少し古びた民宿だが、変に目立たなくて逆に都合がいい
雰囲気自体も悪くはない
軋む階段を上り、奥の部屋へと進む
奥から2番目の少し広めの部屋の前で立ち止まる
襖を開けると待ち兼ねていたように黒髪の少年が駆け込んできた
「キルア!連絡がないから心配したよ!」
「悪りぃ、ちょっと色々あってな」
僕は少し身体を動かして部屋の中を覗く
畳と障子が落ち着いた雰囲気を醸し出している
その上日当たりがいいのか、明るい
「リア……?」
いつの間にか黒髪の少年は目を見開き、僕をじっと見ていた
「僕はオリ=ディファノ」
なるほど
そういえばさっき、言ってたな
間違えるかもしれないって……
確かに、いい気はしないな
「ゴン、こいつはリアじゃない」
悪かったね、と少し心の中で毒づく
あまりにも彼が極端に落胆したのだから、そう思って当然だろう
「……けどアンタ、俺に偽名を使ったよな」
「あぁ、仕事上ついね」
「アンタ、何者なわけ?」
聞かれると思ってた
けど、残念なことにそれを聞きたいのは僕の方
僕が一番それを知りたいんだ
「君たちの知ってる僕のそっくりさんについて教えてよ」
質問に答えず、その上全く脈絡のない質問を投げかける
流石に彼らも訝しげに眉をひそめる
「俺らが質問してるんだけど」
「分からないことは答えられない」
「はぁ?何言ってーー!」
「僕は僕の記憶がない。だから君たちの質問には答えられない」
ハッと息を飲むのが分かる
動揺と発言の後悔、そして僅かな期待
「もしかしたら君たちの探してるのが僕かもしれない」
2人はしばらく顔を見合わせて何か考えていたようだが、決めたように頷いた
それは多分、ある程度話そうという合図
「リアは……オレ達の仲間なんだ。リアはキルアとオレを助けるために姿を消した」
「てっきり殺されたと思ってたから、アンタを見たとき目を疑ったよ」
2人が代わる代わる話してくれる
どうやら相当大事な仲間だったようだ
そして、凄く仲間想いだったんだろうなということが窺える
「もし、君がリアなら…またオレ達と一緒に行こう?」
「なら、って……僕にもそれは分からないよ。けど、どうせ暇だしね。」
今はキルアが僕の依頼主だ
ならその仲間のゴンにも手を貸すのが当然だろう
信用できるかは置いておいて、だが
そして、今後クロロとどうなるかも置いておく
あくまで僕はクロロとは一定期間の契約なのだから……
けど気にかかることがある
クロロは僅かな期間の契約しかないが、お得意様でもある
僕個人としてもクロロの性格は嫌いじゃない
なのに何故……
さっき契約を交わしたばかりのキルアを優先しようとしているのか……