駄作も駄作ですが、よろしくお願いします。
彼を連れ、なんとか天将12家の集会に参加させたのが、夕方。
場所は土御門島きっての老舗旅館。
古風溢れる綺麗な枯山水の庭園と絶景の夜景が有名な旅館だ。
まさに、12天将を迎えるにふさわしい場所。
風情ある雰囲気が漂う。
そんな中、彼の首根っこを引っ張り急足で門をくぐり、中へ入る。
集会はすでに始まっており‥
勢いよく開けてしまったのも相まってか、扉を開けると同時に視線が集まってしまった。
広い部屋の中心に、円卓を囲む大きな机があり、そこに12天将の面々(当主)が座っている。
そして、その中心には土御門家当主、土御門有馬様の姿が。
「すみません。遅れました。」
少し遅れたため謝罪をし、何とか彼の腕を引っ張って用意された席に座らせる。
「ふふっ、構わないよ。座りなさい。」
「ありがとうございます。」
そう言い、有馬様は柔らかい物腰で笑う。
それに続くように、他の12天将の方々が声をかけてくれた。
「誰も怒ってないっスよ。‥というか、天馬くんを連れて来れるのは貴方くらいっスからね〜。」
「気にするな、十六夜の娘。‥むしろ超スゲー。」
「天馬くんの場合、基本欠席だからね。むしろ助かるよ。」
「ガハハハっ、流石は天馬の女房だ。」
天馬さんを連れてきただけで、議会に参加するほぼ全員に頭を下げられた。
えぇ?
いやなんで?
まぁ、いつものことなんですけど‥。
一度、御幣島スバル師匠に問いただしてみたところ「天馬さんを議会の席に連れてくるなんてすごいです」という皮肉じみたことだったらしい。
「なんか複雑です‥。」
あと、最後のは、一応無視しておきました。
「諸君、そこまで。天馬、君がくると席が賑わうね。」
議会の席が賑わい、ほどほどなタイミングで有馬様が制する。
そして呆れたように続ける。
「それと、君は大概にしなよ。いつまで経っても付き人に迷惑をかけて‥。今日は許すけど、明日はなしで頼むよ。」
「‥以上、これで今日はご苦労。皆、明日11時にここで双星の陰陽師、閻魔堂ろくろと新12天将、天若繭良を迎え入れる。」
「双方、共に見極めの儀を通過した実力者だ。心して臨むように。」
「あと、天馬。あまり十六夜さんにあまり世話を焼かせすぎないように。」
若干の遅れはあったものの、無事議会を終えることができたのが夜の19時。
始まりが夕方16時ごろだったので、約3時間。
明日はいよいよ、双星の陰陽師、閻魔堂ろくろさんと天若繭良さんを迎え入れる日だ。
そのため議会では2人の扱いについて話し合った。
と言っても、天馬さんは興味がないのか‥常時寝ていた。
まぁ、私が内容を聞いているので別に構わないけど。
集会は淡々と進められ、いろいろな案が出たが結局一番わかりやすいものとなった。
・天若繭良さんは、天若家当主の座につく。
・閻魔堂ろくろさんは、本人の希望する家系(天将12家)に配属する。
つまり、閻魔堂さんはこの12家の中から1つ家を選ぶこととなる。
「終わりましたね。」
「にしても長かったな。んん〜。よく寝たぜ。」
「いや、起きててよ。」
「ま、俺も努力はしたんだがな。」
「まぁ、いいです。それで、天馬さん‥話は変わるんですが、今日、ここでお泊まりしていきません?」
明日の集合時刻は11時。
土御門島は孤島だ。
けどいくら孤島とは言えど、1万以上もの人が住む島だ。
ある程度は広い。
また、この旅館とわが家、鸕宮家の敷地にはそれなりの距離がある。
船を使わずとも、約1時間はかかってしまう。
さらに条例で、船を使わないといけないから‥約3時間。
明日のことも考え、私は泊まることを提案した。
まぁ、別の下心があるかないかで言えば‥下心しかないが。
日々精進している私たちにはいいご褒美だと思う。
そして、天馬さんはこれを了承。
女将様と顔見知りであることもあり、わたしたち2人はこの老舗に泊まらせて貰うことになった。
「嘘はよくねぇ〜。」
‥まぁあくまでコレは建前で。
私が単純にここの温泉が好きだから泊まらせていただきました。
そして現在。
私と彼は集会場となった老舗の一室で寛いでいる。
正確には、私は集会の内容の資料作成and高校の課題に取り組んでいた。
‥いいそびれましたが、私は今高校生でして。天馬さんより2つ年下なので17歳です。
もう一つ。
私たち、陰陽師にも学校があります。
本土の普通の学校とは少しシステムが異なり、陰陽師の適性からクラス分けがなされ、私は当然1組です。
授業は、一般教養の数学、英語、国語などの他に実技科目というものがあり、そこではケガレ祓いについての実習が行われます。
ちなみに、天馬さんは昨年卒業されましたが‥一般教養科目が目も当てられない点数でして、彼は晩年成績最下位でした。
鸕宮家上層部が体裁を保つために奮闘されていましたが、結局無駄骨。
彼の頑な態度と圧倒的最下位の成績が学園中に広がり‥鸕宮家上層部が根負け。
基本的に鸕宮家の上層部の方々のことをよく思っていない私ですが、その時ばかりは彼らに同情したことを覚えています。
私も、付き人という立場上、彼の成績を工作しなければならないこともしばしばありました。
課題を何度、肩代わりしたことか。
‥卒業に必要なテストのほとんどは私が受けましたし。
あ、少し話が脱線しました。
そんなため、私は今、風情ある老舗にて課題と報告書に追われているのです。
一方、その横でゴロゴロ寝転がる天馬さん。
‥まぁいいんですけど。
彼に気を遣えだとかそう言うところを指摘したところで無駄ですし。
あと、どうせこれからも長い付き合いになるのです‥
色々覚悟のもとで、付き人という立場になったのですし、諦めます。
というか今日、普段欠勤する彼のせいで‥12天将の方々から「いつもお疲れ様です。」みたいな同情と気遣いの混ざったような会釈を受け、恥ずかしかった。
「はぁ、疲れたな。」
「‥なら、風呂でも行こーぜ。」
心の声が、言葉に出てたことに気づいてしまったと思った。
が、魅力的な提案が飛んできた。
というか‥貴方機が使えるじゃないですか?
と、密かに驚いてしまったのは秘密だ。
けど、
「‥もう少しで終わるから、先に行っててください。」
「なら、終わったら行くぞ。」
「‥」
「‥?」
どういう風の吹き回しだろうか。
今日はやけに、親切だ。いや、普通当たり前なのだが。
というか、この報告書を作るのはあなたの仕事なのだが。
ジトーと彼を見つめてみるが、特に何もわかってなさそうにお団子を齧っているし。
深く考えても無駄だと思い、とっとと課題を終わらせることにした。
そう言えば‥ここ最近、彼は私に甘くなった。
いや、理由はわかっている。
自惚れているわけではない。
それでも、彼が優しくしてくれっるだけで、他のこと全部がどうでも良くなってしまうのだからタチが悪い。
「‥じゃぁ、お言葉に甘えて。せっかくなので、お話ししても?」
「終わるの遅くなっても知らないぜ〜。」
それから、少し談笑しながら課題を終わられせた。
普段あまり構ってくれない天馬さんが話を積極的に振ってくれたのには驚いた。
いや、昔はこんな感じだったな。
実は‥私と天馬さんには数年間、気まずい時間があった。
恐らく彼はその時間、私を意図的に突き放していた。
まぁ、この辺りのお話はまたまた後日にします。
そして、入浴の支度をして部屋を出た。
余談も余談だが、私と天馬さんは同室である。まぁ、いつものことなのであまり驚きはしないが。
コレは宿の方の心意気でして‥たまにお泊まりに来ると二人同室を用意してくれる。
女将様曰く──島の希望には細やかな幸せを提供したい
とのこと。
まぁ、ありがたいことですが。
別に、私は彼と体の関係が欲しい訳ではないので。
「では、お風呂上がったら先に部屋に戻っててください。」
「おう。」
その後は、なんやかんやお風呂を堪能した。
たまたまその日は我々ともう一組の貸切状態だったそうなので、随分とゆっくりできそうだ。
「‥なぁ、聞こえるか?」
「‥え?」
「‥聞こえてるな。勝手に話すぞ。」
「明日、双星を禍野に連れて行く。」
「え?本気ですか?」
禍野‥世界の脅威であるケガレの巣食う地。
日本には、年間7〜8万人の行方不明者がいる。
その内のほとんどは、禍野に誘われている。
ケガレによってだ。
一度入れば、出るのは不可能。陰陽術式を持ってしか出入りができない。
迷い込んだ一般人に待っているのは、劣悪な環境による衰弱死、餓死。或いはケガレによる殺害だ。
「早すぎません?」
そう、陰陽師の最前線である土御門島の禍野は、最も不吉な場所。
禍野の隠の気の侵食濃度が異常だ。
本土の比ではない。
禍野で活動するために鍛え続けてきた土御門島の陰陽師でさえ、大罪は2時間が限界である。
そんな禍野の正体は、安倍晴明様が創り出したもう一つの世界であり、ケガレを封じ込めておくための結界。
辺りを隠の気が深く侵食ており、人間が生きられる環境ではない。
歴代最強の陰陽師と謳われる天馬さんでも丸4日が限界。
そんな過酷な場所に、日々陰陽師が乗り込み、ケガレを祓い続けてきた。
「まぁな、だが──ぬるま湯につけてもいい結果は見えやしねぇ。」
一重に禍野と言っても、隠の気の侵食度合いは異なる。
禍野は複数の深層により構成されている。
それは年を追うごとに増える。
簡単にいうと禍野のモチーフは現世であり、現世は毎年更新されていく。
年を追うごとに禍野の階層が増えるのが禍野。
そして、その最深層。
深淵の地と呼ばれるその場所に陰陽師の宿敵、穢れの王が封印されている。
「いずれ双星は巫女を産み世界を救う。だが、今までその結末に満足した奴は居ないそうだ。」
巫女‥究極の隠、究極の陽‥
対局を身に宿し、いずれ穢れの王を祓うとされている存在だ。
巫女は双星の陰陽師二人の命をもって産まれる。
そして─巫女が穢れの王を祓い世界を救う。
「そりゃぁ、なぁ?自分達の娘が戦う運命なんざ──まっぴら御免だろうよ。だから、
確かに。私も自分の娘が戦話なければならない運命だったら同じことを望むだろう。
「それに、そうじゃねぇと俺が許さねぇ。」
──死ぬに値しねぇからな。
最後うっすらとだが、確かに聞こえた。
きっと、本人は伝えるつもりは無いのだろう。
けど、私はすでにその結末を知っているから‥聞こえてしまった。
そして、私は、彼が双星の陰陽師のため死ぬ結末を受け入れていることも知っている。
そしてもう一つ。
こんなにも話す彼は珍しい。らしくない、と言った方がいいだろうか。
多分だけど、死期を悟った人が穏やかになるのと同じ。
遠い先の死だった、7年前とは違う。
明確に終わりが見え始めている。
だから、最後に何かを残そうと足掻いているのだ。
「だからって、少し早すぎませんか?普通、本土の禍野と土御門島の禍野では濃度がまるで違う。下手したら死んでしまいますよ。」
「そん時はそん時だ。その程度で死ぬんなら、鼻から無理な話なんだよ。土御門島の希望だとか、持て囃されて下手に天狗になるよりはマシだ。島の奴らも目が覚めるだろう。」
あぁ、そうか。
彼は、かけてるんだ。
さっきの──そうじゃねぇと俺が許さねぇ。
ってセリフもそうだ。
禍野に連れていく理由だって、おそらくだけど見定めるためだ。
双星の陰陽師、閻魔堂ろくろさんの価値を。
自分が命を賭けるに足るか、否かを測るつもりだろう。
なら、私がどうこう言う必要はない。
彼は無意味に死ぬつもりじゃないんだ、と少し安心する。
それに、彼は他人を思っている。
きっと彼に任せておけば悲しい結末にはならない。
──全くもう、不器用なんですから。
「ふふっ。そうですね。」
「‥何、笑ってやがる。」
きっと、彼は私の真意を悟ることなく、笑われたことに苛立っているに違いない。
湯船で足を立てて、不貞腐れている姿が簡単に想像できてしまう。
まぁ、普段散々振り回されている仕返しです。
「貸切をいいことに、露天のお風呂の壁を挟んで、お話ししているのが可笑しくなって。」
「‥」
「あと、私も、そういう男気がある人の方が好きです。」
返事はない。けど、手応えはある。
突き飛ばされることもないし、
「私は先に上がりますね。お風呂上がられたら、夕食にしましょう。」
彼はいずれまた、私を突き放すでしょう。
あと、どれだけ時間が残されているのだろう?
私が彼の心の隙間に、いつまで入れるのだろう?
けど、必ず救います。
彼の心の奥底まで私で満たして‥死ぬなんて思えないほどの幸せを。
お風呂から上がり、誰もいない脱衣所で浴衣に身を包む。
髪を結い、身だしなみを整え支度をする。
洗面台で顔に水をぶつける。
今日、いよいよ猶予がなくなったことを悟った。
天馬さんの話を聞いてもう時間がないことを理解した。
「ここからが正念場だ。十六夜‥玲那。」
私にできることなんて、所詮大したことがない。
人生を賭けたとしても、運命には勝てないだろう。だから、天馬さんに勝ってもらうのだ。
これは私が、天馬さんが生きたいと思える理由になるお話だ。
キャラクター設定
身長:158
体重:50
術式:重奏操術
容姿:腰あたりまである長髪。黒髪だが部分的に紫色の髪がある。
過去に天馬に救われたことがあり、それ以来彼を慕うようになる。
天馬に好かれている自覚はあるが、彼の迎える結末を知っているため自惚れないようにしている。
また、土御門有馬と協力し天馬の運命を変えようと企てている。
天馬のことが好きで、いざとなれば襲ってでも‥。
話し方は基本丁寧語だが、昔の癖が取れきっておらずたまに口調が崩れる。