見事仲間との再会を果たし、さらにはまだ候補だとはいえ待ち望んだ音楽家までがいる。しかも、思うに世界最高の、だ。
当然宴の勢いは止まることを知らず、二日にまで及んだ。
サンジの腕によりをかけた豪勢な料理が振る舞われ、ウタの歌とゴードンの演奏が耳を撫でる。
そのリズムに乗り、手拍子をしたり一緒に歌ったりと大いに盛り上がる。
その一瞬は確かにここは音楽の島であったといえるだろう。
宴も終わり、島を案内したいと言うウタとルフィに連れられて一味は島の探索に向かった。
ゴードンは、若い者が楽しめばよいと一言断りの言葉を入れ城に残った。
探索といっても、島の奥にある森や、まるでステージのような離れ小島、そして壊れ果て遺跡のような風貌へと姿を変えた建物が残るだけの島だ。
そう多くのものが観れるわけでもない。
ある程度見てしまえばあとは似たような風景が広がっているだけなのだから。
しかも、麦わらの一味で最もこういったことに興味を持っている船長のルフィはもう何度もこの島を回っている。
城を出てしばらく。
遂に駄弁るだけになり、どうしようかと気を揉むなか、全員が気になっていながら口に出せなかったことをチョッパーが切り出した。
「そういえば、ロビンが言いかけてたけど、この島はなんでこんなことになっちゃったんだ?すごい荒れ果ててるけど・・・、ドラムでもここまではならなかったぞ?」
改めて周りを見渡しながら首を傾げる。
そんなチョッパーの言葉に顔を顰め下を向いてしまうウタ。先程までの楽しげな様子が嘘のようだ。
ウタのおかしな態度を知ってか知らずか、なんでもないようにロビンがチョッパーの問いに答える。
「ああ、その話ね。十年前、とある大物海賊がこの島を襲ったと話題になったんだけど・・・」
「大物海賊?いったいどこのどいつだ?こんなことをしやがったのは。」
ウソップも重ねて問う。
一方ウタは、顔を俯けたままに強く拳を握り締めている。あまりに強く握り締めているが故に小刻みに震えている。
そして一呼吸おき、ロビンが答えるよりも前に、まるで吐き捨てるようにウタが代わりに答えた。
「・・・赤髪海賊団だよっ!!!この島を滅ぼしたのは!!?!」
水を打ったような静寂が辺りを覆う。
ウタは、まるで火がついたかのように勢いを増して口調を荒げ、捲し立てる。
「アイツらは私を裏切ったんだ!!!信じてたのに、ほんとの家族だと思ってたのに!!!!私を利用してこの島をめちゃくちゃにしたんだ!!!!!」
激情に駆られ顔を歪める。
何かあるとは思っていたが、まさかあのウタが大好きだった赤髪海賊団を悪く言うとは思わず、ルフィは咄嗟に反論する。
「何言ってんだウタ!!シャンクス達がお前を裏切るなんて、そんなことするわけねーだろ!!!あんなに仲が良かったじゃねぇか!!」
「嘘じゃないよ!十年前、シャンクスは私をこの島に捨てて行っちゃたんだ・・・。何もかも奪って、行っちゃたんだ・・・・」
ボロボロと涙を流して膝から崩れるウタ。
チョッパーやサンジが心配そうに駆け寄る。
背中をさすり落ち着かせ聞き出したのは、ウタがシャンクスの娘であるという衝撃の事実だった。
その事を唯一知るルフィはまだ何かいいたそうにしながらも、ウタの話を聞く。
曰く、いつものように航海をして辿り着いたこの島で、熱烈な歓迎を受けたウタはたくさんの歌を歌い疲れて寝てしまったと。
目が覚めたとき、既に島は火に包まれておりシャンクス達は海軍に追われ逃げていったのだと。
幼いウタを置いて。
ぽつりぽつりと語られた、ウタを襲った過去の話に息をのむ。
それでも感情のままにシャンクスはそんな事しないと言おうとするルフィを、ロビンが手で制する。
「本当に赤髪海賊団がこの島を襲ったの?」
「・・・あなたまで疑うの?あなたが何を知ってるのよ!!!」
「確かに、私は赤髪海賊団のことは何も知らない。エレジアの壊滅をニュースで知った時も、海賊が国を襲ったのだと思っただけだった。」
「だったら、口を挟まな「でも」」
ウタの言葉を遮ってロビンは、この島に来てから感じていたことを口にする。
「この島の現状から何があったか知ることはできる。海賊に襲われた後の村や町や国を見たことだってあるけれど、それらとは明らかにここは違う。奪い殺し犯すことを海賊は目的とするけれど、この島はまるで『壊す』ことを目的としているような印象を受けるわ。ほら、この地面も建物の破壊のされ方も。大きな怪物が腕を振るったかのよう。」
指を指す方向には確かに、深く抉られ色の違う層まで見える裂け目であったり、二階や三階部分が吹き飛ばされたかのような建物がある。
さらにロビンは続ける。
「そもそも、この島のいったい何を奪うと言うの?ここには卓越した音楽家や貴重な楽譜や楽器はあっても、海賊の望むようなお宝はそうないでしょう。よしんば、それらの価値が分かっていたからこそここを襲撃したのだとしたら、城に山のようにあった楽器や楽譜の説明がつかない。」
感情論でない理論からの指摘に口を詰まらせるウタ。
あぁ、確かに自分もそう信じたいとも。でも、そうでないとしたらいったい誰がこんなことをしたと言うのか。あの日この島にいたのは私と彼らと国の住民だけだったのだから。
「・・・じゃあ何?この島を襲った真犯人がいるってこと?」
「そういう考え方もできるんじゃないかと言っているだけよ。もしかしたら、この島には私たちには想像できないような、それこそ、赤髪海賊団ほどの大物が国を滅ぼしてまで手に入れたかった『何か』があるのかもしれないわね。私が言いたかったのは、こんな小さくて知名度の高い国をわざわざ滅ぼすほどのメリットがあるのか、ということよ。」
でも、アイツらは、私はこの目で。
うわ言のようにシャンクス達がしたと証明しようと言葉を探すウタだが、心では信じたいのだ。
もしかしてただの勘違いなのではと、改めてその可能性を目前に叩きつけられて今までの恨みつらみが揺れる。
そんなウタの肩を掴みルフィも自分の思いの丈をぶつける。
「なぁウタ。お前も分かってんだろ。シャンクス達がそんなことするわけねえってことくらい。俺には何にも話してくれなかったけどさ、絶対何か理由があったんだよ。そうじゃねえと、大事な娘をほっぽり出したりするわけがねえ。」
「私は・・・私も信じたいよ・・・・でも」
今まで過ごした十年が、そう簡単にあるかもしれない可能性を認めない。
口をつぐんでしまったウタだが、なぜか不意にゴードンとの約束の場所を思い出した。
この島の中で、唯一絶対に立ち入ってはならないと耳にタコができるほどに言われた場所。
城のちょうど真下に位置するという地下遺跡のことを。
「地下遺跡・・・」
「ん?」
「そうだ、ゴードンが言ってた。絶対に入っちゃダメって。・・・もしかしたら、あの日に起こったことの何か手掛かりがあるかもしれない。」
「おい、ウタ、どうしたんだよ急に立ち上がって。」
「ねえ!手伝って!!もしかしたら、あの日の真相がわかるかもしれない!!!」
ここでいくら話そうとそれは机上の空論。
唯一あるとするならばあそこしかない、とウタは話始める。
興味を示したのはロビンだった。
「地下遺跡か、確かに何らかの手掛かりはあるかもね。十年前の真相はともかく、本当に赤髪海賊団がこの島を襲ったのなら、そこに目当て物があっても何らおかしくはないでしょうし。」
「よーし、じゃあこの島で何があったのか、そこに行って確かめるぞ!」
一方ゴードンは薄暗い部屋で一人、数枚の古びた楽譜を手に何やら考えこんでいるようだった。