かの者はやり直したい!(完結)   作:ハヤモ

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サイレンがグラウコスに変異、逃亡した後。
空軍の攻撃機が追跡中。 そして。

小出しが過ぎると話数が増え、内容も薄味になるかもと連戦して貰います。
ストーム1がいるから大丈夫でしょう(殴。


25.スキュラ

燃えるサイレンこと、グラウコスが逃亡。

それを追う空軍KM6戦闘爆撃機は、一定の距離を維持しつつ追跡中。

今までは空を飛ぶ敵といえば、蜂の姿をした飛行型、ドローン、有翼型エイリアンであった。

後はクラーケンと取り巻き、ソイツらから射程のある長距離攻撃を撃たれた事はあれど、何とか出来た脅威であった。

だが今回は規模が違う。

まさか空飛ぶ怪生物がいようとは。

移動時の風圧だけで機体が吹き飛び墜落の恐れがある程で、迂闊に寄れないばかりか、攻撃も出来ない。

そうしてレーダーでグラウコスとの距離に気を付けつつ、目視でも確認するパイロット。

遠くで燃える龍は、その火炎をボトボトと地表へ行儀悪く落としまくっていた。

さも焼夷弾を撒き散らしている状況。 地上に住む民間人のパニックは広がるばかり。 大空襲だ。

 

 

「チッ! 上層部め、これなら素直にストーム1に従っていれば良かったぜ!」

 

 

後悔先に立たず。

過ぎた事より今。 やるべき事をやる。

移動だけで被害が拡大するグラウコス。

地球という狭い星に80億人もがひしめきあうのだ、奴が本気を出して市街地を攻撃し始めれば、アッサリ何億もの人が文明ごと燃やされてしまうだろう。

この危機的状況は、総司令部も把握。

動かせる全戦力を投入する勢いだ。

やがてグラウコスは海の方へ行き、高度を下げていく。

 

 

「海水浴ってか。 流石に熱いのか?」

 

 

パイロットは言うが、海には入らなかった。

代わりに地表にポッカリ空いた大穴に向かう。

それはグラウコスの巣穴にも見えた。

グラウコスは傷付いた身体を休める様に、その穴へと入っていく。

それを確認したパイロットは即連絡。 座標を伝え、後はストーム1達陸軍に任せる。

 

 

「奴は巣穴に入った。 地底探検は歩兵共に任したぞ。 以上だ、帰投する」

 

 

場所は知れた。

後は陸軍に任せる。 地下に空軍は入れない。

海の近くとはいえ、地下じゃやはり、海軍のサブマリンや潜水母艦も役立たない。

後は陸軍頑張れよと他人事にし、パイロットは旋回、基地に進路をとった時。

 

 

「なんだ、霧が出てきたぞ」

 

 

海岸から徐々に濃い霧が広がっていく。

それは地表を侵食する様に瞬く間に視界を奪い、直ぐに空からでは地上の様子が全く見えなくなる程。

 

 

「フライトに支障が出る、スロットルを上げて、さっさと帰るか」

 

 

深く考えず、軽い気持ちで戦闘機は去っていく。

その霧の異常性に疑問を持つ事なく……。

 

 

 

 

 

ーーーーーーEDFーーーーーー

 

 

 

 

 

『グラウコスの位置を特定しました』

 

 

我ら、戦略情報部少佐の話を聞く。

失敗の悪怯れ様なし。 おのれ地球人。

EDFには更に痛い目に遭わせてやる。

我、憤慨する間も少佐と本部の会話は続く。

 

 

『海の近くです。 ただし地下に巣穴があるらしく、そこに潜っていったとの事。

空軍、海軍の戦力を周辺空海域に集結させますが、巣穴への突入は歩兵隊のみとなります』

 

『巣穴が判明しているなら、そこに爆弾を放り込んで済ませないのか?』

 

『残念ながら。 スカウトが先行調査したところ、曲折している事が分かっています。

これでは軽い爆風を浴びせるだけでしょう』

 

『分かった。 228への増援歩兵部隊は其方に回す』

 

『動かせる輸送機ノーブルを全機使用、バルガ含めたビークルを現地に投下。

また総司令部の指示で、ストーム1に砲兵隊、空海軍、衛星砲、ミサイル基地、ビークルの追加要請等を許可。

加えて彼専用の機動性を高めた青いEMCも用意しました。

先進科学研の提案で、チラン爆雷を搭載した潜水母艦パンドラも参戦します』

 

「椀飯振る舞いだな」

 

 

それは助かる。

ストーム1に権限が戻って良かった。

ドローンだけでは厳しい。 地下は仕方ないが、地上戦は苦戦を強いられる。

 

 

『グラウコスは、それだけ脅威なのです。 ストーム1に頼るのが得策と判断しました。

またマーシア准尉の話を信じるならば、グラウコスを守る海洋生物と交戦する可能性があります』

 

「なんだそれは」

 

『スキュラと呼称します。 見た目は魚人、怪生物程ではありませんが大型です。

主な活動拠点は海ですが、陸でも活動可能。

体表面から水蒸気を出し、霧を発生させ視界を奪い攻撃してきます。

空軍からの報告では、既に霧を確認しているとの事。 警戒して下さい』

 

「厄介だな」

 

『ですが、1番の脅威は毒霧です』

 

「毒を吐くのか!?」

 

 

そう。 これぞ嫌がらせ。

サイレン……グラウコスとスキュラは共生関係。

傷を癒す為、休眠を取る無防備な間はスキュラが守るのだ。

霧を出し、毒もある。

場合によってはドローンやアンドロイド、飛行型も投入して作戦妨害だ。

 

 

『はい。 色の付いた霧を体表面から出すとの事ですが、それは生命のみならず金属にも被害を出す腐食性の猛毒。

戦車の装甲も無事では済みません。

視界が悪くても、レーダーを見れば大凡の位置を把握出来ます。 戦う際は距離をとる事を兵士に伝えて下さい』

 

『分かった。 何にせよ、グラウコスを地底から追い出さねば始まらない。

よし。 経験のある228隊員をメインに地下に突入、他の者は地上で待機。

スキュラを確認する様なら、先に駆除。 今度こそ奴の息の根を止めてやる!』

 

 

また息巻く本部。

上手くいくと良いがね。

戦争は、ストーム1だけで何とかなる訳ではないのだから。

 

 

 

 

 

ーーーーーーEDFーーーーーー

 

 

 

 

 

「地底探検にも嫌気が差してきたぜ!」

 

 

地底を進みつつ、叫ぶ軍曹の部下。

251の地底探検茶番劇の経験者としては、どうせまた碌でもない目に遭うと思っていた。

 

 

「それだけ信頼されているという事だ」

 

 

冷静な部下は言うが、対して1番若い部下はビビるばかり。

 

 

「ですが、グラウコスがいると分かっている地底に歩兵が行くなんて、自殺行為じゃないですか!」

 

 

続けてモブ隊員、只野二等兵が泣き声。

 

 

「そうですよ! 歩兵火器とデプスクロウラーで何とかなる相手じゃないでしょう!

軍曹達は原子光線銃ブレイザーがあるといっても、それだって怪生物の生命力相手じゃ効果薄いですって!」

 

 

最もである。

グラウコスはサイレンの凶悪化と聞く。

サイレンだけでも凄い戦闘力で、並大抵の兵器では太刀打ち出来ないというのに、歩兵隊と地底戦タンク、デプスクロウラーでどうにかなるものではない。

 

 

「狼狽えるな!」

 

 

軍曹が一喝。

 

 

「グラウコスはストーム1による傷を癒す為、恐らく休眠状態だ。 その間に工兵隊が爆弾を仕掛け、爆破する。

もし失敗する様なら、起きて地上へ行くだろう。 後は空の下で待機している陸海空の総攻撃に晒して討伐する」

 

 

そう。 サイレン、グラウコスは無敵ではない。

通常兵器であっても、ひたすら攻撃を受ければダメージが蓄積され、その傷を癒す為に休眠するのだ。

その無防備な状況を利用して、EDFは戦力を集結、寝ているグラウコスの周囲や身体に爆弾を設置して木端微塵にしてやるのだ。

失敗しても地上部隊が何とかする。 ストーム1も陸海空軍と連携が許され、共に待機中。

地底に今潜っているのは、工兵隊と護衛の軍曹チーム、グリムリーパー、モブ隊員らだ。

 

 

「爆弾はC70ですか?」

 

「高圧気化爆弾だ」

 

「えっ!? 我々は大丈夫なんですか!?」

 

「人類最大の脅威と心中か。 笑えるな」

 

「面白い。 楽しめ」

 

 

ここは地下である。

EDFは地底でも平気でランチャーだのグレネードだの火炎放射器だの使用するが、高威力の爆弾となると、いよいよ危険ではないか。

天井が崩れて生き埋めになったら最悪だ。

だが軍曹は安心させるべく答えた。

 

 

「我々の安全を確保してから起爆する。 流石に自爆はしない」

 

「良かった。 それを聞いて安心しましたよ」

 

「上手く行けば良いですが」

 

「大将もいる。 最後は何とでもなるさ」

 

 

地底を進む歩兵隊。

例によってデプスクロウラーが大型ライトで前方を照らしつつ、空洞を進む。

今回はストーム1が使用したモノより強化され、武装が異なるⅢ型である。

歩兵の盾となり、頼れる火力ともなろう。

そしていざ実戦とばかりに、奥から響き渡るゴロゴロという音が。

 

 

「何の音だ?」

 

「ッ!? γ型だ撃てッ!!」

 

 

ダンゴムシなγ型が転がってきた!

このままではボーリングのピンの如く弾き飛ばされてしまう。

軍曹が叫び、各々が持つ歩兵火器のトリガーを引きまくる。

数の暴力、その勢いを止めていくも捌き切れない歩兵隊。

グリムリーパーが出ようとするが、先に動くは地底歩行タンク、デプスクロウラーⅢ。

 

 

「任せろ!」

 

 

ここでデプスクロウラーⅢの左右に装備されたランチャー、ラピッドランチャーがマシンガンの如き連射で撃ちまくられた!

群れに向かい着弾しては爆発爆音祭り。

弾け飛び続けるγ型。 形勢逆転か。

 

 

「ロケランが、あんなにも連射出来るとは」

 

「楽勝だな!」

 

「いや、よく見ろ。 見た目は派手だが威力は低い様だぞ」

 

 

軍曹に言われ見やる。

確かに、爆発でγ型は吹き飛んでいる。 だが吹き飛びやするも、その命は続いており、傷付いた身体で体勢を整えると、恐る事なくデプスクロウラーに再度押し寄せる。

 

 

「歩兵の援護が必要です!」

 

「その為に我々がいる」

 

「楽は出来ねぇな、ちくしょー!」

 

 

軍曹チームは再びブレイザーで光線を放ち。

モブ隊員らはスローターショットガン、火炎放射器を放ち駆除しつつ前進していく。

グラウコスが回復する前に辿り着きたいが、まだ時間が掛かりそうだ。

だがそれは地上でも似た状況であった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーEDFーーーーーー

 

 

 

 

 

「霧が濃いぞ、気を付けろ!」

 

「レーダーでは敵を捉えています!」

 

「慌てて撃つなよ!」

 

 

隊長を示す赤ヘルレンジャーが叫び、ウィングダイバーは砂地に足をつけ周囲を警戒。

フェンサーも特殊合金の盾、ディフレクション・シールドを構えつつ警戒。

その隣近所には対空戦闘用カスタムのコンバットフレーム、ミサイルガン。

他にも新鋭機の青いコンバットフレーム、エイレンⅡや旧式のB型も展開。

前方には皆の盾となる陸の要塞な重戦車タイタン、更に前にはモブ隊員が乗るアーマメントバルガ、ウォーバルガ。

その隙間を埋める様に新鋭戦車バリアスがいる他、旧式だが改修されたブラッカーも混ざる。

後方支援として、距離を置いて対空戦闘用にネグリングやケブラー、メナス電磁投射砲を搭載した自走レールガンに原子光線砲を搭載した大型車両EMCもいた。

115ミリ長距離榴弾砲を搭載したブラッカーSPCもいる。

陸戦の切札、特殊装甲板に覆われ大型火器を搭載した歩く要塞BMX10プロテウスもいる。

狙撃部隊ブルージャケットもいるが、濃霧では狙い難いだろう。 それは皆も同じだが。

ヘリは濃霧の影響で飛んでいない。 そうでなくてもグラウコスが出て来たら、風圧だけで撃墜されそうなので。

だが高高度には地上制圧機(ガンシップ)DE202が旋回、ストーム1の指示を待つ。

空軍も座標伝達があれば即飛来出来る空域にいるし、遠方では砲兵隊が陣取っていた。

だが誰1人として発砲なし。

濃霧もあるが、レーダーでは何体かの敵を拾っている。 また新種の怪物というのもあり、警戒して当然といえた。

本部も危惧し、キャリバン装甲救護車両も用意、負傷者を収容出来る様にしていた。

 

 

「情報部が言っていたスキュラの仕業だな」

 

「魚人か。 怪生物程じゃないが、デカいらしい」

 

「下手に音を立てるな。 俺達にはレーダーがあるが、敵のフィールドにいる事を忘れるな」

 

「了解」

 

「ダイバー、サイレントモジュール」

 

 

ストーム1も他部隊に随伴しつつ見やるが、視界が悪い。 霧で少し前の味方しか見えない。

レーダー頼りに空爆や砲撃要請は出来るが、効果的に攻撃出来るかは微妙だ。

 

 

「俺は漁師の息子だ。 海には魚しかいないさ、と言いたかったが……そうも言えない状況だな」

 

「コンバットフレーム、バトルシステムは続けておけよ」

 

「おい、機体から変な音がするぞ」

 

「扱いが雑なんだよ」

 

「帰ったら飯を作ってやる」

 

「1番良いのを使って下さい。 そうすれば食べられます」

 

 

お喋りなEDF隊員達は戦場でも雑談する余裕の態度だが、有効な打開策は見つけていない。

地底では工兵隊がグラウコスへ命懸けで爆弾設置に向かっている。 それが失敗すればグラウコスは地上に飛び出るだろう。 その時、魚人共とグラウコスの両方を濃霧の中で相手しなければならない。 それは避けたい。

遊んでいる訳にはいかない。

コンバットフレームやネグリング、ミサイル兵器といった誘導兵器を持つ者は霧に関係なくロックオン、発射すれば攻撃を当てられるだろうが、それだと待機モードの敵を皆起こして大変な事になる。

ここはレーダーと音を頼る他、別の方法を取る事にした。

 

 

「皆、聞いてくれ」

 

 

集合するEDF隊員に、ストーム1は語る。

 

 

「レーダーを見る限り、敵は複数。

此方も相応の戦力が居並ぶが、この濃霧だ、闇雲に弾をばら撒く訳にはいかない」

 

「だから困ってる」

 

「そこで誘導兵の俺が単独で敵に接近、高出力ビーコンガンを使用。

そうすれば、ロックオン距離が延びる。 フェンサーの強力なミサイルも使える。 皆は安全圏から一斉にミサイルを放ってくれ」

 

 

そう言い終わるが先か、スキュラがいる方向へ駆け足するストーム1。

慌てて隊員が止める。 いつかの中尉だった。

 

 

「待て、危険過ぎる。 ここで迎え撃った方が有利だ」

 

 

だがストーム1は覚悟を決めている。

説明しつつ、足は止めない。

 

 

「至近距離になって、やっと敵が見える様になってからでは遅い。

なんでも敵は毒霧を撒き散らすそうじゃないか、接近されたら全滅だ。 そんなリスクは犯せない」

 

「少しは自分の心配をしろ!」

 

「中尉。 今までありがとう、行ってくる」

 

 

別世界線でプロフェッサーが中尉に言った言葉を告げ、彼は霧へと沈んだ。

残された中尉。 レーダー上で暫しストーム1を眺め、拳を作る。

 

 

「EDFは仲間を見捨てたりしない。 困った事にな」

 

 

中尉は部下を何人か連れ、追いかけた。

環境が違えば性格も変わっておかしくない。

だが中尉は、どの世界線でも自身の正義感は変わらなかった。

 

 

 

 

 

ーーーーーーEDFーーーーーー

 

 

 

 

 

一方、地底探検隊。

軍曹チームらは押し寄せたγ型を退け、やっと最奥へ到達。

巨体のグラウコスがどうやって此処まで来たのか不明だが、ゲーム的にはサイレンが怪しい場所にいたのでツッコミはナシ。

とにかくやっと、その燃えるドラゴンの姿を視界に捉える。 まだ眠っており、仕掛けるなら今だ。

 

 

「工兵隊、爆破準備に掛かる」

 

『こちら本部。 了解した、頼むぞ』

 

 

向かおうとする工兵隊に、軍曹ら護衛隊が心配の声を上げた。

休眠状態の時は、デカい音を立てても攻撃しなければ起きないらしいが、サイレンと違い奴は燃え盛っている。

遠くにいても熱波が伝わり、大きな空洞にも関わらずサウナ状態の地底。 直接足元に向かうのは危険ではないのか?

 

 

「空気が歪む程の熱だぞ、大丈夫か?」

 

 

対して工兵隊、笑顔のグッジョブサイン。

 

 

「仕事だからな、耐えて近付く」

 

「マジかよ」

 

「見習わないとな」

 

「曹長が聞いたら喜びそうだ」

 

 

そう言い、熱波に向かう工兵隊。

飛び散る火炎にダメージを食らっても、近付くのは平気とは。

思えばEDF隊員らは高所落下ダメージもないし、戦車の砲撃時に砲塔近くにいたり、ランチャーの真後にいて煙を受けても平気である。 フェンサーでもなしに。

あと有効射程距離1キロ越えの対物ライフルを起立姿勢で撃ったり、場合によっては走りながらや、ジャンプしながら撃っている隊員もいる様な。

ええい。 EDF隊員はバケモノか。

といっても、プライマーには苦しめられたが。

 

 

「その間、俺達は周囲を警戒」

 

「レーダーに敵影なし」

 

「クリアです」

 

「251の時を思え、油断するな」

 

「思い出したくねぇよ」

 

 

マーシア准尉の茶番劇。

251では地底探検をさせられたが、その前に基地にアンドロイドが侵入してきたし、開けられた穴に潜れば、今度は飛行型の巣を破壊する羽目になった。

常に命懸け。 情報漏洩を防ぐ為なのか、敵性勢力の詳細を教えてくれない所為で、いつも想定外の危険な目に遭う。

グラウコスに辿り着くまでにγ型が転がって来たのもそうだ。 もう何もない事を願うばかり。

だがEDFの呪いというか、本部の罠か。

ここでトラブル発生。 グラウコスが起きたのだ。

 

 

「おいヤベェぞ、起きやがった!」

 

「爆破チーム退避する!」

 

「離れろ! 急げ!」

 

 

ダッシュでグラウコスから離れる隊員ら。

グラウコスは、そんな連中を気にも止めず、大きな欠伸と共に翼を広げ、熱風を撒き散らす。

 

 

「ぐっ!?」

 

「凄い風圧だ!」

 

「うわああっ!?」

 

「只野が飛ばされたぞ!」

 

 

その勢いで天井が崩れ去り、日が射し込む。

見上げれば青空が。 グラウコスは羽ばたき始め、青空の下へ、地上へ出てしまった。

 

 

「本部、グラウコスが逃亡! 爆破は失敗!」

 

『了解。 地上部隊、グラウコスが来るぞ備えろ!』

 

 

やがて外から爆音や銃声、叫び声。

グラウコスへの攻撃が始まった様だ。

 

 

「俺達も合流する! 走るぞ!」

 

「大将がいるから心配はしてねぇけどな」

 

「英雄にも援護は必要だ」

 

「只野、動けるか?」

 

「何とか。 新鋭アーマーが丈夫なお陰で」

 

 

大急ぎで戻る軍曹チームら。

外ではまだスキュラと戦っているというのに。

大戦のあった世界線と似た状況となってしまう。

だがその時も、ストーム1は殲滅して見せた。

今回も何とかなる筈だ。 ならねば困る。

 

 

 

 

 

ーーーーーーEDFーーーーーー

 

 

 

 

 

「グラウコスが来るぞ!?」

 

 

地上部隊は慌てた。

レーダー表示で敵の高低差も大凡分かるのだが、1体だけ明らかに高度が高い。

ソイツがグラウコスで間違いないだろう。

 

 

『地上部隊、迎え撃て!』

 

「おいおいおい、それどころじゃないんだぞ!」

 

 

未だ濃霧の中、しかもスキュラとの戦闘中。

ストーム1が高出力ビーコンガンを構えて敵のシルエットが見える距離まで接近、照射し、フェンサーがフェニックスミサイルを飛ばしたり、レンジャーが遠方からプロミネンスミサイルを撃ち上げたり、エメロードやエアトータス等でミサイルを飛ばしている最中だ。

 

 

「地上掃討まで待てなかったのかよ!」

 

『グラウコスが起きてしまった、このまま迎え撃つ他ない!

EMCとバルガはグラウコスを優先、他は作戦に邪魔なスキュラを殲滅しろ!』

 

「そうは言うが、霧で見えないぞ!?」

 

『EMC、レーダーを見て大体で撃て!』

 

「じ、実戦運用は初めてなんだ!」

 

「EMCは1台1億ドルだぞ、援護しろぉ!」

 

 

大戦のあった世界線、K6作戦の時の様な事をいう赤いEMCの操作員。

気持ちが負けて、後退を始めてしまう。

その様を見た増援の歩兵隊……その中にいた曹長は怒鳴る様に声を上げていく。

 

 

「いつからEDFは臆病者の集まりになった!

俺達だけでもやるぞ! たかがデカい鳥、撃ち落としてやる!」

 

「歩兵の火器ではとても!」

 

「霧が酷い中で!?」

 

「スキュラもいるんですよ!」

 

「コックから転職したばかりだ!?」

 

「俺はトラックの運転手!」

 

「訓練を思い出せ、お前らでも引金を引ける! レーダーで位置を把握して撃ちまくれ!」

 

「イ、イエッサー!」

 

 

曹長率いる歩兵隊が前進、戦い始める。

だが旧式改修アサルトライフル、PA-11SLSでは豆鉄砲。

多くは迷彩服姿の新兵なのもあり、空飛ぶ影に撃ってみたり、霧の中に揺らめくグラウコスに撃ってみたり銃口が踊って火力を集中出来ていない。

それでも勇敢に戦う姿に感化され、周囲のベテランは我に戻り互いを鼓舞し合い共に往く。

 

 

「勇敢な新兵達だ! 熱烈歓迎するぞ!」

 

「新兵だけじゃ全滅だ! 続くぞ!」

 

「こちらケン! 曹長を援護する!」

 

「ブラッド1、エイレン行けるか!?」

 

「行けるぞ! 歩兵は道を開けろ!」

 

 

コンバットフレームエイレンⅡ前進。

片肩にのみ搭載されたミラージュポッドでロックオンした敵に光学誘導弾を発射、ばら撒きつつ、両腕の電磁レーザー砲でグラウコスがいそうな場所を薙ぎ払う。

ミラージュはウィングダイバーの兵器でも聞くものだが、実弾ではない光の誘導弾。

実弾ミサイルと比べて、発射後、直ぐに敵に高速で向かってくれる。

爆発もなく、与えられるダメージは少ないが、牽制や位置把握には十分役立つ。

 

 

「新鋭にばかり任せてられるかよ!」

 

「ロートル機だってな、まだまだやれる!」

 

「古参を舐めるなよ!」

 

「熟練パイロットの腕を見せてやる!」

 

「ゴーン1、戦闘開始!」

 

 

その点はロックオン兵器に共通する部分があり、旧式のB型も倣って攻撃。

此方は実弾兵器であり、ミサイルとリボルバーカノンであるが、歩兵の携行火器とは比べ物にならない火力に違いなく、とても頼れるものだ。

兵装が良く似たミサイルガンも、同じ様に撃ちまくる。 続いて戦車隊も砲撃開始。

 

 

「バリアス、砲撃開始!」

 

 

都市迷彩が施され、ブラッカーよりやや大きいEDF最新鋭戦闘車両が砲撃。

先進技術研究部によって開発された120ミリ高圧多目的榴弾砲が炸裂。 高い装甲破壊能力と範囲攻撃力を併せ持つ砲弾は、超高速で射出され、瞬時に着弾。

榴弾なので直接命中出来ずとも、着弾地点で爆発、近くにいるスキュラを抉る。

旧式戦車、ブラッカーも前進。 負けじと撃つ。

 

 

「ブラッカーも続くぞ!」

 

「榴弾砲、テェッ!」

 

 

後方からはSPCの115ミリ長距離榴弾砲が放たれ、前進するブラッカーE型は、走りながら榴弾を撃ってはスキュラを爆散させていく。

レーダー頼りとはいえ、スキュラを減らす事に成功していく。

だがスキュラに気を取られ過ぎた。 上空を飛ぶグラウコスがサイレン以上の火炎ブレスで地上を焼き払ってきた。

フェンサーは慌ててシールドを構え、無い歩兵は近くのブラッカーやバリアス、タイタンの装甲に身を隠す。

だが火力や凄まじく、大きな傷を負う。

 

 

「ぐわあっ!?」

 

「何て熱、火力だ!」

 

「装甲が焦げて……いや、溶けてる!?」

 

「後退急げッ!」

 

 

調子に乗った罰か。

退却する戦車隊。 そこに追い討ちをかける残りのスキュラ。

口から青い汚物の様なものを吐き、陸を泳ぐ様に体当たりしてきては兵士や戦車を吹き飛ばした。

 

 

「人魚、いや魚人の姿か、これが!」

 

 

スキュラの数が減り、霧が薄くなって至近距離になったのもあって、その恐ろしい姿を視認する隊員ら。

だが見ている間にも、スキュラは地面の上をビチビチと魚が跳ねる様な動作をし、体表面からピンク色の霧を出す。

毒霧だ。 隊員らは慌ててその場を離れた。

 

 

「ぐっ、息苦しい……ッ!」

 

「退避、退避ーッ!」

 

「装甲にダメージが!? 腐食性が強い!?」

 

 

それでもタイタンが前に出て、皆の壁に。

装甲が厚く、陸の要塞でもある重戦車タイタン。 主砲のレクイエム砲は強力で、元は軍艦のものを砲身を短縮する事で搭載を可能にした。 ビルを吹き飛ばせる威力がある。

他にも前方に機銃、戦車の左右に敵が来た際の対処としてグレネード射出器、主砲の左右、同じ旋回砲塔に副砲もある。

機動力はないが、防御力、火力共がある。

まさに壁役だ。

 

 

「タイタンが壁になる!」

 

 

轟音と共にレクイエム砲発射。

スキュラに直撃、大きな爆発。

スキュラは木端微塵になってしまう。

 

 

「俺達も殿だ、味方を守れ!」

 

 

だがフェンサーも共に壁となる。

盾を構えつつ、通常歩兵が携行出来ない強力な機関砲やキャノンでスキュラを撃つ。

また、超振動を起こすハンマーで地面ごとスキュラを砕いていった。

霧が晴れていく。 残るスキュラも遠くで固まっているのが見えた。

 

 

「後は空爆で片付ける。 グラウコスに集中しろ」

 

 

ストーム1、ミサイル支援を中断。

無線機に持ち替え、カムイに爆撃要請。

 

 

『突入!』

 

 

すると即爆撃機が飛来。

作戦領域に低空で突入、あっという間に頭上を過ぎ去り、遅れて爆弾が地表に落下、爆発。 スキュラを吹き飛ばしてしまう。

重爆フォボスと異なり、カムイは爆弾搭載量が少ない。 代わりに高速で飛来してくれるのだ。

 

 

「後はグラウコスだけだ、総攻撃開始!」

 

 

ガンシップへの要請ビーコンガンに持ち替えつつ、ストーム1は叫ぶ。

EMC部隊は逃げてしまったが、取り残された青いEMC……ストーム1専用のものは使えそうだ。

バルガも遅れて動き出す。 そろそろ決着の時。

 

 

「全く、無茶をするな!」

 

 

そんな中、中尉が注意する。

だが、なんだかんだ付き合う彼は本当に良い奴なのだろう。

 

 

「皆も無茶してくれたがな」

 

「とにかく、後はグラウコスだけだ」

 

「その通りだ。 倒すぞ」

 

 

ストーム1は再び駆け出した。

上空で暴れ回るグラウコスを倒す為に。




ミサイルガン
対空戦闘用カスタムのコンバットフレーム。
ミサイルポッドを両肩に搭載。
両腕にリボルバーカノン内蔵。
上半身の回転速度が向上しており、高速移動する敵を容易に捕捉可能。
対空戦闘のみならず、地上戦闘でも役立つ。
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