その日、228基地司令官は悩んだ。
総司令部から命令が下されたからだ。
それは基地内部にいる民間人の少女を引き渡せ、というものだった。
この時点で、ただの民間人ではないと察せるものがあるが、説明を求めても返答がなく、どうも秘密裏に事を進めたい様子がひしひしと伝わる。
だが軍属であるならば、上からの命令は絶対。
指令官の立場にいるなら尚更従わねば。
そう言い訳し、見ず知らずの少女を犠牲にする……それが正しいと思い込ませて受け入れる。
やがて技研主任……プロフェッサーと特殊作戦コマンド部隊が228内部へと進入。
上層部が絡む以上、どうする事も出来ない。
妙なモヤモヤを抱えつつも、指を咥えて見過ごす他なかった。
だが軍曹からの連絡で状況は変わる。
少女を庇う民間人の同行を求められたのだ。
通常なら駄目の一点である。 だが憶測でもない、ただの勘が、司令官を突き動かした。
「了解した……許可する」
気が付けば、同行許可どころか民間人をEDFに入隊させた事にし、挙句、偶然という名のご都合を言い訳に訓練と称した妨害工作を行っていた司令官。
「何をやっているんだ、私は……」
誰もが頷きそうな事を呟きつつも、本部からの鬼電を聞き流し、後の事は現場に任す。
何故こんな事をしてしまったのか。
今更だが、やはり放置してはいけない気がした。
このまま少女を見逃せば、何かとても悪い事が起きる……そんな予感。
そして、恐らくその予感は的中していた。
少女……かの者を渡してしまえば、ラボであんな事やこんな事をされて酷い目に遭わされる。
そうしてキレたかの者が歴史をなぞってしまう……そんな可能性があったのだから。
その意味では、田舎の基地が下した判断は英断であった。
地球人は常に危機的状況下にいる。
漠然と感じつつも他人事としているソレは、以外と皆の周りにも溢れているかも知れない……。
ーーーーーーEDFーーーーーー
「AFVの非常用出入口が唯一の地上への出口となる。
お前は民間人の少女を連れて、そこまで行くんだ。
そこからは、車両を奪って逃げるんだ。
逆に俺達はコマンドを抑え、お前と少女の脱出を援護する」
猛者が何やら説明しておる。
我には何の事か分からぬが、代表と共にいれば大丈夫であろう。
「これは遊びじゃないんだぞ!」
「勿論。 訓練だ、本気で来い」
「俺達もマジで行くけどな」
「じゃあ、そういう事なので」
「行くぞッ!!」
睨み合い……次には弾かれた様に激しい金属音が暴れ回る。
庇われながら地面を転がり大きな長方形の箱……コンテナというらしい……に身を隠すと、騒音に負けぬよう猛者が叫ぶ。
「民間人、いや新入り! 武器の説明はさっきした通りだ。
なに、本番用の火薬は使ってない。 爆発物もペイントが飛び散るだけの訓練用弾薬だ。
まぁ、それでも当たれば痛いが。 それとドローンも使用して構わない。
非常事態だ、申請もいらないぞ。 それに軍用ドローンの条例当たりは気にするな。
非常事態においては条約だの法律だのは役に立たない。 周りが何と言おうと、使えるものは使え。
そして、お前が決めた事は全力でやり遂げろ。 以上だ、さあ行け!!」
「了解。 ありがとうございます、軍曹!」
代表、我の手を引き別の道を走り始める。
振り返れば、追いかけようとする精鋭を猛者達が弾幕を張って防いでおる。
「ターゲット逃走!」
「別のルートから行け。 此処は任せろ、先に行け」
「イエッサ!」
こんな事になってしまうとは。
我、いつか謝らないとならぬ。 申し訳ない。
「奴らめ、同じPA-11かと思えばカスタムじゃねえか!」
「ああ。 SLSだったか、レーザーサイトと倍率スコープが取り付けられている他、銃本体の基本スペックも高められている」
「次世代ストークじゃないだけマシとします!」
「新入り! 回り込む奴がいるぞ、渡した歩兵用レーダーを見つつ警戒して進め!」
「はい……大丈夫、必ず守る」
早歩きしつつ、地球製ドローンを展開。
4つのプロペラで飛行するソレを見る。
ふむ。
最初に敗北した時間軸には存在しなかった。
荒廃した世界、繰り返す時間の中で、いつの間にか登場した兵器であった筈だが。
どうやら、この世界線は地球人もドローンを初期から使用している様だな。
「ッ!」
前方に兵士を確認。
相手も遅れて反応、銃口を互いに向けるも、
「あれ? 保護した子かい?」
相手が先に下げ、警戒を解く。
よく見れば、我に水を飲ませた新兵だ。
「事情は把握しているつもりだよ。 元民間人、君を援護させて貰う」
「君は?」
「只野二等兵。 君と同じく新入りだけど、多少訓練は積んでいる。
多少役に立つ筈だ。 共に行くよ」
「感謝する」
味方になったらしい。 共に駆け足再開。
地球人同士で争ったり助け合ったり、我、まだよく分からない。
誰が味方で敵なのか。 やはり言語や文化を学ばねば分からぬ事が多いな。
「出口までのルートは?」
「分からない。 基地を把握しきれてないし、隔壁も彼方此方閉まっているし。
でも基地司令官は味方だ、なるようになるルートを作ってくれている筈さ」
「曖昧だな」
「仕方ないだろ。 とにかく、敵は少人数の特殊部隊と聞く。 警戒して進もう。
出会ったら真面目に撃ち合って勝とうなんて思っちゃ駄目だよ。 相手は精鋭中の精鋭だ」
「他に道がなければ戦うしかない」
「勇敢だね。 自分もそうでありたいな」
「……ッ、勇気を見せる時だぞ」
目の前で閃光が弾け飛ぶ。
他に遮蔽物がない大きな通路だ。 逃げも隠れも出来ぬ。
「見つけたぞ! ガキを渡せ!」
「断る!」
「なら死ね!」
銃口を向けてきた。
万事休す。 死あるのみか。 否。 我が前に出る。
「おい待てっ!?」「ッ!」
やはり撃つのを躊躇った。
我の威圧感……は、今はないから、別の理由であろう。
我を生捕りにしたいのだ。 うっかり殺してしまえば取り返しがつかぬ。
いつもの力が発揮出来れば、地球人の粗末な兵器を1、2発受けたところで痛痒には感じぬであろうが。
先程は代表の勇気を見たからな。
少しは我も見せねば。 地球人に舐められっぱなしも嫌であるし、同胞に示しもつかぬ。
「死んでたまるか! 死んでたまるかぁ!」
この隙をつき、新兵が銃を構え弾をばら撒く。
未熟で距離もあり、弾は相手より手前や奥に着弾、火花を散らす。
だが1番は覚悟が足りぬ事か。
同族殺しは抵抗があるのか。 やはり地球人は無情な行為ばかりはしない。
逆だ。 感情に行動が左右される事が多い。
大戦でもそうであった。
多脚でシールドを持つ同胞を見た地球人は恐怖し、戦意を失う者が多く出た。
「ルーキーが、調子に乗るなよ!」
だが相手は精鋭。
下手な鉄砲相手に怯える事なく構え直す。
その先は新兵であったが、
「ぐ、グレネードッ!」
バックパックから即座に手投げ爆弾を投擲!
放物線を描き、相手の足元へ落下!
「チッ!」
相手は素早くローリング。
爆弾が床に接触した刹那、起爆。
爆煙が周囲を漂う。 だが相手は無事であろう。
「MG11も訓練していて良かった……」
「今だ、逃げるぞ!」
「逃げ切るのは難しい……足止めしておく、先に行って欲しい」
「すまん、恩に着る!」
新兵を殿に、我は代表に手を握り直され先を行く。
背後では再び銃撃が聞こえたが、今度は振り返らなかった。
「は、ははは……EDF同士が戦うなんてね」
すまぬ地球人。
良い奴と悪い奴がいるのは分かったが、せめて良い奴が生き延びる事を願う。
「降参しろ。 命ばかりは助けてやる」
「嫌だ!」
「なら死ね。 人類の為に」
「だから! 嫌だって! 言っているんだ!」
恐怖と共に銃弾を吐き出す、新兵の叫び。
命知らずのアンドロイド、その擲弾兵ならともかく……惜しむものがありながら、格上に挑むか新兵。
その勇気、無駄にせぬ。
生きて再会出来たならば、礼を述べたい。
「出口だ! もう少しだ、頑張れ!」
やがて急斜面を登っていくと、上方向に光が大きく差し込むのが見えた。
転げ落ちそうになりながらも、頑張って登り地上へと出る……までは良かったのだが。
「うっ!?」
目を開けれぬ明かりが一斉に向けられた!
光線銃を受けたか、と思えばそうではなく。
「此方EDF! 遊びは終わりだ、投降せよ!」
僅かに目を開ければ、目の前にはズラリと地球人の兵器が。
銃口、砲口は全て此方に向けられてきた。
「空輸されてきたばかりのEDF主力コンバットフレーム・ニクスB型に、ブラッカーE1、武装装甲車両グレイプに空には主力ヘリN9エウロス、対地制圧ヘリEF31ネレイド、空の要塞HU04ブルートまで……。
しかも逃走用に備えて軍用オートバイのフリージャーも……いつの間に、こんな大戦力を集めたんだ」
勝てる道理はない。
最早ここまで。
いや、代表なら或いは。
そう不安気に見上げるも。
「すまない……ドローンじゃ悪足掻きすら出来ないな」
諦観。
両手を上げて無抵抗。
我、ショック。
いや……それが普通だとしても。
だが、それでも。
代表が我の前に立ち続けていたのは、忘れる事はないだろう。
バックパック
EDF6のレンジャー、エアレイダーの別枠装備。
メイン武器、特殊装備等(プロテクター等)とは別に装備出来る。
その面、前作EDF5より武器携帯数は増えた。
ここでは只野二等兵(レンジャー)が主力のPA-11とは別にハンドグレネードを使用。