The Back Rooms Story 〜Fanmade〜 作:犬社長
ジョン(John)はありふれた男性の名前、ドゥ(Doe)は架空の名字を指す。
Wikipediaより
20XX年 8月10日 米国 某州 某所
「では、これから第一回開通実験の概要を説明する。」
広い室内に男性の声が響く。
それを聞いているのは研究員らしき大勢の白衣の男達だ。
「今回行われる第一回開通実験では、まず<異世界>改め<バックルーム>の実在性の検証をし、開通に成功した場合は<バックルーム>内部探索を行いこちらの世界との差異の確認をする事とする。」
机の上にあるプロジェクターが動き出し壁にかかっているホワイトスクリーンに映像を映し出す。
その映像には大きな両開きの扉が映し出されていた。
「磁気空間歪曲システムの準備は終了している。我々の予想が正しいならばこの扉の先に<バックルーム>が現れるはずだ。」
(この先に…新世界が…!)
その映像を見た全員の間に微かな緊張感が走る。
「第一回開通実験は今より20分後に第二実験棟にて開始する、開通が確認された場合、第一回バックルーム内部探索班を招集するので探索班の職員4名は防護服着用等の準備を速やかに行い第二実験棟にて待機する事。」
その言葉を合図にして部屋から職員らしき人が4人足早に部屋を出ていく。
「他の職員は磁気空間歪曲システムの運用時の注意事項確認のためここに残るように。それでは…ーーーーーーーー」
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
ジョン・ドゥはM.E.Gの職員である。
身長176cm、30歳独身、最近体重が増えてきたのを気にしつつも、深夜にネトフリ見ながら食うピザがやめられない。
そんな男である。
しかし、そんな彼のメンツの為に一応言っておくと彼はエリートである。
確かに見た目こそパッとしないかもしれないが、このM.E.Gの職員つまり、国の最重要国家機密プロジェクトに参加できるぐらいには優秀な人物と言えるだろう。
「しかし…この防護服もうちょっと何とかならなかったのかなぁ。」
M.E.Gが持つ極秘実験施設…その第二実験棟の準備室で他の同僚3人と面倒な着替えをしながらジョンは愚痴った。
彼らが着ようと苦戦しているのは、だぼだぼの黄色い防護服だ。
上下が完全に繋がっているデザインでやけに古めかしい防護マスクがくっ付いている。(しかもそこそこ重い)
「まぁ、そう言うなジョン。天下のM.E.G研究機器開発課様がお作りになった最新防護服だぞ?きっと俺たちの想像もつかない機能がてんこ盛りなんだよ。」
そうジョンに言葉を返すのはスキンヘッドの白人男性…名をピーターと言う。ジョンの数少ない友人の一人だ。
「いや、まぁそう思いたいけどさ。てか前から思ってるんだがさ、M.E.Gって前身も含めて国の隠しておきたいあれやこれやをする機関だから、情報の機密性が高いってのは分かるんだけど隣のデスクにいるやつが何してるかさっぱりわからないとか研究機関としてどうなのって、思うんだよね。」
「「「それはそう。」」」
ジョンの愚痴に他の3人の仲間達も声を揃えてうなずく。
「情報交換できる時期も限られてるもんな。」
「そんなんだから、一応一つの課で一から十までプロジェクト遂行が出来る様に人員が組まれてるらしいけど。」
「じゃあ、他の課いらなくね?ってなるもんなぁ。」
「この防護服だって今日初めて渡されて、『バックルームは全くの未知の領域だけどこれ着てれば何とかなると思うんでイカ、よろしく〜』とか絶対ふざけてるって。」
「それな。」
そんな事を話しているうちに何とか全員の防護服着用が終わった。
ただ防護マスクはまだつけない。
「さ、あとはアッチの結果次第だな…。」
ジョンは小さく呟いた。
◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆ ◇◆
第二実験棟はかなり慌ただしい様を呈していた。
騒ぎの中心あるのは壁に埋め込まれた両開きの扉とその周りを取り囲む何やら複雑な機械達だ。
この扉と機械こそが、現実とバックルームを繋げる為の<磁気空間歪曲システム>の根幹をなすものである。
「……時間です。総員、扉から離れて下さい。これより起動確認を行います。」
指揮を取るのはあの白衣の男だ。
「…いよいよだな。今日ついに現れるのか、バックルームが…。」
彼の横に立つ背広の男が感慨深そうに扉を見上げた。
「そうですね。ここは危険ですので貴方は一足先に管制室の方へ移動お願いします。」
もしかしたら、白衣の男も遂に始まった実験に何か心躍っているのかもしれない。
しかし、あくまでも彼は表情を変えなかった。
「ああ、そうする事にするよ。」
背広の男は軽く手を振ってその場から離れていった。
実験棟に実験の開始を告げるノイズ混じりのアナウンスが流れる。
『(ノイズ音)あー、あー、これより第一回開通実験を開始する。今機材の前にいる職員は全員管制室に退避すること。退避完了次第<磁気空間歪曲システム>の起動を開始する。(ノイズ音)」
最後の方まで残っていた白衣の男含め職員達が扉の前から足早に立ち去っていく。
そして管制室で大勢の人々が見守る中、地響きのような音を立てて遂にソレは動き出した。
「…ッ全システム起動開始。」
「第一段階…異常なし、続いて磁気の収束段階に移行…。」
慌しくなる管制室。そして管制室のモニターに次々と明るい光が点き始めた。
そして警報が断続的に鳴り始める。
「配線Aにエラー発生。」
「予備回せ。」
「了解、磁力の誤差修正……誤差…0.00000063s/mf。」
「想定の範囲内だ。そのまま続けろ。」
扉の向こう側、今はただの部屋の壁があるだけの空間が誰の目にも解るほど、ぐにゃりと歪んだ。
歪みはどんどん強くなり黄色い光を発し始める。
そして実験棟自体が左右に揺れ始めた。
「くっ…かなり揺れるな…。」
「今あの扉の中に地球一個分の磁気エネルギーが集まってるんだ。下手すればマイクロブラックホールができるぐらいの力…それは揺れるさ。」
パラパラと天井から破片が落ちてくる。
それを見た背広の男はこの実験棟のことを考えて少し心配になった。
「おいおい…崩れやしないか?」
それに答える白衣の男
「この程度では崩れませんよ。核爆発にも耐える仕様です。」
「あぁ…そうか、なら良い。」
二人の見守る先で扉に変化が訪れる。
「第二段階突破!最終段階ですッ!!」
食い入るようにモニターを見つめる職員が叫ぶ。
「了解!気を付けろ、こっから先の運用は初めてだ!!」
「…分かってはいたが凄いな…通常の5倍以上のエネルギーゲイン放出がある…。」
「す、すでに未知の電波を大量に検出しています!ハハッ…これは凄い!」
今や扉の向こうは黄色の光によって完全に満たされていた。
その様子に恐れを抱く者、好奇心が抑えきれぬ者、管制室は興奮の中にあった。
そしてその時は訪れる。
「……MF値が最大値で安定化、空間の歪曲が収まりました。開通実験は…全工程終了です。」
地鳴りのような音が小さくなっていく。それにつれて実験棟の揺れもおさまっていった。
そして彼らの前に<バックルーム>は姿を現した。
「…黄色い…廊下?」
「いや、部屋の集まりでは?」
「俺の目が狂ってなきゃ天井に蛍光灯が付いてないか?」
扉の向こう側に現れたのは、床も壁も天井も全て黄色一色に彩られた広い部屋のような空間だった。
一定間隔で天井に付けられている蛍光灯が耳障りなハム音を響かせている。
「…ふむ。これがバックルーム…そう言う事でしょうね。我々が想定していたものとは随分と違いますが、なるほど確かに
白衣の男が扉の先を見据えながら呟く。
「ここまで、部屋っぽいとは思わなかったがな。」
背広の男が感想を述べた。
「とりあえず開通実験は一応の成功という事ですかね。今のところ異常も確認されていませんし、ただ、実験自体が終わったわけではないので各自気を抜かないように。では、次の段階へ移行しましょう。」
白衣の男の合図で管制室の職員達が動き出す。
そして準備室から一連の出来事を見ていたジョン・ドゥ達探索班も動き出した。
「成功か。意外とあっさり出来たな。」
ジョンの横でピーターが言う。
「ああ、あっさり成功して良かった。失敗するよりはね。」
ジョンは防護マスクを着けながら言った。
彼らは黄色い世界の中に向かって歩いて行く。
「行こう。最初の一歩をバックルームに刻みに。」
バックルーム物語なのにまだバックルームに辿り着いてないってマ?
まだ三話目なので許して…ユルシテ…
次回はジョン・ドゥ君と仲間達のバックルーム探索記となります。
ま、まともに探索できるはずがないんですけどネ
トム・マクフライ君の安否が気になる方は申し訳ないが暫しお待ちを…