「うえー・・・にがーい」
壁一面真っ赤な屋敷の一室で、マグカップの中身を飲んでいるロリっ子体型の吸血鬼、レミリア・スカーレットが従者に入れてもらったばかりの砂糖もミルクも入れていない熱々コーヒーに顔をしかめていた
「ですから、お嬢様にはまだブラックコーヒーは早いかと・・・」
「うるさいうるさい!!フランに飲めて姉である私に飲めないはず無いのよ!!」
レミリアは意地でも飲もうとするが、やはりブラックコーヒーの苦さに耐えられないのか、思わず吐き出しそうになる
「うぇぇ・・・・」
「お嬢様、カフェオレに致しましょうか?」
「・・・・お願い」
レミリアは諦めたのか、マグカップを咲夜に渡すと、咲夜は笑みを浮かべてまだコーヒーが入ったマグカップを持っていく
「・・・・また、フランにバカにされる」
レミリアは自分のカリスマが徐々に崩壊していくのを感じていた。現に、妹であるフランドールにも「苦いコーヒーも飲めないなんて、お姉ちゃんはお子さまだねぇ」とバカにされているのである
(どうして、こんな目に・・・私はこの紅魔館の主人、カリスマだってあるはずなのに・・・)
レミリアは心底下らないことでため息をつくと、ドアが開いてお盆の上に置いたマグカップを置く
「お待たせいたしました」
「ありがとう・・・」
レミリアは自分を情けなく思いながら咲夜が入れてきてくれた甘いカフェオレを飲む
「・・・美味しいわ」
「ありがとうございます、お嬢様」
レミリアの気持ち等露知らず、咲夜は薄く笑みを浮かべる
「・・・咲夜、貴女胸の傷はもういいの?」
「えっ?」
突然の主人の気遣いに、従者である咲夜は驚いた表情をし、そのあとに何でもなかったかのように、また笑みを浮かべる
「お嬢様、私なら大丈夫でございます。お嬢様を守って死ねるのなら、本望です」
「っ!」
レミリアは先程の咲夜の発言が気に入らなかったのか、マグカップが割れることなど気にせずに机に叩きつけるかのように乱暴にマグカップを置く。案の定、予想していた通りマグカップは割れ、机には飲みかけのカフェオレが溢れる
「咲夜!!次同じことを言ったらその舌を切り取って首を切り裂くわよ!!」
「ひっ・・・お、お嬢様・・・?」
咲夜は何故自分が怒鳴られてるのか分からず、困惑していた
「・・・ごめんなさい。言い過ぎたわ」
レミリアはすぐに落ち着きを取戻し、割れてしまったマグカップの取っ手を机の上に放り投げる
「・・咲夜、これは主人と従者としての関係じゃなく、上官と部下として言うわ」
「私の部隊に、元から私の為に死ぬ前提で考えてる隊員なんて居ないの。自分と任務に忠実な隊員しかかいないの。分かった?」
「・・・・・」
咲夜はピシッと気をつけをし、右手を自分のこめかみ付近まで持ってくる
「Yes, Ma'am!!」
「・・・それでいいのよ、咲夜」
レミリアは咲夜に微笑みかける
「咲夜、申し訳ないけど、もう一度カフェオレ、持ってきてくれるかしら」
「かしこまりました」
咲夜は右手を下ろし、再び部屋を出ていくと、レミリアは何者かに問いかける
「・・・・見てるのは知ってるわ、スキマ妖怪」
すると、何もない空間からたくさんの目がついた空間が現れ、そこからスキマ妖怪こと八雲紫が姿を表す
「やっぱり気づかれてたのね」
「兵士の勘って奴よ」
「いっぱしの事言うようになったのね、カリスマ吸血鬼さん」
「・・・・・それで、何の用よ」
「おっと、そうだったわね」
紫はさも思い出したかのような事を口に出すと、先程とは違う真剣な表情になる
「貴女達に命令よ。アフリカに飛んで貰うわ」
「アフリカに・・・・?」
「ソマリアで作戦を行っていた部隊から緊急通信があったの。作戦中に
「・・・それで、その作戦中の部隊は?」
「1名を残して分隊全滅よ」
「・・最悪ね」
「だから、貴女達の出番よ」
「・・・・・・分かったわ」
「すぐに支度をしてね」
「待ちなさい」
紫はスキマに戻って行こうとするが、レミリアが引き留める
「なにかしら?」
「・・・1つ聞きたいわ。貴女は何故、平和より軍事を選んだの?」
「・・・私は、外の世界をずっと見てきた。いつ大きな戦争が起こってもおかしくないわ」
「救済のため?」
「・・・バカ言わないで」
紫がそう言うと、紫の目から光が消える
「これはビジネスよ。今の世界は戦争が最も儲けさせてくれる商売なの。それと、貴女は平和なんて言ったわね?今の世の中、武力がなければ平和なんて作れないわ」
「・・・」
「話はそれだけかしら?」
「・・・ええ」
紫は今度こそスキマに入って戻っていくと、何も知らない咲夜が入ってくる
「お嬢様、お待たせしました」
「・・・咲夜、作戦命令よ」
「・・・いきなりですね」
「すぐにフラン達に準備させて召集をかけて。今回は大きな任務になりそうよ」
ーーーアフリカ大陸 ソマリア 現地時間午後20時24分
レミリア達はソマリアの夜で作戦行動を開始していた
「パチェ、付近の敵影は?」
【レーダーに反応なし、付近には居ない模様】
「了解」
レミリア達は何処にいるかも検討がつかない状況で、慎重に進んでいく
(ここで分隊が襲撃された・・・?武装組織にやられた・・・?いや、あり得ない。いくら不意打ちとはいえそんなに早く部隊が殺られる筈無い)
咲夜が頭の中で考えていると、ザザッという小石や砂利を踏んだような音がし、咲夜は音のした方にHK416の銃口を向け、それに気づいたレミリア達も咲夜と同じ場所に銃口を向ける
「ひっ・・・!!」
そこには、GIEFの装備を身に包んだ男性隊員が居た
「・・・・所属は?」
「こ、殺さないで・・・」
男性隊員は恐怖で混乱しているようだった。酷く怯えている
「・・・大丈夫、味方だ」
美鈴がそう告げると、男は安心したのか、へなへなと腰をつく
「もう一度聞く、所属は?」
「ゆ、ユニット18・・・森山進吾・・・」
「・・・貴方ね、生き残りは」
レミリアは銃口を下ろして森山と名乗った男性隊員に近づく
「どうした?何があったの?」
「あ、アイツが・・・番犬が・・・」
そう言った途端、彼は飛来した弾丸に額を貫かれる
「っ!!敵だ!!」
レミリア達は散開して障害物に身を隠す
「HQ!HQ!敵の襲撃だ!!ユニット18所属、森山進吾死亡!敵の数不明!!」
【了解。すぐにそこから離れて第3撤収地点に向かえ】
美鈴が通信していると、彼女達の隠れているカバーポイントに銃弾が浴びせられる
「くそっ!」
レミリアは銃弾が飛来してきた方向にMk18 mod0を発砲し、付近で鉛弾が飛び交う銃撃戦が開始される
そんなとき、1発の銃弾がフランの頬を掠める
「うっ!」
「フラン!」
しかし、フランは頬から出る血を拭うと、すぐに射撃を再開する
「HQ!敵の攻撃が激しくて撤収出来ません!このままじゃ全員殺られます!」
【先ほど、米軍の戦闘支援をしていたブラッディムーンのコントラクターを向かわせた。あと5分で到着だ。それまでなんとしても持たせろ】
「2分も待てません!!」
美鈴はインカムに怒鳴り付けると、M249を引き続き発砲し続けるが、弾丸が全く当たらない
(くそっ・・・強い!)
ユニット2の面々は必死に反撃していくが、敵の部隊は徐々にこちらに向かって距離を積めてくる
(くっ・・・殺られ・・・)
咲夜が死を覚悟すると、突如別方向から敵の部隊の方に弾丸が飛来する
「がっ!」
咲夜に近づいていた敵兵に命中したのか、男の声が暗闇の中にあがると同時に、敵の攻撃が手薄になり、NVGをつけた増援部隊が次々に発砲していく
「み、味方・・・?」
レミリアがそちらを見るが、BDUに身を包み、バラクラバで顔を隠した格好をしており、明らかにPMCではなかった。すると、レミリア達に攻撃を行っていた部隊が、負傷者を引きずって撤退していく
【ユニット2、アンノウンが増えたぞ!状況を報告せよ!】
「アンノウンが敵部隊に発砲!敵部隊・・撤収していったわ!」
【そんなバカな・・・ブラッディムーンはまだ到着していないぞ!?】
すると、バラクラバを被った部隊長らしき兵士がレミリアに近づいていく
「GIEFだな」
「そ、そうよ」
部隊長はどうやら女性のようだ。しかし、バラクラバから見えるNVGを外した目は、歴戦の兵士であることを物語っていた
「ユニット1の草薙雅人に伝えろ。少しは成長したな、ってな」
「・・・貴女、どうして雅人を?」
「・・・・話は終わりだ」
彼女はそう言うと、そのまま部下を引き連れて暗闇の中へと去っていく
「・・・なんだって言うのよ。一体」
レミリアは訳がわからなかった。突如自分達を襲ってきた敵部隊、そして自分達を助けた部隊、さまざまな事が頭の中に入ってきて混乱していた
「・・・HQ、敵は撤収した。撤収ポイントに向かう」
【了解、ブラッディムーンのヘリに回収に向かわせるように指示する】
ーー後日 GIEF本社 休憩室
「って言うことがあったのよ」
「フーン、ダイナミックな話だな」
「此方は死ぬとこだったのよ?」
「あー、わりいわりい」
レミリアの話を聞いていた雅人は、軽く謝る
「全く・・・それじゃあね」
話を終えたレミリアは買ったばかりの炭酸飲料を持って雅人の側から離れていく
(・・・・まさかアイツが現れるとは、な)
雅人はなにかを知っていたようだが、レミリアには告げずに缶コーヒーを飲む
ーー同日 GIEF 屋上
「・・・・もしもし」
【・・お前か、なんだ?此方は忙しいんだ】
「じゃあ単刀直入に言ってやるよ、何故GIEFの部隊を襲った?」
【・・・何処からその事を知った?真。まあいい、PMCのお前には関係のない・・・まて、お前まさか!】
「ああそうさ、俺は今、GIEFの兵士さ」
【貴様・・・なぜ祖国を捨てて敵国についた!?】
「俺は兄貴みたいに愛国心なんてものは無くてね。でも、これだけは言っておいてやる」
「GIEFの同僚は家族同然だ。俺の家族に手ェ出したんだ。兄貴だろうといずれぶっ殺してやる」
【・・・いいだろう。お前達GIEFも我々番犬が必ず消す運命だ】
「上等じゃねえか。お前ら狂犬に吠え面かかせてやるよ」
真はそう言うと、通話を終了させて屋上から出ていく