えー、あれ?
報告することがない?
……はい!
ではどうぞ
こんにちは、レウスです。
私は今、産まれ育った故郷である農場で静かに余生を過ごしています。ウマとして産まれて大体25年、もう立派なおじいさんバです。山々に囲まれたこの土地で、愛するルーチェたちとこうして余生を過ごすことが出来るのは競走バとして頑張ったおかげだ。
ここに来たからも色々あったな。一番驚いたのは天皇陛下と皇后陛下が訪問なさったことだ。自分とルーチェに会いにこんなド田舎まで来て下さるなんて、人気者は辛いなぁ。騎乗もされて、満足して下さったらしい。騎乗といえば、あのちびっ子も頻繁に来てはよく乗せていたな。立派な騎手にしてやれって言われたもんだから、おじいさん張り切っちゃった。今は天才若手美人ジョッキーとして大人気らしい。ちびっ子はワシが育てた。ヒトで言う美人さんになっちゃって、時間というのは働き者だな。
働き者といえば自分もよく働いたもんだ。種牡馬として交わった相手は数え切れない程、交わった回数なんか覚えてすらいない。でも、自分は種牡馬としては上手くやれたらしく、自分の子どもたちが活躍しているのを橘が教えてくれる。この農場でも子どもたちの世話をするのだが、ほとんどはトレーニングセンターにいるから放牧? でこっちに来ている時限定だけどな。
この厩舎内には自分とルーチェの他に、スキャンとレイソルもいる。何故かと言うと、我らが水上が連れてきたんだ。もっと具体的に言うと買ったらしい。……流石馬主様やで。おかげでハーレム状態です本当にありがとうございます。この三頭とは特に沢山子作りしたし、好き好き大好きな感じだから毎日ハッピー・ジャムジャムだ。
───ずっとこの日々を送っていたいと……思っていた。
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俺たち四頭の中で一番先に旅立ったのはスキャンだった。
突然の急死では無く、何かしらの病気によるものだと厩務員が話していた。確かに最近元気が無かったけど、自分と触れ合う時は嬉しそうに反応してくれた。
スキャンとの出会いは、初めての海外、イギリスでのことだった。自分のイギリスでのレースは主にスキャンとの激突ばかりだった。それくらいスキャンは速く、美しかった。距離の詰め方は凄かったけど、愛嬌溢れる彼女に惹かれていった。
スキャンは三頭の中でも一番スキンシップの激しいウマだった。自分を見かけたら即座に近づき、身体を擦り付けてくる姿は可愛らしかった。彼女と一緒に放牧されれば、放牧が終わるまでずっと自分の真横に居座ってる。それに安心感を得たし、嬉しさで胸が満たされていた。
でも…………彼女は旅立った。
当時はカナリ落ち込んだ。食欲も性欲も睡眠欲も無くなって、ただボーとスキャンがいなくなった馬房の方を見つめていた。そんな自分に寄り添ってくれたルーチェとレイソルが居なかったらまだ落ち込んでいたと思う。
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次は……レイソルだった。
彼女は急性心不全だった。昨日まで元気だった彼女が次の日には目が覚めることが無いのは今思い出すだけでも喪失感に駆られる。
彼女との出会いはアメリカ。スキャンとはまた違ったが彼女も距離の詰め方が急だった。気がつけばそばに居る。気配を感じることなく現れるのだから心臓がもたないと思っていたのに、先に彼女の心が止まってしまうなんて酷い話だよホント……ハハっ。
彼女が旅立った時も落ち込んだ。一度体験したからかな、スキャンの時より引きずることは無かった。それでも、ルーチェが居なかったら苦しかったかもしれない。彼女の存在は、自分にとって当たり前になっていたから。スキャンとはまた違う当たり前、溶け込んだ雰囲気とでも言おうかな。だからかな、この空いた穴の大きさは。
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時は流れ……。
自分はもう30歳らしい。誕生日だかなんだか分からなかったが、今日は記念日ということで厩舎が少し騒がしい。
今日もルーチェと外にいる。身体を撫でる風が心地良い。息を吸えば、化学物質に汚染されてない空気が肺を満たす。草木の匂いは野生の大人しさを教えてくれる。
──嗚呼、わかってる。
ルーチェが此方を見る。
──うん、そうだね。
僕らは寄り添い、身体を預け合う。
──きみはどう?
ルーチェが顔を舐めてくる。
──ふふ、ありがとう。
僕らは此処で、旅に出る。
──沢山の時を過ごしたね。
僕は一頭ではなかった。
──また逢えるよ。
寄り添い合う二頭に空から光が照らされる。
──また、僕ら四頭で。
風の感触も、草木の匂いも、よくわからなくなる。
───旅に出よう。
視界がボヤけ、眠気がゆっくりと意識を染める。
─── 一緒にいてくれて、ありがとう。
────きみと出会えてよかった。
──────おやすみ、ルーチェ……。
僕らは深い眠りについた。
これが最終回かぁ(違います)
……書くことないんで終わっときます。
ではまた!