【人外モノ】百足の神獣と闇落ちエルフの姫   作:流されそうめん

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馬鹿にも分かる地獄の生き残り方

†カベナマリオ連王 ヨキス・ナテクルデシ

 

 カベナマリオは、アヴェマリオ、ドルアソ、ツボウリソーカ、キッチガカイ、グミンシューの五国で構成された連合国家だ。

 

 しかし今、アヴェマリオとドルアソへと人々の流入が止まらなくなっている。

 理由は簡単だね。

 ヴォルクリスタがツボウリソーカ、キッチガカイ、グミンシューの方面から拡がって来ているからだろう。

 

 正直な話、ヒューマンは詰んだと思っているのだが、それでも民達は少しでも安全な所に行きたいようだ。

 

 だから施政者として、アヴェマリオとドルアソには、高い人頭税を掛け、ツボウリソーカ、キッチガカイ、グミンシューには人頭税を廃止する事にした。

 

 人頭税とは、生きているだけで払わなければならない税金だから、本人の収入が少なくとも払わなければならない。

 必然的に貧困層は人頭税が高い地域には住めなくなる。

 

 つまりはどういう事かと言うと、金が払える者だけがアヴェ・アソ地域に住むことを許して、稼ぎも資産も無い者は強制的にリソーカ・ガカイ・グミン地域に押しやるという事だ。

 

 大金を払っても助かりたい者から、連王国として税収が得られるし、どうせ残すのなら少しでも優秀な者を残したい。

 施政者として意地の悪い言い方をするのなら、貧困層は纏めてヴォルクリスタというゴミ箱にポイしたいというわけだ。

 

 見捨てられる貧困層への補償?

 そんなものは千羽鶴でも送っておけば良い。

 千羽鶴というのは、萌えるゴミの日に出す、店のチラシを折り曲げて鳥に見えなくもない形にしたもので、我が国の文化だ。

 平和や快復を願って折るものらしい。

 僕は折った事がないけどね。

 だけど大切なのは気持ちだよ。

 何の役にも立たない、金にも食料にも武器にもならない嵩張る紙の集まりだが、送った人々の想いが詰まっている筈だからね。

 ユーシオレハイにボロボロにされたチャレンには、復興支援を求められたから、千羽鶴だけを沢山贈らせておいた。

 何れ滅びる国に与えるリソースとしては、十分だろう。

 もし千羽鶴よりも金や食料や武器を寄越せと、我が国の国民の思いを突き返したならば、国民達も黙ってはいないだろう。

 もうあんな国に支援など与えなくて良いと国民達から言ってくれるはずだ。

 折角与えてあげた優しさなんだから感謝して当たり前で、役立たずなどと言われたら腹を立てる、面倒なカベナマリオの国民性は、僕はよ〜く理解しているからね。

 感謝ごっこの押し付け合いが、我が国では美徳なんだが、そのルールが初めて役に立ったよ。

 

 

 さて、そろそろ僕も一時的に連王を代わる事としよう。

 エルフやムカデとの戦争なんて、誰が引き受けても失敗する。

 一時的には、スルガノ君に任せるとしよう。

 彼は元々人気とは無関係な人だから、影響も少ないだろう。

 

 というかそもそもだ、もうヒューマンは終わりなんだ。

 

 

 最初にヒューマンが、エルフの奴隷としての立場を粛々と受け容れていれば良かったんだ。

 不利な立場を嫌がって、エルフから分断されたのが良くなかった。

 奴隷として扱っても良いから、どうか着いて行かせて下さいと媚び(へつら)うべきだった。

 エルフが味方で、ヒューマンと共にあるのなら、あのムカデだって初期であれば滅ぼせた。

 でもそうはならなかった。

 スコールペンドラを天使と英雄が倒せた様に、例の連中が当初デスプリンドラに傷を付けた様に、エルフがこちら側なら勝機はあった。

 エルフの側にヒューマンがいなければ、あのムカデに然り、他の神獣に然り、倒す事は不可能だ。

 だからこそ、ヒューマンの祖先はエルフの祖先の奴隷としてでも、同じチームに所属する必要があったんだ。

 ヒューマンの権利を求めて、分断すべきでは無かった。

 

 でももう終わりだ。

 ムカデをヒューマンとエルフとで倒すことはありえても、ムカデとエルフをヒューマンが倒す事なんてありえない。

 

 だから、僕はヒューマンという種族を捨てて、ハイエルフになる試験を受けた。

 勿論、死ぬ可能性はあった。

 しかし、ヴォルクリスタの拡大が止められないのなら、どの道適応した種族にならなければ死ぬんだ。

 

 それならと、ガラスの羽を心臓に突き刺すと、耐え難い苦しみに襲われた。

 背中から何度も翼が広がっては砕けて、収縮して、また広がるのが繰り返されている。

 全身の痛覚が何処が痛いのか分からない程叫び喚いている。

 

 痛い、苦しい、分からない。

 自分がどうなっているのかも最早分からない。

 あれからどれ位経ったのかも分からない。

 手足が付いているのかも分からない。

 豁サ縺ォ縺溘>豁サ縺ォ縺溘¥縺ェ縺?函縺阪◆縺?勧縺代※縺サ縺励>───────

 

 

 

 

 

 はぁっ、はあっ、はぁっ…。

 やった。

 僕は選ばれた。

 生き延びたんだ…。

 

 こうなれば上手くエルフ達に取り入る他はない。

 足手まといな貧困層の三国を見捨てて、アヴェ・アソの二国に残れた有能な人材だけを集めて、ハイエルフへと変えさせる。

 

 後はエルフ嫌悪の者達を殺しておこう。

 スルガノ君に王位を預けるのは、その後でいいな。

 人前に立つ間は、翼は圧し折って誤魔化しておこう。

 どうせ再生出来るし、翼が一度折れる程度の痛みには最早慣れた。

 眼の色も変わったが、それは特に問題にはならないだろう。

 眼の色を確認するほど僕に近付く者が、一体何人いるかという話だからね。

 

 そしてロアクティベルの弓を手土産に、ハイエルフのトップに取り入るんだ。

 そして世界の片隅でひっそりと生きる事だけを許してもらう。

 格上の存在相手には、尽くして媚びて、その上で求めない。

 そう、最早それだけが、ヒューマンに生まれた者が生き残る手段なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 神の如き力を持った蟲が目覚めた。

 遠くから望遠鏡で見ているが、見た目はあまりにも悍ましい。

 無数に蠢く翅と脚。

 閉じて開いてを繰り返す幾多もの眼。

 

 しかし、その圧倒的な力をには、一種の美しさを感じてしまう。

 比類無き暴力は美しい…!!

 

 僕の後任となったスルガノ君は優秀だが、どうにもならないだろう。

 僕には関係の無い話だ。

 何故って、今の僕は何の責任も無い、アヴェマリオに住む上級貴族だ。

 スルガノ君が生きていたら、心臓に羽を突き刺してあげても良いと思っている。

 彼は平民出身だが、見所はとてもあるから。

 

 

 

 あ〜あ、我が国の前方の三国(負債)が全部消されちゃった。

 どうしようか。

 気持ちが良すぎて笑いが隠せない。

 

 こんなに上手くいくなんて。

 他にもチャレンなんかも消された様だ。

 折角千羽鶴あげたのに、何の意味も無かったようだ。

 まあ、金は出せないけど紙鶴から送りたいなんて言っていた連中の多くは、土地ごと消されたようだから、あの世でお礼でも言ってあげて欲しいね。

 じゃないと揉めそうだし。

 

 

 

 ヒューマンが神獣に立ち向かうのなら、エルフの奴隷としての立場を受け容れて、一つの陣営にいれば良かったのに。

 大人しく従い続ければ良かったんだ。

 分断は良くない。

 特に不利益を受けている側には。

 

 分断は良かったのだろう。

 利益を得ていた側には。

 エルフはヒューマンを切り捨てた事で、神獣と共に道を歩めた。

 だからこそ、僕はツボウリソーカ、キッチガカイ、グミンシューと、そこに押し付けた利用価値の低く、ハイエルフになる見込みの無い人々を切り捨てて分断したのだ。

 

 搾取していた側は、搾取する代わりに庇護してくれていた事を、愚かなヒューマン達は気が付けなかっただけなのだから…。

 

 格上に分断されず、格下を分断する。

 これが、この地獄の様な世界の、唯一の生き延び方だ。

 

 僕がやったことは、間違いなく正しい。

 それは、望遠鏡の向こうの景色の中で、今まさに死に絶えている人々が教えてくれている。

 

 もう少し経ったら逃げながら、ハイエルフを増やしていこう。

 そしてそうでない者を消していこう。

 

 僕は死なない。

 絶対に生き延びて見せる。




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