麦わら帽子とぬいぐるみ   作:緋色

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2人目

☆1

 

 どよめく民衆達。嫌な奴そのものより大佐への恐怖が口に出されている。

 

「な…殴りやがったな!このおれを殴りやがったな!親父にだって一度も殴られたことねェのに…!」

 

 嫌な奴はどこかで聞いたような台詞を吐いて狼狽える。

 

「おれは海軍大佐モーガンの御曹子だぞ!親父に言いつけてやる!」

()()がかかって来いよ」

「ギィ~ギィ!」

「ルフィさんやめてください!ウタさんも便乗しないでください!」

「おれを殴った事を後悔しながら死んでいけ!お前は死刑だ!」

 

 護衛の海兵に引き連れられて嫌な奴は去っていった。

 

「あんな奴これ以上殴る価値もねェ」「ギィ!」

 

 どよめく民衆が巻き添えを恐れてそそくさと家に帰る中、おにぎりの女の子はルフィに話しかける。

 

「すごいのねお兄ちゃん。私胸がすっとしちゃった!」

「そうか?じゃあ、もっと殴るっときゃよかったな!」

「ギィギィ!」

「リカ…!こっちに来なさい!」

 

 母親に連れられて家の中に入っていった。

 心配そうな顔に笑顔で手を振ったが効果はあったのだろうか?

 

「やっぱりただじゃ済みそうにありませんよ!例の大佐が怒って下手すれば海軍が動く恐れも…!」

「その時はその時だ!おれ、ゾロにあってくる」

「キィ?」

「ああ。今からな!」

 

☆2

 

 ――海軍基地

 

「よっ」「キィ!」

「また来たのか。海賊の勧誘なら断ったハズだぜ…!」

 

 海軍基地のゾロのもとに現れた二人を見てゾロは吐き捨てる。

 

「おれはルフィ!こいつはウタ!」

「キィ!」

「なんだそいつ?ぬいぐるみか?」

「ウタはウタだ。縄解いてやるから仲間になってくれ!」

「話し聞いてんのかてめェ!」

「キィキィ~」

 

 やれやれと言いたげにゾロに何か話しかけるウタだったが無視してゾロは語る。

 

「おれにはやりてェ事があるといっただろう。誰が好き好んで海賊なんて外道になるか」

「別にいいじゃんかお前元々悪い賞金稼ぎって言われてんだから」

「キィ~?」

「世間でどう言われてるかは知らんが、おれはおれの信念に後悔するようなことは何一つやっちゃいねェ!これからもそうだ。だから海賊にもならねェ!」

 

 睨みつける眼は覚悟が決まっていた。

 これを説得するのは難しいだろう。

 

「知るか!おれはお前を仲間にするって決めた!」「キィ~」

「勝手な事言ってんじゃねェ!」

 

 我儘具合ではどっちも似たようなモノだろう。

 

「お前刀使えるんだってな!」

「!…ああ何かに身体をくくりつけられてなきゃ一応な」

「刀は?」

「バカ息子に取られたよ。命の次に大切なおれの宝だ…!」

「へー。宝物かそりゃ一大事だな!」

「キィ…?」

 

 それを聞いて何かを思いついたらしい。

 悪だくみをしている顔だ。

 

「よし!あのバカ息子からおれが刀奪ってやる!」

「何!?」

「そしておれから刀を返してほしけりゃ仲間になれ」

「たち悪ィぞてめェ!」

 

 本当にたちが悪い。

 だが、三日後の処刑などを伝えても効果なさそうだからこれでいいのかもしれない。

 

「よし!行ってくる!ウタそっちは任せた!」

「キィ!?」

「おい待て!…基地に乗りこむつもりかよ。バカかあいつは…!」

 

 …え?ここに残されてどうしろと?

 …縄解くために頑張るか?

 

☆2

 

 縄を解こうと悪戦苦闘していたらコビーが来た。

 

「ええ!?ルフィさんが基地の中へ?また無茶苦茶な事を…!」

「本当だぜ。何者なんだあいつは」

 

 コビーはウタとは反対側の縄を解こうとし始める。

 

「おい。おれに手を貸せばてめェらが殺されるぞ」

「あなたに捕まる理由はない筈です!ぼくはこんな海軍見てられない!」

「ギィ!」

「ぼくはきっと正しい海兵になるんです!ルフィさんが海賊王になるように!」

「何!?海賊王だと!?意味わかって言ってんのか?」

「ぼくも驚きましたけど…だけど本気なんです!彼はそういう人です!」

 

 パン

 

「撃たれたああ!血だああ!血が出たああ!死ぬうああ!」

 

 乾いた音共にコビーが倒れる。

 銃撃だ。どこから?撃たれた場所から考えると高所、基地の屋上からだ。

 幸い磔で多少は死角になっているのか追撃はこない。そのまま応急処置をしなくては!

 

「……生きてたか。すぐ逃げろ。あいつらが下りてくるぜ」

「はっ…いえ!…はっ…そうだ!あなたの縄を解かなきゃ…!」

 

 磔台から飛び降り、銃弾は貫通してるのか背中側も血が出ているので、常備している手ごろな布を当てて出血を抑える。

 

「おれはいいんだ一ヶ月耐えれば助か「助かりませんよ!あなたは三日後に処刑されるんです!」

 

 血が流れるから興奮しないで欲しい。

 

「何言ってやがる…!おれはここで一ヶ月生き延びれば助けてやるとあのバカ息子が()()を…」

「そんな約束初めから守る気なんてなかったんです!だからルフィさんはあなたに代わってあいつを殴ったんだ…!真剣に生き抜こうとしてたあなたを踏みにじったから!」

「な…なんだと…!?」

 

 まっすぐ生きていた分そういうことは想像もしていなかったようだ。

 

「もう海軍はあなた達の敵に回ってるんです!お願いです!この縄を解いたらルフィさんを助けて下さい!彼は僕の命の恩人なんです!あなたに海賊になれとまでは言いませんが」

「……」

「ルフィさんが強いというのは本当です!あなた達が手を組めばきっとこの町からだって逃げ出すことができるでしょう!逃げて下さい!」

「そこまでだ!モーガン大佐の反逆につき、お前たち二人を今この場で処刑する!」

 

 グダグダしているうちに降りてきた海兵に見つかった。

 

「基地を取り囲め!あの麦わら小僧は絶対に逃がすんじゃねェぞ!」

 

 偉そうに命令する男の右腕は斧だった。

 ……暮らしにくそうだなあれ。

 

「面白れェ事やってくれるじゃねェか…。てめェら三人でクーデターでも起こそうってのか?」

 

海軍大佐

斧手のモーガン

 

「ロロノア・ゾロ…。てめェの評判はきいてたがこのおれを甘く見るなよ。貴様の強さなどおれの権力の前にはカス同然だ…!構えろ!」

 

 構えられた複数の銃。

 腰が抜けたのか立たないコビーと磔で動けないゾロ。

 この二人を守る事は出来ない。

 …普通なら。

 

「射殺しろ!」

 

 遠くで窓の割れる音が鳴り、銃声が響く中その身一つで割り込んだルフィに銃弾が降り注ぐ。

 

「…お前!」

「ルフィさん!」

「キィ♪」

 

「効かーん!」

 

 銃弾をあらぬ方向へと跳ね飛ばし、海兵の驚く声とルフィの笑い声が響く。

 あ、コビーが気絶している。

 

「てめェ…!いったい何者なんだ!」

「おれは海賊王になる男だ!」

「キィ!」

 

 ルフィは背負ってた三本の刀を手に持って聞く。

 

「ほらお前の宝物どれだ?わかんねェから3本持って来ちゃった」

「3本ともおれのさ…。おれは三刀流なんでね…」

「ここでおれと一緒に海軍と戦えば政府にたてつく悪党だ。このまま死ぬのとどっちがいい?」

「てめェは悪魔の息子かよ…。まァいい…ここでくたばるくらいならなってやろうじゃねェか…。海賊に!」

「キィ!」

 

海賊

ロロノア・ゾロ

 

「大佐!あいつゾロの縄を!」

「解かせるな!銃が駄目なら斬り殺せ!」

 

 銃弾をはじいたルフィに対して動揺していた海兵たちは銃は無駄だと悟ったのか刀を手に突撃を開始する。

 

「くっそーかてェなこの結び目」

「おいグズグズするな!」

「キィキィ!」

「そうは言ってもかってぇんだよ」

「…んん…。…は…気を失ってたのか」

 

 騒がしくなってきたところでコビーが起きたらしい。

 命に別状は無さそうだ。

 

「ル…ルフィさんゾロさん危ない!」

「お!解けたよ片方の手!」

「バカ野郎!刀を寄越せ!」

「おれに逆らう奴ァ全員死刑だァ!」

 

 ガキン!

 

「おーかっこいい!」

「キィ!」

 

 解かれた右手に刀を持ってからは速かった。瞬く間にすべての縄を斬り、三本の刀で海兵たちの攻撃をすべて受けとめた。

 …あ、刀で縄斬ればよかったじゃん。テンパって気が回らなかった。――反省。

 

「てめェらじっとしてろ。動くと斬るぜ」

「ひぃ…!」

「海賊にはなってやるよ…()()だ!海軍(こいつら)と一戦やるからにはおれも晴れて悪党ってわけだ…。だがいいか!おれには野望がある!」

「なんだ?」「キィ?」

「世界一の剣豪になる事だ!こうなったらもう名前の浄不浄も言ってられねェ!悪名だろうが何だろうがおれの名を世界中に轟かせてやる!誘ったのはてめェだ!野望を断念する様な事があったらその時は腹切っておれに詫びろ!」

 

 睨みつけるゾロに対してルフィは笑う。

 

「いいねえ世界一の剣豪!海賊王の仲間ならそれくらいなって貰わないとおれが困る」

「キィ~キィ~」

「ケッ、言うね」

「何ボサッとしてやがる!とっととそいつらを始末しろ!」

「しゃがめゾロ!ゴムゴムの鞭!」

 

 しゃがむゾロの頭の上をルフィの伸びた足が通り海兵たちをまとめてけり飛ばす。

 

「や…やった!すごい!」

「てめェは一体…!」

「おれはゴム人間だ!」

「キィ」

「お前もなんなんだよ」

「ウタだ」

「キィキィ~」

「……まったく」

 

 呆れるゾロを他所に事態は悪化していく。

 

「大佐命令だ。今…弱音を吐いた奴ァ…頭撃って自害しろ。このおれの部下に弱卒はいらん!」

 

 モーガン大佐の命令で自害をしようとする一般海兵たち。

 暴政極まりない。

 

「どうかしてるぜ。この軍隊は…!」

「ギィ!」

 

ゾロが動くより早くルフィは駆け出し、元凶であるモーガンへと殴り掛かる。

 

「おれは海軍の敵だぞ。死刑にしてみろ!」

 

 流石は大佐か。

 ルフィの拳を斧できっちり防いでいる。

 

「ルフィさん!こんな海軍潰しちゃえ!」

 

 コビーの叫びが引き金となったのか上着を脱ぎ棄てモーガン大佐は戦闘態勢に移る。

 

「身分も低い奴称号もねェやつらは…!このおれに逆らう権利すらない事を覚えておけ!おれは海軍大佐斧手のモーガンだ!」

「おれはルフィ!よろしく」

「死ね」

 

 ズパッ

 

 モーガン大佐の振り抜いた斧手がフェンスを切り裂き、塀まで切り裂く斬撃を飛ばし、跳んでかわしたルフィの両足がモーガン大佐を蹴り飛ばす。

  

「小僧、死刑だ!」

「死ぬか」

 

 振り下ろされる斧手をかわして、ルフィの蹴りがモーガンの頭を捕らえる。

 実力の差は歴然だった。

 

「何が海軍だ。コビーの夢ぶち壊しやがって…」

 

 倒れたモーガンへ拳を振り下ろそうとする直前

 

「待てェ!」

 

 ガン

 そのまま殴った。

 

「待てっつったろアホかこのォ!」

 

 コビーに銃を突きつけた嫌な奴がいた。

 近づいてきてるのに全然気が付かなかった!

 

「こいつの命が惜しけりゃ動くんじゃねェ!ちょっとでも動いたら撃つぞ!」

「ギィ!」

「動くなつったろ!ゾロと麦わらと人形!」

 

 ルフィ達に気を取られているうちに近づいてどうにかしようという狙いは封じられた。

 こういう時はよくいない者扱いされるのに……。

 

「ルフィさん!ぼくはルフィさんの邪魔をしたくありません!死んでも!」

「あぁ…知ってるよ」

 

 ルフィはししっと笑って右腕を構える。

 

「諦めろバカ息子。コビーの覚悟は本物だぞ!」

「おいてめェ!動くなつったろ!撃つぞ!よし撃つ!」

「ルフィさん後ろ!」

 

 コビーの叫びに振り向くと倒れたはずのモーガンが立ち上がっていた。 

 

「おれは海軍大佐だ!」

 

 だけど心配はいらない。

 

「ゴムゴムの (ピストル)!」

 

 伸びた右腕に殴り飛ばされる嫌な奴と

 

「ナイス。ゾロ」

「お安い御用だ。船長(キャプテン)

 

 斧を振りかぶってたモーガンはゾロに倒された。

 

 海兵たちから湧き上がる歓声がモーガン親子の圧政の終わりを告げていた。




倒れているうちにとモーガン親子は縛られ牢へと運ばれて行く。
基地を任されるほどの強さを持っているのになぜか自分を信じられてないような不思議な男だった。
「どうしたんだウタ?」
なんでもないと返していつものポジションへと戻る。
自分を信じれる彼と自分を信じれなかった男の差だろうか?
温度を感じれない身体にもわかる温度があった。
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