しばらく黙り込んで考えていた彼もやがて、了承してくれた
もし彼が、手がかりなら
もし彼が僕の知人なら……
逃す訳にはいかない
「こんなところで何をやっている?ルナ」
突然聞こえてきた声に思わず肩を震わせる
ルナーーその名前はある組織の手伝いをするときに使う名前
その上、その名を呼んだ声はその頭
「クロロ……」
僕が手伝いをした組織、即ち幻影旅団
その頭が僕に話しかけるのは仕事以外ではありえなかった
元々僕は旅団の正式な団員ではない
そのため必要以上にクロロと話すことはなかった
なのにその彼が僕に話しかけてきた
一体何が目的……?
「今は契約期間外のはずだよ。僕がどこで仕事を探そうと勝手でしょ」
まぁ、蜘蛛の手伝いは報酬がはずむから嫌いじゃないけどね
嫌いじゃないんだけどね、まずは自分ちも関係のあるこの依頼を受けたい
「まぁ、ルナはそうだろうね。だが、そっちの君は俺を見逃すわけないだろう?」
そう言って冷ややかに彼を見据えるクロロ
そしてそれに過剰な反応をしている
明らかに初対面ではない
「今の内に片方だけでも摘んでおくかな」
「クロロ=ルシルフル……!」
あまりに突然の緊迫した状況
その上情報が少なすぎる
下手に動けば僕がやられるだろう
なのに彼は怯むどころか楽しそうにクロロを睨み返している
その度胸は大したものだ
「クロロ、今は彼が僕の依頼主だ。仕事仲間のよしみで今は彼から手を引いて欲しい」
当然、クロロが簡単に引くとは思っていない
それでもクロロとはそれなりに付き合いもある
扱いだって心得ているつもりだ
「……いいだろう」
「え……?」
あまりにあっさりと手を引くというクロロ
何かおかしい
クロロが自分の利益のないことはしないだろう
何故……?
「その代わり、彼の次は俺の依頼を受けてもらう」
ーーなんだ、そんなことか
ホッとしたのも束の間
次の言葉で全てを理解した
「依頼内容はそうだな…キルア=ゾルディックとゴン=フリークスの暗殺依頼…でどうだ?」
キルア=ゾルディック……
ゴン=フリークス……
妙にその名前が木霊する
どこかに引っかかりを感じる
いや、そもそも僕はその名前をどこで聞いた?
わからない
わからないけど、一つ分かる
ーーその2人は殺したくない
「その条件をのむなら今は手を出さない」
今『は』?
つまり、後には手を出すと?
「は?結局、こいつに俺らを売れって言ってんのかよ」
「そうなるな。今ここで見捨てるか、後で俺の依頼で殺すか」
なに……?
どういうことだ?
つまり、彼がーーキルア=ゾルディック
なら、やっぱり僕の記憶の鍵は彼が持っている……!