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もうゴードンの声は聞こえない。
既に詠は終わったのだろう。顕現当初に比べてもその体躯は見違えるほど大きくなっている。リトルガーデンにいたあの巨人をも上回っているかもしれない。
そんなトットムジカだが、突然、今までと違う動きを見せ始めた。
ついさっきまで単調に腕を振るっていた魔王が一つ雄叫びを上げたかと思えば動きを止めたのだ。
その目は依然としてこちらを睨みつけているものの、ルフィでなければ届かない距離を保っている。
「おいおい、もしかして俺たちの剣幕に恐れをなしたのか?急に止まったぞ。」
「ええ〜〜!!あんなにかっこよく一致団結したのに!・・・まあ止まってくれるなら全然いいんだけど。」
「ほんとね。すっごいこっち見てるけど。どうしたのかしら?」
「心なし睨んでないか?俺らのこと。見てみろ。ほら、なんか怪しく目が光り出したぞ。」
突然静止したトットムジカに困惑を隠せず、整えた戦闘態勢を崩してしまう。
散々振り回してきた腕はだらんと垂れ下がり前傾姿勢の状態で固まるトットムジカ。
薄ぼんやりと光り出した目をウソップが指差す。
なんだなんだと見守るうちにその光はだんだんと輝きを増していく。
垂れ下げた両腕を更に下げ、地面へと置く。
「もしかして、ヤバイやつ?」
誰が言ったか分からないが、その呟きの直後、激しい轟音が辺りに響き渡る。
ルフィ達が動けたのは勘だった。
前のめりな体勢を崩していたのも良かったのかもしれない。
魔王の輝く瞳から突如として放たれたのは、ビームだった。それも、城の地下で見たビームとは比べ物にならない。
大きいだとか速いだとかでは決してないが、その熱量は近くにいるだけで参ってしまいそうなほどだ。
せめての救いは見る限り溜めが必要なことと線の攻撃であることか。
あの熱量で面の攻撃をされてはたまったものではない。
「伝承で云う、『放つ熱線』ってコレのことだったのね。もしかしたら地下にいたあのロボット達は防衛システムであると同時に、トットムジカの恐ろしさを後世に残すために再現された物だったのかも。」
「今そんな分析なんてしてる場合か?!どうすんだ!攻撃のバリュエーションが増えちまったぞ!」
「泣き言言ってる暇があるんなら頭回せウソップ!戦いはもう始まってんだ!!」
「ッわ、悪いゾロ!そうだよな、こんな時こそ冷静に・・・。よーしお前ら!とりあえず攻めて攻めて攻めまくれ!!俺とチョッパーが援護しながら弱点を探る!できるな、チョッパー!」
「ああ!任せろ!!」
大雑把ながらも戦いの流れを決めたウソップの声に従い、散開し攻撃を始める。
トットムジカにとってはちまちまと何かしているな、ぐらいのものだろうが、的がばらけたことで思考を始めたのか動きも鈍くなってきた。まあ時間の問題ではあるだろうが。
狙撃をしながらどうやって切り崩してやろうかと思案するウソップに、ウタが神妙な面持ちで話を持ちかけてきた。
「ねえ、ウソップ。お願い。私やってみたいことがあるの。うまくいくか分からないけど、このまま足手まといなんて嫌だ!」
「やってみたいこと?・・・それが上手くいけば、この状況を打破できんのか?」
「して見せる!!でも、そのためにはみんなの力と、時間がいる。」
じっと見つめ合う二人。
だが、ウタの決意に満ちた目にウソップは折れた。
「・・・自分を犠牲にするようなもんじゃないんだな?」
「うん。どっちかって言うとみんなを危険な目に合わせちゃうかもだけど。」
「あいつらの心配なんざ要らねーよ。死んでも死なんような奴らだ。・・・・・分かった。
このウソップ様が、お前に攻撃を通させねえ!!ウタはその策に集中してくれ!」
「!ありがとう!!ウソップ!」
そしてウタはウソップの背後に周り目を閉じる。
集中力を高めるウタの邪魔にならないようにと、付かず離れずの距離を保ちウソップは改めて魔王へと視線をやる。
ウタの策が一体どんなものなのかは分からないが、ただ待つのも癪だ。
自身の周りを飛び回る存在に嫌気がさしたのか、再び振り回していた腕を下ろし安定した体勢へと切り替わるトットムジカ。
またあの破壊光線を放つ気だ。
「へ!いつまでもやられっぱなしでいられるかってっんだ!!危険すぎるあまり使用を禁じていたが、コレを放つに相手に不足なし!!食らえ!!必殺!!!大玉、爆発星!!!」
普段のものよりも玉の大きさが段違いな『それ』は勢いよくトットムジカの目に吸い込まれるように放たれた。
着弾し、軽い破裂音と共にトットムジカの顔を覆い隠すほどの煙が広がる。
煙の奥から魔王の瞳が怪しく輝く。
「お前ら!ふせろ!!」
ウソップの張り上げた声に、ビームなんぞ撃たせまいと攻撃を続けていたゾロやサンジ達は身を引く。
そして、あの恐ろしい一撃がくると身を構えた次の瞬間、魔王は突然大爆発した。
ウソップの放った、引火性に富んだガスの込められた爆発星に、トットムジカ自身が放った熱線が引火したことで起こったものであった。
自分の思っていた以上の威力に、ウソップはパチンコを構えるのも忘れて目を点にし惚けている。
が、直ぐにいつもの調子に戻ってしまった。
「なんちゅう威力・・・。っへ!へへ!どんなもんだい、ウソップ様にかかりゃあこんなデカブツ屁でもねえぜ!!」
「やるじゃねえかウソップ。」
「この規模の爆発なら流石に・・・・・んな!!!」
煙が晴れ、見えた姿は確かに爆発が効いていたはずだった。
しかし、まるで巻き戻していくかのように少しずつその傷が治っていくではないか。
足元から湧き出る黒い文字列が虫のように傷のある場所に蠢き、トットムジカに溶け合ったかと思えば、そこには変わらない魔王の姿が。
何事もなかったかのようにまた暴れ出すトットムジカを尻目に、チョッパーが声を上げた。
「みんな!聞いてくれ!ロビンと話してこいつについてわかったことがある!!」
「こいつは、本来歌なんだ!だから、リズムがない詩として詠まれたこいつは本来の力を発揮できてない!今のこいつは無敵なんかじゃないんだ!!回復もしちまうし、全然怯む様子もないけど、ウタワールドを介してない魔王はただデカくて強いだけだ!勝路はある!」
「無敵じゃないのはわかったけど、そんなこと言っても、デカくて強いのが厄介なのは変わらないじゃない!どうすんの?!」
「それは・・・どうしよう?!ウソップ?!」
「って、俺かーい?!」
一味における最弱トリオが緊迫した戦場でいつものように漫才じみたやりとりを交わす。
ギギーーーギャーーギャーー!!!!!
聞くに堪えない金切り音がトットムジカより発せられる。
トットムジカへの対応に追われるみんなをよそに、ウタは静かに考えていた。
自身に宿る能力のことについて、そしてトットムジカという一つの歌についてだ。
ずっと、何も考えずに使っていたが、『ウタウタの実』とはなんなのだろうか。
現実とは違う世界である、ウタワールドを作り出し、その世界へ歌を聞かせたものを連れて行く能力。
表面的に見ればただそれだけの力だ。
だが、コレが能力の本質なのか?そんなことしかできないのか?だってこれでは、『歌』がただの付属品のようではないか。
かつて、少しでも楽しませようと、ゴードンが能力を見せてくれたことが何度かあった。
ゴードンは自分の能力をこう言っていた。
言葉とは、自由なものだ。ただ喉を震わせた結果出るものでしかなかった音というものに意味をつけたものだと。
だから、私ができると思えば、そう定義すれば、なんだって出来るんだと。
そして、それは歌も同じだと言っていた。
イメージするんだ。
私にとって歌とはなんだ?
・・・・・歌とは希望だ。心を繋ぎ止め、支える。時に愛を伝え、時に悲しみを心に刻み、そして、どんなものよりも笑顔を作り出す。
背中を優しく押してくれるもの。
解釈を広げよう。不可能なんて存在しない!
私の歌は、独りよがりのものなんかじゃない。
自分だけの世界じゃダメだったんだ。世界っていうのは、もっともっと広くて、みんなが心に持ってるんだから。
私の世界を分けてあげる。理想を、現実に。
決して引きずり込まないように、イメージする最強をみんなに纏わせるように。
できる。
だってもう、一人じゃないんだから。この灰色の世界を彩ってくれる、頼もしい仲間がいる。
目を開くと、仲間達が攻めあぐねて往生している。
さあ、今こそ初陣の時だ。気力は十分。喉の調子も絶好調。
「いっくよー!!みんな!!!」
「私の歌で、最強にしてあげるんだから!!」
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さぁ 怖くはない
不安はない
私の夢は みんなと共に
歌唄えば ココロ晴れる
大丈夫よ あなたは最強!!
頭に浮かんだ歌詞をそのままに歌い上げる。ウタの口から響き渡る歌と共にオーラの波が広がっていく。その歌が全員の耳に届いた時、変化は起きた。
ウタ自身の頭上には、小さいながらも金色に輝く王冠が鎮座し、口元にはマイクらしきものが装着されていく。仲間たちにもそれは同様に起き、装備がそなわる。
一番近くにいたウソップには、手に持つパチンコに変化が。まとわりつくようにウソップに触れたオーラは音符へと形を変えたかと思えば、染み込むようにしてパチンコに入っていきその姿を変えてしまった。
「おいおい!どうなってんだ?!俺の武器が!」
驚くウソップの手元では変化が既に終わっている。
サイズまでも変わり、三倍ほどデカくなった武器は鮮やかな『赤』を呈している。
ウタにとっての『最強』を示す色だ。
サンジは靴、ゾロは刀といった具合にそれぞれのメインウエポンが赤く染まる。
前衛を務める者は、変化が色だけでないことにもすぐに気づいた。体が軽いのだ。
内側から力が湧き上がってくるような不思議な感覚に、ルフィは先頭を切って魔王に殴りかかる。
「おぁおおーー!!ゴムゴムの〜
赤く染まった拳は勢いよくトットムジカの胴へと突き刺さる。
初撃と同じ技を繰り出したルフィは驚いた。
攻撃が通る!
かつてクロコダイルの弱点を突き殴り飛ばした時と同じような感覚をルフィは覚えた。
トットムジカは初めて身を仰け反らせ苦しみ出す。
確実な手ごたえに、ルフィはニッコリと笑みを作る。
「さっすがだな〜ウタ!!よーっし!野郎ども!!こっからが本番だ!気合い入れろ!!!」
「「「「「「「おおおぉーー!!」」」」」」
景気づけとばかりに攻撃の手を休めず、ゴムゴムのバズーカで追撃を加えながら、一味を鼓舞する。
そんなルフィに続き攻勢に打って出る麦わらの一味。
ウタの能力により強化されたその攻撃が、崩すことの出来なかったトットムジカの余裕を打ち壊していく。
ウタの歌が響き渡る。
その声色は、決して楽しいと言えるような状況ではないこの場に置いて尚楽しげだった。
サビに入れば、歌の盛り上がりにつられるようにルフィたちの攻撃も鋭く、強くなっていく。
こんなことを考えている場合じゃないと思いながらも、仲間との一体感に嬉しさが込み上げてくる。
ついさっきまでの劣勢が嘘のようにトットムジカ相手に一方的な展開へと変わっていく。
振るう腕は掠ることもなく空を切り、放つ熱線さえもついに真っ向からゾロに切り伏せられてしまう。
満身創痍になりつつある魔王に向かって、ウタは足をを進める。命を投げ打つためではない。
自分の手でケリをつけるためにだ。
たしかにこのままでも勝てるだろう。それでも、因縁のある魔王には一発叩き込んでやらなければ気がすまない。
歩みはやがて走りに変わり、その手には赤いランスが握られる。
走りながらも歌に途切れる様子がないのは流石の一言だ。
こうやって走りながら歌うことができるのも、ゴードンの教えあってこそだと、ウタはこの十年に想いを馳せる。
いろいろなことがあった。
二人っきりのこの島で、笑顔を失ったウタをいつだって励まして、時に一緒に涙を流してくれたもう一人のお父さん。
死なせやしない。まだまだ伝えたいことがあるのだから。
絶対に救ってみせる。助けてもらってばっかりなんだ。
・・・だから、
「ルフィ!!!合わせて!!!!」
「おう!!いくぞ!!」
足元に小さな音符を出して足場にする。
一瞬しか出すことはできないが、それで十分。
ルフィとウタは二人肩を並べてトットムジカの前に躍り出た。
「やっちまえお前ら!!」
「思いっきりいきなさい!!」
「「「「ぶっ飛ばせー!!!」」」」
下からは仲間の声援が届いてくる。
・・・ねえ、ゴードン。私、仲間ができたよ。
ずっと、愛していた過去に押しつぶされそうで、どうやっても忘れられない誓いに縋って、語り合った夢を心臓にして生き永らえてきた。こんな私が。
どうか受け取って下さい。
あなたの娘は、こんなに強くなりました。
「ゴムゴムの〜
「ウタウタのっ
レッドゴウト!!!!!」
最後の技ですが、センスなくってすいません。
最強って調べたらGOATって出たんでそのまま使いました。
今回は、一応考えてたけど出すことはないだろう、オリジナル悪魔の実『ワドワドの実』について書こうと思います。
作中内で言った通りワドワドの実は、詠唱人間にする実です。
アニメやマンガでありがちな魔法を使ったりするときの詠唱を唱えることで力を使います。
能力者本人がその言葉に対して抱いているイメージをそのままに現実にする力って感じです。
ただ「風よ吹け」だと、明確にイメージが掴みにくいので、そのイメージの補助に詠唱があるってわけです。オペオペの実と同じくほぼ万能ですが、ルフィみたいな感情や本能で生きている人間にはその時々で同じ言葉でも全く効力が違っちゃいます。
まあようするに何が言いたいかというと、ここのゴードンさんは、詠唱式とそれが及ぼす結果を明確にイメージしきれさえすれば『黒棺』や『無限の剣製』でも使えるってことです。