「くそっ!」
謹慎を受けてから数日たったあとの霊夢は、自室でかなり荒れていた。それもそのはず、紫から突然の謹慎命令と雅人からのバディ解消を受け、霊夢の頭の中は未だに混乱していた
「どいつもこいつもなんで私を・・・!!」
その時、奥の部屋から霊夢を呼ぶ声が聞こえてくる
「霊夢・・・、お腹すいた・・・」
その声の主は博麗神社に居候している酒好きの鬼、伊吹萃香のものだった
「うるさい!適当になんでも作ればいいでしょ!!」
「・・・」
萃香の返事の声が聞こえてくる事はなかった
「ああもう!!」
霊夢は八つ当たりしたあと、元々敷かれていた布団に入ってふて寝する
霊夢の目が覚めた頃には、既に時計は午前8時6分を指していた
「もうこんな時間・・・。ちび助達は・・・とと」
霊夢はよろけながら居間に向かうと、そこには萃香と、もう一人の居候のルーミアの姿はなかった
代わりに、机の上に書き置きが置いてあった
『お腹すいたから、雅人の所行って何か食べさせてもらってくる』
「・・・何よ、最初からそうしなさいよ」
霊夢は一人呟くと、書き置きの紙を置いてもう一度部屋に入る
すると、最初に部屋を出たときには気づかなかったが、霊夢のスマホがメールが来ていることを知らせていた
「・・・メール?」
霊夢はスマホを操作してメールを開くと、どうやら送り主は魔理沙の様だった
『霊夢、あの時は言えなかったけど、私も雅人と同意見だ。お前は軍人を通り越してただの快楽殺人者だ』
魔理沙からの批判メールに、霊夢はますます不機嫌になり、床にスマホを投げつける
「何よ!魔理沙まで!!」
床に転がるスマホを放っておいて、自分自身は布団にくるまり、ふて寝する
「美味しかったのだ~!」
そう言った人食い妖怪、ルーミアは口許にご飯粒を付けて満面の笑みを浮かべる
「ハハ、そりゃ良かった」
皿洗いをしている部屋の主である雅人は、満面の笑みを浮かべるルーミアを見て自分も笑顔になっていた
「それにしても突然来て悪かったな~」
すっかり寛いでいる萃香はベッドの上で胡座をかいている
「いやいや、気にするなよ萃香。まあ、買い物から戻ってきたら玄関前に座ってたから少し焦ったけど」
雅人はそう言って苦笑いすると、洗い終わった食器を乾燥棚に置く
「そりゃ悪かったね。何しろ他に当てが無かったから」
「まあ、構わないけどな。そう言えば、霊夢の奴、どんな様子だった?」
「・・・荒れてた」
「・・・やっぱり」
雅人は予想通りの答えにため息をつく。もし霊夢が荒れてなどなければ萃香とルーミアは自分宅に来ないのだから
「仕方ないさ・・魔理沙や早苗等はとにかく、霊夢は変わっちまった。あの襲撃事件以来、な」
雅人はそう言ってGMDSの時の襲撃事件を思い出す。あの時の事がきっかけで、純潔を散らした仲間や、強烈な
「・・・・・・雅人、霊夢をどう思ってる?」
「・・・愛してる、と思いたい」
「・・・・・」
萃香はこれ以上は聞くまいと言わんばかりに口を閉ざすと、その場を沈黙が支配する
それからどれ程の時が経っただろうか。突然、部屋の卓上電話が鳴り始め、雅人は反射的に受話器を取り、耳に当てる
「もしもし」
【もしもし、私よ】
受話器からは聞き慣れた霊夢の声が聞こえてきた
「・・・何の用だ」
【うちのチビ達、そっちに行ってない?】
「・・ああ、来てる」
【やっぱり。今から迎えにいくから】
そう言って、一方的に通話は終了される
「・・・・・・・霊夢が迎えにくるんだと」
雅人はそう言って受話器を置き、萃香達に顔を向けると、二人は何やら怖がっているのか、少し震えていた
「帰りたくない・・・」
ルーミアがそう呟くと、勘のいい雅人は大体察する。霊夢から逃げてきたも同然だ、と
それからしばらくして、部屋にはチャイムの音が響き、雅人がドアの前の覗き穴を覗くと、霊夢の顔があった
「・・・・」
雅人はチェーンをかけたままにしておこうかとも思ったが、それだと霊夢の神経を逆撫ですると思い、チェーンを外してドアを開ける
「・・・・・よぉ」
「悪いわね。うちの居候が世話になって」
「別に構わんさ」
雅人がそう言うと、霊夢は萃香とルーミアの方に視線を向ける
霊夢と目があったルーミアは少しだけビクッ、と体を震わせる
「全く・・・世話かけさせないでよ。ほら、帰るわよ」
「・・・」
霊夢は手を伸ばすが、ルーミアと萃香はその手をとろうとしない
「・・・・・?どうしたのよ」
「・・・帰りたくない」
萃香がそう言うと、霊夢は露骨に舌打ちをする
「なに言ってるのよ。ここに居てたら雅人にも迷惑が掛かるでしょ?」
「・・・」
「・・・あんまりしつこいと、怒るわよ」
霊夢は拳を振り上げると、後ろから雅人がその手を掴む
「その辺にしておけ」
「・・・これは私達の問題よ。雅人には関係ないわ」
「霊夢・・・いい加減目を覚ませ」
雅人がそう言うと、霊夢はギリッと歯を食い縛り、雅人を睨み付ける
「何よ!何も分からないくせに偉そうに!!」
「ああ。俺はお前じゃないからお前のことなんか何もわからないさ。ましてや正常な奴に殺人快楽者の思考回路なんて分かるはずもない」
その言葉を聞いた霊夢は雅人から自分の腕を振りほどき、雅人に掴みかかる
「あんたに私の気持ちなんか・・・!!!」
「さっきも言っただろ。俺はお前じゃない。お前のことなんか分かるはずもない」
「うるさい!!」
霊夢は雅人の顔めがけて殴り付ける。雅人は防ぎもせず、霊夢のことを睨み付けていた
「俺の知ってる霊夢は・・・仲間を家族のように大事にしてるやつだ・・・。いつもチームの雰囲気を考えて、部下の相談にものって、酒盛りじゃあバカみたいに飲みまくって、とにかく明るいやつだった。俺はそんなお前が好きだ・・。仲間としても、女としても」
「な、なによ・・・そんな綺麗事で・・・」
「ああ。単なる綺麗事かもしれない。でも、俺を今の俺に変えてくれた恩人が、昔の俺みたいにテロリストを殺す事が生き甲斐な奴になるのが我慢ならねぇ・・!!
雅人は声を荒げて霊夢の拳を退けると、霊夢の背中に両腕を回す
「もう・・・いいだろ?霊夢・・・もういいんだ・・・」
「ま、さと・・・・」
「頼むから・・・元に戻ってよ・・・霊夢・・・」
「・・・・」
霊夢も、雅人の背中に両腕を回す
「なら・・・一つだけ・・・お願い」
そう言うと、ポケットに入れていた自分のドッグタグを取りだし、雅人に見せる
「これ・・受け取ってくれる?」
霊夢は不安そうな顔をしながらドッグタグを見せると、雅人はニッコリとした表情を見せる
「・・・・勿論、さ」
雅人が霊夢のドッグタグを受けとると、雅人は霊夢から体をどける
「ほら、チビ助達んとこいってこい」
雅人がそう言うと、霊夢はルーミアと萃香の方に歩み寄る。先程までは怖がっていたが、今は何故か平気だった
「ごめんね・・・二人とも・・・」
霊夢は二人を抱き締めると、謝罪の言葉を交わす
「ごめんね・・・辛く当たって・・・ごめんね・・・」
「も、もういいから・・・霊夢・・・」
「・・・・萃香、ルーミア」
霊夢は二人の顔を見ると、笑顔になって優しく笑う
「・・・・じゃあ、お詫びといっちゃなんだけど、外食しましょっか。雅人の奢りで」
「ふぁっ!?」
「冗談よ。私が出すに決まってるでしょ?まあ、車の運転は雅人にしてもらうけどね」
「それくらいならお安いご用さ。さ、行くか」
「あ、その前に・・・」
霊夢はそう言うと、雅人に向かってキスをする
「むぐっ・・・」
「・・・・フフ、ありがとう。雅人」
そう言うと、彼女は雅人に笑顔を見せる。その笑顔は純粋な、可愛らしい笑顔だった