【人外モノ】百足の神獣と闇落ちエルフの姫   作:流されそうめん

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(ペン)は剣よりも強し──────もし貴方が権力者ならば


より良い地獄の選び方

‡ハイエルフの女帝 ハイジレア

 正直に言ってしまえば、ヒューマン上がりの瘴気順応者を私はハイエルフとしては認めてはいません。

 ですが魔力に関して言えば通常種の下位エルフを凌ぎ、持ち主から離れた後も残り、第三者によっても仲間を増やせる硝子の羽。

 有益であることは認めます。

 魔力さえあれば、自己遺伝子改変と胎児遺伝的改変の果てに、魔力以外の部分においても改善されて、何れはマトモなハイエルフに近付きもするでしょう。

 

 ですが、猿が何れ進化して人間になると言われても、猿の段階で対等な人類として扱う者は頭がおかしいとしか思えません。

 賢く仕事を手伝ってくれる猿を可愛がる事は理解しても、猿と対等であったり、剰え猿と子孫を残そうとする人間には理解が出来ません。

 今回死んだヒューマン上がりも、名前を付けた覚えも、元から名前があったかも興味はありませんでしたし、今後思い出すことも無いでしょう。

 

 とはいえ、ヒューマン上がりのハイエルフを増やす意味はあります。

 本当の本当に特別な存在にはなれないとしても、特別な存在の仲間入りをしたいという自尊心を持つヒューマンは多いですから。

 ハイエルフにしてあげるという条件の元、此方の側として動かす事は無きにしもあらず、といったところです。

 失敗したら死ぬでしょうが、話を持ち掛ける相手をヒューマンの王族に限ってしまえば、それなりの確率では成功するかもしれません。

 実体羽のハイエルフは、不実体翅のハイエルフよりも必要な素材の魔力は少ないようですから。

 具体的には、ヒューマン上がりのハイエルフを作るには、ヒューマンの上澄みであれば半分の確率で成功します。

 ヒューマン共の事ですから、上級人類(私達)に認めて貰えた自分達も、これで上級人類だと舞い上がっている事でしょう。

 ですが、上級人類になれたと思っている、中級人類(賢く便利な猿)という事は、切り捨てる時まで黙っているとしましょう。

 

 さて、これまでの歴史のカースト制度とは、民族や容姿などの『目で見て判る』もので構成されていました。

 建前としては、『徳』だとか『神による祝福』だとか言われてはきましたが、魔力の少ない多くのヒューマンには、目で見て判る部分で判断する以外には、即座に他者を見分ける事など出来ません。

 

 故に不明確な『何か』ではなく、明確な要素によって、カースト制度は施行されていたのです。

 目で見て直ぐに判るものなんて、敢えて語るまでもありません。

 ですが、それはヒューマン特有の間違った判別の方法ではありません。

 ええ、そうです。

 不実体の翅を持つ者(エルフの中でも選ばれた者)のみが、新たな世界に生き残る価値がある人類です。

 

 側近のシリィことセシリアと共に、エルフ上がりの(マトモな)ハイエルフが()えれば良いと話し合いますが、こればかりは、神獣様(王子様)からの授かりものですので…。

 次に、デスプリンドラ様が高濃度の魔力を散布する時には、なるべく多くのエルフを集めたいものです。

 

 当初は、私達の不実態の翅に当て続けて、ハイエルフによるエルフのハイエルフ化を狙う事も考えていましたが、デスプリンドラ様から魔力(瘴気)を与えられたオリジナルと比べて、成果が微妙でしたので、暫くは様子を見ることにしました。

 

 私の姉妹は全てハイエルフ化に成功しましたので、元の個体の能力と進化の適正には関連性があるのは間違いなさそうです。

 ヒューマンで実験した時にも、似非ハイエルフに成れたのは、どれも魔力がヒューマンの中では上澄みにある個体ばかりでしたから。

 また、進化した後も個体差は大きいみたいですね。

 試しに、シリィや数人のハイエルフにヴォルクリスタの温水洞穴の底まで泳がせた所、かなりの数が蝕まれて帰ってきましたから。

 接木のハイエルフなどは、帰っても来ませんでした。

 ヴォルクリスタの魔力は、全てのエルフを受け容れる訳ではありません。

 優れたエルフだけをハイエルフとして受け容れるのです。

 これはとても素晴らしい事です。

 

 私はハイエルフになって以来、常々考えていました。

 エルフであれば誰もが優れている訳ではない。

 これはエルフという種にとって、恥ずべき事だと。

 勿論、ヒューマンと比べれば優れてはいますが、比べても自慢にもなりません。

 ならば劣ったエルフが全て滅びれば、生き残った全てのエルフが優秀だと言えるのではないでしょうか?

 弱い者を弱いままでも生きていける様にしてしまえば、その集団は強くなれないのです。

 エルフは福祉を捨てて強くなり、ヒューマンは福祉を求めて停滞しました。

 そうして差が開き、遂には別種族となったのです。

 折角ヴォルクリスタという、魔力が高くなければ生存も順応も出来ない正当な淘汰圧を頂けたのですから、淘汰に耐えられない弱い者を助けようとする全てを挫きましょう。

 全てのエルフは、ハイエルフになれるかどうかの選別を受けるべきなのです。

 魔力は生まれてから死ぬまで殆ど変化しません。

 故にこの試験は、赤子から老人まで全ての者が受けられる素敵な試験なのです。

 

 私は格下であるヒューマン如きがエルフを屠り辱めた過去は許しませんが、上位者であるデスプリンドラ様の領土が私達を選別するのならば、喜んで受け入れましょう。

 

 ですから、エルフの全体数が減ったとしても、ハイエルフが増えて欲しいのです。

 

 

 第一世代のハイエルフの能力は、エルフは勿論のこと、第一世代が翅を当て続ける事による進化をした、『接木のハイエルフ(セミハイエルフ)よりも優れてはいるので、私達の翅でセミハイエルフを増やした所で、王族や上級貴族の優位性も変わりません。

 …もし、エルフの全てがセミハイエルフではなく、ハイエルフに変わったとしても、そのハイエルフの中でも優秀な遺伝子を持っている自覚がありますので、優位が崩れる事にはならないでしょう。

 一般的なエルフの時点で、ヒューマンが抱える汎ゆる先天的な遺伝子疾患とは無縁ですが、私達王族はハイエルフになる前から、エルフの中でも特別に高い能力を持っていました。

 それもあって、私はエルフの民がハイエルフになる事へのデメリットは全く感じていないのです。

 

 

 

 

 私とシリィは、現在植物の研究をしています。

 私達エルフは、嘗ては樹上にて生活しておりました。

 ヴォルクリスタに住むことを決めてから、優先順位は落ちましたが、完全に未練が消えたといえば嘘になります。

 仕方ないと諦めてはいたのですが、シリィが偶然にもアイルマインスールの幼苗が、ヴォルクリスタの淵で生えているのを見付けたのです。

 もしかすると、全世界ヴォルクリスタ後(新世界)では諦めていた、樹木の目処が立ったのかも知れません。

 

 アイルマインスールとは、ユグドラシル系クリフォト属の世界樹の一種で、発芽した際に与えられた魔力によって、大きく姿と特性を変える植物です。

 世界樹の一種としては、極めて小さいのですが、このアイルマインスールに密着して、新たなアイルマインスールの種が発芽し、そして上に芽吹いた苗木は、土台となった同種の木と融合する、極めて変わった特性の木です。

 普通の木は、幹と葉は明確に分かれていますが、この木は幹と葉が交互に折り重なる構造に育ちます。

 強度が低いために、縦軸ではなく横軸を中心に成育していく種です。

 

 

 当初は枯れかけていましたが、他の苗木はとっくに枯れ果てた後であったので、私達はこの苗木は瘴気に強い耐性があると見込みました。

 現在我らが王は地下深くで眠られているので、その真上にあり、障気によってヒューマンでは住めなくなったアクアヴィータを我等の国とします。

 

 折角ですので、此処でアイルマインスールを育てましょう。

 世界が全てヴォルクリスタとなれば、そうなったとしても適応する生物が徐々に増えていくでしょう。

 ですが、貧困層に儲け話が来る前に、富裕層の中で利益が出る話は独占されて、次に富裕層に選ばれた僅か一部の中流層にも与えられた、最後には吸い尽くされた旨味の無い話ばかりが貧困層に来る様に、このアイルマインスールには、私達という富裕層に選ばれたものとして、先駆けて貰いましょう。

 王子様(支配層)の選んだハイエルフ(富裕層)が存在して、ハイエルフ(富裕層)に選ばれた生かす価値のあるもの(中流層)が存在出来る。

 それが在るべき秩序でしょう。

 残される価値が無い者共の意見など聞く必要はありません。

 ステータスを示す物を買えぬ者に限って、ステータスはコストパフォーマンスが悪い無駄なものだと声高に叫ぶのと同じで、聞く価値のない雑音ですから。

 

 

 さて、滅んだ後の世界(新たな世界)においても、植物があることは良い事です。

 我々エルフは、世界に自然が残されるのなら、人類全体が資源を享受しなくても構わないと考えていました。

 エルフよりは自然を優先する必要はありませんが、ヒューマンやゴブリンが経済活動を行う為に自然破壊を行う事には、憤りを感じていました。

 世界全てがヴォルクリスタに変われば、その時にはヒューマンもゴブリンも消え去るのですが、万が一生き残った場合には、ヴォルクリスタ環境下でも生きられる植物が狙われる可能性はあります。

 

 王子様に早く目覚めて貰いたい。

 あの御方が眠られてから、少なくとも十月が経った。

 流れる水に逆らって、源泉へと潜ったところ、あの御方は生きていました。

 ただ、眠りを貪っていたのです。

 

 その姿は一回り大きくなり、その輝きは更に増しておりました。

 私はそのまま周囲の魔力の流れを感じ、理解しました。

 デスプリンドラ様は、羽化をしようとしていると。

 

 羽化とは例えですが、少なくとも百足ですので脱皮はするはずです。

 デスプリンドラが意識して造られたかどうかは分かりませんが、周囲の魔力の流れは、中央に魔力を集約させて押し込み続ける作用を生んでおりました。

 

 即ち、デスプリンドラ様自身の魔力を洩らす事なく集約させて、自身の魔力により高圧化させるのです。

 

 あと十日もすれば覚醒めそうです。

 表面の鱗皮が少しずつ罅割れていく様から、その時が近いのが分かります。

 

 私達がやっとハイエルフになれたと思えば、デスプリンドラ様は更に上の位階へと昇られるとは、素晴らしいです。

 

 

 …ですから、眠れる泉の美獣を滅し、アクアヴィータを奪い返そうとする、ヒューマン達には邪魔はさせません。

 

 

 

 例の連中が、宗教魔法で天使の武具を創り出しているようですが、問題はありません。

 

 

 こちらにも切り札はあるのです。

 多く見積もって残り十日。

 私の王子様が再誕します。

 

 そこまで耐えられれば(ハイエルフ)達の勝ちは揺るがないでしょう。

 必ず、ヒューマンを滅ぼして見せます。

 

 

 

 

 

 

 

 

†カベナマリオの研究家 サヨキョサン・カクメキッチ

 神話の怪物の如き大百足は当然として、世界には悍ましい生物がいる。

 例えば、悪意の塊の様な支配者気取りのハイエルフ。

 ヒューマンよりも賢く、ヒューマンよりも強く、ヒューマンよりも美しい存在。

 ああ、なんて狡いんだ。

 不公平で許せない。

 

 親の財産や環境の差もあるが、その中で最も大きな財産は遺伝的な才能。

 同じ教育や訓練や研修を受けたとしても、得られる成果も違う。

 存在するだけで、ヒューマンはエルフの下位互換であると証明する悪魔のような人種。

 

 しかし、私は見付けたのだ。

 静かに潜む、ハイエルフよりも恐ろしき存在を。

 これを見付けた私はこの国の英雄として、銅像を建てられるべきだ!!

 

 私の信念の中では、エルフの存在こそが大百足よりも危険で滅ぼすべきものだが、私とて信念よりも自分の命の方が大事だ。

 他人の命と己の信念であれば後者を優先するが、己を含めた全カベナマリオ人の命ならば、やはり優先しなければならないのは命なのだ。

 

 それは、偶然に川を流れてきた。

 簡単に捕まえられたそれを、私はそのまま持ち帰った。

 人を殺せる膂力も魔力も無く、鋭い牙も知能も無い、叩けば砕け、陸に揚げれば数日後に死ぬ魚『珊瑚魚』。

 話だけは聞いた事があったが、見たのは初めてだった。

 しかし、翌日同じ場所に行くと、一匹ではなく、何匹も珊瑚魚が泳いでいた。

 それらも持ち帰った。

 

 この生物の恐ろしさは、真水にも塩水にも硫黄水にも熱湯にも冷水にも住めて、ちょっとした泥水の中にさえ棲息することが出来ること。

 そして、この魚の鱗は時に水に溶けて、時に卵となり幼魚へと孵る。

 何よりも最も恐ろしい事は、ほんの僅かにではあるが、溶けた鱗はヴォルクリスタの熱湯の成分へと水質を近付ける効果があることだ。

 それが判明したのは、珊瑚魚を飼って数週間後の事だった。

 

 その日は珊瑚魚の鱗から幼魚が孵るのを、初めて確認した日であった。

 珊瑚魚の水槽が僅かに濁りつつあったので、助手に水を替えさせたところ、助手は指の痛みを訴えた。

 確認すると、水に触れた助手の指の表面が溶けていた。

 

 最初に珊瑚魚を飼っていた水槽の水は、近所の川から汲んだものだった。

 しかし、今ではヴォルクリスタの熱泉に近付いた成分へと変わってしまった。

 その事実に気が付いた時、私は発狂してしまった。

 思わず珊瑚魚を幼魚共々水槽から出して、ハンマーを叩き付けて殺してしまった。

 

 こいつらは魔王の尖兵。

 何も考える知能がなくても、存在そのものが邪悪。

 生きているだけで自然環境を破壊する。

 私は激怒した。

 許してはおけぬ。許してはおけぬ。

 

「全ての珊瑚魚を絶滅させなければならない!!

何処から来ているかを探し出して絶滅させなければならない!!

ほら助手ッ!! 何をボサッとしている!!

連王様に伝えにいけっ!!」

 

 

 その後、連王から呼び付けられ、事情の説明を求められた後に、連王の命令で珊瑚魚駆除隊が組まれた。

 私が、そう私が連王国の駆除隊を動かしたのだ。

 私の書状が兵士達を動かしたのだ!!

 権力者のペンは、剣よりも強しだ。

 ははははは。

 

 私が当初珊瑚魚を発見した川からは、何匹どころか六十を超える珊瑚魚がいた。

 信じられないのは、一度川全てを浚った後からも、珊瑚魚が発見されたという伝聞である。

 

 最初にしっかりと駆除仕切れていなかったのであれば、まだ良い。

 確認不足で()を見逃していたのも、大いにあり得る話だ。

 最悪なのは、無から珊瑚魚が発生した場合だ。

 珊瑚()とは呼んでいるが、そもそも魚どころか生物かどうかも怪しい。

 魚のように泳ぐ鉱物だと言われても、納得出来てしまうのだ。

 

 もし、動く鉱物であった場合、成分が地下水から滲み出ただけで、発生している可能性もある。

 これまではあの川において、そのようなことは決してなかったが、地下水が変質しているのだとすれば、遥か地下深くに水質を珊瑚魚と同じ成分(ヴォルクリスタ)に近付けているものがあるはずだ。

 

 こうなれば、私には一つしかその原因は思い浮かばない。

 神話の大百足(魔王)だ!!

 魔王が地下深くから領土を拡げつつあるのだ!!

 

 土地の奥底そのものが汚染されつつあるとすれば、あの付近の農業地域から取れる作物も信用できない。

 しかし、瘴気に汚染されていると主張すれば、あの地域の農作物は一切売れなくなる。

 このことは、知識層階級だけで知らしめておかねば…。

 

 代わりの農作物をどうするか?

 現在近隣の農業国アンダーウケに買い付けに行かせているが、アンダーウケ迄のモトキャッチ街道は最近危険生物が増えてきた。

 

 そうだ。

 アンダーウケ側から売りに来させよう。

 奴等は所詮カベナマリオ連合の枠に入れなかった弱小国。

 七国が五枠を競った結果、負け落ちた無能国。

 昔から災害で出向けない時には、向こうから配達させることもあったのだし、今後は恒常的にそうすれば良い。

 仕入れルートをしっかり作ってから、あの地域の農作物が汚染されていると知らしめるか。

 私のルーツとなるチャレン人民平等国相手であれば、そんなことは決してやれないが、相手は生意気で野蛮な糞右翼主義者のアンダーウケの連中だ!!

 そう、あいつら相手なら何をやっても正義だ!!

 漸く私にも運が回ってきた。

 王侯貴族の成功者だけで回されてきた幸運が、私のところにも回ってきたのだっっ!!

 そう!!

 私を蔑ろにしてきたこの国そのものには、私は貸しがある。

 その貸しを返して貰わねばならん!!

 

 私より賢い者などいない!!

 にも関わらず知識人の私を、呼び付けて(・・・・・)使う(・・)などとする連王も許せん!!

 私が貴様を使って、この国の一大事に素早く取り掛からせてやったというのにっっ!!

 

 まあいい。

 蜂起の時は今ではない。

 アンダーウケとの貿易で儲けて、市長となってからがスタートだ。

 何れこの国も武装放棄させて、チャレン人民平等国に併合させる。

 この国から世界に向けて、真の正義を創るのだ!!

 

 

 

 アンダーウケには知識人がいない。

 高額転売には文句を言う癖に、格安中古には何の問題も感じない様な低能ばかりだ。

 だから我々が適切な価格で使ってやっているのだ。

 嫌とは言うまい。

 流石私だ。

 カベナマリオで第27位の研究所で所長を務める男だ。

 

 さあ、更に私の名を轟かせる為に頑張るぞ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──あれから半年が過ぎた。

 毒と熱はどうにもならなくても、生き方そのものを歪めるあの瘴気は何とかする手段が見付けられたのだ。

 第12位の研究所の副所長をしている女が、「障気をどーにかする方法はありま〜す」と言っていて、それは嘘だったが、第3位の研究所で本当にその方法が発見されたのだ。

 私は知った。

 その研究結果を見付けた本人から聞いた。

 連王国を構成する一国であるツボウリソーカ国には、己の魔力的責任を他者に押し付けるものがあると。

 指や爪などの身体の一部を媒介に、元の持ち主に瘴気を吸収させる手段があるのだと。

 国が秘密裏に、犯罪者や生活保護受給者に障気を押し付けて障気を無効化する、許されざるアクセサリーを開発している事を。

 許せない事に、チャレン人民平等国出身の犯罪者を材料にしている事を。

 ヒューマン(同胞)百人の爪を繋いだブレスレットでも作れば、ヴォルクリスタに一時間は滞在出来る事を。

 その爪を通じて、その爪の持ち主に、ヴォルクリスタの影響を肩代わりさせる事で、ヴォルクリスタの邪悪なる魔力を無効化出来るのだと。

 

 あの大百足の厄介なところは、そもそもヒューマンではヴォルクリスタに近付くだけで命を死に変質させられる事。

 それを防げるだけでも、多くの解決策が生まれる。

 少なくともヴォルクリスタに立つエルフ達と戦う事までは出来るはずだ。

 

 問題は爪の提出者は瘴気の影響を受ける事だが、アンダーウケの連中に爪を提出させれば、我が国に損傷は無い。

 やはり私は天才だ!!

 

 私はそれらの内容を紙にしたためると、書簡を連王府に送るように助手に指示した。

 やはり、権力者のペンは剣よりも強し、だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 あれから一ヶ月が経った。

 チャレン人民平等国は、滅びる手前で生かされていた。

 私がエルフ以外で最も憎み、それでいてどうにもできぬ強国のユーシオレハイ帝国が、チャレン人民平等国をボロボロにしたのだ。

 悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しい悔しいぃぃぃぃいいいいい!!!!

 

 私は連王に今すぐユーシオレハイを滅ぼす様に手紙を送ったが、あろうことか連王は、チャレン人を生贄として安く買い受ける契約を結び、ユーシオレハイと和平条約を結んだのだ。

 挙げ句、その和平条約はアンダーウケとも結ばれていた。

 チャレン人民平等国が、アンダーウケに格下に見られて搾取される側になるなんて許せない!! 認めない!! あってはならない!!

 せめてアンダーウケもチャレン人民平等国と同じ扱いを受けるべきだ!!

 

 悪魔のような三国は、何れ戦火を交えるとしても、それまでは共同でチャレン人民平等国を効率良く消費しようという、悪夢のような条約を結んだのだ!!

 

 

 何たる地獄!!

 必ずや、あの連王は暗殺せねばならぬ!!

 そう意気込んで、同じくチャレン人のルーツを持つ同胞達と計画を練っていたら、国家警察が殴り込んで来た!!

 

 離せ野蛮人共!!

 間抜けな国家の狗共!!

 

 私は珊瑚魚の危険をこの国に教えた功労者だぞ!!

 逮捕すべきは生まれだけで連王の座にいる奴の方ではないか!!

 私は死ぬべきではない!!

 

 知識人である私を処刑台に引き摺り出して、その横でこんなに涼し気な顔で笑う鬼畜な王が善良なものか!!

 顔が良いからといって、中身は邪悪そのものだ!!

 見た目が良い指導者がそんなに心地良いか!!

 この愚民共がっっ!!

 

 ん、…アレは……。

 皆気が付くんだ。

 連王の姿をよく見ろ!!

 悪魔と契約しているぞ!!

 巧妙に隠しているが、奴もハイエルフに成っている!!

 ヒューマンの敵であるハイエルフだ!!

 存在するだけで、ヒューマンの価値を下げるハイエルフがあそこにいるぞ!!

 アイツが生きていては、ヒューマンの誇りと尊厳が永久に失われる!!

 ハイエルフが頂点にいては、人民(ヒューマンやゴブリン)の声など聞かれなくなる。

 ハイエルフはヒューマンの意見など聞くはずがない!!

 今すぐこの独裁者を殺せ!!

 

「残念だよ博士。

君の功績には感謝していたのだが、これまでのようだね。

麗しき方が教えてくれたのだが、君は知っていたかい? ヒューマンからハイエルフになった者が翼を維持するには、ヴォルクリスタの障気が僅かに必要なのだよ。

そして、それ故に珊瑚魚は需要があってね…。

いや、もう死ぬ者に言っても無駄か。

では、処刑人。

─────やれ」

 

「はい」

 

 

 やめてくれ。

 私をギロチンにかけるのはやめてくれ。

 やめろ!!

 私は死にたくない!!

 私は死にたくない!!

 民衆共、騒いでないで早く私を助けないか!!

 黙れ民衆共!!

 お前らのせいで私の助けが届かないではないか!!

 助けろ!!

 助けて!!

 助けてください!!

 助け───────

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