The Back Rooms Story 〜Fanmade〜   作:犬社長

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お待たせしました。パート6です。

…おかしいな…パート1で『3話位で終わる』『そんなに長くない』って言った筈なのに、2倍の話数費やしてるし、なんならまだ終わって無いっていう(絶望)

あと今回の話は一万文字超えました(長くないとは?)


こんな感じでグダグダですが、どうぞ↓


トム・マクフライ記録補完その⑥〈電車でGO!バックルームの旅〜不毛の大地と森林庭園〜〉

 

 

 

 

◇◆◇NEXT LEVEL ◇◆◇

 

 

 

 

 

 

 

Level 183 〈The Snowy Village(雪の村)

 

 

 

 

ーーーーーーーー続いてトム達が辿り着いた地は、極寒の中に閉ざされた山間の村だった。

 トムの体が埋まってしまうほど分厚い積雪と、半端ではない吹雪で前が見えない。

 

「さ、寒ぃぃぃぃぃ!!」

「ψψψψψψψψ!!」

 

二人して凍え上がる、トムとポリゴン。

 

『停車時間は25分です。…車内保温の為、ドアが閉まります。ご注意下さい。』

 

 車掌さんが機転を効かせてくれたのか、開いた電車のドアは直ぐに閉まった。

 

『ココに居るのは、エンティティの〈追い回す者(ストリートストーカー)〉ぐらいですからね。……乗客は居ないでしょう。』

 

 そんな車掌の言葉通り、このレベルはただただ降りしきる雪の中に閉じ込められた寒村を、電車の窓越しに見るだけで終わった。

 

「あの村、住んでる人は誰も居ないの…?」

『ええ。誰も。』

 

ーーーー電車がこのレベルを去る際など時、トムはそう車掌に訊ねてみた。……彼の目には、雪に閉ざされた誰も居ない村が、とても寂しく見えていたのだ。

 

「なんだか……。さみしいね。…あの村に住んでいた人は居たの?居たのなら、何処へ行ったの??」

 

車掌は曖昧に頭を振る。

 

『さぁ…。どうでしょうか。ーーーーーーーー少なくとも、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。きっと、これからも変わる事は無いでしょう。………()()()()()()()()()()。』

「…………そう、なんだ。」

 

 

ーーーー凍りついた村の中を、銀の電車は疾走する。

積もる雪など意に介さず、何も無いかのように。

 

 

 

やがて、山に開いた大きなトンネルの中に電車は入り、凍てついた寒村は見えなくなっていったーーーーーーーー

 

 

 

 

 

◇◆◇NEXT LEVEL ◇◆◇

 

 

 

 

 

Level 245〈The Pit of Flames(炎の穴)

 

 

 

 

 

 

 トムとポリゴンを乗せた電車が辿り着いた4個目のレベルは、煮え滾る溶岩と真っ赤な岩塊が至る所に転がる、地獄の様な洞窟の中だった。

 

 

「うっわ…。今度は暑いよ車掌さん……。」

「≯ζ…@eeeeee〜〜〜………。」

 

 ドアが開くなり、溶けたマグマの熱気がムワッと車内に押し寄せてきて、トムとポリゴンは顔を顰める。(のっぺらぼうなのに、顔を顰められるとはコレ如何に。)

 

『此処はそういうレベルですからね。…不快でしょうが、仕方がありません。』

 

 一方、車掌は涼しい顔をしていた。…さっきのレベルでもそうだったが、彼は暑さや寒さを感じないのだろうか??

 

「車掌さん。……このレベルは、やっぱり危ないの?」

 

 電車が停まっている直ぐ側を流れるマグマの川を見ながら、トムは車掌に問いかけた。

 

『そうですね。主に〈引っ掻く者(スクラッチャー)〉〈笑う者(スマイラー)〉〈狩る者(ハウンド)〉などが、代表的な実体です。ーーーー更に、彼等はこのレベルの極端な気温の影響で、耐久性が大幅に上がっています。戦闘は避けたほうが良いかと。』

 

 スマイラー以外トムには分からなかったが、取り敢えずココは危険な場所であるらしい。……見た目的にも当然だろう。

 

「そ、それにしても…暑い……。さっきの所はすっごく寒かったのに……。差が激しすぎるよぉ………。」

 

 車掌が提供してくれたアーモンドウォーターを飲みながら、トム達は何とか停車時間をやり過ごした。

 

 

ーーーー車掌曰く、次のレベルも危険極まりないレベルらしい。

 

 だが、取り敢えずトムにとってはこの灼熱地獄から出れるのなら、ソレだけで良かった。

 

 

 

 

 

 

◇◆◇NEXT LEVEL ◇◆◇

 

 

 

 

 

Level 301 〈The Barrenness(不毛の地)

 

 

 

 

 辿り着いた次のレベルは、無限に続くように見える灰緑色の草原と、何故かは知らないが、常に轟々と燃えている木が生えた丘で構成されたレベルだった。

 

 空気は常に焦臭く、空は煙で暗く閉ざされ、息を大きく吸うことも憚れる様な嫌な匂いがする。

 

 草原は塵と灰に塗れ、黄土色のひび割れた大地が露出していた。

 

「……なんか…すごい所に来ちゃった…。」

「dmjiap≯∩kjbrrq……。」

 

 車窓から見える荒れ果てた地を、唖然としながら見つめるトムとポリゴン。

 

『レベル301は、荒廃した不毛の地。…停車時間は15分を予定しております。ーーーー敵対的なエンティティの襲撃を受ける可能性が有りますので、皆様は武装の準備を。』

 

そう車掌がトム達に告げた。

 

「ぶ、武装って言ったって、僕は何も持ってないよ…?」

『ご安心下さい。ーーーー危険域(クラス5)における非武装者保護の為、当列車には護身用オブジェクトが配備されております。』

 

 そんな車掌の声と共にガシャッ!という音がして、車内の椅子の下部がスライドし、中から金属の棚がガコンと飛び出して来た。

 

…中には、ズラリと金属の銃が並んでいる様だ。

 

 そしてドアの上の電光掲示板に、『車内乗客緊急保護システム起動中』の赤文字が流れる。

 

「……ar≯ζvu!」

 

驚いた様なジェスチャーをとるポリゴン。

 

 そんな彼に、車掌は金属の棚の中に安置されている銃を手渡す。

 

『コチラは〈カルソフ・ライフル〉です。ーーーーフリントロック式のリピーターライフルですが、一度に複数発の弾薬装填が可能なので、平均的な射撃間隔は一秒から二秒と、非常に連射性に優れています。』

 

「…oo〜〜.∩≯ζlrbdbj!www!!」

 

 ポリゴンは、謎の決めポーズを決めてカルソフライフルを構えた。……気に入ったらしい。

 

「銃だ…!本物なんだ……凄いや。格好良いよポリゴンさん!」

「isvnjkllk〜!」

 

 感心するトム。…トムの家にも防犯用の銃が有り、時折父親は仕事仲間と射撃場に行くこともあるが、トム自身は銃を触った事は無い。

 

「ほんとに格好良いや…。で、僕には何かあるの?車掌さん。」

 

トムの問いに、車掌は別の棚から灰色のマントを取り出してきて、彼に渡した。

 

「……?コレは??」

 

肌触りは滑らかで、鳥の羽の様にとても軽い。

 

『〈透明マント〉です。着用者を文字通り()()()する効果があります。ーーーーまた、着ている間はエンティティに見付かりませんし、他の生体は着用者を透過するので、物理的干渉すら不可能となります。』

 

「わぁ……なんか、ゲームに出てきそうなアイテムだね!」

 

 銃では無かった事にほんの少しがっかりしたトムだったが、マントを着てみると、そんな思いは飛んで消えた。

 

「hot,emjvv?」

 

 ポリゴンが、驚いた様にマントを着たトムを指差している。…恐らく彼の目には、トムの姿は見えないのだろう。(目は無い筈だ、とか突っ込んではいけない。)

 

「…これ、僕ほんとに透明になってる?」

『ええ。バッチリです。何も見えません。』

「ふーーん。」 

 

 試しに、トムは目の前に立っているポリゴンに、マント越しに手で触れようとしてみた。

 

 しかし、伸ばした手はポリゴンの体をスルリとすり抜けて、背中側の景色を掴む。

 

「わ…!ほんとに僕、すり抜けちゃった…!!」

 

そのままトムはポリゴンをすり抜けて、反対側に立つ。

 ポリゴンは、彼が自分の体内を透過して行ったことに気付いていないようだ。

 

「こっちだよ、ポリゴンさん。」

「bbkrr!nfoxwyzz!」

 

 マントを脱いでポリゴンに話し掛けると、ポリゴンは大袈裟に驚いてみせた。

 

 さっきの決めポーズと言い、中々にジェスチャーが激しい人である。

 

「あはははは!びっくりしたでしょ〜??」

「jruuvoζψ!wwwww」

 

 そうやってワチャワチャする2人を見ながら、車掌は小さく呟く。

 

『……さて。発車まで何事も無ければ良いのですが…。』

 

 

ーーーーしかし、やはりと言うか、そう上手くは行かなかった。

 

 

 

…最初に感じたのは、()()()()()()()()()

 

 

「…ん?なんか……窓の外からーーーー」

「∩??」

 

 トムがその羽ばたきが聞こえた方向に目を向けたと同時に、()()()()が電車の窓に突っ込んで来た。

 

「うわぁッ?!」

「€oooo!?!?」

『おっと。』

 

 ドスーーンッ、と巨大蛾の体当たりを受けた車両が揺れる。そして、巨大な翅から鱗粉がワッと散った。

 

しかも、巨大な蛾は一匹だけでは無い。

 

 同じ様な蛾が何匹も、まるで光に集まる虫の如く、電車によってたかって体当たりを繰り返して来るのだ。

 

 その度に、電車は右へ左へと激しく揺れる。トムはマントを急いで着ると、電車の椅子にしがみついた。

 

「し、しゃ、車掌さん!!大丈夫なのこれって!?ーーーーてか、あのでっっっかい蛾は何?!」

『ーーーー〈飛ぶ者(デスモス)〉の群れです。列車が横転する前に、迎撃しましょう。』

 

 そういうなり、車掌もまた〈カルソフ・ライフル〉を手に取る。

 

 そして車両の窓を勢いよく開けると、此方に向かってきた〈飛ぶ者(デスモス)〉目掛けて発砲した。

 

 ターーーーンッ!と乾いた音が鳴り、〈飛ぶ者(デスモス)〉の翅が千切れて地に落ちる。

 

 そのまま彼は、立て続けに何匹かの〈飛ぶ者(デスモス)〉を撃ち落としていった。

 

その手際には一切の迷いも狂いもない。

 

『ポリゴンさんも、反対側の窓から射撃をお願いします。私1人ではカバー出来ませんし、なにより銃に関しては素人なので。』

「m≯lynll¶¶!?」

 

 それで素人はおかしいだろ!?ーーーーとポリゴンがツッコミを入れた気がする。

 

……兎にも角にもポリゴンも射撃に参戦し、〈飛ぶ者(デスモス)〉の群れを何とか凌いでいった。

 

 車内には硝煙の匂いが立ち込め、諦めずに電車へ特攻を仕掛けてくる〈飛ぶ者(デスモス)〉の羽ばたきが耳につく。

 

 

………そして、電車の周りに落ちる〈飛ぶ者(デスモス)〉の死骸の数が30を超えた頃、〈飛ぶ者(デスモス)〉はもう電車に向かっては来なくなった。

 

 

『ーーーーーーー終わりましたね。』

 

 銃口から煙を吐くカルソフ・ライフルを構えながら、車掌は電車の周囲を見回して呟く。

 

「tklldro〜〜。」

 

 疲れた〜、と言わんばかりにポリゴンが銃を抱え持って、床にへたりこんだ。…戦い慣れはしていないのだろう。

 

『…お疲れ様です。助かりましたよ。』

 

 車掌がカルソフ・ライフルを元の場所にしまい込んで、ポリゴンを労った。

ポリゴンは床に座り込んだまま、親指を立てる。

 

こうして電車に押し寄せた危機は去りーーーーーーーー

 

 

ガタン

 

 

「E??」

「え?」

『おや。』

 

 

()()()()()()()()()()()()()

 

「な、何??」

 

 脱ぎかけたマントをまた着たトムは、後部車両へ繋がる扉を見る。

 

『…車両に何か入り込んできましたね。乗客の方か……或いはーーーー』

 

銀の儀礼剣を構えながら呟く車掌。

 

 

ーーーーバコンッッ!!!

 

 

瞬間、扉が勢いよく弾け飛ぶように破られる。

 

 

 そして、背が高く、白く窪んだ目をした、青白い人型の怪物が、トム達の居る先頭車両へ侵入してきた。

 

生気の無い白目が、車掌達を舐めるように見つめる。

 

「ひいッ?!?!」

 

 透明マントの効果を完全に忘れ、トムは車掌の後ろに隠れた。

 

『〈成り変わる者(スキンスティーラー)〉ですか。…〈燃える死の森(ファイヤー・デス・フォレスト)〉から出て来た個体の様ですね。』

 

 そう言いながら、車掌は銀の儀礼剣を引き抜く。ーーーー〈成り変わる者(スキンスティーラー)〉は、そんな車掌を見るなり車両の床を蹴って飛びかかって来た。

 

 その青白い太く大きな腕が、車掌を捉えようと伸びる。

 

「車しょーーーーーー」

『大丈夫です。』

 

 しかし、車掌は一歩後ろに下がるだけで腕を回避した。

 

そして右手の銀の儀礼剣がキラリと閃き、カウンターの居合い切りが〈成り変わる者(スキンスティーラー)〉に放たれる。

 

『ーーーーーーーー!!』

 

しかし、その刃は空を切るだけに終わった。

 

 素早く後ろに飛び退った〈成り変わる者(スキンスティーラー)〉が、ギリギリのところで刃を避けていたのだ。

 

 更に、避け際に車掌の頭部へ蹴りを入れようとしてくる。ーーーーこの攻撃は車掌の左手で防がれたが、衝撃で彼を少し後退させることに成功した。

 

一瞬の攻防の後、互いに見つめ合う両者。

 

 

『……ふむ。やはりクラス5のエンティティは強力ですね。』

 

 

そう呟く車掌。

 

 一方で〈成り変わる者(スキンスティーラー)〉は、直ぐ側の金属棚の中からカルソフライフルの銃身を掴むと、棍棒のように勢いよく振り下ろして来た。

 

 対する車掌は銀の儀礼剣でライフルと切り結ぶ。ーーーーーカッ!と音を立てて、ライフルの銃身が切り飛ばされた。

 

 そのまま車掌は一歩前にスルリと踏み込み、〈成り変わる者(スキンスティーラー)〉の眼前で刃を再び振る。…今度は、回避しようにも出来ない距離だ

 

『ーーーー!?』

 

 スパッ、と〈成り変わる者(スキンスティーラー)〉の青白い頭部が宙に飛ぶ。

 

 首から噴き出した半透明の血液が、電車の床と窓、そして天井にまで飛び散った。

 

(わっ!)

 

思わず両手で自分の目を隠したトム。

 

 車掌は儀礼剣に付着した血を拭き取ると、パチンと鞘に剣を納めた。

 

そして、手で車掌帽の位置を軽く直しながら口を開く。

 

『ーーーーちょうど時間ですね。死体処理が終わり次第、出発しましょうか。』

 

 

 

 こうして、トム達はレベル301の脅威を乗り越えたのだったーーーーーーーー

 

 

 

 

 

◇◆◇NEXT LEVEL◇◆◇

 

 

 

 

 

Level 92:〈Woodland Garden(森林庭園)

 

 

 

 

 続いて辿り着いた6個めのレベルは、青空の下に広々と広がる落葉樹林であった。

 

 空気は澄んでいて、緑に溢れる大地には色とりどりの蝶や鳥が飛び交い、大地には、無数のありとあらゆる種類の花が、咲き乱れている。

 

 そして、咲き乱れる花々の間を、無数の蜜蜂の群れが忙しなく飛び交っていた。

 

ーーーーーーーーそこは、今までのどのレベルよりも、温かみがあってとても安全に思えたし、実際に安全であった。

 

 

「うわ〜…!森だ!!綺麗〜!」

「bcjqnpp〜!」

 

 やっと辿り着いた落ち着けそうなレベルを前に、目を輝かせるトムとポリゴン。

 

 電車は、森の中にポツンとある小さな丘の手前に停車した様だ。ーーーーその丘には、隣り合わせになる様にして建っているコテージの様な物があり、周りには色とりどりの花や観葉植物が均一に映え揃っている。

 

「ーーーーなんか、家みたいなのがあるよ?車掌さん。」

 

 トムがコテージを指差すと、車掌はにこやかな声で頷いた。

 

『ええ。アチラはこのレベルの管理者でもある〈庭師〉の家です。』

「にわし?」

 

 オウム返しにトムが呟いた時、コテージのドアがガチャリと開いた。そして、コテージの中から年老いた女性の姿が現れる。

 

「bba?」

 

ポリゴンが首を傾げた。

 

 一方で、コテージから現れた老婆は、コチラへ笑顔を向けながら、丘を軽快に降りてくる。

 

「おやおや。運行者さんじゃないかえ?…しかも、お客さんまで居るじゃないかい!」

 

 しわがれたーーーーしかし優しげなーーーー声で、車掌に話し掛ける老婆。

 

 車掌は電車の外に一歩だけ足を踏み出すと、軽く帽子を持ち上げて頭を下げた。

 

『こんにちは。〈ヘレン〉さん。相変わらず、此処はいい天気ですね。』

「そりゃ何時でも此処はいい天気さ。それにしてもーーーー」

 

 ヘレンと呼ばれた老婆は、トムの方へ顔を近付ける。

 トムも、特に不審に思う事無くヘレンを見上げた。彼女のシワだらけの顔に輝く2つの瞳は、まるで夜空に瞬く星のように彼を見つめている。

 

 なんというかーーーー何百年もの時の流れが、彼女の瞳に宿っている様だった。

 

「ーーーー坊やは何処から来たんだい??」

 

優しい声がトムに問い掛けてくる。

トムはニコッと笑って答えた。

 

「アメリカ合衆国のキャラルトンから来ました!テキサス州にある街です!」

「アメリカ………。そうかい。アメリカから来たんだねぇ。」

 

 ヘレンは何度も何度も深々と頷いた。そして、トムの頭にそっと手を置く。

 

「電車に乗れたとは言え、ココまで来るのは大変だっただろう?…運行者さんや。停車時間は何分かえ?」

『1時間半です。』

「なら、アタシのコテージで休むと良いさね。ーーーー美味しい果物もたんとあるよ?」

「本当?!」

 

 トムは顔を勢いよく上げた。アーモンドウォーターは確かに美味しいが、アレばっかり飲んでいても物足りなく感じ始めていたのだ。

その反応が嬉しかったのか、ヘレンは何度も頷く。

 

「本当だとも、本当だとも。ささ、そこの四角い〈顔無き者(フェイスリング)〉さんに、運行者さんもおいでなさいな。」

 

そう言って、ヘレンはトム達を手招きした。

トムは車掌をチラリと見上げる

 

「車掌さん、行っても良い?」

 

車掌はコクリと頷く。

 

『ええ。勿論です。ゆっくりしていって下さい。』

「ーーーー運行者さんもよ。出発するまで、1時間も電車に残るつもりかい?」

 

ヘレンの呆れたような声に、車掌は特に迷いもせず答えた。

 

『それが私の仕事ですので。』

「んま〜、相変わらずお堅い人ねぇ。ウチと電車は目と鼻の先なんだから、少し離れたって大丈夫じゃないかえ?」

『しかし…』

 

 尚も遠慮しようとした車掌だったが、ここでトムが彼の手を取った。

 

「車掌さんも行こうよ??1時間も有るんでしょ?お仕事大変なのは分かるけど、僕のお父さんも『休日は大事』って言ってたし!」

「そうさ、そうさ。どうせこのレベルでは、乗る人も居やしないよ。だから、自由時間だと思って休んでおいき?」

『ーーーー分かりましたよ。……では、少しだけご一緒しますね。』

 

 2人にそう言い寄られては、さすがの車掌も折れるしかないのか、彼は軽く帽子を被り直しながら小さく頷いたのだった。

 

 

 

 

◇◆◇

 

 

 

 

 

 案内されて入ったコテージの中はとても快適で、とても綺麗な内装だった。

 

 テーブルの上にはキウイ、モモ、リンゴにバナナやスイカにメロンに至るまで、あらゆる種類の果物が乗ったバスケットが置いてあり、ヘレンはそこから沢山の果物をトム達に分けてくれた。

 

「なんでもあるからねぇ。好きなだけ食べて頂戴。」

「やったーー!!スイカだ!!」

「koodaxvv…。」

 

 トムはカットされたスイカに齧りつく。一方で、ポリゴンは大量の果物に戸惑っているようだった。

 

「どうしたのポリゴンさん?食べなよ。美味しいよ??」

 

口をもぐもぐさせながら、トムはポリゴンに食事を促す。

 

『トムさん。彼はフェイスリングですよ。食事の必要はありません。』

 

 ヘレンが淹れたコーヒー(コーヒー豆もこのレベルで栽培されているのだ。)を飲みながら、車掌がトムに話しかけた。

 

「あ、そっか。口が無かったね!ごめんポリゴンさん!」

「iiRuu。」

 

気にしてないと言う様に首を降るポリゴン。

 ヘレンがトムにメロンを切り分けながら、ポリゴンへ話し掛けた。

 

「ーーーーそれに、()()()()()()()ばかりで戸惑うのも仕方ないわねぇ。」

「見慣れない?…確かに見た事無いのもあるけど…コレはただのスイカだよ?」

 

首を傾げるトムに、ヘレンはそっと話しかける。

 

「坊やにとってはね。…でも、この世界のエンティティさんから見れば、こういった『坊やの世界』の食物は珍しく見えるのよ。」

 

ーーーー確かに言われてみればそうかもしれない。…しかし、となると何故、ヘレンはこの世界(バックルーム)で、トムの世界(フロントルーム)の食物を育てる事が出来ているのだろう??

 

…トムは疑問に思った事を訊ねてみることにした。ーーーーそもそも、ヘレンはアメリカを知っているような口ぶりだったし、何か元の世界と関わりがあるのかも知れない…と、トムは考え始めていたのだ。

 

「おばさんはーーーーどうして、スイカとかリンゴとかを育てられたの??それに、なんでアメリカを知ってるの??」

 

 その問いに、ヘレンは果物を切る手を止めて、遠くを見つめる様な顔つきになった。

 

「……()()()()()()()()()()()()()()()()()。もう、ずっっっと昔の話だけどねぇ。」

 

これにトムは少なからず驚いた。

 

「ーーーー僕と同じ?!…おばさんも、この世界で迷子になっちゃったって事!?」

 

ヘレンは静かに頷く。

 

「細かい事は忘れちゃったけどねぇ。…でも、アタシは元々ここの世界の住人じゃ無かった。ある日、迷い込んできたんだよ。」

 

トムは、皿の上に食べかけのスイカを置いた。

 

「……なんで帰ろうとしないの??」

 

ヘレンは静かに答える。

 

「元の世界を忘れちゃったから………あと、()()()使()()()()()()()()()ってのもあるわねぇ。」

「使命??」

 

首を傾げたトムに、ヘレンは軽く昔話をしてくれた。それは、こんな内容であった…………

 

 

 

 

 

 

ーーーーーーー昔、ヘレンが初めてこのレベルに辿り着いた時、このレベルには森は無かった。

 そして、そこには危険なエンティティが数多く生息していたと言う。

 

…しかし、その当時のヘレンは若く強く、自分が生き延びる為に精一杯の努力をした。

 

 その甲斐あってか、このレベルから凶悪なエンティティは一掃され、そして彼女はここを拠点にしようと思いついた。

 

ーーーーそして住処となるコテージを建て、所々が荒れていたこのレベルを整備しようとした時、彼女は自分が種を持っていない事に気付いたのだ。

 

 種が無ければ、このレベルは荒れたまま。…それに気付いたヘレンはがっかりしたが、この時『何か』がヘレンに種を与えてくれたのだ。

 しかも、彼女が望みつつも諦めていた、あの元の世界に生える植物達の種を。

 

 

 そして、その種を何者かから与えられたその瞬間から、彼女には〈世界〉から『使命』が与えられた。

 

 

ーーーー即ち、このレベルを管理する者で有り続けると言う〈役割(ロール)〉を。

 

 

 

 

「…種を授かったのは奇跡さね。ーーーーだけども、代償は大きかった。」

 

ヘレンは懐古の表情を浮かべながら、トムに語り掛ける。

 

「あの瞬間からアタシは世界の理から外れ、()()()()()()()()()。…()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。ーーーーそして、この世界(レベル)はアタシの世界(レベル)となった………。」

「……………。」

 

トムとポリゴンは、神妙な顔で彼女の話を聞いている。

 車掌は静かにコーヒーを飲んでいたが、その態度に微かなやるせなさを滲ませている気がする。

 

「…だからね。坊や。良くお聞き。」

 

 ヘレンはトムの頭に手を置いた。その星のような黒目が、トムをまっすぐ見つめている。

 

「坊やは、元の世界の事をちゃんと憶えておくんだよ。そして、帰る事を諦めちゃいけない。…諦めたら、アタシみたいに()()()()()()()()()()()。坊やみたいな子が()()()()()()()()()()()()()()()()()()、アタシは嫌だからねぇ。だから、どうか無事に帰っておくれ??」

 

「…っ!うん!!僕は絶対帰るよ!!」

 

 

ーーーー上位者関連の話は、小さなトムには分からなかった。

 

 しかし、ヘレンが話してくれた『帰ることを諦めてはいけない』と言う言葉は、トムの心に深く響いたのだ。

 

 

 

 

 

 

そして、それは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()に打ち勝つ力を、確かにトムに与えてくれたのだったーーーーーーーーーーーー

 

 

 

 

 







うーーん……あともう一波乱ありそう。

因みに、本編では結局語られず仕舞いだった『結局、上位者とは何なのか?その誕生の起源とは?』って話も少しだけするつもりッス。
…ま、今回のヘレンさんの話でほぼ説明した様なモンだけどネ()

長くなって来たけれども、あと2話…あと2話で必ず終わらせるから……(デシャブ)


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