ストーム1ら現場組は残党狩り。
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どこまで行けるか不明ですが、大変励みになります。
EDF総司令部。
地球規模の軍事組織、全地球防衛機構軍の最高位に君臨し、各地支部の頂点に座する人類の最高指導者。
地球外知的生命体の存在から地球を、いや人類を守る為に創設された叡智の元締。
戦略情報部といった独立した相手には、その絶大な権能を発揮しないが、軍部の垣根を超えて経済界にも影響を与える術を持つ。
それ故、軍事主義とも捉えかねない強大な力を示し続けて来たが、地球の枠組みでは過ぎ足る力だった。
それが民間人から冷ややかな目で見られてくる事幾何年。
事今に至っては、その力に皆が縋る。 溺れる者は藁をも掴むと言いたげに。
民間人にとって怪物騒ぎにプライマーの来襲などと日常の破綻は予想出来る物でなかった、それも仕方なし。
反EDF世論を味方にしていた政治家も、その掌返しに合わせ支援の意向を示す。
滑稽であろう。 笑う暇があれば。
今はその時ではない。
そもそもEDFは今日まで隠蔽してきた事だ。 現実として起きなければ誰も受け入れ難い件なのだから、あれもこれも後の祭りでしかない。
であれば、すべき事は現実への対処である。
それが出来ぬEDFではない。
決着すべく代表とされるマーシア准尉を総司令部に迎え入れ、今正に地球人と火星人の対話は成されようとしていた。
……それもまた、秘匿されし行為だったが。
「マーシア准尉、此方へ」
特殊作戦コマンド警備の元、迎えの車から降りる白銀の少女。
髪の毛の色を除けば、特別地球人と変わりない幼い姿である。 知らぬ兵士に至っては「変わった子だな」程度でしかなかった。
だが今やどうだ。 正体を信じる他ない状況に半信半疑だった特殊作戦コマンドも動揺を隠せない。
「まさか、あの時の子供が本当に……」
手に持つPA-11SLSが揺れる。
技術革新でブレイザー持ちも混ざる中、マーシア准尉は共に来たプロフェッサーと屋内に用意された席へ向かう。
「多くの犠牲の果て、ようやっと手に入れられそうな所まで来た」
「油断するな。 交渉は銃や爆弾ではなく言葉でするものだ、出来るのか?」
「我を誰だと心得る? 代表者、かの者ぞ」
互いの種族に少なくない犠牲が出ているのに、マーシア准尉は機嫌が良い。
感覚が地球人に寄せているとはいえ、完全に同じという訳ではないのだろう。 そうでなくても、多くの世界線を渡り感覚が狂っているのかも知れなかった。 将又、種の上役として下々の犠牲は当前か。
彼女の有無も分からぬ畢生、滲む狂気の沙汰、それを感じ取れる者は如何程いるか。
ストーム1なら或いは、とも思えば彼は戦場に於ける英雄でしかなく。
今からの場は、かような硝煙漂う場でなし。
「地球人とは文化もまるで違う。 子供には酷だろうが、語りを間違えるなよ」
「最後まで子供扱いとは、してくれる」
「後は交渉結果次第だ」
「むぅ……兎に角、最後まで頼むぞ諸君。 和平を結べるかどうかは我と汝らにも掛かっておる」
プロフェッサーと話し合い、周囲のコマンド含めた警備にも言い放つ。
あいや、頼みたいのはアンタらだと言いたくなるが見送った。 結局のところ、兵士に出来る事は戦う以外ない様だ。
かくして小さな交渉人は大きな席に登り着く。
正面には高貴な軍服と帽を着たオジサンが座る。
背丈の差と地位の差は、また違う。
もしかしなくても、目の前の人物こそEDF総司令官であり、地球外知的生命体から人類を守る最高責任者である。
「初めまして、か。 マーシア准尉」
渋い声が響く。
いつかの演説と同じであったが、個人に向けられた言葉は少し軽く感じる。
相手が少女の姿をしている、という油断がゼロではないが、どうも子供に言い聞かせようとする大人の図でもあった。
「オッサンは参謀か?」
「……総司令官と名乗らせて貰おう」
地球の代表に違いない筈の相手に、普通にオッサン呼ばわりするマーシア准尉。
仮にも軍属に身を置いているのだから、その辺はアバウトにしてくれるな、とプロフェッサーは頭を抱えた。
「相分かった。 司令官殿、早速本題に入ろう」
「そうだな。 こうしている間にも混乱は続いているが、それでもだ。 全て終えてから次では遅い」
即座に切り替える頭脳。
状況は良くないが最悪ではない。
確かにNO.6による混乱は続いている。
各地拮抗しているか、何とか勝利を収めているが、死傷者は互いに少なくない。
情報通りならばNO.6は叛逆した訳だが、本当だとしても「はいそうですか」で済ませられないのも事実。
どう互いの腑に落とすか。 単なる子供の仲直りで済ませられない現状、保護者、責任者として大人のオチは付けないとならない。 手元のカードにあるは、ありふれた謝罪と金と投獄。 だが地球人相手に成敗する方法は火星人となると通じない。 ましてや時空を越えた相手。
ともすれば幸い、互いに下げる頭がある。
けれども下手に出ない。 飽くまで交渉材料としつつ、相手に謝罪と弁償をさせつつの地球に有利な状況に持って来れるか。
総司令官は堰を切る。 口先を付添に向けた。
「プロフェッサー。 君とストーム1の努力は認めよう。 今まで苦労し参謀と彼女と3年以上もの間、情報の遣り取りをしていたのだからな」
「恐縮です」
「だが事態がこうなった以上、いつも通りとはならない。 荒げた状況をどう収めるか。 地球人の枠では推し測れないが如何に」
「今回の混乱、報告通りNO.6による反乱です」
「ふむ。 これまでの怪物騒ぎもかね?」
マーシア、正直に言おうとしたがプロフェッサーが割り込む様に続けた。
「はい。 その通りです」
「……ッ、そうだ」
マーシア准尉は意図を汲み取り、下を向く。
裏切った同胞を殺す以上に、売るのは嫌である。
だが交渉とは、時に残酷だ。
プロフェッサーは、この際だから全部の責任を投げちまえ、というのだ。
逆に正直者は馬鹿を見る、という事。
「では、その首謀を連れては来れないか」
対し、またプロフェッサーが続ける。
こうも甲斐甲斐しいと、執事か秘書かというより代弁者。
幼き主を支える大臣とも取れる。
技研主任の彼が、こうも出世とは。 偉い者だ。
ただし通訳ではない。
元よりその気ではないからだ。
「地球流に済ますならばと考えましたが、向こうはその気でなく。
何にせよ、最高指導者が責任を取る者。 こうしてマーシア嬢に参上して貰った次第です」
「ほう。 それでマーシア准尉。 君としてはEDFに、地球に何を求め、差し出す気でいる?」
訪ねる総司令官。
流石にプロフェッサーの独断に勘付かない筈がなく、流されず単刀直入に本命へ。
伊達に総司令官ではない。 数多の人の、命の上に君臨する者だ。 誤魔化しは効かない。
だからと子供騙しで返すつもりもない。 目の前には かの者、火星代表のマーシアだ。
「……我、地球に蔓延った怪物の掃討に当たる」
「当然だな」
「その後は停戦、和平を。 技術提供に応じる。 その為にも火星と……我々マーシアンと約束して欲しい事がある」
「何かね」
マーシア、ひと呼吸終えて1度に吐く。
「火星の未来を保証して欲しい。 頼むッ!」
全マーシアンの懸念を口にし頭を下げた。
武力行使の果て、滅ぶ運命ならば。 最初からこうしてやる、とばかりの勢いで。
歴然の文明差、格下相手に頭を下げる。 この重みがどれ程であろうか。
EDF総司令官は恐らく、全地球防衛機構軍人で最も思慮深く理解出来る数少ない人間であった。 今、この瞬間に置いて。
「頭を上げなさい」
総司令官、優しい口調。
それは聞き分けの良い子に語る様に。
「私としても、准尉と同じく望む」
マーシア、パッと明るい表情で見上げた。
それはもう、純粋な子供の表情で。
けれど最高位に属する者同士、同意したならば戦争は終わり、火星が滅ぶ事も───。
「だが」
罪は消えない。 ましてやマーシアン。
「EDFは敵に背を向けんのだ」
カチャカチャッ!
周囲の警備兵達が一斉に銃口を向けてくる。
「ッ!?」
「油断して刺される訳にはいかない」
「総司令官! 彼女は本気です!」
プロフェッサーは抗議するも、受け入れられない。
「何故そう言い切れる? 傀儡となり駒としての言葉を並べるだけで、信用に値すると言えるのか」
悲しいかな、データが足りなかったのか。
それとも全て分かった上での所業か。
プロフェッサーは激しく睨みつつ思考する。
ここまで来ては恐らく……後者。
戦争の先送りに生まれた、本来存在しない平和の時間。 その刻を使い今までの世界線以上に技術は進歩、人類は潤った。
だが平和の中で私服を肥やし過ぎたのだ。 突如として景気良く溢れ過ぎた金は人々を中毒にさせ、心を蝕み、命に値札を付けて金儲けの道具と見なし潰し合わせる。
EDFの払い下げ品が各地の紛争地帯で頻繁に見受ける様になったのも、その1例に過ぎない。
民間がEDFを冷たい目で見る一方、専ら口先だけで本気にしなかったのは、良い取引先であったり間接的に美味い汁を啜えたから。
戦争・兵器といった軍需産業ビジネスに、気が付けば世界中が関わっていた。
直接じゃなきゃ関係ない、そう言い訳して。
思わねばやってられない、他人の事は知らない。
自己責任という名の無関心。
或いは本気で信じて疑わない日常。 その笑顔の裏で、土台で、なんて考えない。
考えるだけ無駄かも知れない。
価値。 踊る事で誰が1番得をする?
「な、なら……どうすれば信用してくれる?」
マーシアは、弱々しくも前を見る他ない。
下々が考えなくても、上に立つ者は考えねばならない。 食わしていくにも、生き残る為にも。
総司令官は「その言葉を待っていた」と言わんばかりにニンマリとして頷いた。
手を軽く上げると、それを合図に周囲の銃口が下げられる。 けれど命令あれば即座に撃ち殺せる姿勢で。
「"私側"としての要求は、引き続きの技術提供と"戦争継続"」
「馬鹿な」
プロフェッサーは言う。
その意図を察するが故に止めたくなる。
「それをして、どれだけの命を散らす気ですか」
「口では幾らでも言える。 EDFはコレをチャンスと捉えているのだ、その価値を、真価を今こそ発揮する時だと」
盲目か態とか。 EDFは落ちぶれたか。
「それをして喜ぶのは今の地球人だけです」
「それが問題と」
「当たり前でしょう! EDF本来の目的を忘れたとは言わせないっ!」
EDF本来の目的。
創設理由がそうだ。 地球外知的生命体から地球を、人類を守る為に結成された組織だ。
総司令部、司令官が知らない筈がない。
「だからこそだよ、プロフェッサー」
「は?」
「急速な技術発展により弾かれた物品は世界中に散らばった。 結果、人類は一丸となり闘争を止めるどころか逆に苛烈を増した。
だが今はどうだ。 プライマーが一部反乱とはいえ世界同時攻撃。 これに対処する為には内輪揉めしている場合ではない、そうは思わないかね?」
「…………」
つまり、総司令官はこの際に世界中に起きている内戦を止める気らしい。
最もらしい理由だが、その実、金の問題は切っても切れない所にある。
小銃等の歩兵携行火器……細々したEDF印の兵器が民兵等の非正規にあるのは最早仕方ないとしても、コンバットフレーム等のビークルは破壊したい。
デカデカとしたものがいつまでも人類同士の争いに闊歩しているのはイメージが悪い。 なので戦時下に置ける適当な理由で回収ないし破壊してしまおうという訳だ。
武器屋としては面白くない……とも言えない。
オンボロ玩具が使えなくなれば、新たな玩具を欲するもの。 そこに付け入って新商品だのなんだのと売り込めば金になる。
プライマーはその口実になる。 人類共通の敵がいる内は、殺し合いをしている場合ではないのだから。
「何も10機のマザーシップを地球に招待する気はない。 ただ残党狩りに本気にならないで欲しいと言いたい」
悠長な事を言う、と心中舌打ち。
ハイグレードタイプが拡散している、雑多な銃火器や戦術無しでの対処が難しい。
それこそEDFが本気を出して虱潰しに叩かねばならない。 統率者が消えても、独自に殺戮を繰り返す無慈悲な兵器共は待ってくれないのだ。
「マーシア准尉、母星を、種族を思うのは私も同じ事。 であれば分かる筈だ。
後はNO.6の犠牲を無駄にするかどうか、君次第だと思うがね」
「……わかった」
「……マーシア」
最初の能天気は消え、現実が残る。
NO.6の置土産で地球が、火星が救われるなら安泰である。 犠牲の上に立つ平和、歪んだシナリオに感じるが、これが落とし所か。
「協力しよう。 互いの星の為だ」
「そう言ってくれると……信じていたよ」
傀儡、駒となる屈辱。
けれど互いに利のある関係を築き信頼を勝ち得る他ないのか。
プロフェッサー共々、マーシアは複雑だ。
けれど。 取り敢えずの延命処置に上手くいった事に安堵する。
一難去ってまた一難。 次も乗り越えられるのか。
未来は誰にも分からない。
グダッと交渉回。
政等、色々疎いので文才含め矛盾がありそうな中。
楽しんで読まれてる方がいたならば幸いです。
いつもありがとうございます。