「ほんとあんた歌うの好きよねー。」
穏やかな波に乗り揺れる海賊船の上。
機嫌良く頭を、体を揺らして高らかに歌う我らがキャプテン、麦わらのルフィにおもむろに航海士のナミが声をかける。
「んー?そりゃそうだろ。海賊は歌うんだぞ〜?」
「それを踏まえても度が過ぎてる気がするんだけど。気づいたらなんか口ずさんでるじゃない、あんた。ねえ、ウソップ!」
羊を模した船首に体を預けるルフィから、昨日の宴会でできてしまった汚れを取ろうとゴシゴシとブラシでデッキを擦っているウソップへ話を振った。
「悪いナミ。全然聞いてなかった。なんの話だ?」
「ルフィの音楽好きの話よ。ウソップも心あたりあるんじゃない?」
「あー、確かに。ことあるごとに言ってる気がするな。メリーをもらってキッチンがあるって話してた時も、音楽家が欲しいとか言ってたような。」
「そうなのよ。メリーをもらう前も、まだ三人しかいなくってまずは船か食料がいるっていう時にも、やっぱり音楽家は必要だ。なんて真剣な顔で言ってたんだから。こんなに好きなんだから、なにか特別な理由でもあるんじゃないかと思ってね。」
「それでそんな話してたのか。改めて言われるとなんか気になってきたな。で、実際のところどうなんだよルフィ!なんか特別な理由でもあんのか?」
すっかり興味を持ってしまいブラシをほっぽってルフィに問いかけるウソップ。
そんな賑やかな甲板に誘われるようにして船医のチョッパーも話に加わる。
ウソップとナミから話のあらましを聞いて、三人で船首のルフィを見上げるようにして話始める。
穏やかな海流が続き暇なのだろう。
なんで、なんで、といつに無くしつこく訪ねてくるクルー達。
隠すようなことでもないし、懐かしい話でもしようかとルフィは口を開いた。
「昔っから歌うのは好きだったけど、なんで好きになったのかって言われたら、やっぱりあいつが「確認!八時の方向!とんでもない嵐が来る!全員配置について!早く!!」
突然、話を遮り嵐に備えろと声を荒げるナミ。先程のおちゃらけた雰囲気は無く、表情は真剣そのものだ。
穏やかな波と暖かな日差しが降り注いでいる現在。本職の航海士であろうとも一笑に付すであろうその指示に、甲板にいた二人はもちろんのこと、船内で夕食の下拵えをしていたサンジや本に目を走らせていたロビン、マストの上で見張り兼昼寝をしていたゾロはなんの迷いもなく指示に従い体を動かす。
見事な連携で進路を素早く変える一行。
その直後、まるで示し合わせたかのように元の針路先に豪雷を伴う嵐が吹き荒れる。直撃すれば命はなかったかもしれない。
少なくとも、この小さくてところどころの破損の目立つ船は耐えられないだろう。
だが、直撃は免れたとはいえ、油断はできない。そのあまりの規模の大きさで、ついさっきまでの穏やかさはどこへやら。荒れ狂い、並の男なら飛ぶような暴風と地に叩きつけられるような豪雨が、辺り一帯を襲ってきた。
各々が何かにしがみつき、じっとして嵐がすぎるのを待つ。航海士から次の指示が無いということはコレが正しいのだとこの船にいるものは皆んなわかっているのだ。
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耐えることしばらく、ようやく海は落ち着き身を休めることができるようになった。
さっきのはすごかったなー、と嵐の話で盛り上がるウソップとチョッパーとサンジ。
波と風をよみ、不安定な海域から抜け出せたことを改めて確認するナミ。
緊張した状況からいつもの弛緩した状態に戻っていく船上のクルー達。
「おいコック。腹減った。なんか出せ。あと酒も。」
「何か出してくださいませだろうが、このクソマリモッ。てか、酒くらい自分で出せコラッ!」
「サンジくーん!私もお腹空いちゃったなぁ。何かない?」
「は〜〜い♡ただいま!」
「俺のも頼むぞ。「俺たちも欲しい!」
「わかってるから、ちょっと待っとけヤロー共!たく....。ロビンちゃんはどうする?」
「ええ。いただくわ。」
先のゴタゴタで疲れきってしまったのだろう。
一様にサンジにつまめる何かをねだる面々。
ウソップとチョッパーなど身を投げ出してしまっている。
ゾロやロビンでさえもわずかながら顔に疲労を滲ませている。
同じ様に疲れているはずなのに、コックとして頼られた途端に背筋を伸ばしてキッチンへ向かうサンジは、やはりさすがといえよう。
船内に向かうサンジに続き、ぞろぞろとみんなも入ろうする。
不意に、ロビンが周りを見渡し始めた。みかん畑、マスト、船首へと目を移し「まさか....」と小さく呟く。
挙動のおかしなロビンに仲間たちは首をかしげる。
「どうかしたの?ロビン。」
「ねえ、みんな。
船長さんが、見当たらないんだけれど」
「「「「「は、はああぁぁーーーーーーーーーーーーーーー!?!?」」」」」