【人外モノ】百足の神獣と闇落ちエルフの姫   作:流されそうめん

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必要と不必要の地獄

†アンダーウケの独裁者 ポール・チュー・カク・シィ・ポトフ

 

 別に高学歴を恨んで殺してきた訳ではない。

 メガネを掛けているだけで殺意が湧いた事もない。

 高学歴も殺したし、メガネを掛けている者も殺した。

 だが低学歴も殺したし、裸眼の者も殺した。

 高学歴でも殺していない者は多いし、メガネを掛けているからといって殺していないのは、メガネを掛けた私の側近を見れば分かる。

 単純に国益よりも、世界益とか言っている連中は殺し回っただけだ。

 もっと単純に言えば、国益にそぐわない者を殺しただけだ。

 そいつらの生き残りがメディア戦略として、独裁者はコンプレックス持ちで高学歴を憎んでいたり、メガネを掛けているだけで殺すキチガイと言って回っているだけだ。

 弁護士と教師に戦争アレルギーのキチガイが多いのは、何処の国でもよくある話で、ちゃんと戦争出来る国にしようとしたら、反対デモが発生して、そいつらを纏めて殺したら、偶々その中に弁護士や教師が多かったというだけだったんだ。

 そりゃあ幌馬車専門の画家は気持ち悪くなって殺した事はあるが、アレだって幌馬車を書く事そのものが気持ち悪くなった訳ではなくて、顔とか色々と全体的にキモかったからだ。

 

 別に高学歴だからとか、メガネを掛けているから殺したかった訳ではない。

 と言っても、新聞屋もあちら側の勢力だから、向こうに都合の良い話ばかりを書き立てる。

 俺がインテリアレルギーの低学歴だと扱いたいというのが、非常によく分かる。

 さて、次は新聞屋を殺すか。

 

 俺がやりたいようにやれば、我が国が上手くいっているのに、文句を言う連中が邪魔なんだ。

 

 

 神聖魔法を使ってやりたい事がある。

 使えない人間五人を入れて掻き混ぜると、とても優秀な人間が一人生まれるという壺を作ることだ。

 ヨモジ教にあるガチヤの壺の再現だ。

 しかし民衆がそれを願うというのは無理がある。

 アレはヨモジ教の聖典に載っているとは言えど、異教徒が造ったもので、使徒アブラトリに破壊されている。

 それに、神聖魔法は大勢が心から願う共通のものを顕現させるものであって、俺が命令したところで民衆が心から願わないのは分かっている。

 使えない民衆だが仕方がない。

 

 国の基本は国民だ。

 俺に忠実で優秀な国民が多ければ、国は上手く成長する。

 

 

 そんな中、俺はユーシオレハイの使者から良い話を聞いた。

 半分に届くかどうかという確率で、ヒューマンの上位種族へとなれるのだと。

 …これはまるで、聖書のガチヤ壺じゃないか。

 俺は半信半疑であったが、実際にそれを試したカベナマリオ連王を見て、直ぐに試したくなった。

 ヒューマンの上位種族があるのなら、わざわざヒューマンとして生きる意味もない。

 その上、成功するかどうかは元の素体の能力、特に魔力次第なのだという。

 俺はそんな話はどうでも良いと、ガラスの羽を胸に突き立てた。

 

 

 

 それからどれだけ時間が経ったかは分からないが、猛烈な痛みを全身に感じて、特に背中には頭がおかしくなる手前の激痛を感じ続けた。

 だが、俺は生き延びた。

 

 俺はヒューマンを辞めて、ハイエルフに成れたのだ。

 そうなると、ヒューマンなどという劣った種族でいる者達に価値を感じなくなった。

 劣った連中の意見を聞くなど、俺が一人で考えた方がマシなのだから。

 もし話を聞くとすれば、同じハイエルフからだけで良い。

 

 では、俺の国民の内、反対派以外は全てハイエルフにさせたい。

 その結果百人に九十九人が死んだとしても、生き延びた一人が二百倍の能力があるならば、倍得している事になる。

 

 では国民全てを私の羽で突き刺すにはどうすれば良いか?

 国民全てが死ぬ可能性があるのならば、流石に全国民に反対される。

 それは良くない。

 では、どうするか?

 

 先ずは羽を細かく砕いたものを酒に溶かして、親衛隊の内何人かに飲ませた。

 その中で体調を崩していない者を集めて、目を瞑らせて手を挙げさせ、後ろから纏めて翼で貫いた。

 

 事前に軽く試験をしたからか、何と半分の者がハイエルフとなり、もう半分の者が死んだ。

 これを多いと見るか少ないと見るかは人次第だろうが、俺は物足りなく感じた。

 生き残った者達には、同様の手口で部下をハイエルフに変える様に命じた。

 

 俺は直接の部下の部下の部下までで、選別をやめる様に命じた。

 出世出来ない低能な平連中の中からハイエルフを探そうとすれば、確率は数%も無いと考えたからだ。

 

 俺はハイエルフの為の国にするべく、ハイエルフには税金を免除し、ハイエルフ手当を与えた。

 逆にヒューマンには重税を課した。

 ヒューマンには重税を課さなくても、普通にやればハイエルフが勝つので、実質的には敗北者に追い打ちをかける行為だが、これには理由がある。

 ヒューマンが虐げられるのが嫌なら、ハイエルフになる試験を命懸けで受けてみろという、俺からの優しさなのだ。

 

 俺の嫁にはあのハイエルフの女王が相応しいと思うが、何度口説いても躱されている。

 お高くとまっているが、だからこそ欲しくなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 最近は民衆の中で平等連会という宗教が流行っているそうだ。

 どうやら、チャレン人民平等国発祥の宗教の様だ。

 教義として民衆による政治を目指していて、俺の独裁を批判している。

 これは許せない。

 チャレンには以前、トーォリテエッツという伝染する精神疾患が持ち込まれた。

 …そろそろチャレンは滅ぼしておくか、しっかりと上下関係を叩き込む段階なのかもしれない。

 

 なあに、平民は戦争に使わなくても軍需工場で働かせるのと、神聖魔法の為に祈らせるだけで良い。

 ハイエルフは戦士階級。

 ヒューマンは農奴階級。

 そう分けるのもありだろう。

 

 

 そう考えていた時だった。

 大地が呑み込まれた。

 

 

 

 

 折角の俺の国の半分が、底も見えぬ(くら)(あな)に墜ちていった…。

 

「うそ…だろ……」

 

 

 何だとと驚きはしない。

 何が起きているかなんて分かりきっている。

 ただ、それを信じたくないだけだ。

 一瞬で国の半分が無くなってしまった。

 

 

 ヒューマンだけが消えたのなら何とかなる。

 だが、俺が折角増やしたハイエルフまで、沢山失った。

 よりにもよって、高級住宅街の方が大被害を受けていた。

 落ちるなら貧民街にしておけよ…っ!!

 

 救いは、大穴の下にはあのムカデがいなかったことだ。

 

 穴が造られた後だったからまだ良かった。

 穴を造っている最中の大ムカデがいたら、残り半分も引き摺り込まれていたハズだ。

 

 しかし、何人もハイエルフを失ったのは悔しい。

 残ったヒューマンを全部落としても、落ちたハイエルフは帰って来ない。

 クソックソックソックソックソックソックソッ!!

 役に立たないヒューマンなんてお荷物なだけなのに!!

 そんなのよりも、ハイエルフを残してくれよ!!

 

 駄目な国民だけ残っても、国は成り立たないだろ!!

 

 何人かハイエルフが残ったから良いが、そうじゃなかったら詰んでいた。

 

 

 

 

 …ん?

 どうした?

 

「ポール様、大規模の反乱が始まりました」

 

 何?

 謀反が起きただと?

 この国の一大事でか?

 

 馬鹿な、どれだけ無学な連中なんだ。

 確かにハイエルフの多くは死んで、反逆はしやすいだろうが、今は国そのものの危機だぞ?

 ヒューマンとは、とことん救い難い連中だ。

 

 反逆者を全員殺せ!!

 いいなっ!!

 

 

「何人かの将が部下に殺されたと通報がありました。

まず被害者の筆頭として──────」

 

 はっ!?

 軍内からも反逆?

 ヒューマンの兵士達も拒否している?

 …使えないな

 分かった。

 もう役立たずは死ね。

 

 ヒューマンは全員滅ぼしてしまえ。

 従うヒューマンは生かしてもいい。

 でも逆らう者は全て殺せ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 内乱には勝てた。

 やはり、ヒューマンなど下等生物。

 俺達に勝てる理由など無かった。

 足場を集団魔法で爆撃して、貧民街ごと穴の底に落としてやったりもした。

 ヒューマンとハイエルフでは、やれることのスケールが違うんだよ。

 

 とはいえ生き残ったのは、俺とハイエルフの男女二人のみ。

 仕方ない。

 ハイエルフが残った、しかも女も含めて残ったのは良かった。

 …お前達再びこの国を盛り上げるぞ。

 俺についてこい!!

 

 ああ、それとだな。

 俺の子孫を増やさないといけないから、お前は最初俺の子供を産め。

 国の緊急事態だ。

 

 …はっ?

 どうした。

 国の緊急事態だぞ。

 何だその態度はっ!!

 

「私達もハイエルフなので、あなたに従う理由はありません」

「国を荒らした無能な独裁者め。ヒューマンを殺すなら内乱を準備される前に全ハイエルフを以って全滅させて、もっと早くハイエルフの国を作っておくべきだった。

しっかりと準備しておけば、ヒューマンを生贄に何かを生み出すことも出来た。

お前は必要な殺しもしたが、それ以上に無駄に国民を消費した」

 

 それはそうかもしれないが、私は王だぞ!!

 

 

「三人しか残っていないのに、国だとか王だとか随分と笑わせますね」

「いや、もう二人にしよう。

僕達がこの国の新たな王族だ!!

…意味は分かっているだろう?

僕達の幸せのために、お前は不要なんだよ!!」

 

 まて、止めろ!!

 よせ!!

 よすんだ!!

 止めろーー!!

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