The Back Rooms Story 〜Fanmade〜 作:犬社長
◇◆◇
…………頭が痛い。
…………体が重い。
ーーーーー私は…私はどうなったっけ?
◇◆◇
「ーーーーーーーーーーーッ!!!」
跳ね上がるように私は床から
…心臓が早鐘の如く鼓動を打っている。
(た、確か私、穴の中に突き落とされてーーーーー…何で生きてるの?)
不思議に思いながら乱れた髪を整える余裕もなく、私は辺りを見渡した。
…どうやら、私は広い灰色の倉庫のような場所に倒れ込んでいるらしい。
「さっきの所とまるで違う…一体ここは……。」
呟いて、私は上を見上げた。穴から突き落とされてここに来たのだから、天井に落ちていた穴があると思っての事だった。
(……あれ…落ちてきた筈の穴が無い…?)
しかし、上には天井があるだけで穴など何処にも空いていなかった。
(じゃあ、どうやって私はここへ…?)
私は疑問に思った。そもそも、落ちる途中で気を失ってしまう程の高さから落ちたのに、何故私は無事なのだろうか。…疲れから体が重たく、頭が痛いが感じる不快感はそれだけで、体は何処も痛めたり、怪我を負ってはいない。
(訳が分からなさ過ぎるわ…あの『怪物』といい…あの黄色い部屋といい…。夢の方がまだ分かり易いわよ…。)
ため息をついて、私は肩に掛けていたショルダーバックからスマホを取り出した。時間を確認しようと思ったのだ。
しかし残念な事に、バックの中でスマホは高い所から地面に叩きつけられたかのようにバキバキに壊れていた。
「うそ…携帯が…。」
スクラップとなったスマホを持って私は途方に暮れる。…まぁ、もともと圏外で電話は繋がらなかったのだが、それでもこれはショックだった。
私は役立たずになったスマホを仕舞い込むと、立ち上がって歩き出した。
…歩いた所で何になると言うのかは分からない。しかし、何かしていないと気が触れそうだったのだ。歩くだけでも、気は紛れるものだろう。
ーーーーーこうして、ジェニファーはレベル1〈Habitable zone〉を彷徨う事となった。
◇◆◇
所々霧がかかっている灰色の世界をあてもなく歩き続ける。
自分以外の生命の気配が無いこの場所を歩いていると、何だか自分がとんでもなく場違いな場所に迷い込んでしまった様な気がして来る。
(実際、そうなのかしら…きっと、私はここに居るべきでは無いのね…。)
…そう思いながら、歩いていたジェニファーはふと、少し先の床の上に箱が無造作に置いてある事に気がついた。
(何かしら…アレは…箱の様だけど…。)
興味を惹かれた彼女はその箱に近づく。
箱には蓋がされていたが、ジェニファーは中に何か入っているのか気になったので、開けてみる事にした。
(よいしょ…あら、何かしらコレ。)
…中には彼女にとって初めて見るものが入っていた。
「…飲み物?…ア、アーモンドウォーター…?」
箱の中に入っていた飲料水のボトルらしき物を拾い上げて、しげしげと眺める。
「…見たことも、聞いた事もないドリンクね…何でこんな物がココに?」
彼女はボトルの蓋を開けてみる。
…微かに甘い、良い香りがした。
「良い香りね…飲めるものかしら?」
喉は渇いていなかったが、彼女は一口だけ飲んでみる事にした。
「…!ヤダ、美味しい…。」
ほんのりと甘く、さっぱりとした味わいで、意外といけるかも知れない。
ジェニファーは箱の中に手を伸ばし、残りのアーモンドウォーターを持って行こうとして、ふと手を止める。
「うーん…箱の中の物、勝手に開けちゃったけど…持っていって良いのかしら?」
ここが現実世界なら、もっともな疑問だったが、この世界にそれを咎める者は居ない。
なら、良いか…と、ジェニファーはアーモンドウォーターを持てるだけ自分のショルダーバックに詰め込んだ。
ーーーこんな世界だ。使える物は使わせて頂こう。
ジェニファーは再び移動を再開した。このドリンクを飲んだせいか、体の疲れが少し和らいだ気がする。
もう少しだけ、歩いてみよう、と彼女は灰色の世界の奥へと足を進めた。
◇◆◇
未だ、果ての見えない灰色の世界を歩き続ける。
(…本当に静かな場所…羽虫一匹たりともここには居ないのね…。)
その死んだ様な静けさの中、ジェニファーは歩き続ける。
その時ふと、視界に何か小さい影の様なものが横切って、少し先にある曲がり角を曲がり消えていったのに、ジェニファーは気づいた。
(……何かしら?)
影が去っていった方に足を向けてみる。曲がり角を曲がると、影の主を彼女は知ることができた。ソレはーーーーー
「…チュウ!!」
「…あら、ネズミね…。」
ーーーーーーソレはネズミだった。
一体何処から現れたのか分からないが、そのネズミはビーズの様な黒くて丸い目で、此方を見つめていた。
(…か、可愛い……)
少し近づくジェニファー。しかし、ネズミは彼女が近づいた瞬間鼻を震わせて逃げていった。
「あ。」
ちょっと残念に思ったジェニファー。
しかし逃げていった筈のネズミは、すぐに逃げていった時の速度以上で、此方に戻って来た。
(あら?戻って来たの?)
ネズミは飛ぶ様に此方にやって来ると、ジェニファーの足下に潜り込んでガタガタと震えだす。…何かに怯えている様だった。
「…どうしたのよ?そんなに震えて?」
そう言ったジェニファーは、ネズミが飛び出して来た先から、長い影が此方に向かって来る事に気がついた。
床に長く伸びた影を見て、怪物を連想したジェニファー。
(嘘…ここにもあの化け物がうろついているの!?)
後ずさるが、後ろは壁だった。影の主はゆらゆらと揺れながら、此方に近づいて来る。
怪物の恐ろしい姿を思い出して、ジェニファーはネズミと一緒に震え上がった。
(何よ…何なのよっ!)
「チュッ…チュ〜ッ!」
1人と1匹が壁際で震えて縮こまる中、影の主が姿を現した。
「
「…ね、猫じゃないの!?」
ーーーーーソレは茶色の毛並みの猫だった。
怪物じゃ無かったことの安心感で、気が抜けて座り込みかけるジェニファーと対照的に、足下のネズミはますます震え上がっていた。
猫は不思議なぐらい丸っとした体をぽてぽてと動かしながら、ジェニファーを無視して、ネズミに近づいていく。
「あ、ちょっと待ちなさい。」
ネズミが可哀想だと思ったジェニファーは手で猫を制した。
「ミャア〜〜…?」
ちょっと猫が不機嫌そうな顔で此方を見上げる。
「御免なさいね…ネズミさんが怖がってるわ。…だから、ホラ…代わりにコレあげる。」
ジェニファーは猫の口元にアーモンドウォーターの缶を近づけた。
「…ミィ〜。」
猫が鼻を近づけて匂いを嗅ぐ。
「…どう?これでネズミさんの代わりになるかしら?」
…猫はペロリとアーモンドウォーターを舐めた。
「ーーーーーニャ〜〜〜。」
…どうやら、お気に召した様だ。アーモンドウォーターの缶に口を突っ込んでペロペロと飲み始める。そんな猫の丸い体を見ながら、ジェニファーは不思議に思って呟いた。
「ソレにしても、丸過ぎるわね…この猫。太っているとかそういう次元じゃなくて、骨格からもう丸い感じがする…不思議な猫ね。」
ーーーーーこの猫が〈
ただ、奇妙な猫だなぁ…と思っているだけであった。
「ニャ〜。」
「あら?もしかして、無くなったの?」
気がつくと猫ーーー改め〈
そして、満足そうに鳴くとジェニファーの手に頭を擦り付けて喉をゴロゴロ鳴らす。
…どうやら、ジェニファーに懐いたらしい。
「あらあら……懐かれちゃった…。」
ちょっと思いもしなかった事に戸惑うジェニファー。…まぁ、可愛いから良しとしようか…と思っていた時のことだった。
「ーーーーーーおーい!そこに誰か居るのかぁ!?」
近くから、
まさか、人の声が聞こえると思わなかったジェニファーは驚いて立ち上がる。
「(人?まさか、そんな筈…)…ココに居るわよーーーーーッ!!」
不思議に思いながらも、同じ様に叫ぶジェニファー。
すると近くの壁の裏から、黄色い汚れ塗れの防護服を着込んだ1人の男がひょっこりと姿を現した。
「…何てこったい…まさか本当に人だなんて…神よ!この出会いに感謝を!!」
その男は大袈裟に手を挙げて、叫ぶ。
ジェニファーはその男を、まじまじと見つめていた。
なぜなら、その男は随分と不思議な格好をして居たからだ。
ダボついた真っ黄色のダサい防護服もそうだが、背中に大きなリュックと人1人包み込めそうなぐらい巨大なダンボールを背負っているのだ。…格好が意味不明すぎる。
「何だ?俺の顔に何かついてるか?」
男がジェニファーを見て首をひねった。
「あ、ああ…いや、私…その段ボールが気になって…。」
男は合点がいった様にうなずいた。
「ああ。コレか…後で説明するよ。ところでお姉さん、名前は?俺の名前は
律儀に自己紹介をしてくれたピーターという男にジェニファーもまた、自己紹介を返す。
「あ、えっと、初めまして。私はジェニファー・ウィルソンです。ど、どうも?」
「ウィルソンさんね!よろしく。」
男ーーーピーターは、嬉しそうに手を差し出して来た。
ジェニファーはその手を握り返す。
なんだか、久しぶりに人の手に触れた気がした……
to be continue
遂にピーター再登場です!どうやらただ、レベル1を彷徨って居たわけではない様ですが…
後、バックルームで最も可愛らしい癒し系エンティティ〈ブロブキャット〉も登場です。
某YouTuberが『バックルーム可愛いエンティティランキング』で1位にしてて、実際めちゃ可愛いのでいつか、この物語にも登場させたいと思っておりました。
やっと出て来れたネ。
(=^ェ^=)ヤッタゼ