トランスサーバでレジンスタンスベースへと来たスネークは手頃な大きさのコンテナを椅子代わりにし、来る途中で通りかかった倉庫で見つけた古びた煙草を吸いながらシエルの話を聞いていた。
「それじゃあ、話を整理しよう。君たちレジスタンスは、犯罪を犯した存在『イレギュラー』と疑いをかけられたレプリロイドが生き延びるために結成された組織でここが最後の砦であるということ。そして、抵抗をし続けてきたが徐々に追い詰められ、限界に近付いていた。最後の望みとして100年前『エックス』と言う名のレプリロイドと共に世界を救ったと言われている伝説のレプリロイド『ゼロ』を見つけるためにあの遺跡に行った・・・そういうことだな。」
「えぇ、伝説の英雄となったエックスは今も生きている。・・・そして、私たちを処分しようとしている。」
シエルが暗い顔をしながら説明している中、彼は煙草の煙を吐きながら言う。
「平和には犠牲がつきものだ。地上のほとんどが荒廃している中で人類が唯一生存できる楽園『ネオ・アルカディア』。だが、楽園を維持することは簡単ではない。人間とレプリロイドの数が増えれば消費と供給が均衡を保てなくなる。恐らく、エックスは楽園にとって不要だと判断したものから排除していっているのだろうな。平和を維持するためならば同胞の犠牲も躊躇わない。英雄は時に冷酷な独裁者へとなる。」
「私たちには彼らに対抗できるほどの力はない。だから、伝説の存在である貴方の力を借りたいの。かつてエックスと共に世界を救った英雄である貴方の・・・・」
彼女は、縋るような目で見る。その言葉に対し、スネークは苦笑しながら答えた。
「シエル、俺はそんな大層な存在じゃない。悪いが君たちの期待するような奇跡は起こせない。」
「でも、貴方は私たちでは敵わなかったゴーレムを倒したわ。」
「認めたくない気持ちはわかるが俺は魔法使いではない。君たちに加勢したところで戦況が覆されるほど戦争は優しくはないんだ。それに・・・・」
「それに?」
「目標がないことだ。確かに自分の身を守るということ自体は悪くない。しかし、ネオ・アルカディアと互角に戦えるようになったとして君たちは何をしようと思っているんだ?ネオ・アルカディアを潰す気か?それとも、エックスにとって代わって支配者となるのか?」
「それは・・・・」
「もし、安全な場所に逃げるための時間稼ぎだとしてもネオ・アルカディア、エックスが存在する限り君たちを狙ってくるのは間違いない。そこまで考えてあの場所に向かったんだろう?」
「・・・・」
彼の質問に対し、シエルは困った顔をする。
みんなを救いたいという気持ちは本物だがその先の考えが甘かった。
いくら自給自足可能なエネルギーを開発して辺境の地に逃げたとしてもネオ・アルカディアは必ず探しに来る。見つかればその場で始末されるか、利用されるだけされて切り捨てられるかのどちらかになる。
彼女の顔が強張ってしまったのを見てスネークは、流石に言い過ぎたと考えて一言付け加える。
「すまない、余計なことを言ったな。けれど、君にはここにいる全員を取りまとめて導くリーダーとしての義務がある。そこだけは忘れないでくれ。」
「え、えぇ・・・。」
「俺も行き場のない存在だ。せっかくだし、君たちの要求に一つ答えよう。」
「いいの?」
「煙草を吸わせてもらっている。それにだ。」
彼は、眼帯を前に出す。破損している右目への応急処置として渡したものなのだが前に自分が使っていたものと似ていたため、軽く笑いながらつけて見せた。
「この眼帯をもらった借りがある。いいセンスだ。」
その様子に少し落ち着きを取り戻したのか、シエルは一呼吸おいて一つのお願いを言う。
地上にある廃棄処理施設。
ここではネオ・アルカディアからイレギュラー認定を受けたレプリロイドが日々処分されている。しかし、そのほとんどは無実の罪を着せられた者たちで今日もまた執行室にはおぞましい量の残骸が積まれ、壁にはびっちりと返り血がこびり付いていた。
「今日はもうこれで終わりか。明日処分予定のイレギュラーは何人だ?」
隼型のレプリロイドは、施設の屋上で風を受けながら部下に聞く。
「はっ、明日は5人。男性型3名、女性型2名です。」
「ほう、女性型とは久しぶりだな。明日はさぞ美しい悲鳴が堪能できるだろうな。」
このレプリロイド『アステ・ファルコン』は、ネオ・アルカディアの四天王率いる軍団の一つ『烈空軍団』に所属しており、この施設の管理を任されている。
明日の処刑を楽しみにしている彼は、ふとしたを見るとそこにあるものが映った。
この辺では珍しいやや大型の野犬と思われるイヌ科の親子だ。
「この辺で野良犬とは珍しいな。どれ・・・・」
アステ・ファルコンは、翼を開いてエネルギーを収束させると地上で徘徊している親子に標的を定める。
「最近ここを任されて以降腕が訛りそうだからな・・・・試し打ちさせてもらう!」
光の矢ような棘が複数発射され、親子に命中する。親は体を貫かれて即死、対する子は右目を掠めただけで驚きのあまり逃げ出していった。
「ちっ、やはりこれだけ離れた距離では正確に射抜けないか。」
「しかし、あの子犬は可哀そうですね。この辺で一匹じゃすぐに餓死しちゃいそうだし。」
獲物を完全に仕留められなかったことで残念そうな態度をとる彼とは逆にパンテオンは、子犬が消えていった先を見つめるのであった。
「不味い!レーションはいつの時代も食えたもんじゃない!!」
その日の夕方、スネークはレジスタンスベースを出発して廃墟の中で野宿をしていた。彼はシエルからの依頼でこの先にある廃棄処理施設の破壊と捕らえられているレジスタンス兵士の救出へと向かっていたのだ。
ちなみにこのレーションは、レジンスタンスベースでシエルが常食用として備蓄していたもので出発するときにいくつかもらっていった。
なぜ、レプリロイドが食事をする必要があるのか不思議そうにしていたが食へのこだわりが付いスネークにとっては手軽に済ませられるエネルギーボトルよりも効率の悪くても楽しめる食事の方がいいのだ。
食物をエネルギーに変換する機能があるからこそ言えるわがままであるが自分の時代よりも科学や技術が進歩しているはずなのに何故ここまで不味いのかが理解できなかった。寧ろ、この味が当たり前だと思っているシエルの味覚を疑いたくなる。
「はあ・・・せめてボンカレーや即席ラーメン・・・贅沢言わないからカエルかヘビが食いたい。この世界で手に入るとは思えんが。」
寝そべりながら彼は、過去の作戦の時のサバイバル並びにマザーベースの食事を思い出す。現地での調達のため、しぶしぶレーションを食べることこそあったが自分の時代は野生動物をキャプチャーすることでバリエーションを増やすことができた。マザーベースの食事に関してはアマンダやセシール、パスたち女性陣が作ってくれた現地の郷土料理に感動したものだ。
「・・・・何を考えているんだ、俺は。」
ふと彼は、目覚める直前のマザーベース崩壊の惨劇を思い出す。派兵した者を除けば、全員カリブ海に沈んでしまった。もう、あの時のような食事にはありつけない。それどころか資格すらないと感じていた。
「カズもチコもあの墜落では助からなかっただろうな。俺だけこんな形にで生き延びて・・・」
スネークが己の罪悪感に駆られていると近くから弱々しい鳴き声が聞こえてきた。セイバーの出力を最小にしてナイフの代わりにし、バスターショットと共に構えて声がした物陰に近づいてみると目を怪我した子犬が横たわっていた。
「犬?それもこんな小さいのが。」
彼は、子犬を抱きかかえて容態を軽く診察する。スネークは、医者ではないが過去にメディカルスタッフの助言を受けながら応急処置を何度も行っている。幸いにも子犬は右目を怪我しているだけで特に外傷はなかった。っとなると恐らく空腹になって弱ったのだろう。とは言ってもレーション以外食料は持ってこなかった。この廃墟ならネズミぐらいはいそうだが暗いため捕まえるのは難しい。
「・・・・食うか?」
食べかけのレーションを子犬の前に置く。子犬は、余程お腹を空かせていたのか『ワンワン!』としっぽを振りながら喜んで食べ始めた。スネークは、頭を撫でながら笑った。
「そうか、よっぽど腹を空かせていたんだな・・・ん?」
その時、自分の体内の通信機が着信音を発する。繋げるとシエルからだった。
『ゼロ、聞こえる?』
「シエルか、どうした?いくら指揮官でも休息は必要だぞ。」
『そういうわけじゃないの。ただ、貴方が無事かどうか心配だったから。』
「おいおい、引き受けた仕事だ。逃げだしたりはしないさ。ところで確認するが今回の任務はこの先にある『廃棄処理施設の破壊』、『捕らえられたレプリロイドたちの救出』だな?」
『えぇ。でも、気を付けて。あそこはゴーレムよりも強敵のミュートスレプリロイドが管理を行っているの。いくら貴方でも記憶を失っている状態じゃ・・・・。』
「確かにハンデは大きいな。だが、そいつと戦わなくとも施設の破壊と仲間の救助を行えば目的は達成できる。」
『じゃあ、もう一度今回の作戦内容を確認するわ。まずは明朝、明るくなる前に廃棄処理施設に潜入。そこから先はかなりの数のパンテオンが警備を徘徊しているけど外に回している分、中の方はかなり手薄になっているはずよ。そして、隔離されている仲間たちと接触。』
「脱出する前に処刑を行う処理装置にC4を設置して外に出た後で爆破、敵の視線が施設に向いているうちにレジスタンスベースに帰還だな。」
『ごめんなさいね、本来なら別動隊で陽動をかけるべきなんだけどそうなるとベースの守りがほとんどなくなっちゃうから。』
「なに、救援の当てのない単独潜入には何度か経験がある。ところでシエル、一応言っておきたいがこういう通信で名前で呼び合うのはやめた方がいいんじゃないか?」
『えっ?どうして?』
「君たちレジスタンスは、常に敵からマークされているはずだ。ともなれば通信を盗聴される危険性もある。コードネームで呼び合った方がいくらか誤魔化しが利くだろう。」
『確かに一理あるわね。でも、急には決められないわ。』
「そうだな・・・君のコードネームは・・・・『パラメディック』でどうだ?」
『なんか狂気を感じるから遠慮するわ。』
「じゃあ、『トム』と『シギント』は?」
『なんか男っぽい。』
「うん・・・・『プレリー』はどうだ?」
中々決まりそうになかったため彼は適当に浮かんだものを提案する。するとシエルの方は満更でもない様子だった
『プレリー・・・まあ、他の比べたらだいぶマシね。それならいいかも。なら、ゼロの方は。』
「いや、俺は『スネーク』でいい。」
『「蛇」?伝説の英雄にしてはなんか不釣り合いに感じるけど。』
「俺は別に自分を英雄とは思っていないさ。それとも『蛇』は嫌いか」
『嫌いと言うよりは私、生きた蛇は見たことないの。』
「敵もまさか、こんなコードネームを使うとは思わないだろう。」
『そうかしら・・・でも、貴方が言うのなら本当かもしれないわね。じゃあ、スネーク。明日はお願いね。』
「あぁ、プレリーもしっかり休んでおけ。」
通信を終えるとスネークは、荷物を確認して目的地へと向かおうとする。
「ワン、ワン!!」
「ん?」
「ハッ、ハッハッ。」
彼が移動することに気づいたのか子犬が後を追ってきた。作戦に支障が出る危険性も考慮してスネークは、追い払うことにした。
「ダメだ。着いてくるな。」
「クゥン?」
「シッ、シッ。」
手で振り払うようにして追い返すと彼は姿勢を低くして闇夜の中へと消えていった。
しかし、それでも子犬は後を追いかけていくのであった。
明朝。
スネークは、徘徊しているパンテオンたちを可能な限りCQCで無力化しながら明るくなる前に廃棄処理施設の前まで来ることができた。警備管理が雑なのか、増援が来ている様子はなく、双眼鏡で見ても入り口を警備しているのはたったの二人だった。
「こちら、スネーク。目的地へ到着した。」
『すごい、本当に予定通りね。見つからなかった?』
「あぁ、見られる前に眠ってもらった。」
『そ、そう・・・まずは中に潜入して粉砕機の制御室を探して。見つけたら制御盤にアクセス、そうすればこちらからの操作も受け付けるはずよ。ただ、警備態勢に入ったらセキュリティレベルが上がるから少しシステムの動きを遅らせることぐらいしかできなくなるから注意して。その後は、粉砕機の部屋の中に持ってきたC4を見つからないように設置、終わったら捕まっているレプリロイドたちと合流して脱出してちょうだい。施設にあるトランスサーバで帰ることができればいいんだけど、流石に敵もそこまで許してはくれなさそうだし仕方ないわね。』
「まずは前にいる警備を退かさなければな。チャフなら監視カメラを誤魔化すことができるが見張りが警戒するな。」
「ワンワン!」
「ん?」
通信中に聞き覚えのある鳴き声を聞き、振り向くと見張りの目の前に追い払ったはずの子犬がいたことに気づく。
「おっ、お前生きていたのか。」
「この犬知っているのか?」
「昨日、アステファルコン様が射殺した狼っぽい犬の子供だよ。よかった・・・」
パンテオンの一人が頭を撫でる。すると子犬は吠えながら着いて来てほしいとばかりに誘導してきた。
「なんだ?」
「何か見せたいんじゃないか?」
見張りの二人は、仕事への責任感がないのかそのまま犬について行こうとする。スネークは、その隙を逃さずチャフを投げてカメラを無力化すると背後からCQCで二人を気絶させた。
「グフェッ!?」
「ブハッ!!」
気を失った二人を通気ダクトと思われる場所に放り込むと子犬は、舌を出しながら駆け寄ってきた。
「ハッ、ハッハッ。」
「よしよし、お礼かは知らないがありがとな。」
彼はそのまま施設へと乗り込む。中は案の定手薄で制御室に入ると管理をしている者が誰もいなかった。
「ここの管理人、余程人望がないのか?」
そう思いながらも制御盤を見つけ、システムにアクセスする。少し時間を置くとレジスタンスベースのコンピュータとの同期が確認された。
『これでシステムは一時的に抑えられたわ。スネーク、次は粉砕機の上部に回って。そこにC4を設置するの。』
「了解。」
スネークは、階段を上って粉砕機上部の部屋へと入る。
しかし、そこにはアステ・ファルコンが待ち構えていた。
「待っていたぞ。」
「!?」
「貴様が侵入者か。見張りからどうも報告がないかと思ってみて回っていたがお前のような手練れが来るとはな。ハルピュイア様の助言でこの偵察用スパイカメラを放っておいたのが正解だった。」
虫型の小型カメラを見せて発言する彼に対し、スネークは自分の行動が筒抜けだったことに呆気にとられる。
「コイツは参ったな、俺の行動は丸見えだったということか。なら、何故増援を呼ばない。お前さんのご自慢の部下たちだろう?」
「奴らは役に立たない能無しどもだ。侵入者一人にやられるのだからな。そろそろハルピュイア様に新型を頼もうと思っていたところだから今日の処刑人たちと共に消えてもらう。」
「何?」
「よーく、見ろ。」
目の前に大型スクリーンが現れ、映像を映す。そこには処刑予定のレプリロイドたちとここに来るまでに無力化したパンテオンたちが怯えた様子で上を見上げていた。
「この下の映像だ。ハッキングされて作動が遅れているが間もなく処刑が実行される。鮮明な悲鳴が楽しめるぞ。」
「自分の部下をも始末しようというのか!」
「あんなもの代わりはいくらでもいる。ネオ・アルカディアの前ではあの程度の人数、物の数に入らんのだ。」
「そう考えるならお前は上官失格だな。代わりの兵士など存在しない。一人一人が自分にしかないものを持っている。」
「あんな能無しどもにか?アイツらは所詮型落ちでここに回された初期生産型だ。奴らを使うなら今の最新型を回した方が効率がいい。」
「それは、機械だからという理由か?」
「うるさい奴だ。これからそのスクラップ共の仲間入りをするんだぞ?だが、貴様は運がいい。ここに来たことで私自らの手で死ねるのだからな!」
アステ・ファルコンは、彼に向かって突進してくる。スネークは、壁蹴りをして攻撃を避けるとバスターショットを数発発砲する。
「チッ、逃げ足は速いようだな。ならば。」
彼は次の右手を鋏のように大きく広げる。すると、スネークの体と壁が離れ、腕の方に吸い寄せられていった。
「俺の体を吸い寄せているのか!」
「喰らえ!」
「うおっ!」
体が解放されるのも束の間、突進を受けて彼は壁に激突する。受け身の態勢をとることでダメージを最小限に抑えると再びバスターで牽制を仕掛けるが同時に粉砕機が動き出して床が下へとスライドし始めた。
「プレリー、こちらスネーク。敵に発見された!このままでは下にいる仲間がやられる!」
『スネーク、危険な賭けだけどそこの床にC4をいくつかまとめてセットして!粉砕機そのものを完全に破壊することはできないけど脱出するだけの穴を空けることならできるはずよ。守りながらの戦いになるけど救出するにはそれしかないわ!私もできるだけ時間を引き延ばせるようにやってみるけど急いでちょうだい!!』
シエルの通信をすると彼は、威嚇射撃をしながら数か所にC4を仕掛け始める。
「小賢しい真似を。何を企んでいる!」
アステ・ファルコンは一壁に飛びつくと腕を床に突き刺すように着地し、電流を流す。すると流れたショックでC4が誤爆し、セットしようとしたスネークも余波に巻き込まれて吹き飛ばされた。
「フオッ!?」
だが、爆発のおかげで異常が発生したと判断したプログラムにより、粉砕機は一時的に動きを止めた。
「貴様、爆弾を仕掛けてこの施設ごと破壊しようというのか。馬鹿め、そんな小細工が私に通用するか!」
彼は壁に飛びつくと翼を展開してレーザーを放とうとチャージを開始する。しかし、態勢を取った瞬間、スネークは腰に付けていたグレネードの安全装置を外して目に目掛けて放り投げる。すると一瞬の眩い閃光が辺りを包み、視界を奪った。
「うわっ!?目が!!」
視界不良になったことでアステ・ファルコンは狙いを見境なくレーザーを放つ。しばらくすると視界が回復し目の前で腕を組んでいるスネークの姿が映り、彼は一時とはいえ自分を混乱させたことに腹を立てて目の前に着地した。
「貴様・・・よくも!!」
彼を見ると装備しているのはバスターショットのみ。このまま突進して痛めつけてやろうと足を動かそうとするがその時足元にあるものを見てゾッとする。
「ま、まさか・・・」
そこには複数のC4がまとめておいてあり、間違って踏み潰しでもすれば連鎖で爆発しかねない状態だった。視線を戻すと目の前にいたスネークは距離を取っており、足元にあるC4に向かってバスターを撃とうとしていた。
「き、貴様・・・!!」
言い終わる前にスネークのバスターショットが火を噴く。命中したC4はアステ・ファルコンを巻き込んで爆発し、連鎖して周囲のものも誘爆していった。流石の大爆発で床には大きな穴が開き、下では怯えていたレプリロイドたちとパンテオンが敵味方問わず抱き合っていた。スネークが下に降りると彼らは思わず悲鳴を上げる。
「うわぁ~!!助けて!!」
「命だけは・・・命だけはご勘弁を!」
「待て、俺は敵じゃない。要請を受けて助けに来た。」
「えっ?本当ですか?」
「あぁ、このまま君たちと共に脱出する。動けるか?」
彼は、入り口をセイバーで斬り落として脱出口を開く。足がすくんで動けないレジスタンス兵に肩を貸して外に出し、残ったパンテオンたちはとりあえず捕虜として連れていくことにした。
「プレリー、人質の救出に成功した。今からトランスサーバを利用してそちらに戻る。予定外だが捕虜も数名連れてくぞ。」
『ありがとう、スネーク。そっちのトランスサーバの方にはすぐに座標を送信しておくわ。貴方も安全を確認したら戻ってきて。』
「了解。それと捕虜に関してだが・・・・あまり手荒に扱わないよう注意してくれ。アイツらも上司に捨て駒にされた被害者だからな。」
『みんなにも伝えておくわ。スネークも気を付けて。』
全員部屋から出たのを確認するとスネークは、倒れているアステ・ファルコンの上に手のひらサイズのチップが浮いているのに気づく。手に取ってみると雷のマークが刻まれていた。
「シエルなら何かわかるかもしれないな。」
ポケットにしまい、立ち去ろうとする彼の背後に気づかれないようにアステ・ファルコンが起き上がる。ただでは倒れない。最低でもこの侵入者だけは始末する。翼をクロー状に展開して彼の首を刎ねようと迫る。
「!?」
背後の気配を察知したスネークは、無意識にセイバーを展開して切り上げるように翼を溶断する。
「なっ!?」
「セイヤッ!!」
斬撃を受けてアステ・ファルコンは、その場に倒れる。その直後、停止していたはずの粉砕機が再起動して天井が降りてきた。スネークは、スライディングでギリギリ部屋から脱出する。残されたアステ・ファルコンは、床を這いずりながら落ちてくる棘付きの天井を見る。
「待て!殺るのは私ではない!!止まれ!今すぐ止まれ!!何故だ、何故信号を受け付けん!!」
天井の棘は彼の体に突き刺さり、そのまま押し潰そうとする。
「やめろ!やめてくれ!!ウワアアア!!」
体が粉砕され、アステ・ファルコンは機能停止する。突如、粉砕機が再起動したことに疑問を感じたスネークは、再びシエルに通信をする。
「プレリー、停止していたはずの粉砕機が再起動した。君がやったのか?」
『えっ!?私がやったときは拒否されて何もできなかったんだけど。』
「じゃあ、C4の爆発で一時的に止まったのか?」
『それはないわ。そこの粉砕機は爆発物も処理できるように作られているの。C4数個の爆発で穴ぐらいは空けられるけど停止するところまではいかないはずよ。』
「じゃあ、誰かが制御室から動かしたと?」
『スネーク、念のために制御室を確認して。もしかしたらネオ・アルカディア側が意図的に彼を抹殺した可能性もあり得るわ。』
スネークは、粉砕機を中枢をC4で完全に破壊するとトランスサーバに行く前に再度制御室へと向かう。警戒して中に入るとそこには何もなく、制御盤を見ると『システム再起動』の表示が出ていた。
「システムが再起動している・・・一体何が・・・」
「ワン、ワン!」
「ん?」
足元を見ると外で待っているはずの子犬がお座りをしている。よく見ると少し離れた場所にマーキングをしており、そこにはちょうど剥き出しになった電力ケーブルが濡れているのが分かった。
どうやらあのケーブルが制御盤と繋がっており、濡れたことで異常を感知して緊急停止。その後、自分が下から出ようとしていた頃に再起動。アステ・ファルコンが弱っていたことで信号を受け付けずに実行したということになる。
つまり、スネークは知らないが子犬が間接的に親の仇を取ったということだ。
子犬は、彼に抱きかかえられると顔を嘗め始める。スネークは、まさかの偶然に呆れながらもその小さな頭を撫でて部屋を後にした。
レジスタンスベースに戻ると彼は、子犬を抱えたままシエルの部屋へとやってくる。シエルは彼が部屋に入って来るや否や安堵の表情を浮かべる。
「ありがとう、ゼロ。まさかあの処理施設を破壊することができるなんて今まで想像もできなかったわ。これでしばらくは無実のレプリロイドたちが殺されず済む・・・本当にありがとう。やっぱり、貴方は伝説のレプリロイド『ゼロ』よ。」
「俺は頼まれた仕事をやっただけだ。そこまで持ち上げなくてもいい。それに破壊したとはいえ、奴らはいずれまた施設を復旧させる。まだ、時間稼ぎの域に過ぎない。」
「あっ・・・そ、そうよね。これで借りは返してもらったんだからここから先は私たちだけで何とかしなくちゃ・・・。」
協力してもらえるのはこれっきりだったことを思い出し、彼女は暗い顔をする。スネークは、子犬を床に下ろして煙草を口に咥える。
「悪いが火を貸してくれないか?」
「えっ、え、えぇ・・・。」
机にしまってあったライターを取り出し、煙草に火をつける。一回吸って煙を吐くとスネークは、惚けた様子で口を開く。
「これでまた借りができちゃったな。」
「じゃ、じゃあ・・・・」
「ここを出て行ったところで俺のやることはない。だから、あいつと一緒にしばらくここにいさせてもらう。勿論、家賃代わりに仕事も請け負う。これでいいか?」
「う・・・・うん!ありがとう!!これからもよろしくね、ゼロ!」
シエルは、彼の手を握りながら明るい顔で感謝を述べる。
「スネークでいい。そのゼロって呼び方はどうしても馴染めないんでな。」
「わかった、お願いね。スネーク。」
二人は、改めて握手をした。
会話が多くなっちゃった。