The Back Rooms Story 〜Fanmade〜 作:犬社長
2人が逃げ込んだ通路の先は今までの通路と同じで暗く、そして彼方此方が崩れていた。
もう充分あの大群から距離を取っただろうという所で、2人は埃まみれの床に崩れ落ちるように座り込む。
「はぁ、はぁ、はぁ…あぁ…疲れた…もう走りたくないな…。」
「あぁ…俺も……い"ッ!…。」
トムの横に座り込んだジョンが足を押さえて蹲る。
「大丈夫か?足…かなり痛そうだぞ?」
「ぐッ……あぁ…傷は浅い筈なんだがな…。」
見ると、彼の引っ掻かれた足の分厚い筈の防護服の部分が破れてしまっていた。そして、切り裂かれたかのような破れ痕から血がポタポタと垂れている。
「…おいおい、結構な傷じゃないかジョン!全然浅くなんかないだろ!?」
ギョッとしたトムがジョンの足の防護服をめくった。
…ふくらはぎに3本ぐらいの爪でザックリと引っ掻かれた傷がついている。
更に、傷の周りにはまるで火傷したような発疹が生じていた。
「こりゃひどいな…ただ引っ掻かれただけでこんなになるのか?…走れないだろこれじゃあ。」
トムの呟きにジョンが微かに震える声で答える。
「コレは普通の症状じゃ無い…なにかの雑菌が入り込んだ可能性が高い…困ったぞ…此処には包帯も、消毒液も無いし…。」
…ジョンの体が常に震えているのにトムは気づいた。
「大丈夫か?体が震えてるぞ?」
ジョンが顔を顰める。
「…か、軽い痙攣のようなもんだ…きっと大丈夫…ぐッ?!」
ジョンが足を押さえて、えずく。…体が痙攣を繰り返しているのだ。
トムはかなり心配だった。
「ーーーー何だか、死にそうだぞアンタ。マジで…なぁ、俺どうしたらいいんだ?こ、こんな時何したらいいか……。」
残念ながら、トムには医療の知識がない。怪我人と二人きりの状況になったことも無い。ソレにあったとしても、ココには正しい処置をするための物が無かった。
故にトムが出来るのはーーーーーー
「と、とりあえず…アーモンドウォーター…飲むか?コレならなんとかしてくれるかもしんねぇぞ?ジョン…。」
アーモンドウォーターを差し出すーーーーーーこれぐらいしか出来ない。
これで何とかなる筈が無いのは、トムもわかっていた。
しかし、何もしないよりかは、と思ってジョンにアーモンドウォーターを渡す。
「…ああ…助かる…。」
アーモンドウォーターを受け取って飲むジョン。ただ、顔はいまだ痛みに歪んだままだった。
「傷…どんな感じだ?アーモンドウォーターでマシになったか?」
「ッ……ダメだな…まだひどく痛む…。」
ジョンはそう言って痛む足を押さえていた。
「ダメか…流石にコレでも…ここに薬かなんか有ればな…。」
項垂れたトム。
その時、ジョンがそんな彼に意を決したかのように言った。
「…トム。先に行っててくれないか?」
「…は?ここにアンタを置いてけってのか?化物の大群だらけの所に!?」
ジョンは頷いた。
「…今わかった。この傷は普通じゃない。今俺は此処から動けないし、なんならもう歩けないかもしれない…トムさん一人だけでも
「そんな…。」
ソレはまるでもう自分は此処までだと言っているようでーーーーーー
「ーーーーーーそれだけは出来ない!」
トムは思わず叫んだ。
ーーーーーージョンが首を振る。
「…どうしてだ。言って終えば、君と俺は今日初めて会っただけの関係…君は元の世界に帰らなきゃならない。ーーーここで俺と運命を共にするような真似は良してくれ…。」
トムはソレでも引き下がらなかった。
「…そりゃ、アンタとは今日初めて会っただけの関係だがよ!でも、このバックルームで初めて会った仲間なんだ!今アンタを置いて行ったらまた独りになっちまうし、アンタも向こうの世界に帰りたいんだろ!?車掌さんが言ってたじゃないか!帰り道はレベル3999にあるって!それまで俺は諦めない!だから…。」
トムは勢いよく立ち上がる。
…きっと勇気を出すなら今がその時なんだろう。
「…だから俺が何とかする!!アンタは置いてかない!溢れたマンホール探して、見つけたらアンタをそこに引っ張ってでも連れて行く!…動けないなら、ココで待っていてくれ!必ず出口を見つけて戻ってくるから!!」
「………。」
そう言って、トムはジョンに背を向けた。
ーーーカチリと、ライトをつけて暗い通路の先を照らす。ここから先は自分だけで進まなければいけない…ジョンの為に。
「…アーモンドウォーター残り全部ここに置いておく。必ず戻るから、待っていてくれ。ジョン。」
「…キミは……。」
ジョンは何か言いかけたが、言葉が見つからなかったのか口を閉じた。
「…いや、良い…じゃあ、待ってるぞ。」
「ーーーーーーああ。」
ジョンに頷き返してトムは一人、暗闇の先へ足を踏み出した。
◇◆◇
ーーー〈the dark metro〉はいつも暗闇に包まれている。
ライトで辺りを照らしながら、トムは1人闇の中を歩き続ける。
時折ピチョン、ピチョン、と水がどこからか滴り落ちる音が聞こえてきていた。
「随分とここもボロボロだな…その内、駅全体が崩れ去ってしまうんじゃないか?」
そんな事を呟きながら、辺りを探索するトム。
ここはどうやら駅の事務室か何かの様だった。
ただ、部屋全体が酷く散らかっていて埃をかぶっている。床にはたくさんの紙やら、ポスターの様な物が落ちていたが、どれも白紙で全てぐしゃぐしゃになっていた。
「なんだか、部屋の中で竜巻でも起きたみたいだな…。」
呟くトム。
見渡すと、事務机や椅子がひっくり返った状態で辺りに転がっている。
その中にダンボールが山積みに置かれているのをトムは見つけた。
「…なんだコレ?」
気になったトムは、ダンボールを開けてみることにした。
…中には沢山のガラクタが入っていた。
「…レベル1の箱の中身に似てるな…いらないもんばっかか?」
とは言ったものの、使えるモノがあるかもしれないと思ったトムは1人、ダンボールの山を次々と開けていった。
「破れたノートの束…いらん。壊れたガラガラ…要らない。空のペットボトル…中に何か入れることあるかな?持ってくか。あと…爆竹か?コレ。あの犬野郎どもの牽制に使えるかも…これ貰い。ソレと…ん?」
ふと、トムの目に何か光るモノが映る。
取り出してみると、ソレは一振りのサバイバルナイフだった。錆びつきも無く、ライトの光を反射してギラリと光る。
「おお…コレは武器の代わりになるぞ。貰って行こう。」
コレであの化け物達に勝てるかどうかはわからないが…まぁ、無いよりかはマシだろう。
「化け犬一匹ぐらいなら、なんとかなるかもな…ただ、あの〈巨人〉には勝てないと思うが…。」
ーーーーーーそんな風にダンボールの中身を物色するのに夢中になっていたトムは、背後に迫る影に気付かなかった。
「お、コレはアーモンドウォーター?すげぇこんなに沢山…………ん?」
ーーー後ろから紙を何かが踏み締めて動くカサッ、という音がした。
「……?後ろに何か……。」
トムが後ろを振り向いた瞬間、目にも留まらぬ速さでトムの首に
to be continue