東方軍事組織   作:SOCOMレオン

56 / 63
大きすぎる犠牲

ーー幻想郷 第四地区 北東区

 

この日、GIEFの新規訓練生達はそれぞれ車両班と歩兵班に別れて市街地での訓練を行っていたが、思わぬ観客達に妨害を受けていた

 

「市街地での訓練反対!GIEF反対!」

 

「GIEFは即刻解散しろ!」

 

「お前ら人殺しが楽しいのか!」

 

横断幕を掲げた左翼達が車両や歩兵に罵声を浴びせたり車両通行の妨害をしていた

 

教官として参加したユニット1、4の隊員達は無線で通信を行う

 

「HQ、左翼活動家が訓練活動の妨害を行っている」

 

【了解。ペースを上げて振りきれそうか?】

 

「歩兵班を乗せれば、な」

 

【了解。歩兵班全員を回収し、そこから近いブラッディムーン本社に向かえ】

 

「了解した。全車両班、及び全歩兵班に次ぐ。訓練は一時中断。歩兵班は車両班の車両に乗り込め。繰り返す。訓練は一時中断。歩兵班は車両班の車両に乗り込め」

 

臨時教官として参加している雅人は指示を出すと、歩兵班の訓練生達はハンヴィーやストライカーに乗り込んでいく

 

【雅人、全員乗り込んだ様よ。出発するわ】

 

「了解」

 

霊夢が乗り込んだハンヴィーが先頭になってその場を離れようとするが、活動家達がそれを阻止するかのようにハンヴィーの前に立つ

 

【民間人に次ぐ。車両通行の妨げになります。速やかに道を開きなさい。繰り返す。車両通行の妨げになります。速やかに道を開けなさい】

 

「人殺しが偉そうなこと言うな!」

 

「誰がお前達の言うことなんか聞くか!!」

 

左翼活動家は全く聞き入れずに道を開けない。すると、列の中央辺りにいたハンヴィーがスピーカーを出すと、大音量でデスメタルを流し始める

 

左翼活動家達が耳を塞ぎ、怯んだ隙に先頭のハンヴィーが発車して、雅人達の乗る車両も後に付いていく

 

【此方ユニット1、東風谷早苗。どうでしたか?】

 

【早苗、ナイスよ】

 

車両内でケラケラと笑い声が響くと、味方から無線が届く

 

【此方最後尾、犬走椛。後方から車両接近。白いバンです。左翼活動家の近くに止めてあった物と同車のため、活動家が乗っている物と見られます】

 

バンは先頭のハンヴィーを追い抜き、そのまま抜かせまいとブロックする

 

ハンヴィーのドライバーはなんとか回避して進もうとするが、相手も抜かせまいとブロックし、速度を落としてくる

 

ハンヴィーのドライバーがハンドルを切った瞬間、反対車線から向かってきた大型トラックと衝突する

 

「!!」

 

霊夢達の乗るハンヴィーの後ろに付いていたストライカー装甲車に乗っている雅人はすぐに無線で知らせる

 

「全車両緊急停止!緊急停止!ハンヴィー1台交通事故!!」

 

雅人達は車両から飛び出すと、急いで交通事故の現場に向かう。すると、そのまま左翼活動家の車は発進する

 

「クソッ!アイツ等!」

 

「あの連中より此方です!!大丈夫ですか!?」

 

妖夢はトラックの運転手に話しかけると、エアバッグの衝撃で顔が赤くなっていたが、コクコクと頷く

 

「雅人さん!トラックの運転手は負傷無し!そっちは!?」

 

「負傷者2名!訓練生2名死亡!!」

 

「そんな・・・!」

 

「うう・・・」

 

助手席に座っていた霊夢は頭から血を流して呻き声をあげる

 

「霊夢っ!しっかり!」

 

「雅人・・・ゴフッ!」

 

霊夢は口から赤黒い血を吐き出す

 

「喋らないで!」

 

鈴仙が医療用の道具を持って応急処置に掛かる。鈴仙が霊夢の胸部を触れると、霊夢が痛みで顔をしかめる

 

(左腕の骨折・・・あばら骨も何本か折れてる・・)

 

「雅人さん!このままじゃ不味いです!すぐに医療班を!」

 

「あ、ああ・・!」

 

雅人はハンヴィーに戻り、無線機を取ると本部へと周波数を合わせる

 

「HQ!ハンヴィー1台が事故を起こした!負傷者2名!訓練生2名死亡!!うち1名重症!!直ちに医療班を要請する!!」

 

【なんだと・・・クソッ。すぐに医療機関に連絡してヘリを送ってもらう】

 

「出来るだけ急いでくれ!アウト!」

 

雅人は無線機を放り出して霊夢の方に向かうと、鈴仙が必死に霊夢の応急処置を施していた

 

「鈴仙!今此方にドクターヘリが向かって来ている!それまでなんとかしてくれ!」

 

「分かってます!!」

 

「まさ・・と・・・」

 

霊夢がか細い声で雅人の名前を呟き、雅人は霊夢の側に移動し、霊夢の右手を掴む

 

「大丈夫、俺はここにいるから・・・」

 

すると、霊夢は小さく首を横に振る

 

「もう・・・分かってる、の・・私は・・・助から、ない・・・から・・」

 

「霊夢!?」

 

「霊夢さん!?何を言ってるんですか!!絶対に助けます!!だから・・・」

 

「分かる・・のよ。自分の、体の事・・・だから・・・」

 

霊夢がそう呟くと、彼女は再び吐血する

 

「もういい喋るな!絶対に助かる!諦めるんじゃない!!だから・・・」

 

「雅人・・貴方と、出会え、て・・・良かった・・貴方が、居なければ・・私は・・ここまで・・・生きられ、なかった・・・。私、の葬式、するとき、は・・・みんな、に・・・・・笑っ、て・・てほしい、の・・・悲しい・・・顔、より・・皆・・の笑顔、が・・・見たい、から・・・・・」

 

「やめろ!!そんなこと言うな!!」

 

雅人は目に涙を浮かべるが、霊夢は続けて呟いていく

 

「もっと・・・貴方を見て、いたかった・・・わ。さよう、なら・・・私の・・・・・雅人・・・」

 

霊夢は最後に笑顔を浮かべると、雅人が掴んでいた右手が重くなり、霊夢の体全体が重くなる

 

「霊夢・・・?霊夢!!霊夢!!」

 

鈴仙は霊夢の呼吸と心臓の拍動の確認をする

 

「そんな・・・心肺停止!これより胸部を開胸し心臓マッサージを行う!!」

 

鈴仙は医療キットからゴム手袋とメスを取り出すと、霊夢の胸を開胸し、鈴仙は手を突っ込んで直接揉み始める

 

「戻ってこい!戻ってこい!霊夢さん!!まだ逝くには早すぎます!!」

 

鈴仙が心臓マッサージをしていると、ヘリのローター音が近づいてくる。ドクターヘリは道路に着陸して中から医療班が降りてくる

 

「大丈夫ですか!?」

 

「現在心臓マッサージ中!!意識、呼吸共に無し!!」

 

すると、医療班の隊員は鈴仙に代わって心臓マッサージを始める

 

鈴仙は霊夢の口から息を吹き込んでいくが、霊夢の心臓が動き出すことはなかった

 

「・・・・雅人さん・・すみません・・・・・すみません・・・すみません・・・ッ!!」

 

鈴仙は泣きながら雅人に謝罪の言葉を告げるが、雅人は無言で無線機を取る

 

「・・・HQ、重傷者・・・博麗霊夢・・・死亡・・した・・ッ!!」

 

雅人の目からは堪えきれなかった涙が頬を伝って地面に落ちる

 

【こちらHQ・・・了解、した・・・。元帥にはこちらから伝えておく】

 

本社のオペレーターが通信を切ると、雅人は地面へと崩れ落ちる

 

「霊夢・・・霊夢・・・・霊夢・・・・」

 

雅人は涙を流しながら、壊れた人形のように霊夢の名前を呟き続け、憎悪と共に何かが芽生えた雅人の心は暗い闇に包まれていった

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーGIEF本社 執務室

 

「紫様・・・大変申し上げにくいことが・・・ございます」

 

「あら?改まってどうしたの?」

 

藍は何も知らない紫に向かって重い口を開く

 

「博麗霊夢が・・・死亡しました」

 

藍の口から飛び出た言葉に、紫は信じられないと言った顔をして藍の方を振り向くが、すぐにいつもの表情に戻る

 

「・・・・死因は?」

 

「左翼活動家の妨害による交通事故・・・です」

 

「・・・・そう。その活動家達は?」

 

「現在車で逃走中との事です」

 

「・・なんとしても見つけだしなさい」

 

「・・・了解しました」

 

藍が執務室を後にすると、自分以外誰もいない執務室で一人、紫は机に突っ伏す

 

(ダメよ・・・こんな仕事だもの・・人は死ぬのは当然の事。なのに・・・なのに・・・!!)

 

自分に心の中で言い聞かせるが、どうしても霊夢との記憶が甦ってきて、紫は嗚咽をあげながら泣き出し始める

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー後日 GIEF本社 軍人慰霊墓地

 

黒い霊柩車が墓地に到着し、GIEFの隊員が霊夢の遺体が入った棺を持ち上げると、制服に身を包んだ隊員達が一斉に敬礼すると、聖職者による祈祷が行われる

 

祈祷が進んでいくにつれ、魔理沙達は声をあげながら泣き始める

 

「霊夢・・・なんで・・・なんでッ!!」

 

「霊夢さん・・死ぬには・・早すぎますよぉ・・・ッ!」

 

魔理沙達の泣き声に釣られて、霊夢に親しい隊員達ももらい泣きし始める

 

「・・・・ハハ」

 

魔理沙達は笑い声のした方を振り向くと、そこは敬礼をしたまま笑う雅人の姿があった

 

「お前・・・何で笑ってるんだよ!」

 

「雅人さん!自分の彼女が死んだんですよ!?なのに・・・!」

 

隊員達の視線が突き刺さると、雅人は魔理沙達に口を開く

 

「アイツの最後の頼みなんだ。自分が死んだとき、笑ってくれって。俺はアイツを愛してた。だからアイツの最後の願いを叶えなきゃいけないんだ。霊夢の友人だと思ってるなら頼む。アイツの最後の頼み・・・聞いて、やってくれ・・・・ッ!」

 

雅人は今にも泣きそうな顔をして魔理沙達に懇願すると、魔理沙が声を出して笑い始める

 

「フフフ・・・アハハ・・・アハハハハハハハハ!」

 

魔理沙の笑い声に続いて早苗達も笑いだし、次第に葬儀に参加した隊員達全員が笑い始めるが、目から溢れる涙だけはどうしようもなかったが、全員が悲しいのを堪えて涙を流しながら笑っている

 

しばらくして葬儀は終了し、魔理沙達は次第にその場を離れていくが、雅人は霊夢の墓で佇んでいた

 

「霊夢・・・なんで俺を置いて逝くんだよ・・・。父さん、母さん、明美・・・大切な人は皆俺から離れていく・・。俺は・・・誰一人守ることも・・・出来ないのか・・・」

 

雅人は霊夢という最愛の女性であり、自らの支えを失い、どうしようもない虚無感が自らにのし掛かってくるのが分かった

 

「・・・俺は・・神様とやらに嫌われてるんだな・・。俺の命は奪わずに、俺の大切な人達の命を奪っていく・・・。残酷だよ、貴方達は」

 

雅人は制服のポケットから1つのドッグタグを取り出す。そのドッグタグには、霊夢の名前と血液型が記されていた

 

そのドッグタグを、雅人は握りしめる

 

霊夢(相棒)、これがお前の生きた証なんだな・・・。この世界(ここ)でお前が生き、死んでいったっていう証なんだな・・・」

 

雅人は自分が首から下げていた、自らのドッグタグの極細のチェーンに霊夢のドッグタグを通し、再び首から下げる

 

「霊夢、お前は俺を変えてくれた。ただただテロリストを殺すことだけを考えてくれてた俺を、お前は変えてくれた。ありがとう、霊夢・・・。そして・・・さようなら、俺の愛しい霊夢」

 

雅人は霊夢の墓にクルリと背を向け、歩き去っていく

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーーー 地点不明 時刻不明

 

(ここは・・・何処なのかしら)

 

少女は気がつくと、見覚えのない部屋でベッドに寝かされていた

 

周りは1面白い壁で覆われ、自分が寝かされているベッド以外は何もない部屋だった

 

唯一他にあると言えば、金属製のドア1つだった。そんなドアが唐突に開き、そこからヨーロッパ系と思われる若い男が姿を表す

 

「お目覚めかい?お嬢さん」

 

彼はニコッとした表情と共に少女へと話しかける

 

「貴方は・・・誰?」

 

「私か?私はカルロス・ボードレールと言う者だ」

 

カルロスと名乗った男は名字から察するにフランス人の様だ

 

「ここは・・何処なの?」

 

「ここかい?ここは命を落とした軍人が集う場所、とでも言っておこうか。M's博麗」

 

ベッドに寝転がったままの少女、博麗霊夢はさっぱり理解できなかった。ただ何となくわかるのは、ここは自分が生きた世界ではないと言うことだった

 

「ここは・・・天国なの?地獄なの?」

 

霊夢の問いにカルロスは軽く吹き出す

 

「・・・何よ」

 

「すまない。やはり君も同じことを聞くのだなと思ってね」

 

「ここは、天国でも地獄でも無い。ましてやあの世でもない」

 

「・・・・・?」

 

霊夢はカルロスの言った事がよく分からないようだ。自分がいるここは、あの世ではない。だが自分は現世で死んだ。それならばここは何処なのだ。霊夢の中でますますここが分からなくなった

 

そんな霊夢を知ってか知らずか、カルロスは口を開く

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「私達は君を歓迎する。ようこそ、煉獄軍へ」

 

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。