The Back Rooms Story 〜Fanmade〜   作:犬社長

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29話 〈B.R.C.U〉

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

20XX年 9月 7日 アメリカ某州 某所

 

場所:M.E.G研究施設 第二実験棟

 

 

 

ーーーカツ…カツ…カツ………ガチャリ…

 

 

 明かりの落とされた実験棟内に、足音と共に複数の人影が入って来た。

 

 全員、沢山の銃火器類と頑丈そうな重装備を身につけ、言葉を交わす事なく実験棟内に立ち入って来る。

 

………まるで特殊部隊か何かの様だった。

 

 彼等は、昨日の事件から依然閉ざされたままの、バックルーム前哨基地へと、足早に入っていく。

 

 

ーーーソレを管制室で、固唾を飲んで見守る者が居たーーーーーーーー。

 

 

「…アレが、〈バックルーム制圧部隊(Back Room Control Unit) 〉略して〈B.R.C.U〉………まさか、軍にその様な特殊部隊が発足していたなんて……。」

 

 そう唖然とした様に呟いて居るのは、白衣の男こと、Dr.ブラウンだ。

 そして、彼の横には軍服に身を包んだ男が1人、立っている。

 

「…如何にも。アレは何年も前から、バックルームの開通研究と並行して、我が国の軍部で編成と調整が進められていた()()()()()()()()()()()()()だ。」

 

「………。」

 

ーーー軍服の男は話を続ける。

 

「ーーーーーかの〈The First〉によって第二次世界大戦中に行われた〈フィラデルフィア計画〉…そして、それから得られた〈証言〉……その証言をもとに、近い将来人類がバックルームに辿り着いた時、必ず目の当たりにするであろう()()()()()()()……それに対抗する為のモノでもある。」

 

それを聞いたブラウンは顎に手を当てて呟いた。

 

「ーーーーー〈The First〉…M.E.G(私達)の前身組織ですね…随分と昔に白紙化されて、構成員は誰も居なくなったと聞いて居たのですがーーーーーまだ思想は生きていたんですね。」

 

軍服の男は頷いた。

 

「その通りだ。まぁ、見ていたまえ…貴方にもきっと分かる筈だ…〈B.R.C.U〉の力が。」

 

 

ーーーーーー2人の見守る先で、〈B.R.C.U〉はバックルームの中へと突入していった……

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

バックルーム レベル0 〈Lobby〉

 

 

[B.R.C.U視点]

 

 

「…此方、アルファ。これより、隔壁を解放する。」

 

 バックルーム内部の前哨基地ーーーーーーー怪物の出現以降、閉ざされたままの隔壁前で、彼等は言葉を交わしていた。

 

「此方ベータ。…了解したーーー総員警戒せよ…まだ、向こうに怪物が居る可能性も否定できん。」

 

ーーー警戒を強める彼等の前で、閉ざされていた隔壁が軋んで上がり始める。

 

…そして、完全に隔壁が上がった時、その先で〈B.R.C.U〉のメンバーは悲惨な現場を目撃する事になる。

 

「……!!血が……。」

「……これは…酷いな…原形を留めてないぞ……。」

 

 

ーーーーーーーーそこにあったのは、閉じた隔壁をこじ開けようと必死になって縋り付いている姿のまま、怪物に殺されたと見られる何人かの死体だった。

 黄色い壁や天井にまで、(おびただ)しい量の血液が飛び散っている。

 更に、あちこちに鋭い爪で引っ掻いたと思しき、長い切り込みの様な痕がついていた。

 

「…どういう事だ?報告では犠牲者は居ないって話だったぞ…?」

 

「ああ…報告書に間違いはないはず…ならどうして…。」

 

 〈B.R.C.U〉の内の1人がそばにあった死体から名札を回収する。

 

 それには、[M.E.G 所属 プロジェクト実行部副司令 ビリー]…と書き込まれていた。

 

「ビリー…M.E.Gにそんな職員いたか?」

 

「…さあ?少し前なら名簿を確認すれば良かったが、最近名簿に間違いがあったとか言って、修正されたらしいからな……今見ても分からんと思うぞ?」

 

……彼等に分かる筈がない…レベル0 に潜む怪物ーーー〈名を奪う者(ネームレス)〉に殺された人は、その名と存在を誰からも忘れられてしまうのだという事を。

 

 バックルームの中に危険が眠っている事は事前に知っていても、具体的な情報までは、彼等は知らなかったのだ。

 

「コレに関しては、後で責任者に聞くとして…その怪物は何処だ?さっさと見つけなければならないと言うのに…」

 

そう、〈B.R.C.U〉の1人が言った瞬間だった。

 

 

『ォォォォォォォォォォォォォォォォォォーーーーー…!』

 

 

 地獄から轟く様な叫びが、黄色い部屋のずっと奥の方から聞こえてきたーーーーーーーー

 

 

「ーーーーー?!前方より、何かが当部隊に接近中!!」

 

〈B.R.C.U〉の1人が焦った様に前を双眼鏡で見つめながら叫んだ。

にわかに色めき立つ〈B.R.C.U〉。

 

「遂に来たか!?」

 

「慌てるな!ーーーーーーーー総員射撃用意ぃ!!」

 

その言葉を合図に彼等は次々と銃を構え出す。

 

 彼等が構えたのは陸軍制式装備MX5アサルトライフル……その銃口は今、迫り来る〈名を奪う者(ネームレス)〉に対して向けられていた。

 

 

『ーーーオォォォォォォォォォッッッ!!!』

 

 

 そして、遂に〈名を奪う者(ネームレス)〉が轟く絶叫と共に、その漆黒の姿を表すーーーーーーーーーー

 

 

「ーーーーー既に射程距離です!!」

 

「了解!!ーーーーーーーー撃てぇッ!!!!」

 

ーーーーーーーーそう叫び声が聞こえた瞬間…天地開闢以来、永遠の静寂に包まれていた〈Level 0〉 に乾いた銃声が幾重にも重なって響き渡ったーーーーーーー

 

 

 

 

… 〈名を奪う者(ネームレス)〉の叫び声が聞こえる。

 

 響き渡る銃声をかき消すほどの音量で〈名を奪う者(ネームレス)〉は叫んでいた……。

 

 

『オオォォォォォォォォォッッ!!!オオオオオオオオオオオォォォォォォォォォッッッッッッッ!!!!!!』

 

 

ーーー叫ぶその漆黒の身体に銃弾が当たり、傷をつけていく。〈名を奪う者(ネームレス)〉は銃撃の嵐のなかで、自分にも理解の出来ない激情に駆られて叫び続ける。

 

 

『オオオオオオオオオオオオオッッッッッッ!!!!』

 

 

 それは〈名を奪う者(ネームレス)〉にとって、初めて感じる感情だった。

 

 

 言葉で表すならーーーーーーーー()()()()()

 

 

 今まで傷つけられた事の無い身体が、傷つけられた事に対する怒り。

 

…自分の前に立つ小さな存在ーーーーーー自分から逃げ惑うし事か出来ない筈のモノ達が、自分を傷つけたことに対する怒りだったのだ。

 

 

名を奪う者(ネームレス)〉は叫びながら、〈B.R.C.U〉のもとへと肉薄する。

 

「標的との距離ーーー100メートルを切りました!!」

 

「くそっ!?あの怪物には痛覚は無いのかッッッ!?」

 

 撃ち尽くしたマガジンを交換しながら、〈B.R.C.U〉のリーダー格の男が信じられないと言わんばかりに叫ぶ。

 

…実際、怪物は身体のあちこちに銃創が出来、そこから黒い体液がこぼれ落ちているものの、一切速度を緩めずに此方に向かって来ているのだ。

 

 このままでは埒が明かないーーーーーーーーそう判断したのか〈B.R.C.U〉の隊員の1人が()()()()()()()()()()()()()()を取り出して叫ぶ。

 

「ーーー()()()()の使用を提案するッ!!許可を!!」

 

 そう叫んだ隊員が手に持っていたモノを見て、〈B.R.C.U〉のリーダー格の男は顔を少し歪めた。

 

「…もう、それしか無いかーーーーー許可するッ!!」

 

「了解!ーーーアルファ、磁気兵器の準備を行う!援護願います!!」

 

「ーーー総員!アルファを援護しろ!!」

 

 そうリーダー格の男が叫んだ時、〈名を奪う者(ネームレス)〉が、此方との距離50メートルを切った所で、勢いよく跳躍してきた。

 

一瞬で、50メートルの距離が埋まる。

 

「ーーーなっ!なんて跳躍力だッ!?」

 

驚きつつも後ろに下がる〈B.R.C.U〉の面々。

 

『ウオォォォォォォォォォッッッッ!!!!』

 

 咆哮と共に、異常なまでに長く伸びる黒い腕が〈B.R.C.U〉の隊員1人を防弾チョッキごと、刺し貫いた。ーーーアレは即死だろう。

 

「ーーーガンマがダウン!!」

ーーー誰かが叫ぶ。

 

「ーーーッ!磁気兵器が発動可能になるまでヤツの気を惹きつけろ!!」

 

 そう叫びつつ、リーダー格の男は目の前に立つ怪物に有りったけの弾丸をぶち込む。

 

『オオオオオオオオオッッッッッッ!!!』

 

 〈名を奪う者(ネームレス)〉はその攻撃にふらつきながらも、腕を振ってリーダー格の男の手から、銃をはたき落とした。

 

 更に、近くの隊員の腹に向かって蹴りを放ち軽く10メートルは吹っ飛ばすと、別の隊員の顔半分を鋭い爪で抉り飛ばす。

 

 2人が一気にダウンした事で包囲網が崩れたーーーーーーが、()()()()()()()

 

「磁気兵器ーーーーー準備完了です!!離れて下さい!!」

 

 アルファが叫ぶ。ーーーーーその手には、大きな携帯式のロケットランチャーの様なモノが構えられていた。

 

 しかし、ソレは唯のロケットランチャーでは無い。磁気兵器…その名が示す通り、磁気を使った新兵器なのだ。

 

 

 

ーーーーーまず、磁気を兵器に使うとは、どう言う事なのか説明しておこう。

 

…バックルームと現実世界を繋ぐ門には、〈改良テスラ・コイル〉と呼ばれる磁気エネルギー発生装置が使われており、その磁気エネルギーを用いれば、空間を歪め得る程の力を得ることができる。

 

 この空間の歪みをコントロールして、バックルームへ繋がる時空の扉を開くのだが、この時のエネルギーは、マイクロブラックホールすら生み出しかね無い程の高まりを見せるのだ。

 

 

……ならば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 

 

ーーーーーー磁気兵器の先端…発射口に黄色い光の球が出現する。

 

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ーーーーーーー()()()()()()()()()()()()()()()()()()()である。

 

 ソレは防御不能…直線状の全てを、空間ごと消し飛ばす必殺の一撃なのだ。

 

 

 

「ーーーーー発射(ファイヤ)ッ!!!!」

 

 

……磁気兵器から一条の閃光が放たれたーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

ーーーーーーーーバックルームから、〈B.R.C.U〉の隊員達が続々と帰還してくる。

 

 力尽きた仲間の亡骸と、斃された()()()()()を乗せた担架が後に続いた。

 

「……まさか、あの怪物を討ち倒してしまうとは……恐ろしい力ですね…。」

 

Dr.ブラウンがそう呟いて、ほんの少し身震いした。

 

…監視カメラの映像で見ていたが、あの磁気兵器とやらには、恐怖すら覚える。

 

 何せ、発射された瞬間に怪物の上半身が、消し飛ばされてしまったのだから………

 

(もしアレが…人間同士の戦争で使われたら……)

 

 そう考えたブラウンは頭を振った。作られてしまった物は仕方がないのだ…そう考えるしか無い。

 

(やはり、ヒトは何処まで行ってもチカラを求める物なのですね……)

 

 〈B.R.C.U〉からの報告を聞きながら、ブラウンは心の中で独りごちた……。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

[極秘]

 

 

 以下、〈バックルーム移住計画 第十八次中間報告書〉の音声データである。

 

 

[許可なく閲覧を禁ず]

 

 

 

ーーーーーーーー

 

 

 

「磁気兵器のテストは上々、〈B.R.C.U〉も良い働きをしてくれたな。」

 

「…うむ。しかしながら、課題も残ったのが事実じゃ。今回参加した部隊の内、1名が下半身マヒで引退。2名が殉職ーーーまだ、バックルームには脅威が多いのに、この調子では先が危ぶまれるわい。」

 

「ーーーまぁまぁ、未知の怪物相手にソレぐらいの被害で済んだのはむしろ良い事なのでは?ソレにーーー他の特殊部隊に比べて、比較的替えもきく事ですし。」

 

「しかし、儂はあまり気に食わん……国内の死刑囚共に仮にも特殊部隊を名乗らせるなど……。」

 

「ーーーははは、プライドが高い様で。経験豊富な軍人を死なせるよりかは、死んでも構わない…どうせ殺す予定だった囚人を使う方が良いじゃ無いですか。社会のゴミ共が消えて、バックルームも手に入る…WIN-WINってヤツですよ。」

 

「…むぅ。」

 

「ーーーその話はそこまでだ。話を煮詰めたいなら後でお二人方でやってくれ。議題は今後どうするか…だ。ずらさない様にしてくれたまえ。」

 

「ーーー分かりましたよ。とは言っても、やる事なんてもう決まりの様な物でしょう?此方で早くゲートを作り、〈パンドラの壁〉と〈B.R.C.U〉全軍を投入してバックルームの中にある〈大都市〉を目指す…ソレしか無いじゃないですか。」

 

「ソレはそうだが、一度全員の意見を聞いておこうと思ってな。皆はどう考える?コイツと同じ様に打って出るべきとお考えか?」

 

「儂は…まぁ、磁気兵器がうまくいったからの…別にどちらでも良いぞ?」

 

「私は賛成ですね。〈パンドラの壁〉が完成した以上、待つ必要は無いかと。」

 

「私もです。」

 

「右に同じく。」

 

「ーーーなら、決まりだな。この6名の意見の一致をもって、今回の中間報告は終わりとする…おそらく、これが最後の報告書になるだろう。」

 

「ーーー次会う時はバックルームでの祝勝会ですかね。」

 

「…油断するなよ…?勝ちは決まったわけじゃ無いのじゃ。」

 

「ーーーはいはい。」

 

「では、これで中間報告を終了する。では、ここからが本当の〈バックルーム移住計画〉だ。全ては人類の未来のためにーーーーーーーー。」

 

 

「「「「「ーーーーーー未来の為に。」」」」」

 

 

録音終了。

 

 

 

 

     to be continue

 

 

 

 






この物語を描き始めた頃は、まさかこんな事になるなんて思ってなかったです…ハイ。

次回はジョンたちの話になりますかね…

ほんじゃまた。

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