最強とその付き人   作:瑠夏 莉緒

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とりあえず、1話です。
人気がありましたら、連載します。
とりあえず暇つぶしに描いてみました。



付き人

 

私は強く気高い陰陽師になりたかった。

 

けど、そんなのもう‥どうでもいい。

今はただ、時間を戻したい。

 

明けない夜はない。そう言っていたはずなのに。

なぜ、私だけ‥

こんな惨めな思いをしなければならないのだろうか?

 

 

ケガレの蔓延るこんな世界で‥人はあまりに無力だ。

脆弱な力も、束になれば何かを残せるかも‥

そんな期待はとうの昔に泡となって消えていった。

 

ただ、私は人とケガレの共存を願っただけだ。

 

なのに、どうして?

どうしてそんな目で、私を見るの?

 

道ゆく人は堕ちた私なんか助けてくれなくて、大衆の面前で泣き叫ぶしかない。

 

「もう‥普通に笑えないよ。誰か、助けてよ‥」

 

私は陰陽師だ。そして‥魔女でもある。

 

 

 

 

私の住む島は普通の島とは少し違う。

日本ではあるんだけど、少し特殊だ。

この島には陰陽師がいる。

それも、島の人口のほとんどが陰陽師だ。

 

陰陽師‥と言われても、あまりパッとしないだろう。

むしろ、胡散臭い占い師、古臭い、古き仕来りを重んじるお坊様。

 

その方を想像する人が多いと思う。

でも、惑うことなくここにいる陰陽師は正真正銘の、本物だ。

 

そして、陰陽師はそんなに甘くもない。

きっと、ここから先も再三繰り返すことになるだろうけど、私たちに明日の保証はない。

どれだけ安定した生活を送ろうとも、幸せを体現したような家庭を築こうとも、1つの悲劇で裏返る。

 

 

 

体に宿る呪力と呼ばれる力を纏い敵を祓う。

 

敵‥とは?

 

少し昔話をします。

私たちが生まれる千年前、突如として星に脅威が生まれました。

それは最初は蚊ほどの、弱く脆い存在。

けど、人々を喰らい力をつけ、最後には誰の手にも負えない化け物にまで育ちます。

それが、敵。

 

星の脅威、私たちが祓うべき宿敵。

 

私たちはそれを、「穢れの王」と呼ぶ。

 

世界を救いには穢れの王を払わなければならないのだが、私たちは未だその脅威に対面すらできていない。

 

 

そして、もう一つ、双星の陰陽師に伝う伝承を。

 

この物語は二人の密約、太古の少年少女から始まる。

穢れの王が蔓延る平安の世。

 

その世に、二人の天才が生まれた。

一人は苦学生、蘆屋道満。当時の役人にして、穢れ払いに身を興じる天才。

もう一人は名家の令嬢、安倍晴明。

 

後の世に陰陽師の神と崇められる存在たちだ。

 

二人は星が惹かれ合うが如く、心を通わせた。

 

蘆屋道満は人と穢れの王の違いについて研鑽を重ねた。

 

そして安倍晴明は、後に12天将と呼ばれ陰陽師の最高戦力として継承される12体の式神を生み出し、穢れの王に挑んだ。

その結果、安倍晴明は敗北。最後の余力で穢れの王を結界に閉じ込め、一時的に世に平穏が生まれる。

 

 

しかし結界は年々肥大化していく。安倍晴明の力が弱まっていく。

いずれ、穢れの王の封印が解かれ、星に脅威が迫る。

さらに、穢れの王の力に引き寄せられ、ケガレと呼ばれる化け物まで生まれる。

 

私たちは、この千年間。ひたすら穢れの王を祓うべく鍛錬を重ねてきた。

ただ、陰陽師といえど、所詮人だ。

穢れの王の道中に構えるケガレ相手に奮闘しているだけで。一度も穢れの王に迫っていない。

それが現実だ。

 

‥二人の天才の物語には続きがある。

 

日々研究を続けた蘆屋道満は人間が扱う呪力の性質に気がつき、真逆の性質の呪力を生み出した。

その結果生み出されたのが、ケガレ。

穢れの王の道中に巣食うケガレは一人の人間により生み出されたのである。

 

陽と隠。人間の振るう力を陽とするなら、ケガレは隠。

 

陽の申し子、安倍晴明。

院の翁、蘆屋道満。

 

そして穢れの王を祓うべく、二人の天才はそれぞれの振るう力を与えた。

それが、双星の陰陽師。

 

穢れの王を祓い世界を救う少年少女の、定められた物語。

 

 

 

 

 

──春。

桜が咲き誇る満点の季節。

風が心地よく、耳あたりの髪をふんわり包み込みくすぐったい。

 

そんな素晴らしい季節の夕暮れ。

私は忙ししなく、お出かけの準備をしていた。

 

「あ、やばいです。もうこんな時間!」

 

「少し、急がないとっ!」

 

着物に着替え、少しだけ化粧をして、急ぎ足で部屋を出る。

夕焼け空の下、燃えるような夕焼けの元を、木々溢れる大庭園を駆け抜け門を飛び出した。

 

 

 

 

土御門島は陰陽師の島だ。

この島は、千年続く戦いの最前線と言われる場所だ。

その場所で、眼前に佇む少年は名家、鸕宮家の現当主にして歴代最強の陰陽師と謳われるほどの存在。

 

そして、私はそんな彼の専属の付き人だ。

 

 

 

「─遅せぇよ。」

 

門の外には不機嫌そうに空を眺める少年が待っていた。

眼前に佇む少年は、鸕宮天馬。

その彼の小言に、ジト目で受け返す。

 

「いや‥貴方の着付けをしてて遅れたんだから。待っててよ。」

 

「はっ。お前が勝手に着せてきたんだろ?俺は別に普段着でも良かったんだぜ?んん?」

 

「えぇ‥?流石に普段着はまずいですし。」

 

今日は、土御門島始まって以来の、間違いなく大切な日だ。

今日は陰陽師の中の最上位家系、天将12家の方々が一同に会する大事な日。

その中に彼の席もある。

 

天将12家。

土御門島の最高階級にして、安倍晴明により生み出された式神を継承する家系。

その当主が一同に会する場所で、流石に普段着だとまずい。

彼の家の品格が疑われる。

 

一体、自分がどのような立場にあるのか‥この人は理解しているのだろうか?

 

相変わらずなその態度に、少しだけイラッとした。

 

 

 

目の前の彼は‥歴代最強の陰陽師。

そんな立場の人がそんな醜態を晒してどうするの。

 

こう言うことは昔からよくあった。

無礼傲慢、傍若無人。

それらを絵に描いたような性格の彼に、付き人の私は振り回されてばかり。

 

‥あと、貴方の普段着も私が着付けているんですけど──と言いたいのを我慢し話を続ける。

 

 

「それにしても‥‥明日、お見えになるんですよね。双星の陰陽師の方々が。」

 

「今日は件についての席だと聞きました‥どんな方々なんでしょうか?」

 

「‥さぁな、まぁ島の奴らは祭り騒ぎだろうな。ただ、来るのは二人だがそのうち双星は一人だけ。」

 

「?‥もう一人は?」

 

「別の奴。清弦(クマ野郎)の後釜だそうだ。」

 

‥天若清弦様。

天馬さんと同じ、12天将だった方だ。

 

だった方とはどう言うことかというと、現在はとある任務で大怪我を負い戦線を離脱しているからである。

歴代の12天将白虎の中でも最強と謳われた人の引退には、島の誰もが目を見開いた。

 

陰陽師は命懸けだ。命をかけた分、お金払いも悪くない。

ただ、どんなに強い陰陽師でも、命懸けなのだ。

 

 

「‥そっか。」

 

「へっ、新人だそうだぜ。お手並み拝見ってところだな。まぁ、戦力ダウンにゃ変わりないが。そもそもな話、戦力でもなんでもねぇよ。」

 

彼は歩きながら静かに笑う。

その背中が私の不安を駆り立てる。

不安は伝染するという。

もし仮にその説が正しいのなら、私の不安の根源は横を歩く少年のものかも知れない。

 

 

「聞かないのかよ、双星のもう片方はどうしたのかって。」

 

「いえ、ただ私には分かり得ない相応の理由があるんだろうなって思って。」

 

いや、これも嘘だ。

全部知っている。

島に来なかった‥いや、正確には来れなかったのだろう。

 

「閻魔堂ろくろさんと化野紅緒さん。」

 

「‥ん?」

 

「いや、どちらが来るのかなって思いまして。」

 

これも嘘。

明日、土御門島に来るのは閻魔堂ろくろさんだ。

 

私は有馬様から隠蔽された機密事項を聞かされた。

それが全てかどうかは分からないが、双星の陰陽師の2人が辿る結末は知っている。その過程も。

 

太陽の陰陽師と太陰の陰陽師に纏わる言い伝え。

 

巫女と穢れの王の伝説の真相。

 

蘆屋道満、安倍晴明。二人の天才の企てた千年越しの物語。

 

双星の陰陽師の辿る運命。

 

そして、それら全てがどうでも良くなる程残酷な、貴人の結末。

 

 

双星の陰陽師の男女はその命を持って巫女を生み、穢れの王を滅ぼす運命にある。

その過程で、太陰の陰陽師は一度全呪力を失う。

陰陽師の力の根源は呪力。

呪力を失うとは、実質的な死だ。

呪力を失った時点で、陰陽師、化野紅緒は死亡した。

 

有馬様曰く、「本人の意思に関わらず、運命に目をつけられた者は結末に向かい本能的に歩み出す」とのことだ。

 

きっと、化野紅緒は殻を破り太陰の陰陽師へ進化を遂げるため、呪力を得る旅に出たのだろう。

 

 

 

「‥随分、興味津々だな。」

 

考える様子に怪訝さを感じたのか、天馬さんは私に問いかけてくる。

これは彼にしては珍しい反応だ。

‥仕掛けてみようかな。

 

「もちろんですよ。婆娑羅を退けた英雄陰陽師。一度はお会いしたいじゃないですか?」

 

そう。

私は明日、彼に会わなければならない。

やってくる双星の片割れである、閻魔堂ろくろに。

けど、まぁそれはこの場で言う必要はなくて。

けど、彼の顔は面白くなさそうな表情に変わる。それがまた、面白い。

 

 

「あ、もしかして‥やきもちですか?」

 

「はぁ?んなわけねぇだろうが。」

 

「けど、安心してくださいね。双星の陰陽師がすごくカッコいい人でも、私はずっとあなたのそばにいますから。」

 

陰陽師を続ける限り、私たちに明日の保証はない。

もしかしたら明日には灰になっているのかもしれない。

そうすれば、彼のそばにいてあげられないな。

 

ちなみに、今のは私の渾身のアタックだ。

天馬さんを落とすための、会心の一撃のつもりだ。

 

「‥はっ、居てもいなくても変わらねぇだろ。」

 

一瞬目を見開いた後、天馬さんは鼻で笑った。

 

けど、その一瞬を見逃さない。基本動じない彼が表情を変えてくれたことに手応えを感じ、私は詰め寄る。

首を傾げ、上目遣いで言いよってみる。

少しやりすぎかな。

 

「もしかしたら、未来が変わるかもですよ?」

 

「はっ、馬鹿なこと言ってないで、とっとと行くぞ。」

 

やれやれだぜ、と言わんばかりの表情を浮かべ歩き出してしまった。

ただ、その横顔が妙に赤く染まっていて‥少しだけ期待してもいいのかもと思った。

 

 

「‥いいえ。」

 

いいえ、天馬さん。

私はあなたの未来を変えるためにここにいる。

あなたの結末を、変えてみせる。

 

「‥変えますよ。」

 

少し先を歩く彼に気づかれないように呟いた。

そして、彼の横に並ぶように追いかける。

 

「‥?なんか言ったか?んん?」

 

「いえ、何も。」

 

私は、魔女。

最強の陰陽師、鸕宮天馬の付き人だ。

けど、同時に彼を想う一人の女性でもある。

 

 

──必ず助けます。

 

私は加速する運命を前に、誓いを胸に歩み出した。

 

これは、私の生涯をかけ大切な人に寄り添うお話だ。

 




オリ主の髪は長髪、カラーは薄紫が混ざったグレー。
身長は160弱です。

もし、いいなって思ってくださった方がいましたら、コメントいただけると幸いです。
とりあえず物語構想はできているのでもしかしたら連載するかも。
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