The Back Rooms Story 〜Fanmade〜   作:犬社長

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19話〈『必ず会おう』〉

 

 

 

 

 

……

 

………

 

…………

 

……………

 

あぁ…息が苦しい……俺は…どうなったんだ?

 

溢れた…マンホールの中に…飛び込んで……それから?

 

 

 

 

「……ぅう。」

 

トムの意識は闇の中から少しずつ浮かび上がった。

 

薄っすらと目を開けるトム。

 

…最初に目に入ったのは、容赦なく眼にさし込む強い蛍光灯の光だった。

 

(ーーーま、眩しい…!)

 

 思わず目を押さえながらトムは起き上がり、辺りを見渡した。

 

どうやら、此処は明るい地下鉄のホームの様な場所らしい。

 

 幾つもの線路が、壁に空いた無数のトンネルからホームに向かって伸びていた。

 此処に人の気配はないが、もう今まで感じて来た化け物達と死の気配も、此処には無かった。

 

とても静かな場所だ……そうトムは思った。

 

(まるで時が止まったみたいだ……。)

 

 そんな事を思っていると、自分の頭上に吊り下げられている電光掲示板が微かな起動音をたてて画面の表示を切り替え始めた。

 

 トムのいるホームに、まるで感情を感じさせないアナウンスが流れ始める。

 

『まもなくーーー582番線に、58時189分発 Level33〈the infinite mall〉行きの急行が参りますーーーーーー危険ですので黄色い線の内側までお下がりください。』

 

「…あ、電車が……。」

 

ーーートムの目の前のホームに、銀色に光る電車が滑る様にやって来た。

 

ーーースッと扉が開く。

 

…が、トムは乗りはしなかった。そのかわり先頭車両が停まっている場所まで、ホームを歩いていく。

 

 先頭車両に来ると運転席の窓が開いて、トムが此処で一番会いたかった人物が顔を出した。

 

「ーーーーーー車掌さん!!」

『ーーー久しぶりですね、トム・マクフライ君。生き残ってくれた様で何よりです。…しかし、案外早く此処にたどり着きましたね。』

 

 嬉しそうにそう言って、車掌さんはトムに手を差し出した。

その手を握るトム。

 そんなトムのボロボロになった格好を見て、車掌さんは労わる様に彼の手を握り返して言葉をかける。

 

『随分と苦労された様ですね…ですが、もう安全ですよ。貴方は〈the metro〉に辿り着いたのですから…。』

「……!」

 

 自分は遂に〈the metro〉に辿り着いたのだ…それを実感すると同時にトムの脳裏に、消えたジョンの顔が浮かぶ。

…本当なら、彼も此処に一緒にいる筈だったのに……

 

『ーーーところで…もう1人は如何なさいましたか?』

 

車掌さんがトムにそう尋ねた。

ジョンを思い出していたトムの顔が曇る。

 

「ジョンは……居なくなった……化け物の群れに襲われて…怪我をして…。ーーーそれで俺は1人でマンホールを探しに行って…戻ってきたら居なくなってた……探したけど何処にも居なかったんだ…。」

 

それを聞いた車掌さんも暗い顔で俯いた。

 

『…そうですか…二人とも生き残ってくれれば、良かったのですが……ところで、ジョンさんの痕跡は何か見つかったのですか?それとも、痕跡すらも…?』

 

 トムはポケットからあそこに落ちて居た1発の空薬莢を取り出して、車掌さんに見せる。

ジョンがいた時には無かった唯一のモノだ。

 

『……空薬莢…ですか。なるほど…ジョンさんは持っているはずのないモノですね…ふむ……。』

 

 車掌さんは空薬莢を手袋をした掌の上で何度も転がす。…何か、考え込んでいる様だった。

 

『余り詳しくはないですが、コレは5.56×44mm CE弾ですね…因みにCEとは〈Counter Entity〉の略です。ーーーつまり…もしかすると…。』

「ーーーーーー…もしかすると?」

 

車掌さんは空薬莢をトムに返す。

そしてトムにこう言った。

 

『ーーージョンさんは…生きているかも知れませんね。』

「ーーーーーーッ!!?

 

 ジョンが生きているーーーーーそれはトムにとって驚くべき事だった。

 

ーーーしかし、車掌さんは何故その空薬莢を見ただけで、ジョンが生きていると思えたのだろうか?

 

「し、車掌さんは何故そう思うんだ?ーーージョンのいた場所に落ちてたそれには、一体何の意味があるんだ?」

 

車掌さんは考え込む様に顎をさすりながら話し始める。

 

『まず、この世界に銃を使う様な存在は多くありません。…大体の存在は自分の力のみを武器にしてますからね。ただ、例外が一つあります。…それが〈反撃する者(カウンターエンティティ)〉です。彼等は他の〈エンティティ〉を狩る者…ジョンさんが、彼等に出会って居たのであればーーー保護してもらえているかも知れません。」

 

「〈反撃する者(カウンターエンティティ)〉…。じゃあ、ジョンはそいつらと一緒に?」

 

『そうかも知れませんし…逆にジョンさんもまた、エンティティの一体だと間違われて殺されているのかも知れません。だとすれば死体が残る筈ですけどね。』

 

「そ、そうなのか…。」

…あまり、安心できないかも知れない。

 

 

◇◆◇

 

 

 そうやって話をしていると、何処からか警笛のような音が、聞こえてきた。

車掌さんが腕につけている時計を見てトムに言う。

 

『出発の時間です。私は今からレベル33に行かなければいけません。ーーー貴方は此処で待って居てください。このホームを奥に歩いていけば、ちょっとした小部屋があります。その中で待って居てください…ただ、壁をよじ登ったり、工事中の場所に入らないように注意する様に。では、また。』

 

 そう彼が言うと扉が閉まり、電車はホームからやってきた時と同じように滑るように出て行った。

 

 

ーーーーー電車が去った後は、再びホームに静寂が訪れた。

 

「……行っちまった…忙しそうだな車掌さん…。」

 

 誰も乗らないのになんでだろうか…とトムは思ったが、深くは考えない事にした。

…彼はただ電車を動かしているだけでは無く、何か自分の知り得ない重要な役割を担っているのでは無いか…と、トムは何となく思っていたのだ。

 

 

 言いつけに従って、ホームの奥へと歩き始める。車掌さんが言っていた部屋はすぐに見つかった。

 

「ここか…〈車掌控室〉…車掌さんの…部屋なのか?」

 

 扉にかけられたネームプレートを読んで、中に入るトム。

 

ーーーーー中は思ったより広かった。

 

 部屋の真ん中にモダン調の机と椅子があり、壁沿いに沢山の電車の模型が台の上に載せられて飾られている。

 

 特に目を引くのは、壁の少し上の方に掛けられた儀仗用の銀色の剣だ。それは、綺麗な装飾に飾られ、一際存在感を放っている。

 

 

「……凄い部屋だなぁ…それに綺麗な剣…。」

 

トムは剣をじっと見つめて呟いた。

…昔、コレを持った車掌さんを見た事があったような…無かったような…いつだったっけ?。まぁ、今は気にする事じゃ無いか。

 

 トムは車掌さんが帰ってくるまで椅子に座って待つ事にした。ポケットから空薬莢を取り出して部屋の明かりにかざす。

 

「…ジョン…何処にいるか知らないけど、必ず見つけ出すからな。」

 

トムはそう独りごちた。

 

 

 

 

 

◇◆◇◆◇

 

 

 

20XX年?月?日

 

バックルーム レベル11〈the infinity City〉

 

[ジョン視点]

 

 

「…無限の…街?」

 

ーーーーージョンはそう呟いた。

 

 目の前には、のっぺらぼう…改め〈顔無き者(フェイスリング)〉の男が立っていて街を指差しながら頷いている。

 

「ーーーその通りです。ココはこの世界の中でも最も素晴らしい場所ですよ。貴方も気に入りーーーーー…」

「ーーーーーー待ってくれ!さっきまで俺がいた場所に戻れないのか??」

 

 ジョンがそう言うと〈顔無き者(フェイスリング)〉の男は不思議そうに首を傾げた。

 

「…何故です?〈the dark metro〉は危険ですよ。また危険の中に舞い戻るつもりなんですか?」

 

「……俺の仲間がまだ、ソコに居るんだ。そいつは怪我して動けなくなった俺の代わりに出口を探してくれてた。そいつが帰ってきた時俺がいなかったら心配させてしまう。」

 

顔無き者(フェイスリング)〉の男は困った様に唸りながら首をひねった。

 

「う〜〜〜ん… それは〜…弱ったなぁ…〈the dark metro〉にココから戻ろうとすると〈ヴォイド・ドア〉を探してレベル679にいく必要がありまして…アソコも危険だしねぇ〜…ーーーーーーそれに、〈ヴォイド・ドア〉は滅多に見つかりませんよ…このレベルに、星の数ほどあるドアを片っ端から開けて確かめていかないと…。」

 

「俺をココに連れてきた兵隊達は?彼等はアソコから俺をココに連れてきてくる事が出来たんだろ?逆の事はできないのか?」

 

顔無き者(フェイスリング)〉の男は首を振った。

 

「ーーーーーーあのヒト達は随分と前に帰りましたよ。いつも、慌ただしく動いてる方々ですからね。確かにあのヒト達ならーーーノークリップ…つまり〈量子揺らぎ〉をコントロールする事が可能ですが、もう何処かのレベルへノークリップして行ってしまったんですよ。何処へ行ったかは、知りません。」

 

「………そうか…。」

 

どうやら、元の場所に戻るのはかなり厳しいらしい。

 

「…それに、言っては悪いかと思いますが、たった一人であの〈the dark metro〉を生き延びれるとは思いませんがねぇ…。2人でも結構生き残れたのが奇跡みたいなモノですし…仲間に会うのは、もう諦めては?」

 

ジョンは首を振った。

 

「それは出来ない…あそこで生存するのが厳しいって事は、俺が身をもって理解してる……でも、俺は仲間を信じたいんだ…必ず戻ってくるって…彼は言ってくれたのだから…。」

 

顔無き者(フェイスリング)〉の男はそれを聞いて何か考え込んでいる様だった。

 

「…信じたい気持ちも分かりますよ。…ならばこちらも何か手を打ちましょう。私の家に来てください…私は()()を持っています…何か役に立つかも知れません。」

 

 そう言うと〈顔無き者(フェイスリング)〉の男は、ジョンを手招きした。

 

彼について、ジョンは歩き出す。

 

ーーーーー歩きながら、青い空を仰いでジョンは呟いた。

 

 

「ーーートム…無事でいてくれ…必ず会いに行く。」

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

…異なるレベルで、2人は互いに『必ず会おう』と決意を新たにしていたーーーーー

 

 

 

 

 

 

   to be continue

 

 





次回新章です。

新章では遅まきながらヒロインが登場します。(遅い)

ヒロインの方がどうしてバックルームに入る事になったのか…というところから始まるので、また、舞台がレベル0に戻ります。

なので、次の章ではしばらくトム君とジョン君は出て来ません。
まぁ、2人とも何とか安全な場所に来れたので、ユルシテ…ユルシテ
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