麦わら帽子とぬいぐるみ   作:緋色

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再会

☆1

 

「シャンクスー!冒険の話聞かせてくれよ!」

「帰って早々騒がしいな。荷下ろし終わったら酒場で話そう」

 

 ギィギィ

 錆びた蝶番が軋むような音が足元から鳴り、見下ろすと 

 

「シャンクスなんか足にくっ付いてる。……ぬいぐるみ?」

「あぁ、これか。どうやら懐かれたらしくてな。隙があればくっ付くんだ」

 

 困ったもんだと頭をかくシャンクスを困らせる様に右足には、箱のようなものを背負ったようなぬいぐるみが絶対に放さないと決めたかのように抱き着いていた。

 

「シャンクス?」

「北の方まで結構な遠出だったんだが、いつの間にか船に潜り込んでいてな。何度引き離しても必死に追い掛けて来るから今はもう好きにさせてる」

 

 ギィギィ!

 

「なんか怒ってないか?」

「そうなんだがよくわからなくてな。それだから無理に引き剥がせないんだ」

「へー。動くぬいぐるみって初めて見た」

 

 ギィギィ……

 

「ん?どうしたんだ?おれに何か言いたいのか?」

 

 ギィギィ

 シャンクスの足から離れて、ルフィの前でパタパタと動くぬいぐるみは、まるで踊っているかのようだった。

 

「踊りが好きなのか?おれは踊りより歌が好きだ!知ってるか?海賊は歌うんだ!」

 

 ギィ……

 

「ん?踊りは好きじゃないのか?じゃあ歌は?」

 

 キィキィ!

 

「歌が好きなのか!一緒だな!」

 

 キィキィ!

 

「気に入られたようだな。それはルフィにやろう。後で酒場でな」

「早く来いよなー!」

 

 ギィギィ!

 抗議するように音を鳴らしながらシャンクスを追いかけるぬいぐるみはどこか物悲しく見えた。

 

 

☆2

 

「――そんなこんなで海賊との戦いは俺達が勝利したわけだ」

「へー。悪い事してる海賊も多いんだなあ」

「俺達は冒険を第一にしている海賊だが、裏取引や略奪を主にやっている海賊の方が多い。それは覚えておくといい」

 

 海風 気まかせ♪波まかせ♪潮の向こうで♪夕日も騒ぐ♪

 

 キィー♪キィー♪

 

「はは、歌ってらぁ」「うまいぞー」「何言ってんのかわかんねえけどな!」

 

 ギィギィ!

 ぎゃははは!

 陽気な歌と笑い声が酒場に響く。

 海賊たちが拠点にしている間によく見られる光景だ。

 

 

 キィキィ!

 

「やっぱ一番お頭に懐いてるなぁ」「お頭に惚れてるんじゃねえか?」「ヒューヒュー」

「よしてくれよ。子供じゃないんだから」

 

 ギィ……

 

「シャンクス。このぬいぐるみって名前あるのか?」

「ないな。みんな好き勝手にぬいぐるみとか人形とか好きに呼んでいたが」

「ふーん?」

 

 キィ……キィ……

 

「じゃあ名前をつけてやるよ!お前の名前は――」




わたしはぬいぐるみ
だいすきなみんなといっしょにふねにのってます
でもみんなはわたしのことをチビとかよびます
なまえがあるのにだれもよんでくれません

わたしはおんがくか
うたがだいすきです
みんなとうたううたもすきだけど
うたってほめられることがすきでした

わたしはがんばりや
ふねのなかではおてつだいします
だけどふねのなかはぬいぐるみにはひろくておおきいです
できるおてつだいはすくなくなりました

わたしはねむりません
みんながねむるよるのふねはしずかでまるでだれもいないよう
くらいへやにひとりはさびしいの
なのでみはりのひとといっしょにひろいうみをみまわします

わたしはさびしがりや
いつもあしにだきついて
ふりはらわれても
なんどでもおいかけます

やさしいみんなはゆめだったのかな
わたしがしらないみんな
みんなのしらないわたし
わたしはほんとうにいたのかな

(ねえさびしいの?)

さびしいよ
まるでさいしょからいなかったみたいで

(ぼくもずっとさびしかったよ)

そうなの?

(でもぼくはわすれない)

(ずっといっしょにいてあげれる)

わたしは
わたしは
わたしはだれ?

(だからこっちにおい――)

『歌が好きなのか!なら名前はウタだ!』

わたしは――ウタ
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