The Back Rooms Story 〜Fanmade〜   作:犬社長

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今回はだいぶ長いです(自分基準)





35話〈Back Rooms War〉

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

………あれ?

 

 

ーーーーーーーーーーここは何処だ?

 

 

 

 

…暗転した視界にまた光が戻ってくる。

 

 

 

 いつの間にか、床に倒れ込んでいたらしいトム・マクフライは、小さく息を吐いて起き上がった。

 周りを見渡してみた限り、どうやら自分は応接室の様な場所に居るらしい。

 こじんまりとした部屋の中に、椅子や机ーーーそして、本棚が置いてある。

 装飾品の特徴はさっきまで自分がいた筈の車掌室に似ているが、内装は異なっていた。ーーー多分全く別の部屋なのだろう。

 

ーーーーーそして、此処もやはりさっきの揺れの影響か、積んであったと思わしき本が床に落ちていたり、家具の位置がズレたりしていた。

 

 

「ーーーーー此処は何処なんだ…?」

 

 

 そう呟いたピーターはまず、何故車掌室に居た筈の自分が、内装のまるっきり異なる部屋に立っているのか知ろうとして、首をひねる。

 

「……ダメだ、サッパリ分からん。一体俺は何をした?…何か違う場所に行く条件を満たしてしまったのか?」

 

 考えていたトムは、自分が荷物類を全て車掌室に置いてきてしまったことに気付いた。…此処に飛ばされたのが余りにも一瞬の出来事だったので、仕方が無い事ではあるが。

 

(荷物は良い…どうせ大したもんは入ってない。アーモンドウォーターが幾つか有ったぐらいだ。ーーーーーそれより、今は此処が何処なのか知る事が重要だな。)

 

 再び、辺りを見渡した時、応接室の壁に半開きの立派な木製のドアが付いている事に気付いた。其処から向こう側が見える。

 

 まず、トムはドアの隙間から、向こう側を垣間見ることにしてみた。ーーー〈the dark metro〉でのサバイバル経験が、彼を慎重な性格に変えていたのだ。

 

 

 

 

ーーーーーーーーーーそして、トムはドアの向こう側に、実に驚くべき物を目にする事になる。

 

 

 

 

 

「……!!ーーーーー何だこりゃ……()()()()()()?!」

 

 

 

 ドアの向こう、彼の居る部屋の先には、幾重にも積み重なった巨大な本棚が、整然と列をなして鎮座していたのだ。…驚くほど高い天井には、明るいランプが灯っていて、本棚の森と言っても過言では無い程本棚が立ち並ぶ広い部屋を、広く遍く照らし出している。

 

そして、立ち並ぶ無数の本棚には、所狭しと本が詰め込まれていた。

 

…この世の全ての書物が、この巨大な書庫にはあるのでは無いか?…そんな気にすらなってくる。

 

 トムは呆気に取られながら、ドアを完全に開け、書庫の中に足を踏み入れた。

 

「何だよ此処は……少なくとも、〈the metro〉なんかじゃ無いぞ…!俺は何処に来てしまったんだ?」

 

 驚きつつも、広い書庫の中を歩き始めるトム。本棚は、時折その並びを変えながら、何処までも続いている。

 

…途中、空中に浮かんでいる本棚をトムは何個か見かけた。ーーーーー支えも無しに完全に浮かんでいる様だ。

 

「ただの本が沢山ある場所…って訳でもなさそうだな…………お?」

 

 不思議な光景に見とれて居たトムだが、ふと少し先の方に少し広くスペースが取られている場所がある事に気がついた。

 

 其処はまるでリーディングスペースの様になっていて、しかも誰かが其処に腰掛けている。

 

…本を読んでいる訳じゃなさそうだが……。

 

ーーーーーーーー近づくと、それは如何やら女性の様だと、トムは思った。

 

 此方に背を向け、まるで誰かを待っているかの様に椅子にじっと座り込んでいる。

 

…不思議な人だ。色白で、黒くて長い髪をゆったりと垂らし、黒いレギンスと白いブラウスに、ミディアム丈の黒いスカートとお揃いのパンプスという出で立ちをして居る。

 

 誰なんだろう?とトムは思いつつも、何だか声をかけづらい雰囲気を感じて、後ろからそっと近づく。するとその女性が此方に気付いたのか振り向いて口を開いた。

 

「ーーーーーあら?…もう、本棚は直ったのブランシ…………。」

 

 トムの事を、誰か別の人だと勘違いして居たらしいその女性は、トムと目が合うなり、驚きの表情を浮かべて固まった。

 

…驚愕の表情は、警戒へと変わる。

 

「…貴方は誰?何処から此処に来たの?何をしに来たの?」

 

 そう言って彼女は椅子から立ち上がった。身長は170㎝ぐらいだろうか?トムと同じぐらいの背丈である。

 

 彼女は明らかに警戒して居た。ーーーまぁ、無理もない事だろう。トムは知らないが、本来此処はトムのような存在が、あっさり入れる場所では無いからだ。

 

「ま、待ってくれ!ーーー俺は何もしない!〈the metro〉の車掌室に居たら、いつの間にか此処にーーーーーーーーーー」

 

「…車掌室?…貴方今、車掌室って言った?………〈運行者〉と何か関係があるの?」

 

 車掌さん関係の話を聞いた瞬間、彼女の顔から警戒心が少し消え、代わりにまた困惑の表情が浮かぶ。

 

「えっと、〈運行者〉ってのが車掌さんだとしたら、俺は車掌さんの……なんだ、友達?ーーーだ。」

 

トムは取り敢えず、自己紹介から入る事にした。

 

「ーーーーー友達……?貴方名前は?」

 

「ーーーーーートム・マクフライ。」

 

「トム……マクフライ……ーーー昔、〈運行者〉がそんな名前の〈彼方の世界〉のエンティティを電車に乗せて居たような……。」

 

 記憶を辿っているのだろう、彼女は視線を宙に彷徨わせて呟いている。

 

「ーーーーーそう!そのトム・マクフライだよ!それそれ!」

 

「ーーーーーだとしても、なんで貴方がこのレベルに居るかの説明がつかないわ。ーーーこの場所に何をしに来たの?」

 

そう言って、彼女はトムをじっと見つめた。

 

 しかし、そう言われてもトム自身、自分が何で此処に来てしまったかが、分からないのだ。説明が出来る訳がない。

 

どう言ったら良いのだろうか…とトムが思ってアワアワしていると、不意に背後から、優しくも威厳ある声が聞こえて来た。

 

 

「…おや?貴方はもしかして、個体名:トム・マクフライじゃないかしら?」

 

 

「ーーーーー?!今度は誰ですか!?」

 

一切気配を感じなかったーーーと驚きつつ、振り返るトム。

 

 其処には、白いワンピースに身を包んだ長い金髪に緑の瞳を持つ、最早神聖さすら感じる女性が立って居た。

 

金髪の女性が口を開く。

 

「初めまして。私は〈ブランシュ〉…この世界の上位者の1人にして、世界から()()()()役割を与えられた者。ーーーーーーと言って〈彼方の世界〉の貴方には理解できて居ないでしょうから、ただ単に名前を覚えて貰ってくれたら良いですわ。」

 

「…あ、はい…ーーーえっと、俺はトム・マクフライです。は、初めまして?」

 

 トムがちょっとだけその存在感に気圧された様に挨拶すると、それを聞いて居た黒髪の女性の方が、ブランシュに話しかけた。

 

「…ブランシュ。この男を知ってるの?」

 

「いいえ?直接会った事は無いわ。でも、〈運行者〉から話を散々聞いて居たから。ーーーこのヒト、随分と気に入られて居たのよ?」

 

「ーーーーーふーん…〈運行者〉のお気に入りね…。」

 

 黒髪の女性がトムを再びじっと見つめる。そんな彼女に、ブランシュが優しく言い聞かせるように話しかけた。

 

「…警戒する貴女の気持ちもわかるけど、〈運行者〉のお気に入りなら、人格的に問題はないわよ。ーーーソレに此処に来たのも、如何やら事故みたいなモノらしいわ。ーーーーーー車掌室の本の埃を払った時に、私のサインをなぞっちゃったなんて、偶然にしても面白い出来事ね。」

 

 そう言ってブランシュは、上品に笑う……一方、トムは(まだ何も話してないのに…何で本の埃を払ったって事、知ってるんだ?)と、1人で驚いて居た。

 

黒髪の女性が何度か小さく頷く。

 

「ーーーーーそう。貴女が問題ないと言うのなら、それで良しとしましょう。ーーー所で……」

 

 如何やら納得したらしき黒髪の女性が話し始めた時、ブランシュが片手をあげて、話をやめさせた。

 

「ーーーーー?」

 

「ねぇ?ーーー話に入る前に、貴女の方から自己紹介は済ませたの?」

 

黒髪の女性の顔がバツの悪そうな表情を浮かべる。

 

「ーーーーーまだ………です。」

 

「…ダメよ〜?初対面同士なんだから、ちゃんと自己紹介しないとーーーーーーね?」

 

ブランシュから、優しくも確かな圧をトムは感じた。

 

(あ…この人…多分マナーとかに厳しい人だ……)

 

黒髪の女性が小さく頷いて、トムに向き合う。

 

「自己紹介が遅れて申し訳ないわ…私の名は〈アンブロシア〉…ブランシュと同じ〈上位者〉にして、この世界から()()()()役割を与えられた者よ…。」

 

トムは彼女ーーー改め、アンブロシアに頭を下げた。

 

「ーーーーーどうも、こんにちは。改めてよろしくお願いします。トム・マクフライです。」

 

「ーーーーーん。」

 

 アンブロシアは頷いた後、ブランシュに再び向き合って話し始めた。

 

「ーーーーーブランシュ。今の状況、どうなってるか分かる?……大変な事がレベル11で起きてるのよ。この世界開闢以来最大の危機だわ。」

 

「勿論、分かってるわよ。だから、今回私の本を持つ〈上位者〉達に此処にくるように言ってあるわ。もう直ぐ来るはずよ。」

 

 それを聞いたトムは、ブランシュに向かって手を挙げた。

 

「ーーーーーあの、質問しても良いですか?」

 

「ええ、どうぞ?」

 

「…此処は何処なんですか?〈the metro〉じゃ無いですよね?」

 

ブランシュは頷いて言った。

 

「ええ、違うわ。此処はLevel 906〈The Cygnus Archive(シグナスの書庫)〉ーーーーー私の本を使うことでのみ辿り着ける、この世界の叡智が集まる場所よ。」

 

「レベル……906…すごく飛んだな…。」

 

トムは唖然として呟いた。

 

「あの…帰り道は何処にあるんです?」

 

「帰りたい時に、返してあげるわ。今からは、ちょっと込み入った話をするから、今直ぐは無理だけど…。」

 

「…それってどう言うーーーーーーーーーー…」

 

そうトムが言った瞬間、周りの空気が揺らいだ気がした。

 

「ーーーーー?!」

 

 見ると、自分の周りの本棚の影から、沢山の影達が此方にやってくるのが見えた。

 

 

 

 

…人のような姿をした者も居れば、そうで無い者も居る。

 

 

 最初に、トムの横を通り過ぎたのは、身長180㎝にもなる巨躯で、長い髭を生やし、黒いマントに身を包んだ、まるで仙人か魔法使いの様な老人の男だった。

…歩く度に、腰にぶら下げた沢山の鍵がカチャカチャと音を立てる。

 

「ーーーーー大変な事が起こったな。ブランシュ!眠気が一気に覚めてしまったぞ!…レベル11の鍵穴が悪意あるものの手で塞がれたのだ!!」

 

そう、老人が叫んだ。

 

 すると、その横に並んで歩いている犬…(犬?)が、口を開いて喋り出す。

 

「ーーーーー大規模な空間破壊が発生したのだ。その所為で全レベルが空間の揺れに巻き込まれてしまった…私のレベルもだ。今は猫の手も借りたいよーーーーーーあぁ、犬の手はいい…余ってるからな。」

 

 更に隣の、何だか学校の教授らしき人物が困った顔をしながら、肩身狭そうに呟く。

 

「私の講堂も滅茶苦茶になってしまった…コレでは授業が出来ん…まぁ、生徒など1人もいないがね(泣)」

 

 その教授らしき人物の横で、10歳ぐらいの茶髪の幼女が、困り果てた顔をしながら歩いてくる。

 

「……アタシのギャラリーも色んな所が壊れちゃった……直すの誰か手伝って欲しいの…お願い(泣)」

 

 そう言って、幼女は青色にも緑色にも見える、捉え所の無い色をした瞳で、助けを求めるかの様に辺りを見渡す。

 

 そんな困り顔を浮かべる彼女の隣には、頭が丸々一個の丸いセキュリティカメラになっている人ーーー果たしてヒトなのだろうか?ーーーが突っ立って居た。

 

「ねぇ〜〜、〈監視者(Aiden)〉〜アタシのギャラリー修復手伝ってくれる〜???」

 

 幼女がそんなカメラ頭の人物に上目遣いで話しかける。

 

「ーーーーーお待ち下さい…〈芸術者(アーティスト)〉お嬢様。…今、貴女のレベルの近くに居る()に、片付けを頼みました。貴女が戻る頃には、片付けは完了して居るはずです。」

 

監視者(Aiden)〉と呼ばれたカメラ頭の人物が、少し機械的な声で幼女に返事を返した。ーーー顔が一気に明るくなる幼女。

 

「…ホント!?ーーーーーーやったぁ!……自分が何人もいるってやっぱり良いわね…アタシも増えたい…。」

 

ーーーーーーーーーー更にその後ろから、16世紀末ぐらいの年代物の騎士然とした鎧に身を包み、肩に巨大な剣を担いだ1人の騎士が続く。…赤いマントに金の縁取りがあるのをトムは見た。

 

「レベル11に…侵入者あり…だ。しかし、侵入者共は壁を築いて閉じこもってしまった……このままでは…レベル11はこの世界から外れてしまう……。」

 

 そう騎士が呟いた。ーーーあまり、話が得意では無いのかもしれない。

 

 その騎士の横に、ボロボロの黒いマントに身を包んだ、長身の男が立っている。マントの中には如何やら長い槍を隠し持っているらしい。また、顔は車掌さんと同じでハッキリとは見えない。

 ただ、幾千もの目が、顔に付いていて、それらが絶えず辺りを見渡している様なーーーそんな気がした。

 

 その男が立ったまま喋り始める。……聞いた者全てが震え上がる様な恐ろしい声色だった。

 

「……奴らは罪を犯した。咎人は裁かねばならん。…この世界にいる限り…この世界の法でな…!!」

 

横に居る騎士が、彼の肩に手を置く。

 

「…まぁ、落ち着きたまえ、〈審判者(アルゴス)〉。今はかのレベルに繋がる道がないのだ……手出しは…出来ん。」

 

審判者(アルゴス)〉…そう呼ばれた長身の男は小さく舌打ちをした。

 

…それを聞いていたブランシュが、軽く手を叩く。

 

「はいはい…皆さん。取り敢えず、落ち着く様に。先ずは座って下さいな。」

 

……そこでトムは初めて、自分の前に椅子が用意されていることに気付いた。ーーー椅子には〈トム・マクフライ〉と金文字で自分の名前が彫られている。

 

(いつの間に椅子が…?てかコレ、座っていいのか?)

 

 トムが戸惑っていると、左横にブランシュが、右隣にはアンブロシアがやって来て、そこにあった椅子に座り込んだ。

 

「…座って良いのよ。トム・マクフライ。」

 

ブランシュが小声でそう囁いたので、トムは取り敢えず座る事にした……しかし、何だか凄まじい場違い感を感じている。

 

(この集まりって、絶対俺が居るべきモノじゃ無いよね……?)

 

 そうトムが思っている前で、鍵を腰からぶら下げた老人が、同じ様に椅子に座り込む。…椅子にはこう書いてあったーーー〈管理者(キーマスター)〉。

 

 その隣の背もたれの無い低めの椅子に、ふさふさの毛並みの犬が、ちょこんとお座りする。

 

椅子に彫られた名前は〈犬の統治者(キング・ラスプーチン・バーソロミューⅢ世)〉。

 

 さらに横に、形見狭そうに座り込む教授らしき人物。

 

その椅子には〈数学者(Mr.フリーマン)〉と彫られている。

 

 その横の小さな子供用の椅子に、茶髪の幼女が腰を下ろした。

 

 椅子には、〈芸術者(アーティスト)〉と金文字で書き込まれている。

 

 その隣には、丸いカメラ頭の人物が座り込んだ。座った椅子には、〈監視者(Aiden)〉の文字が見える。

 

 その右隣にある〈決闘者(RED knight)〉と彫られた椅子には赤いマントを羽織った騎士が座り込む。……鎧が擦り合わさり、ガチャリと音を立てた。

 

そして彼の横に、〈審判者(アルゴス)〉と呼ばれた長身の男が腰を下ろす。

 

 

ーーーーーーーーこれでやって来た全員が着席する事となった…ただ、椅子はまだ幾つか余っている。

 

 トムは近くの空いている一席に、〈運行者〉と金文字で書かれているのを見つけた。

 

…今の状況から見るに、本来なら車掌さんがあの椅子に座るはずだが……

 

「ーーーーー〈運行者〉は来ていないのか…?」

 

 皆が着席した後、赤マントの騎士ーーーーーー改め〈決闘者(RED knight)〉が最初に口を開いた。

 

「…それだけじゃ無い…〈池の創造者(ロトカ)〉の代役もだ。」

 

 それを聞いたブランシュが、空いている椅子達をチラリと見て言う。

 

「〈運行者〉は兎も角、多分〈池の創造者(ロトカ)〉は自分のレベルの状況把握に忙しいのよ…この揺れで()()()が怪我とかしてるかもしれないし。ーーーーー私としては、〈バーソロミューⅢ世〉が召集に応じて来てくれた事にちょっと驚いてるわ。……貴方のレベルは大丈夫なの?」

 

 そう尋ねられたのは、ふさふさした毛並みの犬こと〈犬の統治者(キング・ラスプーチン・バーソロミューⅢ世)〉である。

 

バーソロミューⅢ世が口を開いた。

 

「皆んながブランシュさんの召集なら行ったほうが良い…って言ってくれてね。正直言って、大丈夫では無いけれど、幸い()()()は居なかったから来たのさ。」

 

そう言ってバフバフと笑うバーソロミューⅢ世。

 

トムは内心驚いていた。

 

(…犬が喋ってるッ??……と言うか、何なんだこの人達は…?!)

 

……トムが知る術など無いが、今ここに居る者達はどれも、この世界の〈上位者〉達である。

 

 

 一人ひとり紹介していたら長くなるので、今はバックルームに存在する無数のエンティティの中の、少し特別なエンティティである…という事だけでも、分かっておけば問題ない。

 

 

……さて、そんな上位者達がこのレベル906に集まって一体何をしているのか?ーーーーーーーーーー答えは今までの話の中に出て来ているので、もう分かっているヒトも居るだろう。

 

 

…そう、レベル11の異変について…である。

 

 

 〈B.R.C.U〉のバックルーム侵攻によって、レベル11は今、他のレベルから空間的に隔絶された状態にある。その影響で何人たりともレベル11にアクセスが出来なくなっており、更に中で何が起きているか一切分からない。

 

ーーーーーーーーーコレは異常事態なのだ。それこそ、普段は各レベルで自分の役割をこなしながら気ままに過ごしている〈上位者〉達が、一堂に会しなければならない程に……

 

 今はまだ、レベル11の内部で何が起きているのか、ここに居る者達は知らない。何かこの世界とは違う世界から侵入して来た者達が居る…という事を理解して居ても、侵入者がレベル11で何をしているか…迄は知る術がなかった。

 

 

「…ともかく、〈運行者〉が来ないのはおかしいわね。電車は今動いて居ないはずよ。自由時間なんだから、彼なら必ず来るはず…それが出来ないって事はーーーーーーーーーー」

 

 トムの横で呟いたアンブロシアの話を、〈管理者(キーマスター)〉が引き継いだ。

 

「ーーーーーつまり、今この世界で唯一レベル間移動ができない場所…レベル11に居る…という事かな?」

 

「何と間の悪い男だ…。」

 

決闘者(RED knight)〉が、やれやれと頭を抑えた。

 

 その横で〈監視者(Aiden)〉が、その丸いカメラ頭を考える様に動かしながら、発言する。

 

「しかし、コレは逆に良いことかもしれません。ーーー今、レベル11内部で何が起きているにしろ、良いことなどでは無いでしょう。ーーーー彼がレベル11の内側に居るなら、レベル11の異常に気が付かないはずが有りません。必ず、異常を排除する為に行動を起こすでしょう。ーーーーーそうして彼が、レベル11の異常を内側から解決してくれれば、我々はレベル11の現状を知れる…。」

 

「…つまり、〈運行者〉の行動の結果次第と…そういう事だな?ーーーーーーーー頼むぞ〈運行者〉……オレに罪人を裁かせろ……!!罪人が居る場所が分かっているのに裁けない……それは俺にとって、最大の屈辱なのだからなぁ!!」

 

そう、〈審判者(アルゴス)〉が息巻いて叫んだ。

 

(うわ……怖…)ーーーと、トムが思っていると、今まで黙って居た幼女こと、〈芸術者(アーティスト)〉がトムの方を向いて、ブランシュに話しかけた。

 

「ーーーーーあの〜…誰も言わないから黙ってたケド…何で、上位者じゃ無いヒトが当たり前みたいな顔して椅子に座ってるの?」

 

 次の瞬間、一瞬静まりかえったかと思うと、一斉にトムの方を見て来た上位者達。

 

…トムは居心地悪そうに首を竦めた。

 

「確かにそうだ。ーーー誰なんだお主。椅子が用意してあるという事は…ブランシュの客人なのは間違いないが……。」

 

そう言う〈管理者(キーマスター)〉。

 

「…私は気付かなかったぞ。影の薄さに特化した上位者か?」

 

……バーソロミューⅢ世がちょっとディスって来た気がする。

 

 どうしたものか困惑していると、ブランシュが助け舟を出してくれた。

 

「ーーーーー彼はトム・マクフライって言うの。ーーー彼方の世界の住人で、〈運行者〉の友達よ。」

 

上位者達は顔を見合わせた。

 

「お主が〈運行者〉の友達?ーーーーーーーーーあんな真面目が服を着たような奴に、彼方の世界の住人の友達が居たとは…驚きだぞ。」

 

「…実に興味深い!ーーールールが全てのあの男に友達とは!!」

 

「…一番、その言葉が似合わない男…だったんだがな…。」

 

…なんか車掌さんのこと褒めてるのかディスってるのか分からないが、上位者達は口々に喋り出した。

 

手を挙げてその場を静めるブランシュ。

 

「…彼は、彼方の世界から此方に迷い込んで来て、〈運行者〉に拾われたの。ーーーさっきまで〈the metro〉に居たのだけれど、偶然にもこのレベルに迷い込んで来てしまったらしいわ。」

 

 それを聞いたバーソロミューⅢ世が「ほぅ…」と呟いた。

 

「ーーーーーでは、キミは〈運行者〉と直前までいた訳だ。ヤツは何処かに行くと言っていたか?」

 

「ーーーーーえっと…車掌さんはーーーーーー」

 

 トムは、車掌さんがレベル33に行く電車を動かしていった事を、上位者達に話した。

 

 話が終わった所で、〈管理者(キーマスター)〉が顎髭を触りながら口を開く。

 

「…もう、その電車は着いたはずだ。しかし、アイツは来ない。ーーーーやはり、レベル11に閉じ込められて居るのだろう。ーーーーー困ったな…今の我らでは、どうにも出来ん。」

 

「…やはり、〈運行者〉が内側から如何にかしてくれるのを、待つしか無いのね。気掛かりだわ…。」

 

そう落ち着かなさげにアンブロシアが呟いた。

 

 

 

ーーーーーーーーーいま、レベル11の運命は、全て車掌1人の行動に託されたのだ。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 

場所:Back room Level 11 〈the endless city 〉

 

 

[車掌視点]

 

 

 

…彼はいまこの状況下において、自分がするべき事は何なのかーーー完璧に理解していた。

 

(恐らく、他の上位者達は異変に気づいたはずーーー最低でも、〈管理者(キーマスター)〉は必ず気付く。ーーー私1人ではこの状況を打破出来ない…空間の断絶を何とかしなければ…)

 

 彼の目は、空に浮かぶ漆黒のモノリスーーーーーーー〈パンドラの壁〉をしっかりと見据えていた。……一時期、地上にも届く程広がった空の割れ目は、今は微かな跡を空に残すのみで、閉ざされている。

 

 

…そしてレベル11のあちこちで、戦いが起きていた。

 

 

 戦っているのは、空間が壊れた時にこのレベルに落ちて来た敵対的なエンティティと、このレベルを閉ざした張本人である〈B.R.C.U〉である。

 

ーーーーーーーー如何やら、優勢なのは〈B.R.C.U〉の様だ。

 

 何機かの戦闘機を保有しているし、例え通常兵器が効かずとも、〈B.R.C.U〉には磁気兵器があるのだ。

 

 あちこちで、磁気兵器の使用による空間の歪みが生まれ、その度に町の一部が崩壊して行く。

 

 ビルや住宅地が、次々と空間の歪みに呑まれ、消えていくのを車掌は見た。

 

 その戦いに巻き込まれた〈顔無き者(フェイスリング)〉達が、逃げ場を求めて右往左往していた。……彼らからして見れば、とんだ巻き添えである。

 

 

(侵入者達の意図がわからないーーーーーこのレベルを隔絶して、一体何がしたいのでしょうか…?)

 

 そう思いながら、車掌は町全体が見渡せる高い高層ビルの上で、戦いの様子を見ていた。……兎に角、これ以上このレベルを滅茶苦茶にする訳にはいかない。ーーーーーーーーそう考えた車掌は、その場から飛び降りると、近くの戦闘を行なっている〈B.R.C.U〉の一団に向かって近づいて行った。

 

 

 

ーーーーーーーー丁度、磁気兵器で〈繋ぐ者(クランプ)〉の群れを近くのビルごと一掃した所だったその一団に、車掌は後ろから話しかける。

 

「…こんにちは、侵入者諸君ーーーーーいきなりで悪いですが、貴方達は何者ですか?」

 

 少しいきなり過ぎたかもしれない…話しかけられた〈B.R.C.U〉の1人は、驚いて飛び上がった。

 

「ーーーーー!!何だコイツ!?…車掌?」

「…顔無しどもとは違うな…!話が通じる奴も初めて見る…!」

 

〈B.R.C.U〉が車掌を見て、少し困惑の表情を浮かべた。彼らはこの世界に来てから、言葉の通じない〈顔無き者(フェイスリング)〉しか見て来ていなかったので、言葉の通じる(しかも英語で!)車掌の登場に、驚いたのだ。

 

「ーーーーー言葉が通じるなら話は早い。…初めまして。ーーー我々は〈B.R.C.U〉。こことは違う世界から来た人間と言う種族だ。」

 

 その一団のリーダー格らしき男が車掌に挨拶(…挨拶と言うには傲慢すぎる気がするが)してくる。

 

〈B.R.C.U〉ーーーそれが何であるか車掌は知らなかったが、どうせロクなものでは無いだろうと、車掌は思った。

 

「このレベルを閉ざしたのは、貴方達ですね。ーーーーーー私としては、直ぐに戦闘と閉鎖を止めて貰いたいのですが。…これ以上、混乱を撒き散らさないで頂きたい。」

 

…そう言って、車掌は静かに〈B.R.C.U〉の面々を威圧する。

 

「…ほぅ?それに関しては、敵対的な怪物の対処の為に行っている事だ。対処が終わり次第、()()()中止しよう。ーーーーーーーーあと、出来れば、この街の統治者か…大きな権限を持つ者を用意しておいて貰いたい。其方に戦闘の意思はないようだし、話し合いが出来るのであれば、ソレが好ましいからな。」

 

 

…何処までも、一方的で傲慢な持ち掛けだった。

 

 

車掌の顔が険しくなる。

 

「…閉鎖もです。…このレベル自体を元の状態に戻しなさい。話はソレからです。」

 

リーダー格の男は首を振った。

 

「閉鎖は解除出来ない…詳しくは我々の司令官が決める事だ。ーーー其方が何か条件を出すのなら、話し合い次第だが、譲渡する。まずは話し合いの場を設けて頂きたい…我々が何を目的としているのか…そこで全て話そう。」

 

「ーーーーーこのレベルの責任者は、現時点では私です。私が話し合いますので、貴方の言う司令官を出して下さい。」

 

「…そうでしたか。それは失礼。ーーーーーでは、今から司令官を呼ぶので、会合の場所を決めて頂きたい。」

 

 そう言ってリーダー格の男は、誰かと連絡を取り始めた。

 

……そうしている間にも、あちこちで戦闘が起こっている。ーーーーーーしかし、それも下火になりかけていた。エンティティとの戦いに、終わりが見えて来たのだ。

 

 

 空間の崩壊時にレベル11にやって来た、他のレベルのエンティティの数は大体100体ほど、一方で〈B.R.C.U〉の兵士達は500名且つ一人ひとりが磁気兵器を装備している………幾らエンティティが強かろうと、5倍の兵力と磁気兵器の前には、あまり意味を成していなかった。ーーー一応、150人程〈B.R.C.U〉側に死者は出たのだが、それでもまだ350名の兵士が残っている。

 

 

…磁気兵器は車掌の目から見ても、恐るべき力だった。あれに対抗できる戦力など、このレベルには無いに等しい。〈顔無き者(フェイスリング)〉達は武器を持たないのだ。ーーーいま、このレベルで抗える力を持つ者は車掌ただ1人……

 

(この人達が何を言おうと…〈運行者〉として決して要求を呑む訳にはいかない…空間に異常をもたらしているあのモノリスも、停止させなければ……)

 

  空に浮かぶアレを止める方法はーーーーーーーーある。…だが、それをすれば、車掌は()()()()()ことになるだろう。間違いなく、最大の越権行為になる筈だ。しかし…このレベルを守る為なら………

 

「…司令官はすぐに会えるそうだ。戦闘も終わったらしいな。……話し合いの準備は良いですかな?」

 

……車掌が、そう考えている間に、如何やら話し合いの場が整った様だ。車掌はリーダー格の男に向かって頷く。

 

「……ええ、何時でも。」

 

 

 こうして、レベル11で突発的に初の異世界同士の会談が開かれることとなったーーーーーーーー…みんなが想像する会談とはちょっと違うだろうが。

 

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

会合場所は、ただの街のど真ん中だった。

 

 

 沢山の輸送車両と、〈B.R.C.U〉が周りを取り囲んでいる中で、車掌は1人、彼等と向かい合って立っていた。

 

 車掌の後ろには、野次馬の〈顔無き者(フェイスリング)〉が固唾を呑んで様子を見守っている。

 

 

…既に、話し合いは佳境に差し掛かっていた。

 

 

「ーーーーーーーー何度でも言います。私の要求は貴方達がこの世界から撤退する事です。ーーーーーーこの世界は貴方達の為に用意されたものでは無い。」

 

「…困りますな車掌さん…。我々はあなた方に危害を加えるつもりは無い。貴方達が快くこの都市を明け渡すだけで良いんです。ーーーーーーーーココは無限に広がっているのでしょう?一部ぐらい、明け渡しても良いじゃありませんか?」

 

 そう言う、《B.R.C.U〉総司令官の男。…白い軍服に身を包んだ彼は、車掌と既に1時間近く話し合っている。

 

 この世界の自由を求める車掌と、レベル11を手中に置いておきたい〈B.R.C.U〉……話し合いは平行線だった。

 

「…貴方達は貴方達の世界で生きるべきです…コレは侵略行為ですよ。」

 

「我々は侵略はしない…。こうして貴方と話し合うのは、力で解決したく無いからですよ?」

 

「……つまり、私が其方の要求を呑まなければ、力で解決するつもりだと?」

 

「…脅しているわけでは無いのですがね…。」

 

 

…こうして話が続く中、ある1人の〈B.R.C.U〉メンバーが、小さく呟いた。

 

「…めんどくせぇな……大体、こんな話し合いやるだけ無駄だろ。」

 

横の1人も小さく頷く。

 

「…全くだ。ヒヒヒ…俺、もっと戦いてぇよぉ…。ーーーーーてか、あの車掌の後ろの野次馬のっぺら坊の中に、めっちゃ身体つきがタイプの女いるんだが?」

 

「…お前、顔無しに発情すんなよ。ーーーで、誰だ?」

 

「結局、気になってんじゃねぇか。ホラ、あの柱の裏にやって来たーーーーーーーー」

「…ああ、あの子か…俺ダメだ。ーーー胸が足りねぇ。てか、JKのガキじゃねぇか。ロリコンか?てめぇは。」

「…ロリじゃねぇ。JKはロリじゃねぇぞ(真顔)。…ソレにケツが良いじゃんか。ありゃ付き合ったらけつ穴確定だぜ。毎晩イれ放題よ。」

「ーーーーーでもやっぱり顔がなぁ…のっぺら坊と寝たかねぇよ…俺ァ。」

 

……何とも下卑た会話だが、 〈B.R.C.U〉には、部隊員のかさ増しの為、国内の重犯罪者を多く採用しているのが、大きな理由だろう。…彼らは少なくとも闘いに関しては、躊躇いがない。ーーーーーーそう言う異常者(ヤバいやつ)を厳選しているのも理由だが。ーーーーーーーーともかく、そんな奴らが数多いせいで、長引く話し合い(…彼等にとっては、無意味に思えるモノだ)に少しずつ不満が溜まって来ていた。

 

 それを司令官は理解しているからこそ、出来るだけ早くこの話し合いを切り上げたかった…彼自身も、進まない話し合いに若干苛ついていたので、ここらで落とし所を見つける必要があった。

 

 

…しかし、そこで新たに話を長引かせる、不満材料が投下されることになる。

 

 

「ーーーーーふざけるな!!アタシ達に銃を向けておいて、何が脅してないだ!!」

 

 

……〈顔無き者(フェイスリング)〉の中から、英語でそう叫ぶ者が現れたのである。

 

ーーーーーーーー叫んだ主は、女性の〈顔無き者(フェイスリング)〉だった。

 

…しかし、このレベルに英語を知る女性の〈顔無き者(フェイスリング)〉など1人しかいないーーーーーーーー

 

 

 

 

……そう、あのカトリである。

 

 

 

 

 彼女は近くにある建物の柱の裏で話を聞いていたのだが、話を聞いているうちに、如何しても声を上げずには居られなくなったのだ。

 

……話し合いの最中も、ずっと自分たちに突き付けられた銃口の所為で……。

 

 

「…まて、止めるんだカトリ!」

 

 彼女に遅れて、〈顔無き者(フェイスリング)〉の男……ニードルス・バックヤードが、彼女を止めにやって来る。

 

 しかし、カトリは彼の制止も聞かず、野次馬の中から飛び出すと、司令官に向かって歩み寄って行った。

 

 どよめいて、本格的に銃を構え出す〈B.R.C.U〉の面々。

 

「ーーーーーアンタ達の所為で、皆んなの居場所が滅茶苦茶だ!!アタシの……アタシの大切なモノも…アンタらの所為で無くなった!!」

 

そう叫ぶカトリ。

 

………実は、ニードルスの家は〈B.R.C.U〉とエンティティの戦いの影響で、破壊されてしまったのである。

 

…そして、彼女の大切な思い出も共に消え去ったのだ。

 

カトリは叫び続ける。

 

「ーーーーー私達の思い出を消してまで、アンタらがここに居座る資格はない!!!口では穏やかに言っていても、その向けられた銃口がアンタらの全てを語ってる!!ーーーアタシは……」

 

 彼女は最後まで言いたいことを言い切ることが、出来なかった。

 

「下がった方が良いんじゃないか?顔無し小娘さんよぉ。」

 

〈B.R.C.U〉の1人…さっき下品な会話をしていた1人が、カトリの前にずいっと立ち塞がったのだ。

 

「黙って話し合いを聞いてりゃ、俺達が思い出を消したとか、滅茶苦茶にしたとか………聖人でも相手にしてんのかって話だ。」

 

「…おい…よせ。」

 

司令官が注意するが、その隊員は聞く耳を持たない。

 

「良いか?アンタらは、人間ってやつを知らない様だから教えてやるーーーーーーーー」

 

カトリの肩にガッチリと手が回される。

 

「ーーーーー!!」

 

「ーーーーー人間は昔っから、欲しいもんを誰かが既に持ってる時は…………()()()()()()()()()()()()()()()()()()。」

 

「ーーーーーッ!?」

 

ーーーカトリの体が強張った。隊員の手が彼女に伸びてーーーーーーーー…

 

 

「ーーーーーーーーカトリッ!!!」

 

 

 次の瞬間、ニードルスが飛び出して来て、その隊員の顔を殴り付けたーーーーーーーー

 

「ーーーーーーぶべっ!?」

 

  殴り飛ばされる隊員。ーーーーーと、同時に()()が鳴り響く。

 

 

「…ッ………!!」

 

 

 その場に倒れ込むニードルス。ーーーーーーーー彼の脇腹に、ポッと赤い染みが生まれる…。

 

 

(終わったーーーーーーーーーーーーーーーー)

 

 

 全てを理解した車掌は、心の中でそう叫んだ。……彼女と彼の行動を責めることは、彼にはできない…しかし…このタイミングで…!

 

 銃声に驚いた〈顔無き者(フェイスリング)〉達が、慌ててその場から逃げ出し始めるーーーーーーーーが、逆に〈B.R.C.U〉に立ち向かって行く〈顔無き者(フェイスリング)〉も居た。…ニードルス(仲間)が撃たれた事で、戦いに理不尽に巻き込まれた事に対する怒りが爆発したのかもしれない。

 

 怒りに身を任せて、突撃する〈顔無き者(フェイスリング)〉と、至近距離で応戦する〈B.R.C.U〉。…こうして、乱闘が始まってしまったーーーーーーーー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……最早、運命は避けられませんか……!」

 

 

 乱戦の中で、車掌はそう呟いて、何か決心した様に顔を上げた。

 

次の瞬間、司令官は見た…。

 

「ーーーーーーーー()()()()()……!?」

 

 

 

 

…青空に、一本のレールが敷かれて行く。

 

 唖然とする司令官の前で、レールは空高くどこまでも伸び、そして()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「電車の軌道の勝手な作成に…本来の目的とは異なる使用……越権行為のオンパレードですね………コレは〈運行者〉解任案件かも知れませんが……。私はこのレベルを救いたい…その為に私が消えるのなら…ソレで良い。」

 

 ある種の悲壮感が漂う彼の呟きは、ただの人間の司令官には理解出来なかった。しかし、何かとんでも無いことが起きるのだと、そんな直感を司令官は感じて空を見上げる。

 

(一体ーーーーーーーー何を……。)

 

 今や、モノリスはレールで地面と完全に繋がっている。ーーーそして、そのレールの上を銀色に輝く電車が、モノリスに向かって猛スピードで走っていた。

 

「まさか……電車で〈パンドラの壁〉を壊すつもりかッッ!!」

 

 ソレを悟った司令官が、付近を飛んでいる戦闘機に迎撃指令を出そうとするが、既に遅かったーーーーーーーー

 

 

 

「ーーーーーーーー世界を縛る壁よ……砕けなさい。」

 

 

 

ガッシャァァァァァァァァァァンッッッッッッッ!!!!

 

 

 

 車掌の呟きと共に、モノリスに激突した電車が、激しい衝突音を鳴らす。爆発が立て続けに起こり、漆黒のモノリスが爆炎の向こうに消えた。

 

 

 

……そして、世界にまたヒビが入る……しかし今度のソレは、開放の証なのだ。

 

 

 

「なんたる事を……。」

 

 破壊され、磁気エネルギーを振り撒きながら、落下して行く〈パンドラの壁〉を見て、呆然と呟く司令官。

 

横で、車掌が口を開いた。

 

「壁は取り除かれました……もう、終わりの時が来たのですよ。」

 

ーーーーーーーー彼の手には、まるで空間から湧き出て来るかの様に、銀色の儀仗剣が、揺らめきながら現れていた。

 

 ソレを鞘から逆手に引き抜き、車掌帽を目深に被りなおした車掌が小さく呟く。

 

 

 

 

「…この部屋(セカイ)から、退出願います…貴方達にこの世界が与えるモノは……何も無い。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

The time for travel has come to an end.

 

 

…to be continue

 

 

 

 

 

 







あのー、なんだろう。話が進まないからって唐突な展開するのやめて貰って良いですか?(cv.ひろゆき)


 安心してくださいひろゆきさん。こんな事もあろうかと、予め小説のタグに超展開のタグを追加しておいたのさ!



…初めて1万文字超えてしまいましたよ……疲れた。

…最後の方は文章変だったりしませんか?大丈夫ですかね?

 コレは、明日反動でめっちゃ話が短くなるか、更新が出来ないかなどっちかですね!…ハイ。
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