東方軍事組織   作:SOCOMレオン

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#3 任務終了(夢見の狩人ver)

唸り声を上げるトラックのエンジン音が、急速に接近しつつあった。

 

「……来た、か」

 

建物の壁から顔を覗かせた雅人は、荷台に重機関銃が搭載された大型のピックアップ・トラックに先導されている敵の増援部隊を確認した。

 

改造戦闘車両(テクニカル)が1台、荷台に迷彩柄の(ほろ)が掛けられたトラックが3台。いずれの車両にも武装した兵士が満載されており、ピックアップの銃座にはひげ面の男がどっしりと構えている。

 

たった1人で戦うのにはいささか荷が重過ぎるレベルの戦力差だったが、雅人は既に彼等をお迎えする準備は出来ていた。逃げるのには少なすぎる時間だが、待ち伏せをするために行動するには、十分すぎる時間があったのだ。

 

「悪いが、此処から先は絶対に行かせないからな」

 

雅人の両手には、ホッチキスに似た機器が握られていた。

 

 

 

「なんてこった、畜生……! 基地は全滅だ!」

 

増援部隊を先導する日本製のピックアップ・トラックの助手席で、サングラスを掛けた男が罵り声を上げた。

 

頭に暗い色の布を巻いて目元だけを出している男が、後部座席から身を乗り出して不安そうに周囲を眺めていた。口元の布がもごもごと動いて神への祈りの言葉が呟かれる。

 

「アル、何か見えるか?」

 

「死体だらけだ……」

 

アルと呼ばれた運転手の男は、呆然とした声で返答した。

 

彼は潜在的脅威を探して絶えず視線を動かしていたが、その目が夕日を浴びて揺れ動く細いワイヤアンテナの光を捉えたときには、自分の運転するピックアップは既に地雷の殺傷地帯に入り込んでいた。

 

後ろのトラックに追突されてでも車を停めようとアルはブレーキを踏み込もうとしたが、それは叶わなかった。

 

爆薬が凄まじい轟音とともに炸裂し、アルの運転するピックアップは宙に吹き飛ばされた。2回転したのち、裏返しの状態で地面に叩き付けられ、炎と砂埃を撒き上げ、滅茶苦茶にひしゃげた破片を撒き散らしながら前方へ滑っていく。

 

 

 

爆音と爆風が雅人に届いた瞬間、彼は道路端に設置していたC4の起爆装置を投げ捨て、傍らの壁に立てかけられていたRPG7のランチャーを肩に担ぎ、滑らかに膝立ちの姿勢を取った。

 

榴弾が発射されて、低い風切り音と共に最後尾のトラックへ飛翔し、車体が爆発して火に包まれる。

 

雅人へ接近するための道はピックアップの残骸で塞がれ、最後尾のトラックが爆発、炎上したことで退路も絶たれた残り2台のトラックは、慌てて急停車した。

 

「ビンゴ」

 

狙い通りに事が進んだことを確認した雅人は、HK416を手に建物を飛び出した。

 

無事な2台目のトラックへ発砲を開始し、慎重な射撃でタイヤを破裂させ、エンジンを粉砕し、泥水で汚れた跡があるフロントガラスを撃ち抜いて、運転手と助手席に座っていた兵士を射殺した。

 

ガラスが粉々に砕かれ、破壊されたトラックから焼けたゴムの匂いが漂い、油っぽい煙が吹き上がる。

 

「ほらほら、こっちだぞ!」

 

雅人はトラックから転げるように飛び出してきた敵兵に銃弾をお見舞いし、挑発しながらその場から移動した。

 

敵の銃弾が背後から追ってくるが、雅人は飛び前転をして建物の壁に隠れる。

 

自分の隠れている壁がガリガリと銃弾で削られていく音を聞きながら、雅人は敵の死体から奪った手榴弾を手にしていた。

 

ピンを抜き、安全レバーを飛ばしてから2つ数え、手榴弾を敵に投げつける。

 

炸裂した手榴弾は破片を撒き散らし、2人の兵士をずたずたにして土と砂からなる噴煙を立ち昇らせた。

 

「ふぅ……。今ので敵がビビってくれりゃ、ありがたいんだがな」

 

そう都合よく事が進むわけも無く、雅人はアサルトライフルを抱え直し、その場から移動した。

 

 

 

その頃、霊夢たち一行は回収ヘリのLZ(着陸地点)に到着していた。

 

文の持っていた着色スモークグレネードの緑色の煙を背景に、霊夢たちは小高い丘の上に居た。周辺に敵の姿は無い。

 

「後は、この2人を送り返せば任務終了ですね」

 

「ああ……そう、だな」

 

かすかに聞こえてくる銃声は、段々と激しさを増していた。地面を揺るがす程の爆発もあった。

 

雅人が1人で孤独に戦っていると思わしき場所からは、3本の黒い煙が晴れ渡った空に伸びている。

 

「……雅人さんの事は―――」

 

「分かってる……分かってるわ」

 

苦い顔をした早苗の言葉を、聞きたくないとばかりに途中で遮り、霊夢は俯いた。

 

ヘリコプターのブレード音が近づいて来るのを聞きながら、彼女は両の拳を強く、握った。

 

「…………」

 

無言で顔を上げた霊夢の視線の先で、新たな黒煙が空へと急速に伸びていくのが見えた。

 

 

 

その頃、人数の差を利用した人海戦術に、雅人は急速に押されつつあった。

 

「これがラストマグ、か」

 

HK416のマガジンを入れ替え、ボルトリリースレバーを操作して次弾を薬室内部に送り込む。

 

弾丸は使い果たした。周囲には先ほどの掃討戦で死んだ敵兵たちの死体も無い。転がっている武器を使う、という手は封じられてしまった。

 

壁伝いに移動し、反対側の壁から銃を構え、散弾銃を抱えて回り込もうとしてきた兵士の眉間を銃弾で叩き割る。

 

そうして出来た隙に、直ぐ傍に停めてあったトラックの影に飛び込み、身を隠した。

 

ふぅっ、と大きく息を吐き出した瞬間、トラックの下でカチャン、という何かが転がる音がした。

 

「―――ッ!?」

 

手榴弾だった。トラックの下に入り込んでいるため、投げ返す暇は無い。

 

「くそっ!」

 

雅人はトラックから飛び退くが、燃料に引火したトラックの爆発によって吹き飛ばされ、地面にたたきつけられた。

 

雷鳴のような轟音が、キーンという耳鳴りに変わる。視界が歪み、爆発の衝撃による圧力で、頭蓋骨が割れそうなほど痛んだ。

 

「くっ……うぅ……」

 

歪んだ視界に、敵兵が勝ち誇ったように"神は偉大なり"の意味で知られ、テロリストが頻繁に口にする「アラー・アクバル」の雄叫びを上げながら突っ込んでくるのが見えた。

 

 

先頭に立つ敵兵は、分隊支援火器という分類に入るRPK軽機関銃を手にしており、AKを長身化したような長い銃口から銃弾が吐き出され、雅人の周囲に着弾していく。

 

「がっ……!」

 

「おごぁッ!」

 

思わず目を閉じた雅人の耳に聞こえたのは、自分の呻き声ではなく、敵の絶命の悲鳴だった。

 

目を開けるとそこには、天へ向けてAKを撃ちながら倒れていく敵兵たちの姿が映った。いずれも、頭部や心臓を撃ち抜かれている。

 

先頭に立っていた男は周囲をキョロキョロと見渡し、状況を理解してから後ろを向いて逃げ出したが、後方から飛来した銃弾に背中の中央を撃たれて倒れる。

 

「雅人!」

 

此処に居る筈が無い、分隊長である霊夢が駆け寄ってくる。

 

「お前、何で此処に……?」

 

「貴方を助けに来たのよ! 此処から離れるわよ!」

 

雅人は頭を押さえながら立ち上がり、フラフラとした足取りで霊夢の後を追った。

 

「雅人、こっちよ! がんばって!」

 

霊夢が後ろを振り返って雅人を心配すると、彼女の前方に敵兵が現れた。

 

ドラグノフを構えた狙撃兵で、20m程しか離れていなかった。必中の距離だろう。

 

「霊夢!」

 

雅人はHK416を構えようとするが、その前に狙撃兵が喉を銃弾に貫かれる。

 

【霊夢さん、早く!】

 

「グッジョブ、鈴仙! 雅人、急いで!」

 

「了解!」

 

すると、木々の梢をざわつかせながら頭上にブラックホーク・ヘリコプターが現れた。側翼下にミニガンやミサイルの筒をぶら下げている重武装型だ。

 

後部のハッチから筒状の物体が地上に投下され、雅人たちの後方、敵兵たちが密集する地点に落下して大きな爆発を起こした。

 

機体側面から魔理沙の操るM2重機関銃が銃火を煌かせ、アリスや妖夢が地上へ向けて手榴弾を投げ落としていく。建物の影や林の中など、敵の隠れていそうな場所に集中的に投げ落とされた手榴弾が次々と破裂し、少なくない数の敵兵を殺害する。

 

ブラックホーク自体も、その場から逃走を図るトラックへとヘルファイア・ミサイルを発射するなどしていき、、圧倒的火力を持ってしてその場を制圧していった。

 

「あいつ等まで……」

 

 

空対空ミサイルを使う暇も無く、あれほど雅人が苦戦した敵兵の集団は、ものの数十秒で殲滅されていた。

 

 

 

その十数分後、ヘリの機内で雅人がぼやいた。

 

「ったく、何で戻って来るんだよ」

 

「そりゃあお前、あれだ、あれ……。初っ端から新人が死んだら後味最悪だろ?」

 

「そうよ、助けてやっただけ感謝しなさい」

 

『まったくだ。まぁ、ウォーミングアップにもなりゃしなかったけどな』

 

ついにはパイロットにまで笑われる雅人であった。

 

「はいはい……ありがとーございましたー」

 

「そこ、棒読みやめなさい」

 

先ほどまで戦闘が行われていたとは思えないほど和気藹々とした空気の中、早苗は救助した日本人へ離しかけていた。

 

「すみませんね、付き合わせてしまって」

 

「いえ、構いません。それより、助けてくださって、ありがとうございます」

 

「まあ……助けてくれた礼だ。帰ったら酒でも奢ってやるよ」

 

「よっしゃ! 太っ腹な新人が入ってきたぜ!」

 

『言ったな? 俺も行かせて貰うぜ』

 

ヘリの機内に、笑い声が響く。

 

(やれやれ、甘ちゃんの部隊だな)

 

雅人は微笑を浮かべ、座席に深く座り込んだ。

 

(ま、嫌いにゃなれねえな)




今回も夢見の狩人さんに書いていただきました!

もう狩人さんには感謝する言葉しかありませんwww

狩人さん、いつもありがとうございます!
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