The Back Rooms Story 〜Fanmade〜 作:犬社長
12話〈M.E.Gの今後と2人の放浪者〉
20XX年 8月 10日 アメリカ某州 M.E.G研究施設
「ーーーーーー誰も居ない?そんな筈がない。」
…部屋のあちこちで大勢の困惑した話し声が響いている。
「もしそうなら、何処かに探索チームの2人は消えてしまったと?」
「ーーー目印のテープはどうなる?ちゃんと辿ったのか?」
部屋の真ん中に2人の人間が向かい合って立っていた。そのうちの1人がもう1人に詰め寄っている。
「ーーーキミは救助に行った筈だ。探索チームが残したテープをしっかり最後まで辿ったんだろうな?」
詰め寄られた職員らしき男は沢山の汗をかいている。
「いや、辿りはしました。…しかし…。」
「しかし何だ?内部からは連絡が出来ないんだ。中の情報は中に入った人にしか分からない…だからキミに聞いているんだよ。」
「…はい、分かっております。しかし、どうしても信じられない様な話なのです…。」
「…予測不可能なバックルームの事だ。どんな話でも良い、キミの見たままを報告してくれ。」
職員の男はしきりに頭を掻きながらーーー自分でもまだ見た事に納得がいっていないのだろうーーー困惑したまま話し出す。
「最初はテープはしっかりと続いてしました…しかし、辿っていくうちにだんだん…こう、何というか捻れてきて…
その部屋に居て、説明を聞いていた人達は皆、顔を見合わせた。
果たして、人は壁の中に消える事が出来るのだろうか?
「……いきなり遠くに調査隊を派遣し過ぎた感は否めないな…。」
話を聞いた男が、苦々しく呟く。
「もっと慎重になって探索範囲を狭めておくべきだった。欲を描いた結果が探索チーム2名の蒸発とはな…!」
「どうしますか?もはや消えた2名の捜索は不可能の様に私は思いますが…。」
別の職員が彼に問う。
「…しかしだな。彼らの安否を確認せねばこれ以上の探索にGOサインは出せない。バックルームが危険な場所なのか、まだ現状では何も分かっていないのだから…移住計画に支障が出るかも知れん。」
ソレを聞いたまた別の職員が発言する。
「アメリカ政府はこのバックルーム移住計画に莫大な量の予算を投入しています。計画の停滞を政府はあまり好まないでしょう。」
「だからと言ってどうする?人が突然消える世界に対して対策も何もしないまま研究を続けろと?不安要素が多すぎる。」
「…現状、上からの指示待ち…ですかね。報告はすでにしてあります。【職員2名が行方不明になった・バックルームには未知の危険が潜んでいる可能性あり・今後の計画続行の可否を問う。】と。」
「…それで上が大人しく、計画の見直しをするかだな。注ぎ込んだ予算が莫大過ぎて、後にも先にも引けなくなっている感じが私にはするが。」
ーーーーーー彼らは結局明確な進路を決められないまま、その日の報告を終えた。
暫くしてから上層部から返答と指示が、来ることとなる。
ーーーーーー『報告書には目を通した。結論として、バックルームに危険が潜んでいるか調査する事をM.E.Gの目下の目標であるとする。この計画は中断してはならない。我が国…ひいては全人類の未来の為に。諸君らは速やかにこの計画を続行せよ。』ーーーーーーーーーーーーと。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
Back room :level〈the dark metro〉
…2つの光が暗いホームを彷徨っている。
「あー…マジ暗すぎるだろ…最後に懐中電灯を車掌さんがくれて良かったな…レベル1で無くしてたからホント有り難い。」
「本当にな…とにかく、光源がほとんどないのが厄介だな…」
光の正体は懐中電灯で行手を照らしながら歩く放浪者ーートムとジョンだった。
電車に乗ってこのレベルにたどり着いてしまった2人は最後に車掌が言っていたこのレベルの出口…
「しかし、溢れたマンホールって何だ?水が溢れているって事か?」
「そうなんじゃないか?実際に…ほら、このホームは全体的に水没しかけてる。」
そう言ってジョンはホームの端、本来ならレールが敷かれている筈の地面をライトで照らす。
ソコには茶色に濁った水が溜まっていて、懐中電灯の灯りを反射して光った。
「…うへぇ…汚い水だよな…この下にマンホールがあるんだったら俺は入りたくないよ…。」
トムが顔をしかめた。
「場所場所に蛍光灯があるとはいえ、全体的に暗いエリアだ…足元に注意した方がいいな…この水の中に落ちたくなければ。」
ジョンは辺りを見渡して言う。
そう、このホームはあちこちにひび割れや崩落した箇所があり、足元がかなり悪い。更に全体に水が溜まっているので、時折り迂回して進まなければいけない場所もあった。
「…そういえば、車掌さんが下水道に気をつけろ…みたいなこと言ってなかったか?」
「ああ、そうだったな。アーモンドウォーターが飲めなくなるとか何とか…。」
「今俺たちの生命線はこのリュックの中のアーモンドウォーターに掛かってる…下水道には入らない様にしようなジョン。」
…確かにアーモンドウォーターが飲めなくなると言う事が何であるにせよ、それは避けるべきだろう。自分たちが持つ、唯一の食料なのだから…。
…そんな事をジョンが考えていた時。
『…グルルルルル…』
ーーーーーーーーふと、後ろから犬の唸り声の様なものが聞こえてきた。
「…ん?…イヌ?」
ジョンは最初、気のせいかと思った…が念の為後ろを見てみることにした。
…そして振り返った彼の表情が凍りついた。
「…おい…トムさん……後ろ……。」
「…どうしたジョン?後ろに何かーーーーーーゑ!?」
振り返ったトムもまた凍りつく。
…いつの間にか2人の後ろに、犬とも四つん這いになったヒトとも取れない
『グルル…』
…2体
『ガルルルルル…』
……3体
『…グルルルルルルルル…』
………4体
ーーーーーー
「…な、何だコイツら!?犬の群れぇ!?」
「トムさん!!」
ーーージョンは叫ぶ。
「ーーーーーー逃げるぞッ!!」
「ーーーーーー言われなくともッ!!!」
ーーーーーー2人が背を向けた瞬間。
『『『アオオオオオオオオンッッッッッッ』』』
〈the dark metro〉に潜む異形達ーーー〈