「ゴムゴムの〜銃ピストル!!」
「三刀流 虎狩り!」
「
大きく振りかぶられた黒と白でできた腕がなんの躊躇もなく振り下ろされ、ルフィ達はそれに真っ向から迎え撃つ。
麦わらの一味の最高戦力である三人の同時攻撃にも関わらず、トットムジカと一瞬の拮抗の後三人は弾き飛ばされてしまった。なんとか攻撃を逸らし直接的なダメージこそ避けたものの、トットムジカの強大さを一味が理解するのには十分だった。
「お前ら?!」
「あいつらがあんな簡単に吹っ飛ばされるなんて。」
「って!やべー?!!次来るぞ!!」
再び振り上げた腕が振り落とされる。
ルフィ達がいとも簡単に吹き飛ばされた一撃だ。
ウソップ達は顔を真っ青にして叩き潰されては堪らないと急ぎ逃げる。
その逃げ足はさすがの一言。現れたトットムジカを茫然と眺め続けるウタも忘れずにチョッパーが回収して攻撃を避けた。
その後も機敏とは言えないが絶えず攻撃を浴びせてくるトットムジカに逃げ惑うことしかできずにいる。
吹き飛ばされていた三人も直に復帰するも、状況が好転することはない。
着々と削られていく体力に泣き言が漏れてくる。
「どうすりゃあいいってんだよ、こんなデカい奴相手によ!!」
「しかも、あのトットムジカの中にはゴードンさんが・・・」
「どうにか手はねぇのか!」
鉄をも切り裂く剣士が刀の切っ先を向けながらもたたらを踏んでしまう。その身の頑強さも当然ながら、ゴードンという、いわば人質に近い存在のために全力で斬りかかることが出来ないでいるのだ。
そんなゴードンは未だトットムジカの中で詠を読み続けている。トットムジカという詩が読み上げられるごとに、その容貌が大きく変わることはないが、大きさだけはどんどん大きくなっていく。
放つ一撃は重くなり、リーチもまた広がっていく。されどスピードに低下は見られないのだから堪ったものではない。
どんどん擦り傷が増えていく一味。
直撃こそ避けてはいるが、放たれる風圧や逃げる度に地を転がることで傷と疲労が溜まっていく。
少しずつ、しかし確実に追い込まれていくみんなを比較的安全なところで眺めているウタは、心の中で自問自答を繰り返していた。
なぜこんなことになってしまったのか。
どうしてこんな自分を庇うのか。
自分を仲間だと言ってくれた彼らは、私の愚行が引き起こしたゴードンの優しさによってボロボロになっていく。
どうすれば止められる?
何ができる?こんな私に。
彼への償いはどう果たせば・・・
(私が、いなくなれば・・・)
フラフラと立ち上がり、そのまま足元のおぼつかないままに激しい戦場へと歩を進めるウタ。
飛んでくるツブテや身を薙ぎ倒す様な風圧に傷を負い、地に伏せようとも、真っ直ぐとトットムジカの元へ、ゴードンの元と向かっていく。
「私がいなくなれば、そうすれば止まってくれるよね?」
「もうやめて。私のために傷つかないで。」
「私を殺して、終わりにして。」
虚ろな目のままにこんな茶番は終わりにしようと、恐ろしい魔王の前で両手を広げて静止する。
そんなウタ目掛けて、望み通りにしてやろうとばかりにトットムジカも構える。
「バイバイ、みんな。ごめんね。ルフィ、ゴードン、シャンクス。」
「っッッッッウタ!!?!!?!」
ここにきてようやくウタの蛮行に気づいたルフィであったが、その手を伸ばすには遅すぎた。
ルフィの目に一瞬黒い影が映り込んだかと思えば次の瞬間、トットムジカの腕が薙ぎ払われ眼前からウタの姿が消え、一拍おいて激しい爆音が少し離れた場所から土煙と共に鳴る。
「っウタ!!?!おい!大丈夫か!!」
敵を前にして足を止めウタの安否を叫ぶルフィ。
その隙を見逃すはずもなく魔王はルフィもまた同様に横なぎに吹き飛ばしてしまう。
ゴムの体故に打撃を無効化するルフィは吹き飛ばされたこともお構いなしに、ウタの元へ駆け寄る。
果たしてそこには、血だらけのサンジと、そんなサンジを信じられないような物を見る目で見る無傷のウタがいた。
「ウタちゃん。怪我はないかい?」
「なんで・・・なんで!!なんで私なんか庇ったのよ!!!私が死ねばそれで終わり。それでいいじゃんか?!」
「ハハ、無事な様で何よりだよ。」
「サンジが全然無事じゃないじゃんか!」
「俺はいいのさ。レディを守る
血を流しながらも毅然とした態度を崩さずに自らを
ウタとサンジに駆け寄り、何か言おうとするルフィをサンジは静かに目で制し、ウタの答えを待つ。
「なんでって・・・だって、だって!私が悪いんだよ!ゴードンの大切な物全部奪って、見当違いにシャンクス達を憎んで、あげくの果てには優しいゴードンにこんなことまでさせて!私が死んじゃえば全部終わる!!こんな馬鹿げたことをゴードンにさせることもない!私がいなければ!!」
「おいウタ!お前何言って「ルフィ!!」」
「ルフィ。ここは俺に任せてくれ。」
「ッでも。・・・・・わかった。」
自分なんていなければ。
そう言い切ってしまうウタに我慢ならずにルフィは声を上げるが、サンジに遮られてしまう。
その目に宿る強い意志に、ルフィはサンジに任せることに決めた。
大人しく行く末を見守ろうと腕を組む。
「なあ、ウタちゃん。君は今自分なんてどうなってもいいと思ってる。自分の命を償いに使おうとしてるだろ。」
「・・・・・それが何?やめろっての?」
「ああ。やめろ。」
「ッ、あんたに何が分かるのよッッ!!そうでもしないと、私がゴードンの全部を奪っちゃちゃんだから、私も全部捨てなきゃ釣り合わないでしょ!!」
「死ぬことは、恩返しにも償いにもならないんだよ!!!!!!」
「ッッ!!」
「君が抱く感情も何も知らないけど、これだけは分かる。少なくともゴードンさんは君に死んで欲しくて十年も育てたんじゃあない。そうじゃなきゃ、自分の持つ全ての技術を伝えようなんて思わないだろ?君にできることは他に絶対にある筈だ。」
「・・・でも、私にできることなんて・・、歌うぐらいだよ・・・。ゴードンを止めるなんてことできるはずもない。一人じゃ何にもできない弱い奴なんだよ。」
俯き気弱なことを言うウタ。
自分は何にもできないと諦めた様子の彼女に、今までずっと話を聞くに徹していたルフィが動き出した。
「なに弱気なこと言ってんだよ。お前、俺に184連勝中なんだろ?そんな情けない奴と俺は今まで勝負してたのか?」
「ルフィ・・・だって、私じゃ。」
「それに、お前は一人じゃねえよ。俺たちがついてる。」
にっこりと笑うルフィがやけに頼もしい。
・・・信じてもいいのかな?私なんかが、ずっとずっと間違いだらけだった私が。
救われてもいいのかな?
「いいんだよ。ウタちゃん。ずっと苦しんだんだ。君も、ゴードンさんも。ゆっくり美味いメシでも食って話し合おう。」
タバコを咥えスッと立ち上がり、ウタの心中を察した様に言葉を紡ぐサンジ。
そんな二人の背が眩しくてたまらない。
・・・ああ、ずっと欲しかった物は、もうここにあったのか。怖くて、言い訳してたけど、やっぱり仲間って言われるのは嬉しいんだ。
気づけばみんなが私の周りに集まっていた。
ルフィの、そして私の『一言』を待っていた。
「ねえ、みんな。わがまま言ってもいいかな?」
そういうと、みんなは顔を見合わせて笑う。
「なぁーに言ってんだよ。俺たちもう仲間だろ?」
長鼻の狙撃手はゴーグルをしっかりと付け直しながら言った。いつもの臆病さはどこにもない。
「たくさん殺しちゃった悪い人だけど。」
「海賊よ?私たち。気にしないわ。それに私達、あなたが音楽家じゃないと嫌なの。」
「俺は青っ鼻で、バケモノで、トナカイだ!そんなこと気にしねーよ!喧嘩は相手がいるからできるんだ。早く仲直りして終わらせよう!」
蹄を地面と打ち鳴らし、自慢の角を震わせる船医。
「まだまだ、歌手としても未熟だし。」
「へッ!未熟上等。いずれテッペンに立ちゃあいい。俺もお前も海賊王のクルーになるんだ。歌姫ぐらいなってもらわなきゃあ俺らが困るぜ。」
獰猛に笑みを深めながら三刀を構える剣士。
「あんなことをしたって知っても、まだ『生きたい』なんて思ってる。」
「『生きたい』と言える、それは、計り知れない強さよ。」
どこか遠くを見つめる様にして静かに笑う考古学者。
「俺なんていっつもわがまま言ってるぞ!」
「わかってんなら自重しろ、アホ船長。」
コックと船長もまた朗らかに笑う。
ここは戦場。
見失った獲物を再び補足し、魔王は雄叫びをあげて迫り来る。
なぜだろうか。あんなに怖かったのに、もう怖くない。
負ける気がしない。
今の私は、最強だ。
「麦わら海賊団音楽家ウタ!!!名乗って一発目が歌じゃないのは申し訳ないけど、お願い!
私と一緒に、戦って!!!!」
「「「「「「「おう!!!!!」」」」」」」
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