麦わら帽子とぬいぐるみ   作:緋色

7 / 10
ウタちゃんはほぼ知らないと思う


道化のバギー

☆1

 

――海上

 

 海軍に入隊したコビーと別れた三人は意気揚々と出港し――漂流していた。

 

「あー腹へったー」

「だいたいお前が航海術持ってねェってのはおかしいんじゃねェか?」

 

 海に出るものとしては反論できない正論である。

 

「おかしくねェよ。漂流してたんだもんおれは!ウタも航海術学び始めた所だし」

「キィ…」

 

 そして付け焼き刃が通じるわけもなかったので漂流する羽目になっている。

 現在位置どこなんだろうか?海図を見てもよくわからないわけで。

 

「行き当たりばったりか」

「お前こそ海をさすらう賞金稼ぎじゃなかったのかよ」

「そもそもおれは賞金稼ぎだと名乗った覚えはねェ。ある男を探しにとりあえず海に出たら自分の村へも帰れなっちまったんだ。仕方ねェからその辺の海賊船を狙って生活費を稼いでいた…それだけだ」

「ギィ!」

 

 あんたも持ってないんかい!

 

「何だお前迷子か」

「その言い方はよせ!」

 

 腕っぷしと航海能力を兼ね揃えたタイプとは思ってなかったけど戦闘特化だけなのは困ったものだ。

 ルフィと同じタイプだったとは……。

 これではひとつなぎの大秘宝(ワンピース)どころか偉大なる航路(グランドライン)に行けるかも怪しい。

 

「まったく…!航海もできねェなんて海賊が聞いて呆れるぜ!"偉大なる航路(グランドライン)"も目指し様がねェ。早ェとこ『航海士』を仲間に入れるべきだな」

「あと『コック』と『音楽家』とさァ…」

「ギィ!」

「ウタは音楽家だけど何人いてもいいだろ?」

「んなモンあとでいいんだよ!」

 

グウゥゥゥ

 

「「腹へった」」

 

 この様子だとコックも早めに必要そうである。

 コビー君と航海してた時は苦労しなかったし、彼優秀だったんだな…。

 

「お、鳥だ」

「でけェなわりと…」

「食おう!あの鳥っ!」

「?どうやって…?」

「おれが捕まえてくる!任せろ!ゴムゴムのロケット」

 

 飛んでいた鳥目がけて飛んで行くルフィ。

 着地考えてなさそうだけどゾロもいるし海に落ちても大丈夫だろう。

 

「なるほどね…」

 

 パクッ

 

「キィ?」「は?」

 

 ルフィは鳥に咥えられて何処かに飛んでいく。あの鳥そんなに大きかったの!?

 

「ぎゃーっ!助けてーっ!」

「ギィー!」

「あほー!一体何やってんだ てめェはァ!」

 

 ゾロが必死に漕いで追いかけるが、私は邪魔にならないよう見失わない事にだけ注意する。

 

「おーい止まってくれェ!」「そこの船止まれェ!」

 

 が、すぐに溺れる三人が進行方向に現れた。

 

「ん!?遭難者かこんな時に!」「ギィ!」

「船は止めねェ!勝手に乗り込め!」

「な!なにいっ!?」

 

ザザーッ

 

「へェ!よく乗り込めたな」「キィ」

 

 結構なスピード出てたのによく飛び乗れたなこの三人。

 下手すれば大怪我してたと思う。

 

「ひき殺す気かっ!」「なんて乱暴な奴だ…!」「おい!船を止めろ!おれ達ァ あの海賊"道化のバギー"様の一味のモンだ!」

「あァ!?」

 

☆2

 

「あっはっはっはーっ」「あなたが"海賊狩りのゾロ"さんだとはつゆ知らずっ!失礼しました!」

 

 こいつらが弱いのかゾロが強いのか。

 ゾロが強いのかな?

 瞬殺された三人組に櫂を任せて船は進む。

 

「てめェらのお陰で仲間を見失っちまった」

「キィキィ!」

 

 ビシッと腕で指し示すのはルフィが飛んでいった方向だ。これで伝わるといいけど…。

 

「ん?そっちの方角か?そっちにまっすぐ漕げ。()()()の事だ。陸でも見えりゃ自力で下りるだろう――で?なんで海賊が海の真ん中で溺れてたんだ」

「それだ!よく聞いてくれやした!」

「あの女!」「そうあの女がすべて悪い!」「しかもかわいいんだけっこう!」

 

 ――その頃ルフィ

「あの鳥落しやがって――あ、鳥に逃げられたな」

「親分!」

「ん?」

 

☆3

 

 ちょいちょい話がそれるので要約すると女に騙されて船ごと宝を奪われて、海に沈んだらしい。

 

「天候まで操るのか…海を知り尽くしてるなその女。航海士になってくれねェかな」

「キィ~キィ~」

 

 相手が海賊とはいえ海に沈めて逃げてるから信用できなさそう。

 

「悪ィがあいつじゃねえから何言ってんのかわからん」

「ギィ!」

 

 様子を見ていた三人組は私に興味を持ったようだ。

 まあ動く人形とか珍しいよね。

 

「さっきから何ですかその動く人形?」

「仲間だ。おれもよく知らん」

「あ、そうすか。ともかくあいつは絶対探し出してぶっ殺す!」「それより宝をまずどうする」「そうだぜ。このまま帰っちゃバギー船長に…!」

 

 バギー?はて?どっかで聞いたような?

 

「そのバギーってのは誰なんだ?」

「おれ達の海賊船の頭ですよ。"道化のバギー"を知らねェんで?"悪魔の実シリーズ"のある実を食った男でね。恐ろしい人なんだ!」

「…悪魔の実を…?」

 

☆4

 

――とある港町

 

「着きましたゾロのだんな!」

「何だ…がらんとした町だな。人気(ひとけ)がねェじゃねェか…」

 

 隠れて様子をうかがってるわけでもなく本当に一人もいない。

 建物とかそこまで古くないし人がいなくなったのは最近だろう。

 

「実はこの町は我々バギー一味が襲撃中でして」

「どうするバギー船長に何て言う?手ぶらだぜおれ達」

「そりゃ、あった事をそのまま話すしかねェだろ!どうせあの女は海の彼方だ」

「じゃあ、とりあえずそのバギーってのに会わせてくれ。ルフィの情報が聞けるかも知れねェ」

 

ドゴゴゴゴゴゴゴォン

 

「なんだ!?家が爆発した!?」

「バギー様名物のバギー玉です!下手な街なら一発で消し飛ばす特性の大砲弾です!」

「とんでもねェな。あっちにバギーってのがいるのか」

「キィキィ!」

「何が言いたいのかわからないが行くか」

 

 そう言って猫掴みして運ばれる。

 いつも肩か頭にしがみついてるし、他の人はよく抱いて運ぶので逆に新鮮な運ばれ方だ。

 

「隙だらけだ!」

「バレバレだ」

 

 チャンスだと思ったのか不意討ちしようとした三人組を伸して、ゾロと共に破壊痕の根元へ向かう。

 近づくにつれて海賊たちの騒ぐ声が大きくなる。宴でもしているのだろうか?

 

 撃ーてっ撃ーてっ撃ーてっ

 

「なんの声か知らんが屋上から聞こえるな。ここまで来ても見当たらないし上にいればいいんだが…」

「キィ~」

 

 駆け上った屋上には大砲を向けられた檻に入ったルフィと海賊に襲われてる女性がいた。

 …どういう状況?

 

「女一人に何人がかりだ」

「え…」

「ウタァ!ゾロォ!」

 

 海賊を押し返したゾロの実力とルフィが出したゾロの名前に海賊たちに動揺が走る。

 

「怪我は?」

「…えぇ平気…」

「やー、よかった!よくここがわかったなァ!早くこっから出してくれ」

「お前なァ何遊んでんだルフィ…!鳥に連れてかれて見つけてみりゃ今度は檻の中か…アホ!」

「ギィ~!」

「負けてねェよ!騙されただけだ!」

「ギィギィ?」

「海賊じゃなくてそこのそいつ」

 

 ルフィが指し示すのは海賊に襲われてたオレンジ髪の女性のようだ。

 

「あいつの言ってた仲間って…"海賊狩りのゾロ"の事…!?あの動いてる人形は何?どうなってんの…!?」

 

 ルフィを騙した女性がルフィを守ろうと大砲の導火線を消していた状況の方がどうなってるのか知りたい。

 こっちの状況は後で聞くとして赤鼻の男がゾロに向かって進み出る。

 

「貴様ロロノア・ゾロに間違いねェな。おれの首でもとりに来たか?」

 

バギー海賊団船長

道化のバギー

 

「いや…興味ねェな。おれはやめたんだ海賊狩りは…」

 

 やっぱり今はゾロの方が有名なようだ。

 すぐにルフィの方が有名になると思うけど!

 

「おれは興味あるねェ。てめェを殺せば名が上がる」

「やめとけ。死ぬぜ」

「うおおおやっちまえェ船長!ゾロを斬りキザめェ!」

「本気で来ねェと血ィ見るぞ!」

「…!そっちがその気なら…!」

 

 ズバッ

 

 一瞬でバラバラに切り刻まれる赤鼻。

 口先だけだったようだ。

 

「うわっ!よえーなあいつ!」

「…うそ」

「…何て手応えのねェ奴だ…」

 

 へっへっへ…

 にやにやと笑う船員たち。―何かがおかしい。

 

「おいゾロ!早くこっから出してくれ」

「ああ。こりゃ鍵がなきゃ開かねェぞ。この鉄格子はさすがに斬れねェしな」

「ギィ~?」

「どうしたウタ?何が変なんだ?」

 

 にやにやしていた海賊たちが堪え切れなくなったかのように堂々と笑い声を響かせる。

 そう言えば気になる事を海賊たちは言っていた…。確か――

 

『おれ達の海賊船の頭ですよ。"道化のバギー"を知らねェんで?"悪魔の実シリーズ"のある実を食った男でね。恐ろしい人なんだ!』

 

 あ、マズイ!赤鼻は能力者だ!

 

「何がそんなにおかしい!大人しくこの檻の鍵を渡せ!おれはお前らと戦う気はない!」

「ギィー!」

 

ドスッ

 

 気が付くのが遅かった…。

 宙に浮いた右手がゾロを後ろから刺し貫いた!

 

「くそっ!何だこりゃあ一体…!手が…!浮いてやがる…!」

 

「バラバラの実…!」

 

 ゆらりと斬られたはずの赤鼻の身体が浮かび上がり斬られる前の姿に戻る。

 

「それがおれの食った悪魔の実の名だ!おれは斬っても斬れないバラバラ人間なのさ!」




キィ~キィ~♪
「おいルフィ」
「どうしたゾロ?」
「なんだこいつ」
「ウタだぞ?」「キィ?」
「違う!なんでこいつはおれの頭の上で鳴いてるのか聞いてるんだ!」
「気に入られたんだろ?嫌いな奴からは逃げるし」
「キィ~?」
「いやわかんねェよ?」
「『嬉しい癖に~』だってさ」
「いや別に」
「ギィ!」
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