ーーー幻想郷 第三地区 某高等学校
リサは校門前のインターホンを鳴らすと、すぐに教員と思われる女性から声が返ってくる
【はい、どちら様でしょうか?】
「すみません、警察の者ですが・・・」
【ああ、はい。今開けますので】
そう言われると、校門が勝手に開き、リサ達は校舎内に入っていく
「不審者対策バッチリね」
「そうね。敷地内だけは」
リサはさらっと皮肉を言うが、パルスィはあえてツッコまなかった
「あの~、警察の方にはもう知ってること全て話しましたが・・・」
「いえいえ、ただ確認したいことがございまして。校長先生」
リサはそのままメモ帳を開いて質問を始める
「あの遺体の少女はこの学校の女子生徒、間違いありませんね?」
「は、はぁ・・・その通りです」
「彼女は成績が悪かったが素行は良かった。これも間違いないですね?」
「はい。そうですが・・・・?」
「そして、彼女は何らかの理由で自殺した。これも?」
「その通りですが・・」
すると、リサはニヤリと笑ってメモ帳をパタンと閉じる
「そこがおかしいんですよ。校長先生」
「・・・・?」
「この事件はマスコミで報道なんかされていない。それなのに何故自殺だと?」
「・・・・!!」
すると、校長の顔色が変わったのがリサとパルスィには分かった
「そ、それは・・・今のシーズンだと考えると自殺したと・・・」
「なら何故その事を言わなかったのですか?私達に隠し事すると偽証罪で貴方も逮捕することになりますよ?」
「と、とにかく!もう私は何も知らない!帰ってください!」
「・・・分かりました。ご協力感謝します」
リサとパルスィは学校を後にすると、覆面パトカーに乗り込む
「・・・・・・リサ、分かった?」
「うん。間違いなく何かを隠してる。それも学校ぐるみで、ね」
今のリサはいつものゆったりした目ではなく、犯人と言う獲物を追う捜査官の目をしていた
「・・・私は、必ず犯人を捕まえて見せる。そして、犯罪者を法に裁かせてやる。そうしないといつまでたっても彼女は浮かばれない」
「・・・・そうね、リサ」
その頃、こいしとヤマメは彼女の家の近所の人から話を伺っていた
「つまり、彼女はあまり目立たないような人だったと?」
「ええ。まさかあの子が死んじゃうなんてねぇ・・・。虫も殺せないような優しい子だったのにねぇ」
「そうなんですか?」
「うちの子がこけて泣いた時も、絆創膏持ってきてくれて、その後飴玉もあげてたわね」
「それはまた・・・」
「でも、あんな優しい子がねぇ・・・」
「大丈夫です。真相は私達が明らかにしますから。ご協力感謝します」
こいしとヤマメはそのまま去っていく
「こいし、彼女は憎まれるような子じゃなさそうだな」
「うん。それは間違いないね」
すると、二人の無線機から自分達を呼ぶさとりの声が聞こえてくる
【皆、一度戻ってきてくれない?重要な情報が入ったわ】
「了解。行くぞこいし」
二人は覆面パトカーに乗り込んで本社へと戻る
こいしとヤマメが戻った時、そこには既にパルスィとリサの姿があった
「二人も戻ってきましたよ。チーフ」
「ええ、そうみたいね」
「それで、重要な情報ってなに?お姉ちゃん」
さとりは目の前のディスプレイに何かの画面を映す。それはSNSのトーク履歴の様だった
そこには被害者に対する誹謗中傷の言葉が書かれていた
「これは・・・・」
「酷いわね・・」
「被害者のスマートフォンを少し調べさせてもらったの。そしたらこんなのが、ね」
「いじめ・・か」
「まだあるのよ」
さとりはそう言うと、ディスプレイの画面を切り替える。今度も誹謗中傷の言葉だらけだったが、先程とは画面が違っていた
「・・・・これは?」
「あの高校の学校裏サイトみたいね」
「裏サイト?」
「こいしちゃん、裏サイトって言うのは学校の生徒が勝手に立ち上げてるサイトよ。そこでは誰が誰だか分からないから他人の悪口言い放題ってことだよ」
「分かりやすい説明ありがとう。リサ」
こいしの代わりにさとりが感謝の言葉を述べると、さとりは画面をスクロールさせる
そこには被害者の服を脱ぎ始めるところから、全裸になった写真が貼られていた。写真から察するにカメラの方を向いていないため、恐らく盗撮であろう
「・・・外道ですね」
リサは口調は落ち着いていたが、握りしめられた拳が彼女の怒りを表していた。どうやら周りにいるパルスィ達も同じのようだ」
「SNSの運用者に照会をしてもらったところ、加害者は被害者の同じクラスの生徒達だと分かったわ」
さとりは加害者達の顔写真をディスプレイに写し出す
「これを見る限り、彼女は自殺したかもしれない。でも、彼女を死に追い込んだ連中はのうのうと生きている。でも、私達はそれを許すことはできない。許す気も更々ない。加害者を全員捕まえる、そうしないと彼女は浮かばれない」
「ヤマメ、裁判所から逮捕状を取ってきて」
「了解」
ヤマメは急いで部屋を出る
「ヤマメが戻り次第、すぐに行くわよ。パルスィ、他の同僚達にも何時でもいけるように伝えておいて」
「分かったわ」
パルスィも部屋を出ると、さとりを含め3人が部屋に残される
しばらくすると、ヤマメは逮捕状を持って部屋に戻ってくる
「取ってきたぞ」
「分かったわ。全員行くわよ」
さとり達は部屋を出ると、隣接する待機部屋からスーツに身を包んだ捜査官達や、制服に身を包んだ制服警官達が出てくる
「やっとですか、さとりさん」
「ええ、待ってもらって悪いわね」
「平気ですよ。さて・・狩りに行きますか」
男性捜査官は指をポキポキと鳴らし、さとり達の後を着いていく
さとり達は警察車両に乗り込んで例の高校へと向かう
警察車両が高校の校門付近に止まり、下校する生徒の中の加害者達を探す
「・・・・居ました」
リサの目線の先には、何も知らずに歩いてくる加害者達の姿があった
「行きましょう」
「ええ」
リサとパルスィが車を降りると、加害者達の方へ近づいていく
「君、ちょっといい?」
「な、なんすか?」
リサとパルスィは目の前の二人に警察手帳を見せる
「悪いけど、貴方達に逮捕状が出てるから」
リサは逮捕状を見せると、目の前の二人の他に四人、下校する生徒の中を走り出す
「あっ!待て!!」
二人は無関係な生徒を避けて加害者を追いかける。すると、機転を聞かせたヤマメ達が警察車両で道を塞ぎ、その隙に他の車両から飛び出したこいしや他の捜査官が生徒の四人を地面に押し倒して手錠をかける
「畜生!!捕まってたまるか!!」
加害者のうちの一人が警察車両を飛び越えて逃げようとするが、すぐにリサが追いつき捉えようとするが、加害者が小型の折り畳みナイフを振り回す
「お巡りなんかに捕まってたまるかよ!!」
「・・・警告する。武器を捨てて無駄な抵抗はやめ、投降しなさい」
リサは光の無い目で言いつけるが加害者である男子生徒は聞く耳を持たずにナイフを持ってリサを突き刺そうとする
リサは男子生徒の手首を掴んでナイフを落とすと、そのまま腕を掴んで自分の肩に乗せて背負い投げをし、地面へと叩きつける
「かはっ・・・・」
リサはそのまま男子生徒の背中に両腕を回して手錠をかける
「You have the right to remain silent!!(お前達には黙秘権がある!!)」
リサはそう言うと、そのまま男子生徒を立ち上げさせて警察車両へと連れて行く
「ふう・・・疲れた」
事件が片付いた一行は部屋でコーヒーを飲んでいた
「チーフ、あの連中はどうでしたか?」
「全部吐いたわ。あの校長も学校の名誉を落としたくなかったとか言って、すべて吐いたわ」
「学校の名誉、ねぇ・・・・。人の命とどっちが大事なのかしら」
「パルスィ、仕方無いさ。人間も妖怪も自分と、自分の立ち位置が可愛いんだ。バカが増えた世の中だな」
「・・・冷たい世界になったのね、外の世界も」
パルスィはそう言ってクッキーをかじる
「あら?そういえばリサは?」
ここで、さとりがリサが居ないことに気づく
「リサなら寄るとこがあるって言ってどっか行ったよ」
「・・・ここね」
リサはそう言うと、車を降りて墓地の中に入っていき、一つの墓の前にしゃがむ
その墓には、被害者の名前が彫られていた
リサは線香に火を付け、花を添えると、手を合わせて目を閉じて黙祷する
リサが目を開けると、墓に向かって話しかける
「君をいじめてた犯人は捕まえたよ。辛かったよね。嫌になったよね。私には貴女が殺されたのか、自ら死を選んだのかは分からない。でも、貴女は死んじゃいけない人だったのは間違いないよ。天国からお母さんとお父さん、見守ってあげててね」
リサはそう言って墓を離れようとすると、突如風が吹き、その風と共にリサには「ありがとう、お姉さん」と聞こえた気がした
「・・・・どういたしまして。加穂留ちゃん」
リサはそう言って、足を進めていく