麦わら帽子とぬいぐるみ   作:緋色

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麦わら帽子は約束が詰まってますね


海賊狩り

☆1

 

 ――海

 ルフィとウタをついでに乗せたコビーの船は海軍基地のある港に向かって航海していた。

 

「ロロノア・ゾロは"海賊狩りのゾロ"という異名を持つ恐ろしい奴です。血に飢えた野犬のように賞金首をかぎまわり海をさすらう男だと。人の姿を借りた”魔獣”だと人は言います」

 

 忠告のつもりなのか相変わらずコビーは出所が不明な噂を話す。

 案外噂好きなのかもしれない。

 

「ふーん」

「ギィ?」

 

 もっとも二人にはあまり効果はないようだ。

 

「だから仲間にしようだなんて馬鹿な考えは捨てた方が…」

「でも別におれは仲間にって決めたわけじゃなくて、もしいい奴だったら…」

「悪い奴だから捕まってるんですよ!」

 

 海軍は海賊とか討伐しているからそういうものなのだろう。

 たぶん。

 

☆2

 

 ――海軍基地のある港

 

「ついた!海軍基地の町!」

「キィ!」

「はい!ついに!」

 

 海軍基地がある島だからか海賊に荒らされた形跡もなくいたって平穏な港町だった。

 少々怯えてるような気がするが、海軍は頼れるだろうけど怖いものだし仕方ない。

 

「お前凄いなコビー」

「キィ!」

「え?」

「ちゃんと目的地に着いたよ」

 

 短い航海だったが迷うことなく港に着いた。

 …これが航海術!

 

「当たり前ですよ!海に出る者の最低限の能力です!」

 

 グサッ

 

「キィ…」

「あ、ウタさんを悪く言ったわけでは…。兎も角、ルフィさんだって毎度漂流してちゃ海賊になれませんよ。勉強は自分でやって貰うしかないので、難しいようでしたらせめて航海士を仲間にするとか」

「ああ、そうする!飯食おう!」

「ギィ!」

 

 話を聞き流したように答えたのが気にくわなかったのか抗議の声を上げるウタだったが

 

「ウタ。よく考えてみろ」

「キィ?」

「航海術は勉強しなきゃいけないけど。今やるべきことは飯屋に行くことだ。おれは腹が減った。あとで海図?とか買えばいい」

「海図、コンパス一式はありますのでそれは船ごと差し上げますよ。この周辺なら問題なく使えるはずです。ぼくは海軍に入るので必要なくなりますし」

「そうか!悪いな!」

「キィ!」

 

 なんかうまくまとまったようである。

 

☆3

 

 ――町の大衆食堂

 

 腹ごしらえも済み、食後の雑談

 

「じゃ、この町でコビーとはお別れだな!海軍に入って立派な海兵になれよ」

「キィ~キィ~」

「はい…!ありがとうございます。ルフィさんも立派な海賊になって下さい。いずれは敵同士ですけど」

 

 腹ごしらえも済み、食後の雑談をしていた。

 

「そういや基地にいるのかな?あの()()って奴」

 

ガタン!

 

 急に客や店員が大慌てで距離を取る。

 ビクビクしている所を見ると怯えているのだろう。

 

「…?」

「ギィ?」

「…!(ここではゾロの名は禁句のようですね…)」

「ふーん」

 

 雰囲気に耐えられなかったのか話題を変えようとまたコビーが話し出す。

 

「さっき貼り紙を見たんですけどここの基地にはモーガン大佐という人がいて」

 

ガタガタガタンッ!

 

「え!?」

「おお!」

「キィ!」

 

 さっきよりもダイナミックに距離を取った?

 

 

☆4

 

 食堂から離れた道すがら妙な雰囲気を話題に海軍基地へ向かっていた。

 

「はっはっは!面白い店だったなー。おれ後でもっかい行こう!」

「ギィギィ!」

「あー金も少ないし止めとくか」

「キィ!」

「妙ですよ…!僕なんだか不安になってきました…!」

「ギィ?」

 

 笑うルフィと違い、コビーは不安に掻き立てられたようだ。

 

「いつ脱走するとは限らないロロノア・ゾロの名前に過敏になる気持ちはわかりますが…。なぜ海軍の大佐の名にまで怯えるんでしょうか!」

「キィキィ?」

「さあなー。人間だっていろんな人いるし、なんかノリで吹っ飛んだんじゃねえか?」

「キィ」

「そんなわけないじゃないですか!僕は真面目に言ってるんですよ――っと着きましたね」

 

 ――海軍基地

 

「近くで見るとゴッツいなー。いけよ!コビー」

「キィ!」

「で…でも心の準備が…!ウタさんも敬礼しないでください。さっきの件もありますし…」

 

 ウダウダするコビーは置いといて海軍基地を囲む塀に乗り上がる。

 目的は勿論――

 

「あ!ルフィさん!」

「魔獣はどこかなァ」

「覗いて見えるようなとこには「キィ!」――お!なんかいるぞ!」

 

 少し離れた所にポツンと誰かが一人立っていたのが見えた。

 海兵ではなさそうに見えたが果たして?

 

「え…!」

「ゾロって奴かも」

 

 顔をよく見ようと一番近い塀の方まで向かい再度、身を乗り上げる。

 

「ほらあいつ」

「…!」

 

 恐る恐る覗いたコビーが迫力に負けたのか腰を抜かす。

 

「どうした?」「キィキィ?」

「く…黒い手ぬぐいに腹巻!ほ…本物だ!本物のロロノア・ゾロです!」

 

賞金稼ぎ

海賊狩りのゾロ

 

 ゾロは海軍基地の中で磔にされていた。

 

「あれがそうか…。あの縄ほどけば簡単に逃がせるよな。あれじゃあ」

「キィ?」

「ん?確かに見張りもいないな」

「バカな事言わないで下さいよ!あんな奴逃がしたら町だって無事じゃすまないし、ルフィさんだって殺そうとしますよ!」

「キィキィ?」

「確かにまだ狙われる覚えはないな。まだ海賊になれてねえし」

「そこじゃないですよ!?」

 

 コビーが騒がしくしたせいか、磔にされたゾロに気付かれたようだ。

 

「おいお前」

「ん?」

「ちょっとこっち来てこの縄ほどいてくれねェか。もう九日間もこのままだ流石にくたばりそうだぜ」

 

 言葉とは裏腹に死にそうには見えない。

 魔獣と呼ばれる所以がわかったような気がした。

 

「おい。あいつ笑ってるぞ」

「礼ならするぜ。その辺の賞金首ぶっ殺しててめェにくれてやる。嘘は言わねェ。()()()()()

 

 雰囲気は物々しいが、嘘を吐いている感じはしない。

 というより嘘吐いているにしては覚悟が違う様に思える。

 

「だ…駄目ですよルフィさん!あんな口車に乗っちゃ…!縄といたとたんに僕らを殺して逃げるに決まってるんですから!」

「ギィ!」

「殺されやしねェよ。おれは強いからね」

「あァ!?」

 

 ガタッ

 

「ん?」「え!?」「キィ?」

「しーっ」

 

 梯子を掛けて登ってきたのは小さな女の子だった。

 

「あ…!ちょっと君危ないよ!」

 

 コビーが止めるも、女の子は塀を乗り越えて磔にされたゾロにこそこそと近づいていく。

 

「ルフィさん止めて下さいよ!あの子殺されちゃいますよ!」

「自分でやれよそうしたいなら」

 

 そうこうやってるうちに女の子は持っていた何かを広げる。

 

「殺されてェのか…消えなチビ!」

「あのね。私おにぎり作ってきたの!お兄ちゃんずっとこのままでお腹空いてるでしょ?」

「ハラなんかへっちゃいねェ!そいつ持ってとっとと消えろ!」

「だけど…」

 

 散々ゾロは吠えているがその気はないらしい。それがわかっているからか女の子は困ってはいるが怯えてはいないようだ。

 

「いらねェっつったろ!帰れ!踏み殺すぞガキ!」

 

「いじめはいかんねェ。親父に言うぞ」

 

 ゾロの声に反応したのか海兵二人を連れた変なのが出てきた。

 

海軍大佐の息子

ヘルメッポ

 

「また変なのが出たな」

「あれはきっと海軍の偉い人ですよ…。よかったあの子殺されなくて…」

「キィ?」

 

 変なのを見て露骨にいやそうな顔をするゾロ。

 変だからか。

 

「チッ。七光のバカ息子が…」

「バカ?こら調子に乗るなよ。おれの親父はかのモーガン大佐だぞ!」

 

 さっきから父親に頼る発言ばかりでバカ息子というのは本当なのだろう。

 

「キィキィ?」

「ん?偉いんじゃねえの?なんか偉そうだし」

「キィー?」

「おれは偉くねーからなァ」

「キィ?」

「わかんねえな!」

「いやさっきから何話してるんですか?…あ!」

 

 コビーの声で視線を戻すと変なのが笑顔でおにぎりを踏みにじっていた。

 …食べ物を粗末にする変なのは嫌な奴のようだ。

 

「…ひどいよ!わたし…一生懸命つくったのに…!」

「あ~あ~泣くな泣くな!だからガキは嫌いだぜ」

 

 お前のせいである。

 

「悪いのはお前なんだぞ?ここになんて書いてあるか読めねェのか?『罪人に肩入れし者、同罪と見なす 海軍大佐モーガン』」

 

 なぜ海軍の敷地内にそんな看板が建っているのだろうか?

 嫌がらせ?

 

「おれの親父の怖さくらいは知ってるよな。てめェが大人なら死刑ってとこだ」

 

 嫌な奴が女の子を脅した後、嫌な奴は後ろの海兵に命令する。

 

「おい、このガキ投げ捨てろ!」

「…は?」

「塀の外へ投げ飛ばせってつったんだよ!おれの命令が聞けねえのか!親父に言うぞ!」

「は…はい!只今!」

 

 戸惑っていた海兵も返事をしてからは行動は素早く女の子を掴んで「すまん」投げ飛ばす。

 

「いやああ!!」

 

ドサッ

 

 投げられた女の子をルフィは塀から飛び跳ねる様にキャッチして地面に落ちる。

 

「きみ…大丈夫!?なんてひどい奴なんだ!」

「ギィ!」

 

 見た所怪我はないようだ。

 

「ちょっとあいつと話してくる」

「キィ?」

「あ、ルフィさん!?」

 

 そう言って一人で勝手に塀を飛び越したルフィ。

 

「ギィギィ!」

「あ、ウタさん!ちょっと落ち着いて!」

 

 ウタは追いかけようと掛けっぱなしだった梯子を昇ろうとしてサイズの差に苦戦する。人とぬいぐるみの差か……。

 

「ウタさん。ルフィさんが心配なのはわかりますが落ち着いて下さい」

「ギィ!」

「よくわかりませんが塀まで持ち上げますから少し大人しくしてください」

「キィ?」

 

 大人しく持ち上げられて塀に昇る。

 そうすると見えたのは。

 

「おれとお前じゃ気力が違うんだ。もの好きな仲間探しは他を当たるんだな」

 

 ルフィがゾロを勧誘していたようだ。もっとも失敗に終わったみたいだが。

 海軍も周りにいないし追い掛けられたりするような問題は発生していないようだ。

 ……よかった。

 

「おい!ちょっと待て。()()…とってくれねェか」

 

 ゾロがそういって目線で指すのは――先程のおにぎりのなれの果てだった。

 

「食うのかよコレ?もうおにぎりじゃなくて泥のかたまりだぞ?」

「ガタガタぬかすな。黙って食わせろ落ちてんの全部だ!」

 

 口に詰め込まれたなれの果てを明らかに無理して口に含み――ゴクン――飲み込んだ。

 

「だから言ったろ?死にてェのか?」

 

 ルフィの問いに吐き気をこらえるような音を立てながらゾロは言う。

 

「あのガキに伝えてくれねェか…『うまかった』『ごちそうさまでした』…ってよ」

「…はは!」

 

 ……いい人!

 

☆5

 

「ほんと!?」

「ああ!一つ残さずバリバリ食ってたよ」

「キィ!」

 

 先程のいい人の事を女の子に話すルフィ。

 喜ぶ女の子を見てコビーは疑問に思ったようだ。

 

「あの人…本当に噂通りの悪人なんでしょうか…」

「違うよ!だって捕まったのだって私を助けるためにモーガン大佐の息子が飼ってた狼を斬っちゃったからなの!それまで野放しで狼が町を歩き回っててみんなすごく困ってて…!」

 

 町民を襲うようなペットを海軍が飼ってていいのだろうか?

 疑問はさておき罪状はそれだけだったようだ。

 

「じゃあゾロが捕まった理由ってのは…あいつの飼い狼を斬ったってだけの事なのか」

「うん」

「そうか…!彼の気性の恐ろしさはさておき賞金首を狙う事が罪になるわけありませんからね」

 

 賞金首を狙うことが罪になるとしたらそれは海賊が天下を取った後だろう。

 

「悪いのはモーガン親子よ!少しでも逆らえばすぐ死刑でみんなびくびくしてるの」

「キィ?」

「海軍にも悪い奴いるもんだなあ…」

 

 周り道になるかもしれないがこの状況を放っておくわけにもいかないだろう。

 しかし、どうしたものか……。

 

「ひぇっひぇっひぇっ!頭が高ェっつってんだろ!親父に言うぞ!」

 

 悩んでいると先程の嫌な奴が偉そうに町の住民を跪かせて歩いていた。

 

「ロロノア・ゾロみてェに磔になりてェか!?()()()にはゾロの奴を公開処刑にする!見せしめだ楽しみに待ってろ!」

「三日後?」

 

 嫌な奴のそれを聞いてルフィが反応する。

 

「一ヶ月の約束はどうしたんだ!」

「なにィ?誰だ貴様どこで聞いた頭が高ェな」

「そんな約束ギャグに決まってんだろ!それを本気にする奴もまた魔獣的にバカだけどな!」

 

 塀に昇る前に何かがあったらしい。

 嫌な奴は一ヶ月耐えればいいとゾロに言ったが、先程の発言を見る限り約束を守るつもりはないらしい。

 

 ドカッ

 

 散々偉そうなことを言う嫌な奴に我慢の限界だったのだろう。ルフィは嫌な奴を思いっきり殴り飛ばす。

 

「ルフィさん!」

「こいつクズだ」

「ギィ!」

「やめて下さい落ち着いて!海軍を敵に回す気ですか!」

 

 コビーの忠告はもう手遅れである。

 

「決めたぞウタ」

「キィ?」

「…おれはゾロを仲間に引き込む!」

「キィ!」




「うわっ!おにんぎょーさんが動いてる!」
「ウタって言うんだ。すげーだろ」
「キィ!」
「すごーい」
 喜ばれるのでついつい踊ってみる。
 音楽がないのが不満だがダンスも一緒に楽しめる文化である。
「いつ見ても不思議ですよね。どういう原理なんでしょう?ルフィさんと同じで悪魔の実が関係しているのでしょうか?」
「さーな?海にはいっぱい不思議な事があるって事だろ?」
不思議な事はいっぱいある物心ついてからいっぱい見てきたし、今もそうだ。
「キィ♪」
「ウタちゃんすごーい」
ポテポテと歩いてルフィの元に座る。
近いけど遠い距離。
夢ならば覚めればいいのに。
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