The Back Rooms Story 〜Fanmade〜 作:犬社長
続きです。
因みに、トム少年の年齢は七歳から八歳位を想定しております。
つまり、ショタですね()
話の都合上、ショタが可哀想な目に遭いまくる訳ですが、コレはこんな設定にしたバックルームが悪いのです。私は悪く無い(責任転嫁)
では、どうぞ↓
ブゥーーーーーーン…………
最初に感じたのは、蛍光灯がやけに煩い音を立てているという事だった。
「何これ……すっごく広い…。」
眼の前に広がる黄色い空間を見て、トムは呆気に取られる。
微かに埃っぽい臭いのする黄色いカーペット。
同じく黄色い壁紙。
等間隔に配置された天井の蛍光灯は、耳障りなハム音を常に響かせていた。
そして何度も言うが、
「コレ全部……パパが作った部屋なのかなぁ…?」
そう言いながら、トムは後ろを振り返った。
ーーーードアの位置を憶えて置かなければ、迷子になる。
かつて、バレービューセンターで迷子になった経験のあるトムは、『迷子になる』と言う事が嫌だった。
だから、彼はドアの位置を覚えておこうと思ったのだ。
ーーーーーーーー
「あれ……?」
胸の辺りがヒヤッとなる。
トムは思わず壁に駆け寄った。小さな両手で、有るはずのないドアを探して壁を叩く。
「ドアは?ドアは何処!?」
叩けど叩けど、ドアは見つからない。
ーーーー当たり前だ。ドアはもう
「嘘だ…。ここから出してよ、パパ!!ママ!!」
壁を叩きながらトムは叫ぶが、返事は無い。
蛍光灯のハム音だけが、この黄色い世界に響く。
「ママ!!助けて!!!」
迷子になった時の記憶が、瞬時に蘇ってきた。
周りに人が居るはずなのに、孤独になっていくあの感覚。ーーーーだけど、今度は
「誰も居ない!誰も居ないよぉ!!!」
……そうだ。今度は
完全な孤独。絶対的な隔絶。
「うわああああああん!!!」
半狂乱になりながら、トムは走り出した。
何が起きているのか、全く分からない。
ーーーーただ一つ言えることは、自分は迷子になってしまったと言う事だ。
……………この、見知らぬ世界で。
◇◆◇
「うぅ……ひぐっ…ぐすっ…。」
黄色い廊下を、泣きながら歩く。
ハム音鳴り止まぬ黄色い世界は、幼いトムの心を摩耗させていった。
「帰りたい……帰りたいよ…。」
そう呟いてみても、ドアが現われる訳でも無い。
ーーーーーーーーただ黄色い部屋と廊下が続くのみだ。
…果たして、どれぐらい歩いたのだろうか?トムの足は、既に限界を迎えていた。
「……うぅ……疲れたよ……ママ…。」
トムは黄色い部屋の一角に座り込み、歩き疲れて痛んで来た足を休める。
カーペットに付いた手の平に、微かな湿り気を感じた。…カーペット自体が、微かに湿っているようだ。
だが、そんな事は今はどうでも良い。ーーーー兎に角、座って休みたかった。
「うぅ…ん……すぅ……。」
そして、座り込んだトムは、強い疲労感から眠ってしまう。
(コレは夢なのかな……?目が覚めたら……僕はベットの上に居るのかな……?)
そんな事を思いながら、瞼を閉じるトム。
黄色い世界は何処までも広く、彼は余りにもちっぽけだった。
◇◆◇
『トム〜!?』
……ママが呼ぶ声がする。
『トム〜!!いい加減起きなさい?ーーーーもう朝よ!』
(朝……??)
トムは、寝惚け眼を擦りながら起き上がった。
『あれ……?』
見慣れた天井に、見慣れた部屋。
窓から差し込む温かな陽の光に、ふかふかのベット。
ソコは、家にある自分の子供部屋だった。
『…ゆ、夢だったの…?』
トムは見慣れた部屋を見渡しながら、静かに呟く。
同時に、途轍もない安堵と歓喜の感情が込み上げてきて、トムは思わず泣いてしまいそうになった。
『そうか!…アレは夢だったんだ!!ぜんぶ、僕が見た悪い夢だったんだ!!』
トムは嬉しくなって、ベットから飛び出す。ーーーーそして、階下から相変わらず自分を呼び続ける母親の声に、笑顔で返事をした。
「ーーーーーーーー今行くよ、ママ!!!」
「ーーーーはっっっ?!」
何かに打たれたかのように、飛び上がって起きるトム。
覚醒した五感が、硬いカーペットの感触と耳障りなハム音ーーーーそして、嫌という程見た黄色い世界をトムに知覚させる。
「あぁ……ぁあ……!」
何も変わっていない世界を見たトムは、絶望に打ちひしがれた。
「夢じゃ無かった……。夢じゃ無かった…。」
両手を床につき、ポロポロと涙を零すトム。
彼の幼い心は、この孤独に耐えられなかったのだ。
「……帰りたい。……誰か……
絞り出したその呟きに、応える者は居ない。
ーーーーしかし、ふとトムは気付いた。
………
自分が眠りに付いた時は、もっと大きい部屋だった筈だ。
しかし、今は柱で区切られた小部屋に変貌しており、更にずっと奥の方に細長い廊下が伸びている。
そして、その廊下の奥に
「…?!ーーーーーーーーアレって……!」
トムは
壁に張り付くようにして取り付けられた、黄色一色の世界には驚く程に不釣り合いな、銀色の両開きの扉。
間違い無い。ーーーーーーーーアレは、《エレベーター》だ。
「エレベーター…!!」
それを見たトムは、一縷の望みをエレベーターに抱いた。
つまり、もしかしてアレが出口のではーーーーと言う希望だ。
「ッ……!」
トムは、フラ付きながらもエレベーター目掛けて歩き出す。
空腹と疲労で歪んだ視界の先で、エレベーターの扉が独りでに開いた。
……まるで、トムを手招きしているように。
そして、彼は誘われるままにエレベーターに乗り込む。
彼が乗り込むと同時に、エレベーターの銀色の扉はゆっくりと閉まり、彼を閉じ込めて動き出した。
ーーーーーーーー
「……下?」
トムは、ココは地下室だと思いこんでいる。故に、彼は下へ行くエレベーターの挙動に疑問を抱いた。
しかし、動き出したエレベーターを止めることは出来ない。
ドアのガラス張りの部分から見える光が無くなり、真っ暗になった。ーーーーーーーーそして、エレベーターの上にある電光掲示板に、黄色い文字が踊る。
『Level 1〈The Habitable Zone〉』
エレベーターに乗り、トムが辿り着いた場所は、少なくとも《出口》では無かった。
ポーーーーン、と言う軽やかな音と共に開くトビラ。
眼の前に広がる景色は、黄色一色だった世界から一転して、
「なにこれ……。」
エレベーターから出たトムは、辺りを見渡す。
ソコは、灰色のコンクリートで作られた巨大な地下駐車場とでも言うべき場所だった。…車は1台も無いが。
微かに霧がかっており、足下には澄んだ水溜りが点在している。
そして、この場所でも相変わらずハム音響かせる蛍光灯が、天井に一定間隔で取り付けられていた。
「…………。」
怯えながらも灰色の世界を歩き始めるトム。
常に見られているような嫌な気配を感じながらも、彼は広大なコンクリートの迷宮を彷徨う。
所々、蛍光灯が消えて暗くなっている場所があったので、彼はそこをなるべく通らないように歩き続けた。……
「……ここは……地下室に似てる…。」
歩き回りながら、トムはそう呟く。
トムの家の地下室も、こんな風なコンクリートの壁と天井があって、光の届かない箇所はいつも暗かった。
「…暗いのは嫌だ……怖いよ……。」
闇の恐怖に震えながらも、トムは歩き続ける。
しかし、ココでトムにさらなる《試練》が襲い掛かるのだ。
◇◆◇
最初に感じたのは、蛍光灯の点滅だった。
「え……??電気がーーーーーーーー」
トムが辺りを見渡したと同時に、全ての蛍光灯が一斉に消える。
「ひぃッ!!」
唐突に訪れた消灯に驚いたトムは、決して浅くは無い水溜りの上に尻餅をついてしまう。
バシャッッ!と水飛沫があがり、彼のズボンがびっしょりと濡れたが、そんな事を気にしている余裕は無い。
彼のーーーーいや、彼ぐらいの子供なら皆そうだがーーーー最も恐れるモノ……即ち、暗闇が辺りを包みこんだのだから。
(く、暗い!何も見えない!?)
手探りで進もうにも、文字通り一寸先は闇。伸ばした手は、何も掴めず宙を切る。
「だ、誰か…!電気をーーーー」
トムが震える声を絞り出した時、ポッ…と
壊れかけの電灯の最後の足掻きの様な、激しく明滅を繰り返す光が、ポツポツと辺りを照らす。
「……!」
…コレで真っ暗では無くなったーーーーが、依然として元の明るさには戻っていない。
むしろ、激しく明滅する明かりのせいで、不安と恐怖がより一層掻き立てられる気がした。
「い…嫌だ…!怖いよ!!」
その声は誰に向けたものか。トムは辺りを見渡しながら後退る。
電気は狂ったように点滅を繰り返す。
光と闇が交互に訪れ、その度に恐怖が心を支配する。
ーーーーーーーーそして、闇の中から
「ッ?!」
弾かれたように顔を上げたトムの視界に、ずっと奥の方の闇からコチラに向かって来る
そして、ソレはトム目掛けて笑いながら走り寄ってきた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!?!?」
トムは半狂乱になって起き上がると、バシャバシャと深い水溜りを掻き乱しながら走り出す。
そんな彼を追いかける〈笑顔〉。ーーーーしかも1つでは無い。右からも、左からも、全部で5つの気味悪い〈笑顔〉が、トムを追いかけ始めたのだ。
(ーーーーお化けだ!!アレは、絶対オバケだ!!)
トムはがむしゃらに走った。ーーーーどこをどう逃げたかは覚えていない。
ただ気が付いた時には、自分はかなり広い部屋に辿り着いていた。
そして運悪く、ココまで逃げて来たタイミングで、辛うじて点いていた蛍光灯の明かりが、完全に切れてしまう。
「ーーーーあうっ?!」
再び真っ暗になった世界で、トムは
硬い、そして冷たい鉄の棒のような物。…床についた手には、何故か硬めの木材の様な感触が伝わる。
……
「痛い……。」
闇の中で足を押さえながらトムは呻いた。
ーーーー闇の中から彼を追ってきた〈笑顔〉達が、倒れ込むトムに近づく。
「いっ、嫌だ!!来ないで!!」
手を激しく振り回して抵抗するトムだったが、〈笑顔〉達は気にも留めない。
その、闇に浮かび上がる大きな口が、トムを喰らおうと開き………
ーーーーーーーー次の瞬間、眩い閃光がトムと〈笑顔〉達を横から照らした。
「うわっ?!」
『ーーーーーーーー!?』
驚いて動きを止めるトムと〈笑顔〉達。
……彼等の横に、光を放つ大きな『何か』が現れている。
「な………コレってーーーー」
「ーーーー
……プシューッ、と音を立てて『電車』のドアが開いた。
そして、中から誰かが降りてくる。
顔は、走行用前照灯のハイビームによって逆光となり、良く見えない。
しかしソレが紺色の制服を着こなし、車掌帽を目深に被った男であるという事は、なんとなく分かった。
『おやおや。……ただの運行障害物かと思いましたが、どうやらそうでも無い様ですね。』
片手で車掌帽のツバを掴んだまま、落ち着いた声色で口を開く『車掌』。
そして彼は、何処からともなく現れた銀色の儀礼剣を逆手に抜刀すると、トムの隣を通り過ぎて〈笑顔〉達と向き合った。
「ーーーー
ーーーー闇の中より現れた車掌の名は〈運行者〉。
私はThe Metroの車掌さんが大好きです。
またこのキャラクターを書けて、ほんとに嬉しいですよ。マジで。
ではまた次回〜サラダバー。