間違いなく僕は彼と関係がある
それならーー
「それなら……どっちも断る」
これは自分のため
僕の記憶を探すための拒否だ
彼のためではない
「生憎、僕にも彼は重要な人物らしいんでね。悪いけど、それなら契約は破棄させてもらう」
クロロは少し考えるようにして僕と彼を交互に見比べる
本当は逃げたくて仕方がない
身体の全細胞が逃げろと警報を鳴らしている
ここにいればやられる、と
それでも僕はここに留まる必要がある
依頼主を放り出すわけにはいかないからね
「……パクノダの話は本当だったようだな」
不意に何かの予想が当たったようなことを言い出した
何の話が本当だったのか、僕には皆目見当もつかないけど
「お前はずっとそこのキルア=ゾルディックを探していたんだろう?」
何故、僕にもよく分からないことを彼が……クロロが知っている?
その上、僕がこう出ることを分かっていたように全く動じない
「……いいだろう。契約は打ち切りだ。そしてお前は今から、俺達の敵だ」
“敵”……
それはどこで殺されてもおかしくない、どこで殺されるかも分からない
僕は自ら茨の道を進み始めたのか
たかが記憶の為に……
「……分かった。今までありがとね、クロロ。蜘蛛の仕事も結構楽しかったよ」
クロロが最も嫌がりそうな言葉をぶつける
せめてもの反撃のつもりだ
力では到底敵わないクロロへの、小さな反撃
クロロは呆れたような、疲れたような表情でため息をつき、踵を返した
その姿が見えなくなった瞬間、僕の身体からは全ての力が抜けた
情けないことにその場にへたり込んでしまった
「おい、大丈夫かよ」
「あぁ……うん、大丈夫」
スッと差し出された手を借り、なんとか立ち上がる
「言いたいことは山ほどあるんだけど……一つ確認。アンタ、女だろ」
確かに僕も言いたいことはたくさんある
謝ることも、確かめたいことも、知りたいことも……
「そう…だね。僕は女だ、一応ね」
まぁ、僕には男女の概念はないんだけどね
けど彼ーーキルア=ゾルディックが僕を知ってる可能性があるなら答えないのは得策ではない
「……オーケー、とりあえず俺らの宿に行こうぜ」
俺ら……か
普通に考えればその相方がゴン=フリークスだろう
「ゴン……俺の友達も、お前をあいつと間違えるかもしれないけど、気を悪くしないでくれよ」
それきり、僕も彼も口を開かなかった
互いに話したいことはたくさんあるのに、まだだと感じたのだ
一歩一歩が段々と重く、早くなっていく
きっと知らないうちに期待してしまっているんだと思う
「ここだ」
宿に着いた頃にはもう、初めてこれ以上ないくらい緊張していた
ここで僕の記憶を見つけられる