

いつの間にか部下と思わしき連中も無傷となって舞い戻り、形勢は再び悪化の一途をたどる。

 

「我々はかつて尸魂界を追われ、名を失い、そして義によって舞い戻った者」

 

「無名かつ無明なるもの、我らは闇の一族―――ダーク・ワン」

 

『✟ダーク・ワン✟』

 

「取り返したくば、来るがいい。しかしこの野望、簡単に止められると思うな」

 

「ふざけんな!!刀剣解放―――【天鎖斬月】!!!」

 

己の斬魄刀に封じられていた真なる力、速度と膂力に割り振られた力が盈月の抑えもなく解き放たれる。

 

下段かつ後ろに天鎖斬月を流しながら、恐るべき速度で敵の首魁の下へと一直線に踏み込んでいく。

 

アイツが攻撃する前にケリをつける、そのまま制空圏に踏込んだ黒崎一護が見たのは。

 

自分の下へと投げ出された、茜雫の姿。

 

油断と、混乱と、迷いと、そして攻撃を封じられた。

 

そして茜雫の後ろに立つ男が、茜雫の斬魄刀を強く前に突き出す。

 

「――――ガァ!!?」

 

「……え?」

 

茜雫を抱きかかえ、そのまま護る為に背を向けた黒崎一護に深く斬魄刀が突き刺さる。

 

「そんなにその少女が大切か」

 

「がぁアアアアアアアアア!!?」

 

「一護!??」

 

仰向けに倒れた茜雫を身を挺して庇う為、四つん這いのまま動けない黒崎一護の背に何度も何度も斬魄刀が突き刺さる。

 

黒崎一護の死覇装が徐々に血で湿っていく、叫ぶ声が掠れて、吐いた血の生暖かさを頬で感じる。

 

「もう止めて!もう逃げないから!だからもうこれ以上は―――!!」

 

「いや、もう少し続けよう」

 

「何で!何でこんな……!!」

 

「いずれ消えるであろう君も、よく覚えておくがいい」

 

 

 

 

 

 

「死んでしまえば、記憶と共に消えるしかないのだから」

 

「嫌ぁあああああああああああああああ!!!!!?」

 

 

 

 

 

 

徐々に黒崎一護の体から力が抜けていくのが分かる、頭が静かに降りて来る。

 

何かを探す様に手が動いて、茜雫の髪に触れると頭を包む様に抱きしめた。

 

護りたい少女の姿を確かめ、目の前の光景を見せないように、惨劇の音が届かないように。

 

最早呻く声すら出なくなった頃、黒崎一護は蹴り飛ばしてどけられた。

 

「いい顔だ、思念珠」

 

「……」

 

「もうこの世に後悔はないだろう?消えてしまいたい、そんな顔をしているよ」

 

髪を掴まれ引き上げられると髪を纏めていたリボンが解けて落ちる、それは血だまりの赤より映えている。

 

黒崎一護に残されたのは、それだけだった。

 

 




電車アタックの発売を待っている。

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死神代行消失編いる?

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