器用貧乏な麦わらの一味   作:millseross

10 / 31
誤字報告を多数頂いております。
本当に本当にありがとうございます。
これからもよろしくお願いします!!!(反省しろ)


宴の裏で暗躍する!

泣いて笑って歌って踊って。みーーんな、嬉しそう。8年夢見た自由な夜だ。酒池肉林たァこのことよ。

 

「こんばんは。少しお時間よろしいですか?」

 

「む?君は...。」

 

喧騒から少し離れたところに風車のおじさんが居た。チャーンス。

 

「自己紹介がまだ...では無いですね。そういえばもう名乗りました。」

 

「あぁ、そうだったな。私はゲンゾウという。この島の駐在で、ナミの...。」

 

傘を閉じて、フードを外す。夜だからな、天敵である日光は無いのだ。さぁ、月明かりに照らされる美貌に酔いしれるが良い。

 

「ナミの、ちちおや、代わりだ!!!!ナミは渡さん!!!!ぜっっったいにだ!!!」

 

何言うとんねんこいつ。ちょ、予想してた反応と違いすぎて。

 

「はぁ、、?そうですか、よろしくお願いします、ゲンゾウさん。」

 

「よろしくもしてやらん!!!!」

 

いやなんなん。

 

「...なんだ。ナミの彼氏じゃなかったか。私に''娘さんを僕にください。''などと戯言を言いに来たのかと。」

 

「違いますね。」

 

そもそもおっさんがナミの父親代わりとか知らんかったし。まぁナミは綺麗だけど。僕も負けてないがな!!

 

ま、いいや。とりあえずさー、聞いて?

 

「む、あぁ、そうだったな。それで、話とは?」

 

おじさん、バラティエって知ってる?知ってるかな?知ってるよねぇ??(圧)

 

「あ、あぁ、聞いたことがある。確か、イーストブルーのどこかにある一流レストランの名前だったな。海上レストランとかなんとか。」

 

せやねん。よかった、知っててくれて。OHANASHIしなくて済むわ。

 

「そうです。実は僕、つい先日までそこのNo.3でして。ちなみにNo.2は一緒に居た金髪グル眉です。」

 

「ほう!そうだったのか、だからあんなに美味いものを。いやぁ、この島のみかんがあれほど多種多様なお菓子に化けるとは驚いた。なるほど、納得だ。」

 

そーそー。結局スイーツはなかったから、材料だけ貰って自分で作ったんだよな。そしたら意外と子ども達とか島の女性陣とかルフィとかウソップとか、甘いもの好きな人結構居たから。めっちゃ作って振舞ってやったぜ!!おっさんも食べたんか、見かけによらず(関係ない)甘いもの好きなんやな。嬉しい限りで。

 

閑話休題(それはともかく)

 

「この島のみかんだからこそですよ。とても美味しくて驚きました。そこで相談なのですが、ここのみかんをバラティエで使わせて頂けませんか?」

 

「な、なに?この島のみかんをバラティエで、か?」

 

え、うん。なんでそんなに驚いてんの?そんなにおかしいこと言ったっけ。美味しいから使わせてって言っただけなんじゃが。はっきりせぇやぁ!?おぉん???

 

まぁ、これは双方にメリットのある話だ。バラティエ側としては単純に、品質の良いみかんを定期的に仕入れる事が出来る。時々この島にやってくる商船に卸しているんだろうが、多分そこまで儲かってる訳じゃ無いはずだ。島の生活水準がそこまで高くないから。

 

でもバラティエに直で卸してくれたら、商船よりも良い値段で買う。なんなら専属契約でも結べば、店も結構な額を出すんじゃなかろうか。柑橘系ってレパートリー豊富だし、店としても全然あり。あり寄りのあり。まぁ価格交渉とかの話はオーナーの爺さんとやってくれ。前は僕がやってたけど。

 

んで島側のメリットとしては、店側よりももっとある。まず第一に、儲かる。今よりもずっと。第二に、バラティエが使ってるみかんってことを近辺に宣伝できたら、この島を実際に訪れて、現地で直接採れたてのみかんを食べたいって人も出てくるだろう。何なら果物狩りとかそういう体験もさせたら良い。

 

そうやって島の活性化に繋がる。人が来たらものの流通も盛んになる。この島じゃ取れないような食材や、嗜好品なんかも往来するだろう。つまり島全体の生活水準が向上する。

 

今までアーロンに搾取され続けてきた島民は、じゃあこれからどうやって島を発展させていくかを考える必要が出てくるだろう。その足がかりとして、バラティエを使うというひとつの選択肢を提示する。

 

「確かに...。こちらとしては、願ってもない話だ。だが本当にそんなことが可能なのか?君はもう店の者では無いのだろう?」

 

全然可能。従業員じゃないけど、この位はモーマンタイ。

 

「懸念点としては、バラティエに定期的に納められるだけの収穫量を確保出来るのか、という点が1つ。それと安全な航海路の確保。この2点です。」

 

「収穫量は問題ない筈だ。この島でみかん農家をやっている者は沢山いる。足りなければ、島の皆で畑を増やせば良い。労働力がちと課題だが、まぁ...そこはおいおい考える。だが、航海路は...。」

 

「私が何とかするわ。」

 

「!!な、ナミ?」

 

おーす、お疲れナミ。

 

「面白い話してるじゃない?私も混ぜなさいよ。」

 

ええで。で、何とかするって、具体的には?

 

「8年間、測量士として海図を書き続けてきたのよ?この島の周りはもちろん、バラティエだってこの前行ってきたし、場所は把握してる。この島とバラティエ間の海図を書いて、安全な航海路を示しておけば...私の海図を使えば、安全に航海することが出来る!そうでしょ?」

 

ほう。

 

「だが、ナミ!お前は海図を書きたくて書いていた訳じゃ無いだろう!お前がやりたくないことをさせる訳には...!」

 

「ゲンさん、私の夢忘れちゃったの?世界中の海図を書くことよ!私が嫌だったのは、アーロンの下で無理やり海図を書かされること!」

 

「今までずっとしてきた努力を、この島のために発揮出来るなんて!こんなに嬉しいことって無いわよ!」

 

強いなぁ、ナミ。辛かった筈だ。長年、ずっと。1人で戦い続けてきたんだから。それなのにこんなに前向きに、明るく笑って島のためだと言えるのか。すっげぇな。

 

「...ぐぅっ。お前は、本当に...!」

 

「ちょ!?泣かないでったら、もう!」

 

うんうん。良いねぇ、ハッピーエンドや。だが商品の運輸について、問題がもうひとつある。

 

「海路の問題がもうひとつ。運搬中にどこぞの海賊に襲われる可能性があること。」

 

「「!」」

 

どうするかねぇ。イーストブルーとは言え、海賊に変わりは無いし。民間人に戦闘させるのは無理だろうし。あ、そうだ。

 

「私の経験から、あまり海賊船が通らない道を割り出すことは出来る。けど...。」

 

「それも絶対とは言い難い、か。ううむ、どうしたものか。護衛でも付けられれば良いのだが。」

 

「そうですね、ではこうしましょう。バラティエの従業員に運搬してもらう。但し、島側はその分料金を割引きして商品を提供する。」

 

どや?これなら安全じゃろ。

 

「む?いや、それだと根本的な解決にはならないだろう。我々の人的被害は無くなるかもしれんが、レストラン側はどうなる。」

 

「あー、それなら問題ないわね。あのレストラン、海賊とか海軍も結構利用するみたいなの。だから従業員みーんな戦えるのよ。」

 

「そうなのか?」

 

せやで。戦う海のコックさんなんや。

 

よし、これで運搬の問題は解決やな。一筆したためて、バラティエ側にも不満の無いように計らっておこう。

 

「よし、これで問題解決ね!忙しくなるわね、ゲンさん?」

 

「はっはっは、なんの!島の皆で協力するさ!」

 

あ、ねぇあともう1個あるんだけど。ごめんて、そんな睨まんといて?ここで終わっとけよ、みたいな。しょうがないじゃろ、これも大事なことなんやで。

 

「「島の人たちの...義肢ぃ!?」」

 

せやせや。

 

「宴にいた人たちの中に、多数見受けられましたよね。四肢が欠損した方々。アーロンの仕業でしょうけど。」

 

「っ、えぇ。そうよ、反乱の意思があると見なされた人は、捕まって拷問されて、腕か足を...。」

 

なるほどね。殺すのでは無く、そういう方法を取ったわけだ。残酷だな。

 

「ナミは知ってると思うけど、爺さん、バラティエのオーナーは義足だ。あれは僕が設計したものなんだよ。だから、汎用性の高い義肢の設計図をいくつか書いて、ゲンゾウさんに渡すから。」

 

流石に全員の身体計測を行ってオーダーメイドで1品1品...とは出来ない。時間的にも労力的にも。だから、汎用型義肢の設計図だけを渡す。あとは島の外から職人を呼ぶなり何なりすればどうとでもなる筈だ。

 

「じゃあ、もしかして、歩けるようになるってこと...?ベルメールさん...!」

 

「!!! で、出来るのかっ!?ベルメールの目が覚めた時に、また、アイツの歩く姿を見られるのかっ!?どうなんだっ、ソラ!!」

 

「できますよ。まぁ、そのベルメールさんの努力次第ですけどね。リハビリは必要なので。」

 

もしリハビリが難しいようでも、車椅子があれば生活はできるし。ひとりじゃ厳しいけど、この島の人達はみんな優しい。誰かしら手を貸してくれるだろう。あ、ついでに車椅子の設計図も渡しとこ。

 

「よかった...、良かった。ベルメールさんっ!」

 

「...うっ、うぅ...。」

 

泣かない泣かない。

 

「これで、先程言っていた労働力の件も解決ですね。反乱の意思があると判断された者たち。どれくらいの人数が被害に遭ったのか、正確には分かりませんが。少なくはない筈です。」

 

その人たちだって、今後生きていかなければならない。生きるには希望が必要だ。今まではアーロンへの恐怖でそんな事を考える余裕も無く、ただ毎日を必死に生きて来たのだろう。

 

だがこれからは、生活に余裕が生まれる。つまり自分の今後を、先の未来を考えるようになる。そんな時、ふと自分の欠けた部位を見て何を思う?

 

少なからず、気が滅入るだろう。不安になる。不満になる。絶望を感じる。自分はこうなのに、何故ほかの奴らには手足があるのだと。

 

僕がそうだったから。伽藍堂の瞳を鏡で見る度に、この目を呪った。なぜ、なぜと自分を責めた。

 

その気持ちは、絶たねばならない。絶対に。

 

「その人たちの為に、新たな手と足を贈ります。まずは日常生活が出来るようになるまでしっかりとリハビリを。それだけで陰鬱な気持ちも無くなって、考えが前向きになる筈です。そして少しずつ、労働が出来るようになっていければ。自分に価値を見出すことが出来る。」

 

自分は人の役に立てているのだと自覚することが出来る。

 

「あぁ...それは、なんと素晴らしいことだろう。ありがたく受け取ることにする。それで、その設計図はいくらだ?」

 

「はい?」

 

「...?だから、その義肢の設計図をいくらで譲ってくれるのかと聞いているのだ。」

 

...、、、!!!!!

 

これ!!!金取れんの!?!?

 

まじか、あー、そう。そういう感じ?ほんほん?はーん。理解理解。

 

いや、知ってたけどね?今まで善意でやってただけだし??趣味と特技の産物を渡してるだけだから金儲けなんて考えたこと無かったとかそういうあれじゃないし。違うし。

 

でもまぁ今回は...。

 

「...ソラ!それ、私が買う!今まで貯めた1億ベリーで払うから。いくら?ちょっと位はまけなさいよね、仲間なんだから!」

 

「なっ、何を言う!それはお前が命をかけて稼いだ金だろう!!自分のために使いなさい!」

 

ギャーギャー言い争ってる。ほんとに親子みたいだなぁ、仲良しやで。

 

てか仲間って言ってくれた!!!仲間って!!聞き間違いじゃないよな?ナマコじゃないよね?ナマコ価格ってなんだよ。

 

「あ、お金は要らない。」

 

「「!?」」

 

「え!いいのー!?♡ やっぱあんた、話がわかるわね!」

 

「まてまてまてまて待ちなさい!どういう事だ!?こういう事はしっかりせにゃならん。」

 

いやぁ、そうなんだけどさぁ。趣味なんだもん。元々爺さんの為に始めたことで、それが得意って分かったからずっと続けてるってだけなんだわ。

 

しかも、ねぇ?

 

「にしし、お金なんてとる訳無いじゃん。仲間なんだから。」

 

「「...!(綺麗)」」

 

ん?なんぞ、フリーズして。はっ!後ろになにか!?いや、居ないわ。僕の見聞色は最強なんだっ!!僕から見聞色をとったら、顔とか顔とか顔しか残らないじゃないか!(ナルシ)あとは少しの戦闘力。

 

「いや、だがな。流石にタダというのは...。」

 

「なによ、良いじゃない!あげるって言ってるんだから、素直に貰っとけば!」

 

だから云々。されど云々。うーん、平行線。いや、水平線と言っておこう。そっちの方がなんかオシャレじゃね?

 

「そうですね。今後お店に商品を卸して頂ける件について、前向きにご検討頂くために。というのが僕としての考えなのですが。それでご納得頂けないと言うのでしたら、是非バラティエでお食事をお召し上がりになって頂ければ幸いです。」

 

「あ、それ良いわね!何かのお祝いとかで行ってみたら?すっごく美味しかったから!」

 

お褒め頂き。

 

「そう、か。ふむ...よし、分かった。必ず行こう。」

 

あー良かった。納得してもらって。そもそもこれは、罪滅ぼしだ。お金なんて取れる訳が無いのだから。

 

いちばん辛い時に助けてあげられなくて、ごめんなさい。

 

ごめんなさいと、伝えることが出来なくて。

 

ごめんなさい。

 

卑怯な僕を、どうか赦さないで。

 

 

&&&

 

 

「船を出してっ!!!!」

 

んお、おし。出す出す。ん?何、ウトウトしてた。あれ、みんな甲板に居るの?呼んでよ...。仲間はずれ、いくない。

 

「しゅっこーーーーう!!!」

 

あ、出たわ。あー、そっかナミの大ジャンプのシーンか。よっしゃ見とこ。

 

「おい、良いのか?こんな別れさせて。」

 

「あいつの別れ方くらい、あいつが決めりゃ良いじゃん。」

 

核心突くよね、唐突に。

 

「「「ナッちゃん!!」」 「「ナミ!!」」

 

ぉぉおおおおおお!!!とっ、跳んだぁああああ!!!!ナミって普通に身体能力高いな、すげえ。

 

なんかめっちゃ財布持ってるやん。草。みんな焦ってる。早すぎる手刀(違う)、俺でなきゃ見逃しちゃうね。(狩人)

 

「みんな、元気でね♡」

 

「「「こ、こんガキャーーー!!!!」」」

 

うける。

 

「おい変わってねぇぞこいつ。」

 

「またいつ裏切ることやら。」

 

「んナミさん、グー!」

 

「賑やかだね、この島。」

 

「だっはっはっは!!」

 

まだ叫んでるよ。あ、でもなんかいつでも帰ってこいって聞こえる。にしし、やっぱみんな優しいな。

 

「小僧!!!約束を忘れるなよ!!!それと、ソラ!!感謝する!!!」

 

はにゃ?おんおん、気にせんといて。目覚めるとええな、ベルメールさん。貰った風車を掲げて手を振る。これ、今まで頭に刺してたやつじゃないよね?大丈夫だよね??

 

「じゃあね、みんな!!!行ってくる!!!」

 

いい笑顔だなぁ。

 

さ、日向ぼっこは終わりだ。船内に戻ろ。(早い)




今回の話はずっと書きたかったところなので
楽しかったです!!笑笑
普段より悩むことなく、サクサクかけました。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。