The Back Rooms Story 〜Fanmade〜   作:犬社長

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15話〈死闘〉

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

()()は飢えていた。

 

…飢えて闇の中を彷徨っていた。

 

(腹…減った…何か…喰らいたい…)

 

 しかし、闇の中を長く彷徨っても、()()は餌を見つけることがなかなか、出来なかった。

 

(…エサ…無い…あの()()()は…不味い。ソレに…沢山居る。()()()()は…もっとダメ…勝てない…他の奴らも…旨くない。)

 

ーーーそう思いながら、()()は彷徨い続ける。

 

 そんな時、()()は自分の近くで何やら動き回っている影を見つけた。

 

 それは、こちらに背を向けて、山積みのダンボールを漁っている。 ()()は気付かれない様にゆっくり後ろに近づいた。

 

(…初めて…みるヤツだ… ()()()に…似てる…でも違う…)

 

()()は暫くの間躊躇していた。

 自身の記憶の中にある、()()()()と目の前の生き物が似ている見た目をしていたからだ。

 

(…()()()は硬いし…遠くから痛くしてくる…アレがその仲間なら…勝てない…。)

 

 しかし、結局飢えには勝てず、()()は目の前の存在を喰らうことにした。

 

(でもコイツは…青い…きっと違う…きっと弱い…なら、喰う!!)

 

 ()()()()()()()()()()()()()、無防備な獲物の背後に近づいた。

 

「……?後ろに何か…。」

 

 ダンボールを漁っていた影がこちらを振り向いた瞬間、()()は勢いよく手を伸ばしたーーーーーー

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

 

 トムが後ろを振り向いた時、最初に目に映ったのは自分の首に向かって伸びる腕だった。

 

「ーーーぐうッッッ!!?」

 

続けて首に衝撃を感じる。

 

ーーーそのままトムの首は、万力に挟まれたかの様に締め上げられた。

 

「ーーーがッッ!!」(息が…!出来ない!!)

 

 首に驚く程冷たい手の指が絡まって、自分を絞め殺そうとしてくる。トムは無我夢中で手に握りしめていたサバイバルナイフで首を締める腕に切りつけた。

 

ザクッと切った感触が手に伝わってきて、腕が首から離れる。

トムは激しく咳き込みながら、一体何が起きたのか見ようとした。

 

「…うっ…ごほっ!!…なんだコイツは!!……()()()()()()()ぉッ!!??」

 

 トムの前に現れたのは、手と足が繋ぎ合わさった肉塊の如き化け物…そうとしか表現できない怪物だった。

 

 

……名を〈繋ぐ者(クランプ)〉という。

 

 

 〈繋ぐ者(クランプ)〉は無数の腕を動かしながら、床を転がる様に迫って来た。

 

「ーーーーこっち来んな!!化け物がッ!!」

 

トムはナイフを構えながら後ずさる。

 

繋ぐ者(クランプ)〉はトムに向かって再び手を伸ばした。伸ばされた手は驚くほど長く伸びてトムの肩のジャージを掴む。

 

 しかし、トムが振るったナイフにまた腕を傷つけられて引っ込めた。

今のうちにと、トムが距離を取る。

 

「…なんだよアイツ!今まで見て来たどんな奴より悍しい見た目だなッ!!」

 

 悪態をつきながら、その場から逃げようとするトム。しかし、この事務室には入口が一つしかなかった。そして、その入り口は〈繋ぐ者(クランプ)〉が通せんぼしている。

 

「…逃げ場なし…か。ーーーこの化け物をナイフだけでやれと…?」

 

 昔、ハマったゾンビゲーをナイフ一本でクリアしようとした時の事が、頭によぎった(結局出来なかったが…)。

 

躊躇うトムの中前で、〈繋ぐ者(クランプ)〉が手を蠢かす。

 無数の手が蠢くと、その奥の胴体らしき箇所に無数の歯がついた口が見えた。…ソレがトムには笑っている様に見える。

 

(捕まったら…あの口に喰われて終わりだ…。)

 

 ついさっき掴まれたばかりの首がジンジンと熱をもって痛む…冷や汗が頬を垂れていくのをトムは感じた。

 

 

「…………。」

 

『ーーーーーーーーーーー。』

 

ーーー暫くの間、互いの睨み合いが続く。

 

 

…先に動いたのは意外にもトムだった。

 

「……ココでまだ…死ねるわけないだろうが!!」

 

そう叫んで、素人感丸出しなナイフの構えで突っ込んでいく。

 

「ーーーージョンが待ってんだ!!逃げられないなら…オマエをココで斃してでも行くッッッ!!」

 

『ーーーーーーーーーーーー。』

 

繋ぐ者(クランプ)〉は突撃してくるトムに対して、手を伸ばして迎え撃つ。2メートル近く伸びる腕がトムに迫るが、トムはそれを躱すとナイフをおもいっきり 〈繋ぐ者(クランプ)〉の腕に突き立てた。

 

「ーーーーーー土壇場の人間なめんなァァァァァァァァ!!!」

 

勇気を振り絞り、目の前の腕にナイフで切りつけながら叫ぶトム。

 

次の瞬間ーーーーー鳩尾に 〈繋ぐ者(クランプ)〉の脚が飛んできた。

 

「ーーーーーーがはっ!?」

 

 蹴り飛ばされた勢いで吹き飛び、背後にある山積みのダンボールに突っ込んでしまう。

 

音を立てて崩れるダンボールの山。

 

ーーー中身があたり一面に散らばり、床に散乱する。

 

…震えながら起き上がろうとするも、鳩尾を蹴られたせいで息が詰まる。

 

「……うぅっ。くそぉ!!痛ぇ!!」

 

 こんな事なら、ビルみたいに喧嘩強くなっておくべきだった…と、トムはふらつきながら思う。

 

繋ぐ者(クランプ)〉がこちらに近づいて来た。何本かの腕にナイフで大小様々な傷がつき、血が垂れているが弱った様子は見えない。

 

(…ここで死ぬのか…俺は……)

 

 あたり一面に散らかったガラクタの山に崩れ落ちたトムは、自分の意識が薄れて行くのを感じた。

 

ガラクタの山を掻き分けて近づいて来た〈繋ぐ者(クランプ)〉が、トムの足を掴んで喰らおうと大きな口を開ける。

 

 

ーーーーーーカランッ……

 

 

その時、トムの手の中に何か光るモノが落ちて来た。

ソレは、きっとガラクタの中に混じっていたのだろう。…小さな四角い〈ライター〉だった。

 

(…ライター………あ、爆竹ーーー!)

 

 ソレを見た時、トムは咄嗟にーーー(どうしてそんなに素早く動けたのか、自分でも分からないが)ーーーライターを掴んで、さっき手に入れたばかりの爆竹の導火線に火を付けた。

 

 そして、 今まさに自分を食べようとしている〈繋ぐ者(クランプ)〉の口の中に火の付いた爆竹を放り投げたーーーーーー。

 

 

ーーーーパァンッッ!!!

 

 

繋ぐ者(クランプ)〉の口の中で爆竹が音を立てて破裂する。

 

『ーーーーーーーーーーーー!?!?!?!?!?!?!?』

 

繋ぐ者(クランプ)〉がトムの足を離し、床を転げ回って悶絶する。

 

…口の中で爆竹が爆ぜたのだ…想像を絶する衝撃だろう。

 

 そんな悶絶する 〈繋ぐ者(クランプ)〉にトムは駆け寄ると、近くにあった椅子を持ち上げて、〈繋ぐ者(クランプ)〉に振り下ろした。

 

「ーーーーうわぁぁぁぁぁああッッッ!!!」

 

 トムは無我夢中で椅子を何回も、何回も、〈繋ぐ者(クランプ)〉に叩きつけていく。

 意外と重い椅子が、〈繋ぐ者(クランプ)〉当たる度にゴスッと鈍い音がした。

 

 しかし、それでも〈繋ぐ者(クランプ)〉は倒れない。口から爆竹の破片を吐き出して、トムの手から椅子をはたき落とす。

 

「ーーーーーーおまえ……いい加減に…」

 

 トムは咄嗟にナイフを掴んで目の前の〈繋ぐ者(クランプ)〉の大きく開いた口の上(腕で覆われていない胴体部分)にナイフを根元まで刺し込んだ。

 

…何度も、何度も、狂ったようにナイフを突き刺していく。

 

「…くたばれよぉぉぉぉぉぉぉぉぉッッッ!!!」

 

繋ぐ者(クランプ)〉の帰り血がトムのジャージにかかり、赤く染め上げていく。

 

 しかし、〈繋ぐ者(クランプ)〉も、ただやられている訳では無い。なんとかしてトムの攻撃をやめさせようと、顔や腹を殴りつけて来る。

 

…しかし、ここで止めたら、死ぬのは自分だとトムは理解していた。

 

そして〈繋ぐ者(クランプ)〉もまた、理解していたのだ。

 

()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()…。

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

ーーー暗い駅の事務室で、2つの存在が自らの命を掛けて()()()()を続ける。

 

ーーーーーーバキッ

 

ーーー殴られた衝撃で口の中が切れて血が流れる。

 

ーーーーーーザクッ

 

ーーーナイフの刃に当たった〈繋ぐ者(クランプ)〉の指が、切り落とされる。

 

ーーーーーーガスッ

 

ーーー〈繋ぐ者(クランプ)〉に顎を殴られ、その痛みと衝撃で視界が揺らぐ。

 

「う…ーーーーーーァァァァァァァァッッッ!!!」

『ーーーーーーーーーー!!!!!!!!!!!!!!』

 

…それでも、意識だけは絶対に手放さない。トムは叫びながら、鮮血で真っ赤に染まったナイフを突き刺し続けた。

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

ーーーやがて、暗闇の中の闘いに、終わりの時が来る…

 

…長い闘いを制し、最後に立っていたのは……

 

 

 

「はぁ、はぁ、はぁ………どうだ化け物…ニンゲン…舐めるんじゃねぇぞ……。」

 

 

 

ーーーーーーーーーーーートムだった。

 

 

 

 

      to be continue

 

 

 





バックルームのエンティティは頑張れば倒せます。

…勝率は低いけどネ。
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