おのれ地球人め(殴。
監視室にて、ストーム1とマーシア准尉のやり取りを聞いていたプロフェッサーは最初こそ信じられなかった。
彼女の隠している真実を掘り当てる為、ストーム1を同室にブチ込んだ結果、驚くべき話が飛び込んできたのだから。
「馬鹿な……彼女がプライマー代表で、しかも未来から来ただと?」
超技術や文明が地球外にいたというだけでも驚愕なのに、そこにタイムスリップ要素まで入れられるとは。
流石のプロフェッサーも予想外で、だが現実として受け止める。 他に聞いている者……情報部と総司令部は信じられない、出鱈目だと苦笑しているが、プロフェッサーは違う。
「彼女の言う事が真実ならば、合点がいく部分が幾つもある……地球上での運用が可能な兵器の提案は最初こそプライマーの技術を噛み砕いた物かと思っていたが勘違いだった」
マーシア准尉と直接の関わりを続けてきたからこそ、プロフェッサーは唾棄して跨げない。
偏見と偏在の渦に篭もらず、時に現場を見た彼だからこそ辿り着ける思考と言えよう。
ゲーム的には止むを得ず現場……銃を持ち戦場でストーム1と共に駆けていたが、この世界線ではより深い知識を求めて251に新兵として潜入していた。
そういった行為を情報部、諜報員、スカウトに頼らず自ら体を張った彼は頭が良いだけでなく行動力もあるのだろう。
そんな彼の思考は、他の者がノイズを出そうと流される事なく続く。
「違ったんだ……未来、いや別の世界線でEDFとプライマーは恐らく戦争になった。
その最中に見た、人類の叡智を彼女は形にしてくれたんだ。
明らかなエイリアンテクノロジーもあれば、既存の技術の延長線上にあるものまで有ったのは、これが理由だったんだ」
他の者が聞いたら否定されそうだが、否定するだけなら簡単だ。
それを肯定出来る強さも兼ね備えるプロフェッサーだからこそ、その域に、正解に辿り着く。
「総司令部に繋いでくれ。 参謀と話す」
その上で彼が下す判断は……。
ーーーーーーEDFーーーーーー
『これから貴方の担当となります。 宜しくお願いします』
少佐の部下が彼に、ストーム1に付く。
無線越しの監視員とはいえ、同伴している様に感じて我、面白くない。
むすっ、と頬を膨らませてそっぽを向く。
……向きつつ傾聴する。
「少佐の部下か。 宜しく頼む」
『はい!』
「早速だが、俺と准尉は何処に拉致されてるんだ」
全くである。
またヘリに放り込まれての移動だ。
3年前の狼藉よりマシだが、やられてる以上は気持ちの良いものでなし。
『第228駐屯基地です』
ベース228。
我とストーム1の始まりの地。
山に囲まれた田舎の基地であり、それは今も変わりない。
地下に施設が広がるのはEDF基地共通であるが、地上にも土地を確保しているのが都市型である251と違う点だな。
悪く言えば、衛星からも位置を確認し易い事、よく言えば周囲に配慮しなくて良いからヘリの離着陸を出入口正面で行える。
それに空輸したばかりのビークルを野晒しに出来る。
それに、あの巨人……バルガもいる。
実は元はEDFの開発ではなく、作業用クレーンと知った時は大層驚いた。 そんなモノに怪生物と同胞は負けたのかと。
とはいえ、E1合金製は強力で歩兵の兵装では太刀打ち出来なかった。
前の世界線でコレの存在を知った同胞は警戒し、田舎の基地の占領を続けた訳だ。
そんな元クレーンのバルガを何故、EDFが所有していたのかというと、工事で使うには問題が色々あったらしく、そんなこんなでEDFが貰ったそうな。
今は戦争は起きてないし、アーケルスをけしかけてもない。
だが、その質量から兵器としての有用性を評価され兵器転用が進んでおる。
ここのオリジナル機はテストベッドとして回収、輸送されたと記憶するが、パワーアップして戻されてるとも聞く。
見れるだろうか。 ワクワク。
「また其処に行くのか……理由は?」
『監視し易いのと、"何故か"准尉の周辺で起きる怪奇からの被害を抑えられる為ですね』
「成る程。 俺達は左遷か」
『これも人類の為です』
「そうだな、一部の人類の為だ」
ストーム1、カリカリしておる。
少佐の部下相手に言っても仕方ないだろうが、専属オペレーターとなった今、愚痴のにとつやふたつは垂れないのだろう。
『そう言わず。 それに後から軍曹達と、スプリガン、グリムリーパーが来ます。
グリムリーパーは軍曹と同じく228に勤務していた事がある様ですね、ご存知ですか?』
「いや。 だが、なんだ……俺達だけじゃないのか、左遷組は」
『あまり悪く言わないで下さい。 彼等は貴方達の監視も兼ねてます、貴方と准尉が大人しくしてくれるなら、また復帰のチャンスがあります』
「EDFの1兵士に変わりない」
『昇進すれば待遇は変わりますよ』
「そんなもの何になる。 というより3年間、251の兵士は昇進の話が来なかったぞ。 只野なんて二等兵のままだ」
『それは……228事件の影響で』
「その228に舞い戻る。 これは反省を促してるのか、それともまたやらかせ、と言っているのか」
『……とにかく。 そこで大人しくして下さいね、今度こそ』
「准尉にも言ってやれ」
振られた。 名指しで此方に声が飛ぶ。
『大人しくして下さいね、マーシア准尉?』
「……はい」
『よく出来ました』
おのれ子供扱いしおって。
いや未だ子供の姿だが、3年前より成長したのであるぞ。 背とか、胸とか。
プロポーションは素晴らしくなってきたと自負しておる。 少佐も、その部下も会ったことは無いが、我の方がきっと良いに決まってる。
ストーム1も、選ぶなら我と言うだろう。 何かと縁があるからな。
「良く出来たな、マーシア?」
ストーム1にも子供扱いされた!
我、屈辱ッ!
この恨み、近いうちに晴らす!
『それとプロフェッサーも228に来る予定です』
「何?」
プロフェッサーが?
我の絡みである事は間違いない。 228に移送したのも、ひょっとしなくてもプロフェッサーの仕業である。
『マーシア准尉が技研に貢献していたのは知っています。 その絡みでしょう』
「それだけとは思えんが……とにかく、皆に会わねば進まないな」
『間も無く228です。 準備は出来ました?』
「何も。 装備一式を取り上げられたからな」
『文句ばかり言っても仕方ないですよ』
ヘリの窓から外を見やる我。
自然に囲まれる中、それはあった。
金網フェンス、コンクリ壁に囲まれた小規模な人工物の密集地。
ヘリはその中にある、ヘリポート目掛けて降下していき───。
「落ちろストーム1!」
「ぐはっ!?」
『ストームワーンッ!』
恨み晴らし、ストーム1を蹴り落とす。
なに。 強靭な肉体を持つEDF隊員は、どんな高所から落ちても耐えられる筈だ。
我? か弱い少女ぞ。 無理は出来んのだ。
ーーーーーーEDFーーーーーー
『早速騒がないで下さい!』
「殺す気か!? 子供の悪戯で済まないぞ!」
「ふんっ。 あの程度の高さで死ぬ様ではEDFじゃないわッ!」
「なら"准尉"も落ちてみるか?」
「わ、我はか弱い少女」
「こんな時に地球人アピールか」
『逆にストーム1は人じゃないみたいな言い方ですね』
蹴り下ろした事をオペ子とストーム1に咎められつつ、我らは228の奥へ。
プロフェッサーが待機しているという。 またいつもの事だと気楽に思いつつ、懐かしくも慣れた地下道を歩む。
「相変わらずデカい地下だ、軍用とはいえな」
「251もそうだけど。 何処もそうなの?」
『EDFの基地の多くは地下施設を備えますが、機密情報なので詳しくは教えられません』
歩みつつ、我もオペ子に質問。
専属といっても我とも繋がっておる故に。
「一方、プロフェッサーの要件は?」
『それも詳しくは。 ただプライマーについての質問じゃないでしょうか。
彼は先程、総司令部参謀と話したそうです』
「会ってからの楽しみね、了解」
また我を試す真似か。
だが今度はストーム1同伴。 誘導兵がいる部隊は恐ろしいのだ、思い知れ。
やがて一室に通される。
コンテナが積まれた倉庫よりマシだ。
逆にそれ以外の部屋があったのか。 いやあるか。
「今、着いたばかりか」
「ヘリから蹴り落とされてな」
「我が蹴った」
「マーシア、反省して頼むから」
笑顔で反省の色なしの我に懇願するストーム1。
戦時とは違う声色に我、ゾクゾク。
対してプロフェッサー、表情変えず眼鏡クイクイ。
「まぁ良い。 時間には間に合った」
「おいツッコミは?」
「ストーム1、哀れ」
プロフェッサーも容赦ない。
時間が惜しいのか。 ならさっさと本題に入って欲しいところだ。
「ここに来る前。 君達を収監、監視した時、マーシア准尉とストーム1の話を聞かせて貰った」
「さすがだな、良い御身分で」
「我、同意」
まぁそんなトコだと思った。
ぷらいばしぃ、なんて無い。 我は特に。
プロフェッサーは構わず続ける。
「聞いていたのは、情報部と総司令部もだが……誰も信じなかった。 参謀に直接言ってもな。 ストーム1、君はどうだ?」
「信じる」
即答。 我、なんだか恥ずかしい。
信用してくれた相手を蹴ってしまったとは。
「マーシアが技研に協力した挙句に嘘を吐くメリットが分からん」
「そうか。 私も同意見だ。
参謀は聞く耳を持たなかったが、未来云々について興味がある、なので直接会う機会を設けた」
ううむ。 我、勇気を振り絞ったのに。
上層部は信じていないか。 無理もないが。
タイムマシン。 我々の力を持ってしても簡単ではない超技術。
それを地球人に理解しろというのは酷だ。
それでも味方が出来た。 これは大きい。
「分かった。 話そう」
我、改めて説明。
何故、プライマーが"今"の地球に来たのかを。
この時間より遥か先の未来、火星にて栄えた我らは地球にて文明の痕跡を発見した。
興味を持ち、タイムマシンで過去へ飛び、地球人と接触。
そこで文明を授け、様を見る旅行を楽しんだ。
ところが、時間旅行は大きな危険を伴う事を遅れて知った。 過去で起こした小さな事が、未来を大きく変えるストームとなる事を。
それを知る時には既に遅く、地球人は我らの船を発見してしまった。
その瞬間、地球人は火星文明を脅かす存在となったのだ。
知っただけ。 されど知られた。
我々と、この地球との時間差は大きい。 それだけに、それだけで故郷への影響は計り知れない。
距離は関係ない。
可能性がある限り、何としても地球人を滅ぼさねばならない。
例え失敗しても、タイムマシンで望む世界が手に入るまで何度でも。
だから戦争を……というのは、別の世界線の話。
どう言う訳か知らぬが、我は地球人の姿に。
そして失敗を踏まえ別の路線にした。
地球人と火星人、戦争ではなく平和に解決すべきだと。 我々マーシアンの都合を一方的に押し付けた駆除は止めるべきだと。
「なるほど」
プロフェッサーは長々とした話を真剣に聴いてくれた。 嬉しい。
3年前は問答無用で拉致監禁する酷い奴だと思っていたが、他より理解してくれる。 中々に見所のある地球人。
多分だが、大戦のあった世界線で技術進展や裏の裏をかく真似、タイムマシンの存在を察知したのは彼の影響ではなかろうか。
「今の歴史は何かが変わった結果なのか、そうでないのか、我々に知るすべはない。
果たして未来は……」
「それは我も分からぬ。 このような体になってしまったし、タイムマシンを再使用するリスクはもう犯せない。
というか我、同胞に連絡は出来ても、会ったら地球人と間違えられそう。 かつての覇気はない故に。
出来れば、この世界線で丸く収めたい」
またやり直せば良い、なんて考えは駄目だ。
他の世界線に託すのも。
逆にそんな考えだったから、タイムマシンの存在を察知され、最後は地球人に根元から……母星ごと滅ぼされたのだ。
平和的に行くなら、越した事はない。
「協力しよう」
「賛成だ」
プロフェッサーとストーム1は言う。
再び立ち上がる姿は、大戦の時と見劣りしない。
頼もしい。 思えば3年前もそうだったかな。
「緊張は高まっているとはいえ、君は平和的模索を続けてきた。 仲間にも頼り切れない、EDF上層部も信じない……それでもな」
「そうだ。 命に関わる異文化交流は勘弁して欲しいが、出来る事はしていこう。
そしてここからは、俺とプロフェッサーは君の仲間だ。
そして、EDFは背中を見せない。 仲間を見捨てない。 そうだろ?」
うっうぅ……ストーム1。 プロフェッサー。
我、涙腺決壊寸前。
だが堪える。 せめて威厳を。 子供扱いはイヤ。
「よく頑張ったな、マーシア。 ここからは俺らにも頼ってくれ」
ストーム1に頭をひとなで。
もう駄目だ。 我、涙腺崩壊。
「うわあーーーんッ! ストームワーンッ!」
「まだ子供だな」
ストーム1に抱きつき、泣き顔を隠す我。
おのれ。 おのれ地球人! 何とでも言うが良い!
軍曹チーム他
(空気……)
作者(ハヤモ)
やべ、今後どうしよう(殴。
リアル問題もあって、どこまで続くか不安定。