……いや、書く手が進まんかったんや。許せサスケ。
…………前書きに書くことねぇ!
ではどうぞ
──レウスです。
最後のレース、有馬記念当日。現在私はルーチェと一緒に車に揺らされてます。ルーチェも車酔いとかはないようで自分と同じく到着をジッと待っている。
最後のレース
その言葉が頭の中を飛び回る。自分の軌跡の最終地点、道の終わり。ウマになって、競走馬として走って、沢山勝ててきた。楽しかったし、喜んで貰えるヒトがいて嬉しかった。そんなこと考えてるとどうやらもう着いたらしい。車から降りて
最後の証明、それを成す為に。
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パドックへと入る。馴染みのある懐かしい顔ばかりだ。君たちと共に最後を走れること、とても誇りに思うよ。
色んなウマを見て来たから思う。君たち少し強すぎやしないかい?
フフ、いや悪いことではないんだ。強さは
忘れてしまわないように。
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(集中してるな)
自分が今連れているウマを見ながらそう心の中で呟く。今まで無敗、計り知れないプレッシャーを受けてると考えていたが、ウマからしたら関係無いかと自分の考えを外に出すことなく完結させる。
(レウス……)
このウマは特別に成ったウマだ。トレセンに来た姿を思い返せば今目の前に居るウマがそのウマと同じウマとは思えないほどの変貌っぷり。そんなウマが今までレース上で鎬を削って来た仲間との本当のお別れを迎える。レウスの考えてることが分かる自分でも今レウスからはこれといったものが伝わってこない。ただうっすらと郷愁の念を感じる程度だ。
(見ているからな。最後まで)
レウスのことはきっと忘れられないだろう。自分や、彼の姿を見た者たち全てが。
様々な思いを湧かせていると、彼らに別れを告げる乗り手がやって来た。
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話を持ちかけられたあの時、少し残念に思ってしまった。現役最強と名高いインペラトルーチェではなく、同じく最強とは言われるアルギュロスレウスの騎乗依頼を聞かされ、ルーチェに乗りたかった自分としては強いウマに乗れる喜びと乗りたいウマに乗れなかった悔しさがあった。レウスが走っている所を見たことは今までもあったが、ルーチェの美しい走りと比べると綺麗な走り方だけど華が無い印象だった。……実際にレウスに乗って走るまでは。
レウスは賢かった。こちらの考えていることが伝わっているのが肌で感じる位だ。速度、位置取り、仕掛け所の調整がやり易いなんてものではない、果てにはマークやフェイントまで使っているのに気付いた時には戦慄した。乗っているうちに覚えてきたのか調整するまでもなく勝手に調整されていく走りは騎手としての尊厳が失われそうになった。でも、彼に乗っていたい、彼に乗ってレースをしたい。そう思わざるを得ないモノがあった。
彼に乗って走るレースは楽しかった。彼も独りで走っているとは思ってなく一緒に勝ちたいという想いが伝わってくるのだ。嬉しかった。彼の背中には騎手なんて要らないのにそれでも自分と勝利を目指したいと彼が想ってくれることに。自分という存在が彼の為にあると思ってしまう。彼に勝利を捧げることしか考えられなくなる。
あの時は悔しかった。ホースマンの夢、凱旋門賞。彼が夢への同行人に選んだのは直前まで共に走ってた自分ではなく、嘗ての相棒だったことに。結果としては敗けた。ルーチェも速かった、後数センチと言ったところだった、でも敗けた。彼の背に乗るあの人の背中が眩しくて暫くは見ることが出来なかった。
でも、今日は彼の背中は自分の居場所だ。彼の仲間に別れを告げる為に自分に出来ることをしたい。彼らの嫌でも目に入る場所、誰よりも先頭でゴールさせてやりたい。
想いを込めて、彼の元へ歩く。
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中原「お疲れ様です」
伏長「お疲れ様です」
中原「今日もお願いします」
伏長「任せて下さい。必ず勝ちます」
ユーイチ……、一緒に走ってくれるか?
伏長「勝とう。レウス」
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「時代の節目、世代の交代を知らせる鐘がなる。修羅と言われた時代、その中心を担ってきたウマ達はこのレースで引退となります。その活躍は国内に留まらず、世界を攻め落としてきた功績はこのウマ達でしかなし得なかったでしょう。王は玉座を守り切れるのか。反逆は成功するのか。新しい時代の知らせは響くのか。頂上決戦となる有馬記念が始まります」
1枠
一番 センターサイト(五番人気)
二番 クロックスライダー(七番人気)
2枠
三番 インペラトルーチェ(二番人気)
四番 セレクトリアル(十六番人気)
3枠
五番 ナイトロジェット(六番人気)
六番 ナイトランサー(四番人気)
4枠
七番 レーザーカノン(三番人気)
八番 ドリフトスピード(八番人気)
5枠
九番 ジルクリフ(十番人気)
十番 アルギュロスレウス(一番人気)
6枠
十一番 エフフェイト(十二番人気)
十二番 モッブモブ(十八番人気)
7枠
十三番 アースタイト(十一番人気)
十四番 スカイオンクライ(十四番人気)
十五番 パースリング(十七番人気)
8枠
十六番 クラスライトアップ(十三番人気)
十七番 デルウィング(十五番人気)
十八番 フルフロントライン(九番人気)
ゲートの前で立ち尽くす。空気は重く、張り詰めている。凱旋門賞の時とそう変わらない圧の密度。心が高揚するのを止められない。私は今、笑っているだろう。上等だ、そうだろ?
────
「各ウマゲートイン完了。有終の美を飾るのは誰だ、有馬記念スタートです」
ゲートが開くフライングギリギリのスタート。他の奴らに目を光らせる。ユーイチはどう思う?
伏長〈……追い込みだ〉
「各ウマ綺麗なスタートを切りました。ハナをとったのはクロックスライダー。二番手にはスカイオンクライ、三番手にインペラトルーチェ」
前には出ず後ろに位置取る。狙いは一点集中からの一掃。
「アルギュロスレウスは後方二番手」
後ろから観察を入れる。アイツら前に走った時より速い、カーブも前より膨らまなくなってる。……他のはそれ程、主なマークはアイツらでいい。
「大歓声を受けて直線を走ります。競馬場にいる幾万のヒトの期待を背負い、1コーナーへ」
2500m、タイムを逆算、最終調整は直感に頼る。
「1コーナー中間先頭インペラトルーチェ、クロックスライダーが続きます」
コーナー中間の…………ここ! ロングスパート!
──────────
変わり行く時代は停滞を知らず
過去の歴史は未来を知らず
記憶の欠片 刻まれた感覚
我が身いつか朽ちて
古と成るならば
見る者に消せない印を付けよう
さあ、銀色に染まれ
「向こう正面、先頭変わらずインペラトルーチェ、クロックスライダーと差は一馬身、三馬身離れてスカイオンクライ」
「アルギュロスレウス進出を開始、ロングスパートです」
外から加速をつけていく、進みながら各々の進路を無くすよう誘導する。
「インペラトルーチェ先頭で第3コーナーへと入ります」
アイツらのギアが上がったのを感じる。妨害も気休め程度しか効果は無さそうだ。
「さあ上がって来ましたドリフトスピード、ナイトランサー内から、レーザーカノンも続いてきた」
コーナーが終わる。最後の直線。もう一押しいくぞ!
私達は誰かの奴隷
もしそこに
鎖を外した奴だけが自由だ
全てを悟り、理不尽へ至れ!
「さあ時代の終わりへ最終直線、先頭インペラトルーチェ、ナイトロジェット大外から来た凄い加速、センターサイト中から抜けた」
「いやアルギュロスレウス、アルギュロスレウス外から先頭に並ぶ」
「他のウマも並んだ、並んだ、横一列」
「王敗れるのか! 首を取るのはやはり同期か?」
「譲らない! 譲れない! 八頭並ぶ!」
「インペラトルーチェ少し前か! アルギュロスレウス苦しいか!」
「残り100! 分からない! 誰も抜け出ない! 拮抗状態!」
「修羅が宿る! 修羅で満ちる! 果ては誰も知らぬ景色!」
「接戦! 大接戦!」
「並んで! 並んで! ゴール! 一列修羅の大決戦!」
「我ら歩んだ修羅の道! 世界よ! 日本の最強は世代そのものだ!」
「ビデオ判定です! そしてタイムはレコード! 八頭共にレコードになりそうです!」
伏長「お疲れ様、レウス」
楽しかった。後悔も未練も何も残すことは無かった。
伏長「お別れだな」
……悲しいよ。
伏長「……今日という日は忘れることが出来なさそうだ」
忘れないさ、みんなのこと。せめて俺が死ぬまではこの心に残そう。
「でました! 結果は──────────」
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中原「お疲れ様、レウス」
レースが終わっていつもの此処に帰って来た。ルーチェとご飯を食べながら今日のことを思い返して反芻する。
…………引退、か。
中原「……元気だせよ、お前にはまだこれからがあるんだから」
……そうだよな。まだ自分の一生は続くんだ、前を向いて歩くよ。
中原「しっかり休めよ」
これからかー。自分の実績的に種牡馬入りかな? ……性欲解禁ってマ?
「次はダート大国、アメリカなんだからな」
…………………………ゑ?
は?おいおいおいおい!
ちょ、おーーい!
「どうしたウマ娘担当のワイ」
おいコラ競走バ編担当のワイ、てめぇ引退する流れだったやろが!
「…………もう一年走れるドンw」
WTF!?
「焦らず待っとけよw」
オーライ、表出ろや
ではまた!