The Back Rooms Story 〜Fanmade〜 作:犬社長
◇◆◇
ーーーーージェニファー達を乗せたエレベーターは、依然闇の中を降下し続けている。
静かなエレベーターのなかで座り込んでいると、ふわぁ…と欠伸が出てきた。
「眠たいか?」
ピーターの問いにジェニファーは目を擦りながら頷いた。
「…ええ。いま何時から知らないけれど、バックルームに来てから一睡もして無い気がするの。」
「ーーーんー…次の場所では、寝れると良いな。…さっきのオフィスは物資が豊富だったけど、寝れるような場所じゃあ無かったからね。」
ーーーそうピーターが言った時、エレベーターがゆっくりと降下を止めた。
…ガコン。
微かに揺れて、エレベーターは停止する。そして、ドアが軽やかに開いた。
「お、着いたか。」
既にエレベーターの外には暗闇では無く、新しい景色が広がっていた。
「さぁて、此処はどんな場所かなぁ?」
◇◆◇
其処は、ちょっとレトロな空気の漂うホテルの中を連想させる空間だった。
シックな雰囲気の壁の装飾や、天井から吊り下がった暖色系のランプ等…どこかノスタルジックな、歴史さえ感じる佇まいだ。
「まるでホテルみたいね…もしかして、ここなら寝れる?」
周りを見渡してジェニファーは呟く。
ピーターも頷いた。
「ああ、確かにホテルみたいだ。寝る場所があるかも知れないな。」
ーーーーーなんて良いタイミングなんだろうか?寝る場所が欲しいと思っていた時にピッタリな場所に辿り着くことが出来たようだ。
ジェニファーは、無人の受付ホールーーー(2人が出てきた場所はここだった)ーーーを横切って先に進む。
目当ての場所ーーーつまり宿泊部屋は受付ホールを出てすぐの所にあった。
そこは、果てが見えない程長い廊下のあるエリアで、両側の壁には沢山のドアが取り付けられていた。更に、そのドア一つ一つの向こうには、それなりに広い寝泊まりするための部屋がある。
「wow…こんなにたくさんの部屋があったら、アメリカ中の人間が泊まりに来てしまっても、大丈夫だな。」
ちょっと呆気にとられた様にピーターが呟いた。
ジェニファーは近くのドアを開けて中に入る。
中は、多少埃っぽかったがシングルのベットと椅子、机、クローゼットに洗面台もあった。ベットに座り込んだジェニファーはため息をつく。
「ふぅ…コレでやっと寝れる………所で、ピーターさんは眠らないのですか?」
ピーターは軽く笑って手を振った。
「いや、俺は大丈夫さ。20日の間、四六時中明るいあのコンクリートの世界を彷徨っているうちに時間感覚狂ってきちまってね…心配はしないでくれ、眠たいと思ったら寝るよ。」
…そう言って彼は椅子に座り込むと、アーモンドウォーターと廃オフィスで手に入れたバーを食べ始めた。
「…もぐむぐ……とりあえず、寝てて良いよ。アレだったら俺は隣の部屋に移ろうか?」
「ーーーあぁ…別にどっちでも良いで…zzz……。」
「あれ?ウィルソンさん?………寝るの速いな…。」
ジェニファーは彼に答える前に寝てしまった。
ピーターは暫く椅子に座って今からどうするか考えていたが、結局彼女が起きるまで、その部屋にいる事にした。
待っている間、暇なので椅子に座ったまま、今日のことを思い返す。
(ーーーーーーしかし、20日間もあの灰色の世界を彷徨ってたのが馬鹿らしいぐらいに今日は色んな場所に行ったな…マジで運がむいてきたと思うよ…もしかしたら…)
ジョンに…再開できるかも知れない。ただ、彼が生きている確証はないがーーー。
「ーーーでも、生きているのなら…きっとどこかで会えるよな。」
静かなホテルの一室で、ピーターは小さく呟いた。
現実的に考えれば厳しいことぐらい分かってる。でもーーー少しの希望ぐらい…抱いても良いだろう。
◇◆◇
ジェニファーは夢を見ていた。
ーーー夢の中で自分はいつもの会社のオフィスにいた。
別に自分で望んだわけじゃ無かったけど、お金の為に入社したIT企業の会社。
朝から晩まで働き続け疲れ果てて、終電のなかで眠る日々。
一人暮らしの家は殆ど開けている時が多かったし、昔の友達とは疎遠になってしまった。
お金は周りの人達よりかは沢山手に入れていたけれど、自分の全てを失って手に入れたそれに…果たして意味はあったのだろうか?
……やがて、夢の中の舞台はあの、黄色い世界に変わっていった。
夢の中の黄色い世界は、瞬きするたびに形を変え、灰色になったり、パイプだらけになったり、オフィスになったり、ホテルになったり、秩序なく姿を変え続ける。
それを見ていたジェニファーはふと、あることを思った。それはこの世界を彷徨いだしてから、ずっと心の奥にあった言い表せられないもの…それが今言語化されて、頭の中に浮かび上がってきたのだ。
「そうだわ……この世界は自由なのよ。纏まりなく…無秩序で…まるでいろんな人が創った空想の世界を、継ぎ接ぎして一つに纏め上げたかのような……ごちゃごちゃだけれど、故にこの世界は無限で自由なんだわ!!」
彼女がそう夢の中で言った瞬間、あらゆる物は万華鏡の様に混ざり合って彼女の視界に広がったーーーーー…
「ん……うぅん…。」
ジェニファーは自分の呻きで目を覚ました。
ベットから起き上がると足元で顔を洗っていた〈
「お、起きたか。どうだい?スッキリしたか?」
椅子に座ってネズミと触れ合っていたピーターが、こちらを向いて話しかけてくる。
ジェニファーは頷いた。
「ええ、体の疲れはすっかり取れました。寝させてくれてありがとう、ピーターさん。」
「おお、良いってことよ。」
ーーーーーピーターはそう言って軽く手を振った。
◆◇◆
しっかりとベットで寝た事で気分が良くなったジェニファーは、ピーターと一緒にこのホテルの探索を開始した。
このホテルはどうやら三つの空間に分かれている様だった。
一つは、ランダムで複雑な構造を持ち、鮮やかな装飾が施されており、エントランスやレストラン、そしてホールや無人の受付、宿泊部屋、トイレ、廊下と階段などを含む〈メインルーム〉
二つ目は、一辺 100 m ほどの正方形の部屋群で、それぞれの部屋の側面には 100 枚ほどのドアがある〈ビバリールーム〉
ーーーーー此処にはプレイの途中で放棄されたらしい麻雀台が有るが、台に近づこうとすると何だか変な気分になって近づけない。
三つ目が、メインルームの中に散在する空間群で、大量の機械が移動に支障が出るほどの密度で設置されており、また壁や天井には大量のパイプが絡み合いながら這いまわっている場所〈ボイラールーム〉
……此処はパイプだらけの場所で、あわや死にかけたことを思い出すので、あまり通りたくない。
ーーーーーーーーそんな場所を歩き回っていた時、前を行くピーターがふと、こちらに振り向いた。
そして訝しげな顔で話しかけてくる。
「どういう事だ?ウィルソンさん?」
「……え?」
ジェニファーは問いの意味がわからず固まった。
「いや、今『ロビーに戻ろう』って言わなかったか?」
「…?私そんなこと言ってないですけど…?」
話によると、ピーターは誰かがロビーなる場所に戻る様にと話しかけてくる声を聞いた気がしたらしい。
「おっかしいなぁ…幻聴か?」
ピーターは頭を振りながら呟いた。
それを不思議に思いながら見ていたジェニファーはふと、
「ーーーーーひゃっ!?」
慌てて後ろを振り向くが、背後には勿論誰もいない。
「一体何なの?…気のせい?」
「…ジェニファーさんもか。なんか妙な空気になってきたぞ…。」
ピーターが呟く。
「…最初は良い所に思えても、ちょっと探索してると変なことばっかり起き始める…此処も真に休める場所じゃ無いか…。」
一方その時、ジェニファーは自分が何処かから見られている様な気もしてきていた。
(何だか、あちこちから見られてる気がするわね…)
気のせいだと断じて仕舞えばそれまでだが、やがて2人が感じる違和感は徐々に耐え難いものになってきた。
「うーん…何だか気が狂いそうになって来た…。さっきから絶対見られてるし、ロビーに行け行け煩いし、肩やら頭やら叩かれるし…さっさとこっから出よう…2人とも気が狂っちまう。」
「そうね…早く出口を見つけましょう。」
2人は少し急ぎ足で出口を探し始める。
壁にかけてある絵画の目が自分達を追いかけている様に見える。壁から顔が染みのように浮き上がってくる幻も何回も見た。
早く、此処から出なければ…2人はそう思いながら、歩き続ける。
…そして、2人は遂に
下向きに続いているその階段は装飾が無く、無機質で、まるで暗い穴の中へ続いているようだった。
「この階段は今までの階段と明らかに違う…別の場所に繋がっているのかしら?」
「そうだと良いが…。」
顔を見合わせる2人。
「…二ャアォ。」
〈
こっちで、あってるよ…と言っているようだった。
「あんまり良い予感はしないけど…猫が導いてくれてるし…行ってみるか。」
ピーターが階段の先の暗闇を見つめて呟く。
ジェニファーも、頷いた。
「そうですね。ーーーーー行きましょう。」
2人は意を決して闇の中へ続く階段を下っていったーーーーーーーーーー…
to be continue
次はレベル6になります。(╹◡╹)
次の話は一度に二つのレベルを、移動する事になるかも知れません。
じゃないとこの章長くなってしまうと思うのでネ。